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2013年8月 7日 (水)

■0807■

ムービープラスで、『レイチェルの結婚』。
Rachelgettingmarried_6全編を手持ちカメラで撮影した、ジョン・カサヴェテス『アメリカの影』のスタイル。半年ぐらい前、たまたま途中から見て「これは、好きなタイプの映画だ」と直感した。。
今回、冒頭から見られてラッキーだった。もしも出会うきっかけがあったなら、ちょっとの時間、この映画のために割くだけの価値はある。

レイチェルは、主人公の姉の名前だ。主人公は、キムという。いかにも神経質そうな顔つきの彼女は、麻薬中毒の更生施設を出たばかりだ。
キムは、結婚式の準備の進む実家へ、施設から直行する。ところ構わずタバコは吸うし、態度も粗暴。式の前夜、姉と大喧嘩になってしまう。
そんなキムには、幼い弟を事故死させてしまった、消すことのできない過去がある。

カメラは作為を排したように見えて、実は、そっとキムの背後に寄り添っている。
結婚式の準備の進む、にぎやかな家。台所にも、芝生の広がる庭にも、いつでもどこかに、誰かがいてくれる。誰かが、きっと笑いかけてくれる。甘えさせてくれる。その中には、犬を連れた少年や赤ん坊の声も混じってはいるのだが、不思議と、キムがいちばん幼く見える。
――おそらく、キムは弟を事故死させた罪悪感ゆえに、ぴたりと成長を止めてしまったのだろう。彼女は、こんなことを呟く。私だけは、神様に許されない。私を許してくれるような神様を、私は許さない。

結婚式を終えた姉が新しい家庭の第一日目を歩みだすその朝、グレーの夜明け、キムは友達の車に乗って、まだ喧騒の余熱の残る我が家を後にする。さみしく、温かいラストだ。


『惡の華』の仲村佐和流に言うなら、日本は「ドブゲロの国」。
来月、ふたたび国内の全原発が停止する。この猛暑でも電力が足りてしまっているため、「原発が止まったら、江戸時代に戻る」と言うと、さすがに笑いものになる。
再稼動は電力会社と政府の都合でしかないのだが、「今まで続けてきたことを、自分の代で変えたくない」現状追認・責任回避の空気が、それを後押ししているように思えてならない。つまり、福島の事故を理由に原発をやめてしまっては、「まるで事故が深刻なことのように思える」から、原発をやめたくない。

「あたかも、深刻な事態が発生しているかのような発言をしている者は、さっさと目のつかないところへ追いやってしまいたい」。少なくとも「黙らせたい」。
脱原発デモを「うぜー」と言うのと、山本太郎議員をあの手この手で引きずりおろそうと躍起になっているメディア、根は同根だ。心の底では、原発が動いていようが止まっていようが、放射能が安全だろうが危険だろうが、どうでもいいのだろう。ただ、「自分が生きている間に、大きな選択を迫られるのが、怖い」。
だから、保守的な生活をつづけてきた人間にかぎって、原発や放射能の話題を忌避する。

歳をとると、変化に適応できない人間のオスは、今の生活がすべてになってしまう。
オッサンやジジイが、やみくもに原発維持にこだわるのは、柔軟な選択能力を失った証だ。汚染食材を我が子に食べさせたくないママさんたちの苦労を笑い、叱り、「離婚するぞ」と脅すのは、何よりオッサンたちの思考が硬化し、にっちもさっちもいかなくなったからだ。

自らの老いと焦りを弱者に押しつける「使えない大人」が大手を振っているのだから、この国は「ドブゲロ」というわけだ。


バイト先の飲食店やコンビニで、食材で遊んだり冷蔵庫に入った挙句、その「証拠写真」をネットにアップする若者が、後をたたない。
即座に、勤務先ばかりか実名までがネット上の「有志」たちによって調べ上げられ、バイト先の企業が謝罪するオチ……この流れがパターン化していることに、不気味さをおぼえる。

ネットで騒ぎになりそうな写真を、あえてわざわざアップする。しかも、「冷蔵庫に入る」行為は、明らかに模倣犯だ。その創造性のなさに、慄然とする。「ルールを破っている」爽快感もなければ、無論、メッセージがあるわけでもない。
バイトを解雇されたところで、彼らは経済的に追い込まれない。前科がつくわけでも、将来にキズが残るわけでもない。しかし、ネットの世界で仮想的に追い込まれること、仮想的に抹殺されることを自ら望んでいるかに思える。
ネットを介して、無傷のまま、自滅することができる。その甘っちょろさが、薄気味悪い。

絶望も幻滅もない、とは、すなわち創造性から最も遠い生き方だ。
若ければ、やり直しはできる。だが、やり直すためには、むき出しの痛み、容赦のないマイナスが必要なのだ。怪我をしない生き方、それは畜生以下のニヒリズムだ。

(C)2008 SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC. 

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