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2013年6月11日 (火)

■0611■

Febri Vol.17 14日発売
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●『翠星のガルガンティア』各話解説
第10話までの解説です。あと、本編中の「通訳」の演出について、ちょっとコラムを書きました。

●渋キャラオヤジ列伝 第十回
今回は、『攻殻機動隊 S.A.C』シリーズの荒巻大輔です。

●ガールズ&ワークス in アニメーション
新連載です。制作会社の若い女の子たちに、オッサン臭さ丸出しでインタビューしていく記事なので、まだ第一回は“キャバクラ感”が足りない。
もうちょっと、頭の悪い連載にしたいのですが。


先日は、『惡の華』第10話に関連して、かなり意味の分からない話を書いた。
「だって、恋愛というのは、告白して、相手に受け入れられて、デートしたりセックスしたり、時には結婚に至るようなものなんでしょ?」と言うなら、それはテレビや雑誌から漏れ聞こえてきたノイズ、社会が無責任に流布させたルーティンでしかない。

確かに、自分もそういうプロセスを踏まねばならない、と思っていた。実際、それらの要素を包含してはいるのだが、もっと得体の知れない体験をした。「なぜ、こうなってしまったのか」と呆然とする。今でも、説明がつかない。何かが、煌々と燃えていた。希望ではなく、欲望のようなもの。あつかましいほど力強い、生存本能のようなものに出会った。
それが多分、この前書いた「それから後の人生を生きていくための材料、エネルギー」なのだろう。

その中に、甘美な感情もあった。セックスも、その体験の中で、たまたま生じた。だが、僕は同じ時期に、幽霊を見た。幻覚だったと思うのだが、彼らの発する音も聞いた。疲労のあまり、そのようなものを知覚できる精神状態に、陥っていただけだろう。
――だけど、その幽霊たちのほうが、ずっと信用できた。信用できた、というのは、5年間の恋愛ともサバイバルとも言えないような、異様な体験以降に出会った女たちよりも。
それは、余裕や自慢で言っているんじゃない。あの5年間は、それほど例外的だったんだ。


怖ろしいのは、『惡の華』がリアルタイムで放送されているのに影響されて、僕の記憶が同時再生されていることだ。過去は、過去の時間軸のまま、ジッとしていてくれない。もしかすると、あの体験は、これから2年後ぐらい先まで手を回して、影響してくるのではないか?
……そんな生々しい予感があるから、「もはや若くないので、冒険はしない」「歳をとったのだから、大人しくしていよう」と安穏としている人たちは、何かを見落としているのではないか?と思ってしまう。
僕とまったく同じ体験ではないにしても、あのふてぶてしいほどの生存欲求に出会いましたか?と聞きたい。

『禁断の惑星』に出てくる、イドの怪物のように、飼いならすことが出来ない。湖が干上がったとしても、あいつは湖底で生きのびる。だけど――、あの煌々と燃える炎の中に、澄んだ水さえ、春の花さえ、木陰のそよ風さえもある。

それが、救いだ。僕は、図々しいエゴイスト。だけど、人や世界の清らかさを知っていないわけじゃない。


政策に反対する納税者の声を、「左翼」と切って捨てる58歳()。こんなズサンな出来の首相のいる国には、やはり半年ですら、ジッとしていたくない。恥ずかしく思う。

今日、ひさびさに仕事をふってくれた編集者は、ちゃんとクロアチア旅行のことを知ってくれていた。あと四ヶ月もある。旅なれた知り合いのアドバイスで、モスクワのホテルに泊まることにした。

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コメント

廣田様。
お久しぶりです。


コメントをした事が無く、挨拶もなくすみませんでした。


放映か始まってから僕のスタジオにも「悪の華」の動画が入って来たことがあります。
役者さんの画像の上に作監修正が入っているのを見せて貰いました。
作監監修正は実写に対してフォルムをいじりすぎず、絵描きとしての美学を入れ込んでいるというように感じました。
タイムシートが3コマ打ちなのも見てから、“元は誰か”を考えなくなりました。


ロトスコープながら今のアニメの技法が入ることで抽象性が高く、個人の経験に照らし合わせて見た方が深い体験が出来ると思ったからです。


「悪の華」の放映中、僕もどうもバランスが悪いです。


電脳コイルの「暗号路が深く組み込まれているから、ダメージを受けたらただでは済まない。」

そんな気分です。


押見さんの「お前もロトスコープしてやろうか」はギャグの様で、体験をそのまま言葉にしているのでしょうか。

投稿: 吉田大輔 | 2013年6月12日 (水) 07時18分

■吉田大輔様
いえいえ。Tさんが「今度上京するので、吉田さんと3人で飲みませんか?」と言ってらしたので、楽しみにしていたんです。

エンドロールを見ると、動画は、いろんなところに蒔いているんですよね……(笑)。

>作監監修正は実写に対してフォルムをいじりすぎず、絵描きとしての美学を入れ込んでいるというように感じました。

今週出る「オトナアニメ」に、実写と完成画像の比較が載りますが、「そのまんま」ぶりに驚くと同時に、「絵」として完成されていることに、驚きますね。
「ロトスコープなんだから、仕方ないじゃん」的な言い訳がないところが、実は凄いんですね。

>タイムシートが3コマ打ちなのも見てから、“元は誰か”を考えなくなりました。

3コマ打ちなのは、監督から伺っていました。「だから、普通のアニメと一緒ですよ」と笑ってらしたのですが、タネも仕掛けもない「テレビアニメ」であり続けているのが、一番の驚きです。

>押見さんの「お前もロトスコープしてやろうか」はギャグの様で、体験をそのまま言葉にしているのでしょうか。

そう言われると、シャレにならないものを感じますね。
まだ、はっきりとは分かっていないだけで、あの作品には、「何かされている」と感じています。
オセロゲームで、どんどんコマを引っくり返されているというか……。人生が裏返っていく感じです。

投稿: 廣田恵介 | 2013年6月12日 (水) 14時39分

廣田様。
T氏が上京出来た日には、是非お酒にお誘い下さいませ。


アニメ「悪の華」ラストが近付いてます。
作品に対する思考が一番ビビッドなのが放映中なだけに、ちょっと寂しいです。

投稿: 吉田大輔 | 2013年6月12日 (水) 17時38分

■吉田大輔様
ひさびさに、テレビの前で待つぐらい楽しみな番組が『惡の華』です。
終わって欲しくないですね。

投稿: 廣田恵介 | 2013年6月12日 (水) 21時20分

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