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2013年6月 6日 (木)

■0606■

空港から出られなくなった男の映画、『パリ空港の人々』。
どんなに新しくても80年代だろうと思って見ていたら、90年代前半の制作・公開。『ポンヌフの恋人』の翌々年ぐらいだから、ミニシアターが元気だった頃だな。

『ポンヌフ~』のような、お洒落な映画ではないが、クライマックスのパリのシーンでは、言葉にしUntitledがたい幸福感と寂寥感がないまぜになって、意味もわからずに涙が出てきた。
主人公が図像学者で、インテリだというのが効いていた。ラスト近く、正体不明だった黒人の原語を、主人公は言い当てる。それは、何百年も前に滅んだはずの言葉なのだ。
その、ストーリーと無縁に思える意味深長な謎かけが、この映画に奇妙なスケール感を与えている。まるで、「われわれは、どんな人種であろうと、こうして何百年もさまよいつづけてきたではないか」とでも言いたげな……。

だから、映画に点数など付けられない。何十年もしてから、突如として心を支配する映画もある。
その時のためにも、心をしなやかに保っておかねばならない。揺れ動く気持ちを、数字でしばってはならない。


『パリ空港の人々』は、シャルル・ド・ゴール空港が舞台だが、本当にこんなに暗いのだろうか?
僕が寄るシェレメーチエヴォ空港近くに、シェラトン・ホテルがオープンするらしい。だけど、ホテルに行くには、ビザが必要なんだっけ。いろいろ悩んでしまうね。

クロアチアに着いてからも、ザグレブでは日本人経営のホテルに泊まるべきなのか?
ザグレブからプーラに移動してしまっては、旅の最後に、ロヴィニに着いたときの感動が薄まりそうだ。貿易港であるリエカで一泊し、翌日、リエカ→プーラ→ロヴィニへ、バス移動なら、どうだ?
帰りは、ロヴィニからザグレブへ、バスで直行できないものか? 一日、予備がとってあるから、大丈夫とは思う……。

個人旅行って、自分で演出まで考えないといけないんだね。


漫画を売ったり、読まない本を処分したりしているうち、『スター・ウォーズ EP3 シスの復讐』のクロスレビューの掲載された「グレートメカニック」が出てきた。
レビュアーは、僕のほかに岡島正晃氏、藤津亮太氏。二人とも、歯に衣きせず、辛らつな言い回しで、最終的には映画を誉めていて、実にアクロバティックで刺激的。
「ルーカスには演出の才能がない」程度では、映画関係者の誰ひとり怒らない。署名記事とは、そういうものだ。

ところが、アニメのレビューは、「名前付きで宣伝してくれてる」と関係者が勘違いしている場合が(やや)多い。だから、上司に怒られるように、原稿をばっさり改ざんされることも、(たまに)ある。
怖いと思うのは、「一見、おバカなアニメと思われがちだけど……」と書いたとして、「バカなんて後ろ向きな言葉は、使わないで下さい」とマジギレされるような局面だ。後ろ向きかどうかは、文脈で変わるだろうに、担当窓口の方たちは「いい言葉」と「悪い言葉」の二種類しかないと思っているのかな?と、首をかしげてしまう。
個人の主観をも、コントロール可能と信じている人がいるらしい。だとしたら、怖い。

先ほど、「映画に点数は付けられない」と書いたのも、同じ根拠による。育つまで、どんな植物か分からない雑草の埋まっている土こそが、健やかで豊潤なのである。ところが、雑草を刈りとることを、正義と信じる人たちがいる。
クロかシロか(強制して)はっきりさせることは、判断力の簒奪である。児ポ法改正が怖いのは、「個人の主観をも罰する」からである。

オスカル・フランソワが言ったように、「人の心に命令はできない」のだ。

(C)AFMD

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