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2013年4月 1日 (月)

■0401■

昨日、「クロアチアの女性は美しいが、ツンケンしている」と書いた。
Cimg1156_2ガイドさんに言わせると、 激しい民族対立のあった国だから、そうそう他国の人間に心をゆるせないのだろう、とのことであった。それでも、観光客の増えたこの十年で、だいぶ柔らかくなったらしい。この夏からはEUに加盟するので、もっとオープンになるのでは……という話だった。
そのガイドさんは理知的で、よく機転がきき、非常に優秀な女性であった。

ツアーに同行したお客さんは、半分ぐらいが子育てのおわった女性グループ。ほかに、夫婦が何組か。一人で参加しているのは、学生。オッサン一人での参加は、僕のみ。
そして、職種は違えど、熟年男性からは、いやおうなく「仕事に対するスタンス」が、にじみ出てくる。帰りの飛行機で、エンジニアらしい方と隣り合わせになったのだが、工業部品のパーツ精査の話が、非常に面白かった。がっちりと現場に張りついていないと、出てこない話ばかりだった。

ともあれ、僕だって人から嫌われたくはないのだなあ……と痛感した旅でもあった。その癖、ひとりで町をぶらつくのが、いちばん楽しかったりもした。


ドブロヴニク旧市街の小さな港で、僕はビールを飲んでいた。
Cimg1147すぐ近くでは、白髪のオッサンが遊覧ボートの客引きをやっている。ところが、ぜんぜん客が寄りつかない。「どれ、話を聞いてみよう」と近づいていくと、ひとり10ユーロで船に乗せてくれるという。だが、最低4人集めてくれないと、ガソリン代すら出ないんだ……と、オッサンは悲しそうに言うと、「ま、あんたが4人分はらってくれれば、船はすぐに出せるんだけど」。
「よし、だまされてやろうじゃないか」という気持ちになって、10ユーロ紙幣を4枚だした。むちゃくちゃ小さいボートだけど、貸し切りだからな……と思っていると、アメリカ人のカップルやフランス人の家族連れが乗ってきた。計6人だ。

「あんたの払った40ユーロだけど、後で清算するからな」と、ボートの艇長がいう。
Cimg1151(←艇長は、なぜか木の箱に右足を乗せていた。どういう機能があるのか知らないが、単に「このポーズの方が操舵しやすい」のかも知れない。)
アドリア海の波頭を、間近に見た。波の形は複雑で、一秒毎に、見たことのないような彫刻が生成されていく。まるで、ソラリスの海だ。

……ま、余計に払った30ユーロは返ってこなかったんだけど、旅先ではケチらない、ケチらない。


ツアーは、小さな観光バスで各地を回り、長いときには、移動だけで5時間もかかった。
バスを運転していたのは、イワンという60代ぐらいのオッサンだった。彼は毎日、朝から晩まで、文句ひとつ言わずにバスを運転しつづけた。僕らが降りたあとは、ひとりで客席を掃除するのだという。
その労働量を考えると、イワンひとりに、重たい荷物25人分を下ろさせることは出来なかった。僕は毎日、彼が荷物を下ろすのを手伝った。最初は「No problem.」と言っていたイワンも、やがて僕と連携プレーで荷物を下ろすようになってくれた。

シベニクという都市でも、自由行動の時間があったが、あまり面白い場所ではなかったし、雨が降っていて、寒かった。
僕はさっさとバス・ターミナルに戻ってきた。すると、イワンが運転席でスポーツ新聞のようなものを読んでいて、それを無造作にゴミ箱に放り込んだ。その捨て方が、実に粋だった。直後、イワンは、バスのヘッドライトの傷に気づき、手でこすっていた。その仕草もまた、カッコよかった。
(バスが大事というよりは、会社に怒られるのを気にしたのかも知れない。だとしても、あの仕草のカッコよさに、曇りがかかるわけもない。)

イワンは、どこか大雑把でガサツな印象を与える男だが、僕がバスの外で待っていると、「寒いだろ、先に乗っていろよ」と声をかけてくれた。そう言いながら、自分は外に立ったまま、他の客たちを待ちつづけていた。
それが、彼の生き方だった。彼は、誰にでもできそうなことを、誰にも真似のできない方法でやっているように見えた。「あんたのような男になりたいんだ」と言いたかった。だけど、僕には英語力がなかった。


ドブロヴニクで、昼食をとるために入った小さなレストランのオッサンも、やけにきめ細かかった。おどおどしている、とさえ言えた。それでも、彼らの胸は広い。
ガイドの女性は、「クロアチアの人たちは、本当に綺麗な、青い瞳をしている」と言っていたが、それはむしろ、女たちより、オッサンたちにふさわしい言葉に思えた。

だからこそ、ザグレブからドーハまでの帰路、カタール航空の乗務員たちの態度は許せなかった。飛行機が30分も遅れているのに、笑いながら雑談とか。軽食を配った直後に「着陸態勢だから早く食え」とか。乗客が寝ているのに、大声で談笑とか。
それでも、グッと我慢するのが大人なんですかね? 俺は、日本語で怒鳴ってしまった。彼らは、自分で自分の仕事を汚している。

俺の仕事だって、パーフェクトじゃないよ。せめて誠実でありたいけど、徹しきれていない。
イワンの仕事を手伝ったのは、誉めてほしいからじゃない。彼に甘えすぎることを、恥じたんだ。

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