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2013年3月 6日 (水)

■0306■

談話室オヤカタ「#0400 作品の感想に模範解答なんか、無い」
池田憲章さんたちと、400回記念のケーキを食べつつ、語ってきました。聞いてください。


幼い頃は、まだ与えられたものの中でやりくりしていられた。
小学校高学年になると、「大人たちはウソをつきながら、意味のないことを繰り返している」と気がつきはじめる。そんなとき、どんなに必死に戦い、理不尽に友だちを失っても、決して社会に認められない者たちを主人公にした『無敵超人ザンボット3』と出会う。
「このアニメは、合体ロボット物のフリをしているが、本当のことを言おうとしている」と直感した。だから、周囲に「いい歳して、ロボットの漫画なんて……」と言われても、見つづけた。ロボットの漫画だからこそ、信頼に足る。合体ロボットなんて、社会の最底辺だったから。たとえ認められてなくても、この制作者たちは真剣なんだと、それだけは確信していた。心から信頼していた。

あのね。いいんです。夕方5時から、ロボット玩具の宣伝のためにやっているテレビ漫画の方が。「オモチャが売れなかったら、番組は打ち切りになる」って、小学6年生には理解できていたから。正々堂々としている、と僕は思っていた。
その頃の日本映画というと、商売として、もっとも下賤だったから。団券販売といって、出資会社の関連企業に、前売り券を売りつける。親会社に逆らえない企業は、やむなく社員に買わせる。何十枚という前売り券が家のタンスに眠ることになるから、「タンス券」と呼ばれるんだけど、それが映画の収入に数えられる。
だから、映画館がガラガラなのに「今年度ナンバーワン、配収○億円の大ヒット!」とか、まったく中身のない商売をしていたわけ。
大手配給会社に屈するしかなかった映画館は、誰もいない劇場でフィルムを回しつづけていた。

オモチャが売れなかったら、話の途中でも打ち切られるテレビ漫画のほうが、ウソがない。今でも、そういう正直さを残しているから、僕はアニメ業界を憎めない。


団券販売といえば、反原発集会でも反オスプレイでも、「団体動員かけたから、あれだけ集まったんだ」とクールぶっている人。
究極の団体動員は、選挙でしょ。自民だったら、遺族会・薬剤師会・建設業協会、いろいろ動員するよね。なんで、そっちは「しょせん組織票だ」とクールぶらないんですか?

自民党は、「反共産主義ののために頑張ってくれるんなら、カネだすぜ」とアメリカから支援されて出来た党でしょ。主体性なんて、ないですよ。最初から。
僕が言っているのは、そういうことでしかない。原発を「電気の安定供給のため」と本気で言っている人は、“電気税”を払ったうえに宣伝までしてくれる、優秀な奴隷。『原発と権力』でも読んでください。日本に原発が導入されたのは、アメリカの都合。もともとが国内の電力供給のためではないし、大飯原発を再稼動させる前にも「供給は関係ない」と、関西電力がハッキリ言ってたじゃん?

そして、原発立地の人たちはさ、核廃棄物の最終処分場のドキュメンタリーでも言っていたけど、「こんな田舎に立派な図書館や公民館が建っていて、うらやましい」ってのが動機でしょ。原発交付金というのは、やっぱり中身がないわけ。
零落した大手映画会社が、カラッポの劇場を前にして「○十万人動員! 大ヒット!」と宣伝しているのと同じです。そういう内容空疎なテレビCMを見て、何も知らないオバチャンたちが「そんなに当たってるなら、すごい映画に違いない!」と思い込んでしまう。「原発は電力確保のために必要!」と熱弁している君たちの同類だ。


自由であるはずの映画やアニメを五段階評価したり、百点満点で採点したりする者は、義務教育のくびきから逃れられていない。自ら牢屋に入った者が、脱獄を繰り返す表現である映画やアニメを採点するとは、こっけいだ。

だけど、すべてが繋がっている。自由を行使できないものは、自由を行使するものを妬む。おとしめる。
デモで自分の意思を示す群集を哂うのは、自らの声で発言する自由を手放した君だ。映倫に規制された映画を「法律だろ、仕方ない」と突き放すのは、法に反抗する自由に触れようとさえしない君だ。主体性なき民は、主体性なき権力者には都合のいい存在。

「本当のことを言わなければ」と立ち上がった大人が、アニメ番組という子供向けのメディアを使ったことは象徴的だ。「オモチャが売れねば、たちまち打ち切られる」という実体のある罰則が、そこにはあった。主体性がなければ、半年ももたない。そこで彼らは、実態と乖離した宣伝もしなければ、交付金なんてものに甘えもせず、ただひたすら「伝える」努力だけを行ったんだ。
自律性のある作品に出会ったら、自律性ある生き方をしよう。別に、デモが最良の手段なんて思っちゃいないよ。方法は何でもいい、この空っぽの国で、「俺はこう思うんだ、こう信じるんだ」と、意志の炎を燃やせ。たいまつを掲げろ。それが自由だ。

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