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2013年2月12日 (火)

■0212■

一両の戦車の中だけで完結する、異色の戦争映画『レバノン』。
Lebanonstills_0987819外の風景は、すべて戦車のペリスコープごしにしか見えない。テロリストが、民家に立てこもっているのが見える。砲撃手は、家の中に小さな子供がいるのを目撃し、「撃てない」と焦る。そうこうするうち、テロリストは自爆。
子供の母親が、ふらふらと建物から出てくる。歩兵たちは「立つな」と銃で威嚇するが、子供を失った母親は、もうろうと付近を歩き回る。そのうち、服に火がうつってしまい、彼女は泣きながら、服を脱ぐ。裸になって立ち尽くす母親に、歩兵は毛布をかけ、「危ないから、しゃがんでいろ」と、今度は優しく声をかける。
――その一連を、戦車の中から見ている主人公たち。そして、我々。


敵陣の中、戦車の内部だけで完結する『レバノン』は、もちろん『ガンヘッド』によく似ている。実は、ミリタリズムに徹しすぎたことが『ガンヘッド』の失敗であり、成功でもあった。
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(←天神さんジャケットのDVDを、ひさびさに再生。)
「ガンヘッドパーフェクション」収録の資料を見ると、驚いたことに、冒頭の地図が映るシーンは「'40年代の戦争映画や『カサブランカ』『脱出』をホーフツとさせるレトロ感覚」と、台本に書かれており、つづくロボット戦争のシーンは「第二次大戦のニューズ・フィルムの一駒のように――」と書かれている。だから、モノクロだったのか!
しかも、地図~ロボット戦争のシーンには「ブラスバンドのカッコ悪い曲」を流して、違和感を生じさせる狙いがあったという。(サントラの12番目に入っているマーチが、多分それだろう)

敵の警報システムが40秒後に反応するから、隔壁爆破後30秒でジャミング装置を作動させ、警報を鳴らさせない……敵を騙しながら突破口を開いていく展開は、原田眞人監督が最も参考にしたという『サハラ戦車隊』に、なるほどよく似ている。
しかし、セリフがカットされているせいもあり、「なぜ爆破後30秒でジャミング装置をオン」なのか、さっぱり分からない。簡単に分からせようとしないし、誰の好みに合わせようともしていない。ちっとも優等生じゃないところが、『ガンヘッド』の魅力なんだろう。

誰にも理解されなくても、なぜか堂々として自信たっぷり。そういうヤツが、僕は好きなんだと思う。

(C) 2009 METRO COMMUNICATONS / PARALITE PRODUCTIONS ARSAM INTERNATIONAL sarl / ARIEL FILMS GmbH ARTE FRANCE CINEMA All RIGHTS RESERVED

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