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2013年2月 4日 (月)

■0204■

レンタルで、『バニラ・スカイ』。開幕15分ごろ、ヒロインのペネロペ・クルスが登場してから、がぜん面白くなる。やはり、女優は大事。ペネロ・クルス、初登場時のもこもこしたコート、脚にぴったりフィットしたジーンズ、衣装が素晴らしい。
Pro00021トム・クルーズの部屋に貼ってあるポスターが象徴するように、ペネロペのキュートな仕草や表情は、『突然炎のごとく』が参考にされているようだ。恋愛のイメージは、ボブ・ディランのアルバム・ジャケットから……と、他の視覚メディアからの引用が面白い。

確かに、ペネロペ・クルス(このとき20代後半)のように元気で素直で、ユーモアもファッションもセンス抜群の女性が現れたら、一瞬で恋に落ちてしまうに違いない。
この映画のとき、トム・クルーズは40歳を間近にしていた。破滅するたびに救われ、彼は「夢ではなく、本当の人生を生きたい」と切望する――。その若さが、うらやましい。

僕は、若い頃の甘い恋愛の思い出だけで余生を生きていけると思ったんだが、人生は、そう甘くなかった。この2年間で、身に染みた。
ペネロペ・クルスの出演している『それでも恋するバルセロナ』を借りてきた――。


「戦後史の正体」を読んでいると、どうして日本人が主体性を失って、他人まかせになったのか、よく分かるような気がする。

原爆を二発も落とされたのに、軍部はさらに戦争を継続しようとした。原発が爆発したのに、まだ再稼動させようと懸命な今の政府と、よく似ている。
「電気のため、経済のために原発は絶対必要だろ!」と言いはっている人が、7月に大飯原発が止められる可能性については、口をつぐんでいる。脱原発を叫ぶ人さえ、この事実を直視しない。みな、他人事なのだ。

「戦後史の正体」によれば、日本がアメリカに無条件降伏したとき、米軍は英語を公用語とし、通貨を軍票にするつもりで、見本まで刷ってあった。(この案が通っていたら、僕らは今ごろ、英語で会話していたかも知れない。)
日本の軍事植民地化を避けるために奔走した政治家たちは、小国が大国に隷従する事大主義によって、放逐されていく。
以降、日本には、主体性をもった政治家は、完全に不要となった。大人たちが責任を放棄したのだから、子供たちにも伝播する。「どこかの誰かに責任があるらしい」ことにして、なんとかその場をやりすごすのが賢い、冴えた生き方だと、僕らは学校で叩き込まれて育った。

みな、学級委員や重要な役職から逃げ回った。逃げること、シラを切ることがカッコいいと信じ込んでいた。

だけど、それで人生が満ちたりるはずがないから、僕らは陰で不満を言う。たとえば、インターネットで。周到に、自分の責任だけは回避しながら。


主体性の欠落は、職場だけに限らない。主体的なアニメの感想を言えないから、公式サイトに頼る。「公式な読み解き方」があると信じ込む。

先日も、編集者と話したばかりだ。「公式サイトみたいな文章を書くライターが多いから、チェックする権利者も、公式サイトみたいな書き方を求めざるを得ない」。
下手をすると、「この作品を、あなたの好き勝手に読み解くな」と、権利者は言い出しかねない。そして、僕たちも「触らぬ神に祟りなし」と、唯々諾々と従ってさえいれば、楽に仕事が終わって、楽に儲かるのだろう。降伏調印後の日本の政治家たちのように。

「正しさ」なんかより、勇気を身につけることが先決だ。

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コメント

この世の内容は、なかなか綺麗にならない。だが、辻褄はあっている。
あの世の内容は、どこまでも綺麗にすることができる。だが、辻褄を合わせることは難しい。
考えに、辻褄を合わせることは、高等教育に属する。
高等教育を普及させて、未来社会の建設に着手しよう。

意思のあるところに方法はある。
未来社会の建設には、その意思を示すことが必要である。
ところが、日本人には、意思がない。
意思は、未来時制の内容で、日本語には、時制がないからである。

時制がなければ、現在の世界から、未来の世界への移行する考え方はない。
変化がないのが安泰であるから、天下太平の世の中を望むことになる。
確たる未来社会の建設に民の力を結集することができない。ひ弱な花。
夢も希望もない。民は、先の見えない閉塞感に襲われる。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://3379tera.blog.ocn.ne.jp/blog/

投稿: noga | 2013年2月 4日 (月) 08時38分

■noga様
ありがとうございます。
リンク先、拝見いたしました。

「日本人の頭の中には急場と場当たりの内容しかない。」
「意思を示せば、当事者となる。
意思を示さなければ、傍観者となる。」

――勉強させていただきます。

投稿: 廣田恵介 | 2013年2月 4日 (月) 10時25分

廣田様

>ペネロ・クルス、初登場時のもこもこしたコート、脚にぴったりフィットしたジーンズ、衣装が素晴らしい。

あのパーティでの登場シーンは鮮烈ですよね!「一瞬で恋に落ちる」を映像化するとああなるという好例です。
この映画、コメンタリーによると、衣装には非常に拘っており、人物のキャラクターと、その時の心境まで表現するように細かくチューニングされているようです。
先のパーティで、ペネロペの登場に怪訝な表情を浮かべるキャメロン・ディアスの衣装は、両肩のストラップの幅を左右それぞれ変えて不安定な印象になるようにしているとか・・・

>「公式な読み解き方」があると信じ込む。

公式設定を押し広げることを可能とする、想像力・知識・実地体験などが圧倒的に不足しているのでしょう。
そのくせ、その能力を持った人間を「中二病」と馬鹿にする・・・不毛です。
制作者からも公式設定から葉を広げることを否定されるようでは、思考・想像する人間は最早レジスタンス活動家ってことですね。
僕はそう思われることの方が誇らしいですけど。

投稿: かまた | 2013年2月 4日 (月) 21時20分

■かまた様
>あのパーティでの登場シーンは鮮烈ですよね!

あのシーンのために、DVDを買ってもいいぐらいです。見ているだけで、幸せでした。

>両肩のストラップの幅を左右それぞれ変えて不安定な印象になるようにしているとか・・・

実は、かなり変わった映画ですよね。あらゆる視覚的要素が、深層心理に訴えてくるというか。
よくある夢オチ映画かと思いきや、言葉にできない深さ、曖昧さがあります。

>公式設定を押し広げることを可能とする、想像力・知識・実地体験などが圧倒的に不足しているのでしょう。

間違い探しが好きなんですよ。オタクって。「僕のほうが、いっぱい知ってるぞ」って言いたいんです。
そうすると、「正しい答えしか書いてない」公式サイトに直行するのが、もっとも手っ取り早いわけです。模範解答を求めてるんですよ。

>思考・想像する人間は最早レジスタンス活動家ってことですね。

いえ、「間違った答えを出した可哀相な人」でしょうね(笑)。
みんな、受験生の気分から抜けきってませんから……。

投稿: 廣田恵介 | 2013年2月 4日 (月) 22時01分

廣田様

>よくある夢オチ映画かと思いきや、言葉にできない深さ、曖昧さがあります。

真剣に見ているよりも、ボーっと見ている時の方が、心に入ってくる感じがあるのは、そのせいかもしれません。
それと、この作品ってサスペンスなどのジャンルに分類されるのでしょうが、実は結構SFしていますよね。
「僕は冷凍、君は死んでいる・・・」とか普通じゃありえない台詞ですよ。

>「間違った答えを出した可哀相な人」でしょうね(笑)

ハハハ!可哀相な子(おっさん)の方がシックリきますね、残念ながら(笑)
むしろ、その方が大きく開けてくるような気がしてきました。


投稿: かまた | 2013年2月 4日 (月) 22時30分

■かまた様
>ボーっと見ている時の方が、心に入ってくる感じがある

メイキングで、監督が「流し見をしてもいい映画」と言っていたのに感心しました。
常にストーリーの結末だけが気になる、「ネタバレ」ばかり気にしている人には向いてないのかも(笑)。

>「僕は冷凍、君は死んでいる・・・」とか普通じゃありえない台詞ですよ。

クライオニクス(人体冷凍)については、アルコー延命協会という組織が、実在します。さすがに、人工の夢まではありませんから、ファンタジーというか寓話でしょうね。

見るたびに印象が変わりそうで、本当に豊かな映画ですよ。
教えてくださって、ありがとうございます。

投稿: 廣田恵介 | 2013年2月 4日 (月) 23時59分

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