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2012年12月31日 (月)

■1231■

年末ぎりぎりに、朗報が飛び込んできました。
私は、全国三件の産地偽装業者を刑事告発してきたのですが、そのうち、岡山市の有限会社クリーンライス(被告発人名 真辺米穀店)が起訴されました。本日、岡山検察庁から通知がありました。
罪名は、「不正競争防止法違反」です。

真辺米穀店による産地偽装については、すでに、JAS法による処分が下されています()。
私は、それでは甘すぎると思ったので、刑事告発しました。処分通知書には、事件番号や処分区分も記されていますが、公開は控えます。
(書面審理で終わるかも知れませんし、先のことは分かりません。ただ、「北海道産」と偽られていた米が、どこ産であったかぐらい、分からないものだろうか……。)

個人からの刑事告発なんて無視されるのかと思いきや、岡山検察庁は動いてくれたわけですよ。
告訴状・告発状の書き方は、インターネットで検索すれば出てきます。お金は、かかりません。分からないところは、地元の検察庁に行って、聞きました。ちゃんと教えてくれます。
僕たちは、産地を偽った食材を、職業倫理を欠いた業者に騙されて食べさせられているのですから、訴えていいんです。法を使って、制裁を加えましょう。


マンションの両隣が帰省しているようなので、ベランダから発見された3,000Bq/kgの汚染()を、掃除することにしました。
Calc4oe7友人から、N95規格のマスクを受け取っていましたから、こいつを装備します。
それと、掃除用手袋。メガネをしないで作業してしまったので、掃除後、目を水道水で洗い、何度も目薬をさしました。履いていたジーンズとトレーナー、靴下などは、問答無用で洗濯機に放り込みます。汚れた手袋は、捨てます。
(こうやって手作業してみると、「徐染」ではなく「移染」であることが実感できます。)

掃除後、ベランダ近くの線量が上昇してしまいました。0.12μSvぐらい。敷いてあった新聞紙をどけて、付近を使い捨てタオルで水拭きすると、0.05に落ちてくれました。
……なんで、俺がこんなイヤ~な作業をしなくてはならんの? でも、これが東京で生きていくという現実です。
「なんとまあ、大げさな」「この放射脳が」と笑っているあなた。あなたにも私にも、健康な未来が訪れますように。本気で祈ってます。

これだけでは不安なので、にっこり館さんでアイソトープ・クリーナーを買おう……。


明日、元旦は、殺された母の命日です。
誰にでも、忘れられない食事のひとつやふたつ、あるでしょう。私は2011年の元旦、警察での事情聴取を終え、ひとりで食べたチャーハンの味が忘れられない。

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2012年12月30日 (日)

■1230■

僕は、眠いときには仕事をしない。眠いのに仕事をつづけていると、誤字・脱字が増え、いちいちイライラさせられる。眠いときには、素直に寝るのだ。
翌朝は早く目が覚めるので、起きてすぐ仕事を再開する。疲れがとれているので、効率が増す。だいたい、二時間もあればカタがつく。「朝めし前」というやつだ。
おまけに、早朝、仕事を終わらせれば、その日一日はフリーだ! 一日中、プラモデルを作っていても、誰からも怒られない。

しかし、年末年始は『俺の艦長』のデザインをチェックしなければいけない。
けっこう、渋い感じの紙面に仕上がってきている。


レンタルで『ジャーヘッド』。「アクション」の棚にあったが、「最後まで一発も撃たないで戦争002が終わった」話なので、アクション要素はゼロといってもいい。TSUTAYAの無神経さには、微笑ましさを通りこして、うすら寒さを感じるときがある。
TSUTAYAに置いてある映画が、すべてではない。特に、古い映画は「名画」扱いされているものしか、置いていない。アメリカン・ニューシネマやヌーヴェル・ヴァーグなんて、TSUTAYAの店員は知らない。

さて、『ジャーヘッド』は、以前に見たことがある映画のようだ。
具体的なシーンというより、「このシーンのあとに、とても開放的な絵がくるぞ」「そろそろ、何らかギャグが入る頃合いだな」と、手ざわり感だけを記憶していた。
うっかり二度見てしまう映画は……、おそらく二度見る必要があったのだろう。時間のムダと思ったら、途中でやめればいいわけで。


USTREAMで、不当逮捕されていた阪南大学の下地准教授の釈放会見を見た。
怖いと思ったのは、「警官も刑事も、原発や放射能のことをろくすっぽ知らない」と聞いたとき。しかも、「過激派と関係しているのか?」などと、70年代どまりの意識レベルで尋問してくるという。
そういう不勉強で世間知らずの者たちが、われわれをいつでも手軽に拘束する権力を持ってしまっている。

僕は今年5月に、福島第一原発事故の拠点であるJヴィレッジまで行ってきた。
僕らの持ち込んだガイガーカウンターが、いずれも高数値を示しているというのに、警備に立っていた若い警官たちは、マスクさえしていなかった。おそらく、放射能が何なのかすら知らないのだろう(警官たちの中には、かわいそうに、関西から派遣されてきた若者もいた)。

「俺の会社が困るから、原発動かせ」と、選挙活動中の山本太郎につめ寄っていた商社マンなんて、まだマシなほう。大部分の原発容認の一般人は、いま動いている原発の数すら知らない。
原子力規制委員会は、電力会社の報告を鵜呑みにせず、昨日29日まで、現地調査をつづけていた。委員会の働きで、いくつかの原発は廃炉の可能性が出てきている。――でも、「原発は絶対必要」と信じている人たちは、そんなこと知らない、調べない。知っても何もしない。ボーッと生きている普通の人たちが「原発絶対必要」と思い込んでいる。
だから、自民党のオヤジどもが調子こくわけ!

(C) 2005Universal Studios. All Rights Reserved.

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2012年12月28日 (金)

■1228■

本日納品予定の原稿が、昨日の早朝に出来てしまった。
今夜は大手出版社のパーティに呼ばれているのだが、地元の友だち2人と、ささやかな忘年会を開くことにした。


ムービープラスで、クリント・イーストウッド監督&主演の『トゥルー・クライム』。
159317view001このジイさんは、まるで今までの人生を贖罪するかのように、弱者を救う映画を撮りつづけている。この映画では、冤罪で死刑寸前の黒人青年を救おうと、奔走する。

そして、彼が黒人の家庭を救えば救うほど、彼自身の家庭は崩れていってしまう。獲得すればするほど、失っていく――その辛さを、思いきって受け入れるイーストウッド、なかなか潔い。
彼が最後に親近感を持つのは、ホームレスの黒人である。

この映画について調べていたら、「※ストーリーの結末が記載されていることがあります。ご注意ください。」と書かれていたのだが、いったい何に注意すればいいの?
テストの答え合わせしてるんじゃないんだが。


原発事故当時、三陸沖に派遣されていた原子力空母ロナルド・レーガンの乗組員8名が、「福島第1原発事故の影響が正確に伝えられず被曝し、健康被害を受けた」として、東電に94億円の損害賠償を求める訴えを起こした()。
「放射能は安全だ」「風評被害だ」と、事実をうやむやにする日本人は見習った方がいい。

先日、僕の自宅マンションから出た3,000Bq/kgの汚泥。「私の責任だ」とか気取ったこと言って放射線の飛びかう場所に寝起きしてないで、コンクリに遮蔽された場所に移動しました。
来年早々、もう少し広い地域で検体を集め、測定してもらおうと思います。

あ、「放射能は安全だ。それぐらいでビビるな」という方、僕の家の3,000Bq/kgも平気ですよね? 差し上げますので、可愛がってあげてください。


高校の野球部員が、路線バス内で障害者の男性に嫌がらせ、その様子を撮影してネットに投稿()。
ま、高校球児のモラルなんて、この程度のものですよ。

で、高校球児は「大人」「老人」に守られているし、支配されてもいる。日本高等学校野球連盟とか、日本学生野球協会とかさ。こういう組織の偉い人は、元・政治家か元・官僚です。
……単純に、体制とつながりのある高校生なんて、気味が悪いよね。で、こういう身体頑健な若者たちが、弱者を公共の場で差別して楽しんでいる。「オイコラ」と、通行人をいつでも拘束できる警察官と変わらないよ。

(C) Warner Bros. Entertainment Inc.

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2012年12月26日 (水)

■1226■

本日夕方から、年内最後の取材。「忙しい」という言葉は使いたくないけど、仕事納めに向かうバタバタした雰囲気は、嫌いじゃない。


以前から気になっていた、古本屋でも買い取ってくれない本を、古紙回収に出すことにした。
Caal1x8m買ってはみたものの、1ページも読んでいない本は、ご縁がなかったものとして、あきらめる。自分の生涯は、もう残りわずかなものと考えているけど、最後まで本棚に残しておきたい本は、ほんの数冊じゃないかな。『不死テクノロジー』とか『脳の中の幽霊』といったルポルタージュは、自分の世界を切り広げてくれた。

趣味だけで選んでいると、意外な本には出会えない。特に、カッコつけで若い頃に覚えた趣味は、さっさと捨ててしまった方がいい。
見てくれの趣味に耽溺していると、オッサンになってから「さて、何を読めばいいのだろう?」と、はたと困ることになる。読みたい本がなくなると、自動的に勉強から遠ざかってしまう。
趣味だけに生きてはいけない。人間は、快楽だけで生きていると、堕落するように出来ている。


この2日ほど、寝たり起きたり、半醒半睡しながら見た映画。

『エリン・ブロコビッチ』…何回見ても、女性の偉大さを感じる。
『バイオハザードII アポカリプス』『バイオハザードV リトリビューション』…「ミラ・ジョボヴィッチの服が透けているのではないか?」程度の、瑣末な興味で見せつづけるテクニックが素晴らしい。
『英国王のスピーチ』…複葉機のプラモデルを組み立てるシーンだけ、何度も見てしまう。
『プラネット・テラー in グラインドハウス』…タランティーノが、これ見よがしに出演しなければ最高だったのにね。
『ドラゴン・タトゥーの女』…僕が見たのは、ハリウッド・リメイク版だったのか。ちょっとショックだ。
『シリアナ』…中東の石油利権を描いた映画で、ちょっと難解だけど、こういう映画も必要。食べ物の描写ひとつ取っても、馬鹿にできない。
『リトル・ミス・サンシャイン』…アカデミー賞をもらうほどの脚本ではないが、どこか郷愁をさそう作風。

映画のレビューに、わざわざ「※ネタバレ注意」と書く人は、いったい何を怖れているのだろう? あるいは、何を知っているというのだろう? 相手の見たことのない映画を「あれ? どうして見てないの? すっごい面白いのに!」と大げさに言う人がいるが、あれと同じ類いの優越感か?

エンターテイメントを採点するな。規制もするな。見た人間の主体性に委ねよ。


無理すれば一晩でおわる仕事でも、「3日ください」と言っておく。
無理しなければ、落ち着いて仕事ができる。編集者は「3日」というバッファを想定して、他の仕事ができる。読者は、時間をかけた丁寧な記事を読むことが出来る。

「一秒でも早く上げてください!」なんていうのは、どこかでサボったヤツの尻拭いをさせられているだけであって、仕事とは呼ばない。第一、読者に失礼だ。

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2012年12月24日 (月)

■1224■

クリスマスに書くのも、気のひける話ですが……日暮里放射能測定所「にっこり館」()で、自宅ベランダの汚泥を測ってもらいました。
Ca3cg0wj結果は、2,991.9Bq/kgです。東京都三鷹市、三鷹駅近くのマンション9階。
ほぼ、3,000Bq/kgの汚染と考えていいでしょう。これが、どのくらいヤバい数字なのかというと、2009年の東京都新宿区の土壌汚染が、1.5Bq/kgだったそうです。もう、ケタが違います。
ちなみに、同年の汚染度を調べてみると、鹿児島県指宿市が0.43Bq/kgとなっています。こういう数値が出るのは、過去の核実験の影響だそうです。
(原発事故前でも、日本国内の食品は多少、汚染されていた。ただ、現在の数値とは比較にならないほど低かった。)


「にっこり館」へ一緒に行った友人は、自宅マンション裏の土、フィルターで濾過した水道水、岩手県のお米などを測ってもらっていました。これらは、ほぼ検出限界値以下。
身のまわりが心配な人は、「にっこり館」は格安なので、あれこれ測ってもらうといいでしょう。汚染度の高い東京に、あえて残っている誠意ある放射能測定施設、つぶれて欲しくないので、多めにカンパしておきました。

さて、僕の自宅マンションから出てしまった汚染泥……具体的には、土埃や雨水、枯葉などが堆積したもの。これは、自宅に持ち帰り、玄関に密閉して置いてあります。うちに子供がいたら、どこか手の届かない場所に置いたと思います。放射線を出しているからといって、その辺に捨ててしまうのでは、東電や日本政府と同レベルになってしまう。
僕は、この汚染された泥と暮らしていく。それが、原発事故後に生きのびた僕の、責任の取り方のひとつだと信じる。


だけど、子供たちは関係ないし、このルールを友だちに押し付けるつもりもない。
それでも、首都圏で暮らす以上、風の強い日には使い捨てマスクをして、手はしっかり洗ってほしいなと、心から思う。今後、数十年は、都会のあちこちに放射性物質が残ったままだろうから。

原発を止めたままにしておくのはもちろんだけど、廃炉にしたところで、放射性物質が消えてなくなるわけではない。原発事故が起きたのに、食品にまぎれこんだ放射性物質を許容している日本人ごときに、何万年も放射性物質を管理していく能力はない。覚悟もなければ、システムもない。だから、「安全だ」と自らをだます。

結局、「自分が死んだあとなら、世界なんて滅んでいい」と考えているニヒリストばかりの国なのだと思う。
一体、どこで間違えたんだろうな。
自宅の近くに、線路をくぐる地下歩道があって、そこにはいつでもゴミが投棄されているんだ。だけど、僕ら三鷹市民は市に税金を払って、ゴミの処理をしてもらっている。三鷹市に「税金を払わず、勝手にゴミを捨てているヤツがいますよ」と連絡したら、その地下歩道から、市がゴミを回収するようになってしまった。これでは、不法投棄しているヤツの思うつぼで、まったく解決になっていない。なので、今度は「ゴミを捨てないで下さい」と貼り紙すれば?と提案。すると、三鷹市は「あの地下歩道は、三鷹市と東京都、両方に所有権がある。三鷹市の判断だけでは、貼り紙はできない」と言い訳してきた。
こうやって、問題の本質をそらして努力も工夫もしない公務員、「誰も見ていなければ」と公道にゴミを捨てて平気な国民が、一致団結して汚らしい風景をつくっているわけだ。

放射性物質をバラまかれても「OKOK、安全安全!」と目をそらし、自らついたウソを信じこんだまま、安らかに死んでいく――。だったら、俺は真実を口にして、そのために銃殺される道を選ぶね。

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2012年12月22日 (土)

■1222■

月刊モデルグラフィックス 2013年2月号 25日発売
Mg
●廣田恵介の組まず語り症候群 第2夜
今回のサブタイトルは、「俺はプラスチック原理主義者 エッチングパーツに怯える夜もある」。編集者に考えてもらったのですが、なかなかの名調子。内容も、確かにプラスチックとエッチングパーツのことを語っているので、バッチリです。

しかし、今回は結婚時代と大学4年のころの恋愛話をさらけ出すハメになってしまいました。
ウソつきの多いこの時代、せめてこの連載だけはウソをつかずに、健全に恥をかきながら、精進していきたいと思います。


「チダイズム~毎日セシウムを検査するブログ~」のちだいさんが、自民党に批判的な態度をとっているせいで、ネット右翼に「半島に帰れ!」と罵られているらしい()。
ちだいさんのことだから、半分は冗談なんだろうけど、「自民党の政策に反対しているのは、どうせ在日韓国人・朝鮮人」と言い捨てる、幼稚なロジックが展開しているようで、これはちょっと笑えない。

何でも「あいつ、在日だろ」「どうせ、チョンだろ」と考えることで、発言している当人たちは「俺は最底辺ではない」「俺の下には、在日外国人という底辺がいるのだ」と、慰められるのだろう。
だけど、「同じ日本の中に、味方の顔をした敵が混じっているぞ」という考えは、「誰でも、いつでも、理由なく逮捕してやる」と息巻いている警察の背中を押すことになる。
実際、脱原発デモやガレキ焼却反対のネット中継を見ていると「逮捕しちまえよ」「銃殺しちゃえよ」とコメントを書くヤツがいるからね。

気に食わない相手、とくに政府のやり方に意義をとなえている相手を「日本人に見えるが、実は外国人」と考えることは、権力側にとって、あまりにも都合がいい。
いちばん権力から見捨てられている若年層が、権力の片棒を担いでしまっているわけだ。


2ちゃんねるに、誰かが麻薬取り引きの書き込みをして、それを削除しなかっただけで、創設者が(管理人と見なされて)、書類送検されてしまった。→
どう考えても、書き込んだヤツを逮捕するのがスジだろうに、なぜか「削除しなかった」側に犯罪幇助という罪を着せてしまった。……これ、やりようによっては、誰でも逮捕可能だよね。

警察のターゲットは、別に脱原発やデモ活動だけじゃないってこと。

4人もの無実の市民が誤認逮捕されてしまった遠隔操作ウィルス事件。あの事件の捜査のため、警視庁がFacebookに介入。→
自民党は、来年夏の参院選までに、ネット投票を実現させたいという。怖い。胸騒ぎがする。


今週は、二人の方から、母に花を贈っていただいた。
Calejx0r生は有限だが、死は永遠に継続する。それは気が遠くなるような、だけど、何だかホッとする感覚だ。


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2012年12月20日 (木)

■1220■

3年ぶりに、ジブリ美術館へ。
Ca9usd4s最初に訪れたのは、角川書店「千尋と不思議の町」の取材で、オープン前の壁はピカピカだった。今は、いい感じに薄汚れてきている。

まずは、短編アニメ『ちゅうずもう』(監督:山下明彦)が良かった。
正直、これまで見てきたジブリ美術館の短編は、どれも長すぎてイマイチだった。『ちゅうずもう』は語りすぎず、でも必要な描写は濃厚で、バランス感覚が素晴らしい。相撲中継のアングルを、うまいこと拝借している俗っぽさも、好感が持てた。

だけど、作画の良さが強く出ている作品を見れば見るほど、職人だけがつくれる伝統芸だなあ……と感じてしまう。


企画展示「挿絵が僕らにくれたもの」、これも良かった。やはりジブリ作品そのものをテーマにするより、周辺や奥底にあるものを取り上げたほうが意義深い。
とはいえ、「一般の人に、アニメーションの構造を理解させる」という意味では、この美術館には、限界を感じている。塗り分け途中のセルを展示してあるので、「絵の具を手で塗ってるのか」と誤解する人が大半だろうと思う。撮影台が置いてあると、いまだにフィルムで撮っているのかと勘違いされかねない。
「デジタル制作アニメの最前線」展でもやれば、バランスがとれるかも知れない。

とにかく、普通の人は「工程」に興味をもってくれない。
完成したフィルムは喜んで見るのに、つくられた過程が説明してある部分は、スルーする。自分から掘り下げず、知ろうともせず、黙って座っていれば、綺麗なご馳走が運ばれてくると思っている。
テレビの見すぎなのだろう。


「年間を通して、30億円超えのアニメが5本となるのは2010年に次ぐが、スタジオジブリの作品がない年に、5本も登場したのは、ここ10年では今年のみ。」(【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.109】
興行サイドからすれば、「何だ、ジブリなくても大丈夫じゃん!」という時代がやってきた。健全なことだと思う。

アニメから、性的な思春期的な要素、メカヲタ的な要素を無くしたら、かなり気味の悪いものになる。「お前、こんなの見てんの?」「お前ら、犯罪者予備軍だな」「社会不適応者だな」と、どこかで後ろ指さされつづけるから、存在意義がある。
その一方で、「いやいや、やはり萌えなど脱却して、一般の人に見てもらえる作品を目指すべきだ」と綱引きするから、雑多なエネルギーが生じるのだと思う。


『中二病でも恋がしたい!』が終わった。
与えられた現実と、与えられた肉体を、どう刷り合わせたら傷つかずに生きられるのか? 生まれてくる時代は選べないし、いま与えられた状況の中で、何とかするしかないんだよね。日本に生まれたら、とりあえずは日本語を喋るしかない。普遍的な高校生像も、普遍的なオッサン像もなくて、いま信じている価値観なんて、半分以上は時代によって、力づくで決定されているわけであって。

時代に飼いならされるのではなく、いかにして抗うか。「世界を革命する力」は、常に必要なのだ。

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2012年12月18日 (火)

■1218■

テレビ東京が、今回の選挙について、とても痛快な番組を放映したらしいね()。
「世襲候補」とか「組織票」の実数とか、ばんばん明らかにして、この国の民主主義のイカサマぶりを暴露してくれた。ようするに、親や親戚が国会議員のヤツは、よほどのことがないかぎり当選する仕組み。自民・公明は、遺族会だの薬剤師会だのトラック協会だの動員して、万単位の組織票が見込めるので、議席がとれるに決まっている、と。

こんな茶番劇に付き合わされてだな、シャア・アズナブルが連邦政府の本部に、フィフス・ルナを落とした気持ちが、よく分かろうってもんだよ。

ところが、国会議員を皆殺しにしても、まだまだ代わりがいるというゾンビ映画みたいな世界なのだと、今回の選挙でよく分かった気がする。


20代と70代の有権者数のパーセンテージは、ほぼ同数であり、よく「若い人が選挙に行けば、結果は変わった」と言われるけど、何の得もない茶番に参加したまえなどと、俺の口からは言いがたい。
そもそも、現状が不満な若者なら、勝手に動くだろう。彼らを、僕らが勝手に「不幸」だと決めつけすぎない方がいい。「放射脳」「放射脳」とママさんたちを挑発し、景気よく「原発をどんどん動かせ」と主張しているのは、むしろ若い人たちではないだろうか――?

僕は、80年代を懐かしいとは思わないのだが、自分の若い頃を不幸だったとは思いたくない。それなりに楽しかったよ、と思いたい。
それは、今の人たちも同じだろう。史上最悪の原発事故が起きたとしても、防護服なしでフクイチの建屋に入り込まない限り、即死することはない。
汚染食材がどれだけ流通しようと、食べて即死はあり得ない。土壌汚染は関東にまで広がっているけど、地面に素っ裸で寝そべったとしても、即死するわけではない。
――だったら、何でも食べるし、何も怖れることはない。「今までどおり、貧しくとも楽しく暮らしたい」と考えるのは、それほど異常なことだろうか?

原発は、大飯原発の3号機と4号機しか動いていない。なのに、停電で誰かが死んだという話は聞かない。ちゃんと、今までどおりに暮らせている。
「だったら、脱原発デモとか、よけいなことすんな!」となる。彼らがデモを嫌うのは、自分たちのささやかな暮らしを、危機的だなんて思いたくないからだ。


刹那的というなら、80年代の若者だって「この好景気は、あと20年はつづく」と真顔で言っていたフリーターの友達はいたし、十分に刹那的だった。
みんなよく、「おいしいバイト、ない?」という話をしていた。これといった根拠もなく、「会社をつくろう」と盛り上がっているヤツらも、大勢いた。
六本木や赤坂に、テレビやレコードで大金を稼いで、アイドルをつまみ食いしている「ギョーカイ人」がいて、その仲間入りができれば、人生の半分は成功と、僕でさえ信じていた。

……今の若い人にとっては、ちっとも魅力的な話ではないんじゃない?
だけど、俺ら40代が集まると、「あの頃に青春時代を送れて、ラッキーだったよね」という話になる。誰だって、自分の若い頃が最高だったと思いたいのさ。
「今の若者たちは、かわいそうだよ」「これから、苦労するんだよ」と指さされたら、当時の俺は怒っただろう。

だから、「若い人が選挙に来れば……」なんて、責任転嫁しちゃいけないんだ。それは弱い者いじめだよ。むしろ、頭カチカチの頑迷固陋なジジイどもが、俺らの敵のはず。
しょせん、勝手に世界を救いたいと思っている、俺らの戦いじゃないですか。若者から「オッサン、余計なことすんな!」と石なげられても、やるんだよ。


明日は、ジブリ美術館でデートだし、年内の仕事もいっぱい残っているし、なるべく普通のブログに戻すけどね。今日あたりから、ようやく笑顔が出るようになったよ。

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2012年12月17日 (月)

■1217■

深夜、いつもは政治の話など嫌がる友だちから、メールがあった。
楽観的な彼が不安そうにしているからには、今回の選挙結果は、よほどヤバイのであろう。

秋田市では、職員が寝坊したため、朝7時に並んでいた有権者たちが投票できずに、帰ってしまった。
「投票の受け付けは20時まで」が常識だと思っていたのだが、多くの投票所が、節電や経費削減を理由に、早々と投票を打ち切ってしまった。
しかし、いざ選挙結果を知ると、違法に違いないトラブルやサボタージュまで、微笑ましく感じられるほどだ。


海外では、貧困層が右傾化するのは、そう珍しいことではないという。
若い世代が、改憲を公約に入れた自民党に投票したことも、考慮したほうがいい。心細いものほど、強い力に憧れる。差別もする。何も持たない彼らは、孤立を怖れている。

アニメ作品に韓国料理が出てきただけで、アマゾンのレビュー欄に憂国のコメントを書き込む若者たちを、「アホか」と笑いとばす気にはなれない。美少女キャラクターのアイコンを使いながら、「脱原発の連中なんて、警察が銃殺すればいい」とコメントしていた彼、あれは本気だったのだと思うほかない。

実際に、大阪で関西電力へのデモ参加者から、逮捕者が出た。その逮捕を不当だと抗議していた大学の准教授も、逮捕された。彼らは、投票すらできなかった。
「脱原発なんて警察がぶっ殺せ」という状況は、もはや限りなく現実に近いものとなった。

しつこく、9月に起きたこと()を引き合いに出すが、警察官は、本当に、蚊を叩きつぶすような目をしている。あのとき、彼は銃を腰にさげていたのだ。
普通に道を歩いているだけで、僕らは自由を奪われる。そこへ来て、原発推進の政党が政権をとってしまった。彼らは、早くも憲法改正の手続きを始めている。


僕が、「なんだか、これは良くない状況ではないか」と不安になるのは、原発の話をしているときではない。アニメやプラモデルなど、取るに足らないかに思われる趣味の話を、友人としているときだ。
例えば、人気のあるアニメ作品のファンが集まっても、議論にならない。黙って何度も見に行くか、最初から話題にすら出さないか、どちらか。みんな、意見や好みを戦わせないのだという。
せっかく趣味の世界なのに、お互いを監視しあっているかのようなムードらしい。なんだか、今回の選挙に通じるものがある。

「いやいや、政治とアニメやプラモの話は別でしょう」と考えるから、分かりづらくなる。
自由であるかに思える趣味の世界にすら、「うかつな発言で、場の空気を乱してはいけない」「へたに、自分の意見など口にすべきではない」というムードが漂っている。それが、いちばん怖い。
そんな不安も作用して、今年は、トークイベントなどで積極的に登壇した。「喋ってはいけないことなど無い」と、証明したかった。いきなり、街頭で意見を叫ぶ自由すら、僕らにはある。
数十分でいい、数十人に向けてでいい、窮屈な自粛ムードをキャンセルしたかった。

『マイマイ新子と千年の魔法』の署名活動、『ぼくのエリ 200歳の少女』で配給会社や映倫に質問を送ったこと、すべて根は同じ。表現は自由であって、ありのままの姿で、万人に公開されているべき……と信じたからだ。


僕が、この国を捨てられないと思うのは、アニメーション文化があるからだ。
いまの仕事をつづけているのは、アニメーションの構造の素晴らしさ、作り手たちの真摯さを伝えられるからだ。
その自由が消滅したとき、僕は本当に、母国と自分の生命の両方を見限るだろう。

文化は、果てしのない沃野であり、僕らには、それを満喫する権利がある。
人の心は、何を愛するのも、何を想像するのも、かぎりなく自由だ。なのに、同性愛者を「マイノリティで、気の毒」と蔑んだ死にぞこないの老人が、また国政に参加してしまった。

"Same thing we always do. Fight them until we can't."(今までと同じ。不可能になるまで、戦うだけよ)。僕の大好きな『ギャラクティカ』のセリフです。

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2012年12月15日 (土)

■1215■

横須賀に、軍港めぐりに行ってきた。
Cimg0283ジョージ・ワシントンに近づいたとき、小さなタグボートが一艇、僕たちの乗る遊覧船に近づいてきた。どうやら併走しているようだ。「もしかして、不審な客がいないように監視しているの?」と友だちに話しかけたとき、タグボートは急旋回して、空母のほうへ戻っていった。
ジョージ・ワシントンは機密が満載なので、市民からも見えない位置に停泊しているという。だから、遊覧船にもタグボートが張り付いていたのだな。こういう演出をアニメでやれば、どれだけ世界観の重厚さが増すだろう?

磁気機雷を受けつけぬよう、木材で造られた掃海艇……センス・オブ・ワンダーだ。筒井康隆Cimg0297 の戦争SF小説『馬の首風雲録』に、木造の宇宙船が出てきたのを、思い出す。

こういうのは、頭のネジを緩めて、「おっ、スゲエな」と楽しむのがコツ。「戦争反対だから、軍艦は嫌いです」というのは、ネジのゆるめ方を知らない人という気がする。


つづいて、記念艦・三笠へ。
Cimg0314この主砲一発で、お台場のガンダムは粉々にできるな。それぐらいの説得力を感じた。
百年前の艦でもあるし、三笠はもう、ファンタジーの世界だ。「こういうアナログな兵器観を生かせたのは、宮崎駿だけだったね」と友だちに話しかけたら、近くで『ラピュタ』のマーチがかかっていた。

しかし、三笠は全体に湿っぽい雰囲気だった。すぐ隣に小学校があったんだけど、どうしてあんな四角いコンクリの塊なんだろう? 小学校の校舎ぐらい、創造的なデザインにすべきと思うんだが。


「自民党が徴兵制を導入しようとしてるのは、デマだ!」と、今ごろになって、ネット右翼の方々が騒ぎ出しているという。そりゃあ、兵役に行くのは、若い君たちだからなあ。
というわけで、明日は選挙です。
選挙に行かない人に、「行け」とは言いません。選挙の結果だけは、万人に等しく降りかかってくるのだから。


「ガンヘッドの全体像が、分かりづらい」という声があったので、全身の写真をUPします。
Dsc_1241_2足元には、歩兵バージョンのバイオドロイドが2体。ガンヘッドも、特徴である頭部チェーンガンを外してしまったので、代わりに右腕をガトリング砲に。
一応、映画の世界観や元デザインへのリスペクトは、残したつもり。

巨大ロボット映画といえば、この『Pacific Rim』は大期待!→
狙いの明確なカメラワークで、巨大感をうまく出している。海上に二体のロボットが着水して、奥のロボットが足を滑らせているカットが好き。センスがいい。


12月15日、本日は亡くなった母の誕生日。
クリーム色のウィンター・ローズを買ってきた。クリスマスが近いせいなのか、花屋はとても混んでいて、なんだか嬉しかった。

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2012年12月13日 (木)

■1213■

輪廻のラグランジェ season 2 第4巻 21日発売
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●ブックレット作成
今回は、修正前のレイアウトを大きめに掲載しました。
レイアウトというのは、とにかく最初に描く絵なので、線がダイナミックか、あるいは修正を前提としてラフすぎるか、どちらかであるような気がします。今回は、生き生きとした線だったので、「原画よりはコッチだな」と、レイアウトを大きく、作監修正は載せなくていいか……と。(というか、レイアウトがいいと、作監修正は少ない。)

インタビューは、色彩設計の関本美津子さん。『マクロス7』を担当された方です!


本日も、クソッタレな話をします。
都知事候補の宇都宮けんじさんの法定ビラを配っていた70歳男性が、三鷹市内の団地で、逮捕されました。ネットを検索しまくると、団地の住人がビラがポストに投函されるのを待って、110番に通報。警官が10人も押し寄せ、男性は「住居侵入罪」で逮捕。住人が肩の痛みを訴えて「傷害容疑」で送検。

市内の話とあっては黙ってられないので、三鷹警察署に電話した。
「ああ、新聞に出てたねえ」と、応対に出た署員はタメ口です。警察はいつも、市民に対してタメ口(あえて、担当者の名前は伏せますが)。

僕は「ピザ屋がビラをポストに投函しても、逮捕される可能性があるんでしょうか?」と、署員に聞いた。逮捕されるんだそうです。
例えば、僕は自宅マンションで、何度かビラを配っている人に出くわしたことがありますが、三鷹警察によると「その場で押さえててくれれば、現行犯逮捕しますよ」とのこと。
ただし、新聞配達員は、管理組合が承認しているだろうから、見逃してもらえる。だから、ビラ配りのバイトの人なんかは、要注意です。

先日の阪南大学の准教授の逮捕とは、わけが違います。
「選挙のビラだから逮捕されたんじゃないか?」と思ったら、ピザ屋のビラでも、不動産屋のチラシでも逮捕可能なんです。いま、「関係者以外の立ち入り禁止」と書かれているマンションが、ほとんどでしょ。だから、友だちのマンションに遊びに行ったら、隣人に通報されるかも知れない。
いつ誰が捕まっても、不思議ではない時代がやってきました。

この70歳男性は、3日間勾留されたのち、釈放。家宅捜査、二時間半と聞きます。
このブログを読んでいる、特に友人・知人の皆さん。何の予告もなく、このブログが10日間更新されなかったら、僕は逮捕されたと思ってください。本気です。


うちのマンションにも、宇都宮けんじ候補のビラが入っていました。
Capahmmh東京都知事選挙法定ビラですが、(公職選挙法により)宇都宮さんの名前や顔写真は入っていません。70歳男性が配っていたのも、同じものではないかな。

阪南大学の准教授は、原発とガレキ処理と不当逮捕に抗議していた。
宇都宮けんじ候補は、脱原発、護憲、都内でのガレキ処理凍結を公約。
なんだか、そういう関係の人ばかり捕まるな? 何でだろうな? 

霞ヶ関に行くとさ、すべての建物にガードマンが立ってるんだよ。仕事で取材に行くと、大きなビルに入るのに、承認キーが必要なんだよ。
みんなでどんどん、風通しを悪くしていったのさ。みんなでどんどん、権力をのさばらせていったのさ。みんなでどんどん、「あれは言うな」「これは書くな」と世界をつまらなくしていったのさ。


毎日、こんな話題ばかりで、すんません。
Cimg0247ガンヘッドですが、タミヤ戦車のポリキャタピラに、コトブキヤの弾丸パーツを貼りつけた弾帯を接着して、とりあえず完成。
レンタルで『リアル・スティール』を見ていたら、もう、オリジナルのロボを何体でも作ってみたくなりますね。

明日14日は、横須賀へ軍艦を見に行きます。記念艦・三笠の中に入るつもりですが、不法侵入で捕まったりして……。

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2012年12月11日 (火)

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ガンヘッド、とりあえず本体は完成。
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あとはバイオドロイド兵と展示ベースを塗装して、きちんとした環境で写真を撮りたい。製作期間、一ヶ月ってとこでしょうか。
Cimg0241車体後部には、タミヤ製のキャタピラを、何枚か垂らしてあります。これで防弾効果が出るかは別として、せっかくの1/35ですから。
キャタピラなどのマテリアル・パーツもデカールも別売りしているし、通販でも買えるし、プラモデルを楽しむには、本当に素晴らしい時代になった!

しかし、素組みだけでも十分に楽しめ(変形もできる)、「塗装を楽しんでくれ」という言わんばかりの様々なディテールが満載で、本当にいいキットだった。
人生の残り時間、80年代に作りそびれたキットたちを、数体は作れるんじゃないかなあ……というか、すでに次のネタに取りかかっているのですが。

にしても、仕事は他人に向けてやることだけど、趣味は自分のためだよね。だから、背徳感がピタリと貼りついている気がする。


敦賀原発、廃炉の可能性濃厚。原発はもう、施設として長く持たない。
だけど、普通に知り合いレベルの人と話すと、いまだに「原発なくて、電気どうするんですか?」という声を、たまに聞く(笑)。全国の原発の数も、いま動いている原発の数すら知らない。まして、今年5月~7月、日本中の原発が全停止したことなど、知るわけがない。

阪南大学の准教授が、がれき広域処理の反対デモで、逮捕された。
この先生は、大阪市のがれき説明会、関電デモの不当逮捕抗議などでの演説を、USTREAMで拝見し、ひそかに尊敬していた。
僕も、9月にあんな不愉快なこと()が起きなければ、警察の味方をしかねなかった。だけど、警官は市民の自由を、好きなだけ奪えるのだと知ってしまった。

大阪までは支援に行けないので、せめてカンパしようかと思う。


山本太郎については、たいして好感をもっていなくて、たまたま立ち寄った荻窪駅前で、街頭演説を聞いた程度だった。しかし、高円寺駅前での街頭演説をYoutubeで見て、目頭が熱くなった。
昨年4月10日、都知事選のあとで高円寺の反原発デモに参加したんだけど、あのときの気持ちに、ちょっとだけ戻ることが出来た。

いや、正確に言うなら、4月のデモ以降、東電前、経産省前、官邸前、文科省前、経団連前の抗議活動、そして、地元の三鷹・吉祥寺デモに参加してきた一年半分の徒労感、あちこち迷走してきた自分の行動が、ほんの一ミリぐらいは肯定された気がしたのだ。
俺は山本太郎に投票できないし、センチメントでしかないのだが……なにひとつ、達成できてないからね。


もうじき、母が殺されて二年になる。
犯人は、国内のとある刑務所にいるはずだが、僕は今でも、あの男が帰ってきて、再びナイフで母を刺そうとする夢を見る。

「原発しかない」「徴兵制しかない」などの政治家の声は、母を刺し殺した犯人の言動に、ピタリと重なって聞こえる。
犯人は、とにかく新しい提案に耳を貸さない男であった。飼い犬の具合が悪くなったとき、近所の犬猫病院が引っ越してしまっていた。僕は電話帳で調べ、タクシーに乗せて行けばすぐの病院を探し当てた。ところが、犯人は「どうやって連れてくんだ、そんな遠く?」と、大げさに目を丸くしていた。
ようするに、面倒なのだ。変化が嫌いなのだ。人間のオスは、老いると「他にどうしょうもない」と道を閉ざしていく。人間のオスは、劣等種なのだ。
「殺すしかない」と母をメッタ刺しにした犯人、「原発を動かすしかない」「増税以外の道はない」と視野狭窄に陥る政治家、まったく同じ。新しい価値観を導入するメモリ容量がない、バックアップもない。だから、「また自民党に戻すしかない」となる。

早ければ、30半ばで頭カチカチ、都合が悪くなると怒鳴る、若者に説教して謝らせるのが日課……と、早くも「キレる老人」と化す場合もある。
まだ間に合う人たちは、気をつけて欲しい。原発推進したがるのは、男ばかりだもんね。劣等種である証拠です。

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2012年12月 8日 (土)

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月刊アニメージュ 2013年一月号 10日発売
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●3DCGアニメの現在・現場と未来
短期集中連載で、今月号は、サンジゲンの松浦裕暁さんインタビュー。『009』の話題だけでなく、主に今後の展望を聞いています。
松浦さんも、「頭のいい人は、饒舌」説を裏づけてくれた。話すことで、頭の中を整理してるんだよね。迷ったら、まず人に話してみるといいかも知れない。「考えるために話し、話すために人に会う」。そういう相手がいる人生は、豊かだ。


アニメでは最近、『中二病でも恋がしたい!』の恋愛ボルテージがすごい。見ていて、つらUntitledいぐらい。恋愛描写の合間合間に、ゆるいギャグでも入らないと、息もつけない。涙が出てしまった。「甘い」でも「切ない」でもなく、生々しすぎてつらい。
なぜなら、段取りを踏んでいないから。描写がむき出しなんだろうな。頬を染めてモジモジする演出より、「好きだ」とストレートに発する声優の声の、どれほど暴力的なことか。
第7話までは、くどいまでに段取りを踏みつづけていたと思う。第8話から第10話にかけて、ちょっとずつハシゴを外されていき、今やうっかりすると、足場がなくなっている感じ。

物語の形態を、ぎりぎり維持するために、脇役たちがささやかなギャグを展開し、テーマを掲示し、ストーリーを推し進めているように見える。主役の2人だけになったら、たちまち作品が崩壊しそうな危うさ――これを第1話から、虎視眈々と狙っていたとすれば、おそろしいスタッフだと思う。

「美はただ乱調にある。階調は偽りである。」という、大杉栄の言葉を思い出した。


僕からすれば、「そら見ろ」って話なんだけど……厚生労働省は、食品の放射能測定をちゃんとやっていないね。今ごろになって、「昨年は混乱の中、手当たり次第に調べたが、実際には手が回っていない食品も多かった」と言い出した。→
普通の仕事で「がんばったけど、実は出来ていませんでした」なんて公言したら、職を失うでしょう? だけど、こと放射能、原発関連では「ダメでした」で許されてしまう。大人が後だしジャンケンばかりやっているのに、子どもに「ウソをつくな」なんて言えない。

もしかすると、「後だしジャンケンをやらないと、メシを食えない大人」が増えているのではないか――? だけど、そういう仕事を僕は許せないから、産地偽装業者にクレームをつけるし、原発をつづけたい大人たちを殴りたいと思う。

普通に善良な大人が、普通に後だしジャンケンをやっているとしたら、そんな状況を許してはならない。


ひさびさに、吉祥寺の町へ出てみた。徒歩ではなく、電車で。

かつてユザワヤのあったビルは取り壊されて、何か新しいビルを建築中だった。そのため、電車を使う人たちは、強制的に迂回して、エスカレーターを使わされている。誰も、文句は言わない。黙って、エスカレーターに乗るしかない。
『いのちの食べかた』に出てくる、屠殺場の家畜の列に加わったような気分だった。

(C)虎虎/京都アニメーション/中二病でも製作委員会

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2012年12月 6日 (木)

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Febri Vol.14 10日発売
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●渋キャラオヤジ列伝 第七回
誌面がリニューアルされても、この連載はつづくんですね。今後もやるみたいです。
『エウレカセブンAO』のクリストフ・ブランを取り上げて、語っています。

連載以外では、『エウレカAO』の前半ストーリーまとめを書きました。「必殺武器を撃つと、世界が変わってしまう」という設定は、すごくSF的で好きでした。
最近、平行世界モノが多くなったような気がするのですが、これは「キャラの同一性さえ保っていれば、どんな物語にも乗り換え可能」という、アニメ(というよりキャラ絵)の本質に根ざしている気がします。


「塗装は時間をかけて、手をかけただけ深みが出るんですよ。人生の貴重な時間を割いてこんなことやるんだから、そりゃいいものができるわけよ。(略) 何度も塗料瓶を倒すようになったら、今日の体力は終了だからもう寝なさい。」
……『横山宏Ma.K.モデリングブック』より。模型趣味のことというより、仕事の作法みたいでしょ。あらゆる仕事、「人生の貴重な時間を割いて」って思いながらやれば、丁寧になるでしょう。 「急げ、急げ」では、深みのある仕事はできません。時間に対して、謙虚にならないと。

そして、「眠いけど、今晩中に終わらせなきゃ」と無理をすれば、結局はミスが頻発するだけです。無理せず寝て、翌朝、クリーンな頭で再開すれば、見ちがえるほど綺麗な仕事になります。

「もう大変です、忙しいっす、時間ないっす」とアタフタするのを「カッコいい仕事」と信じている人が、いまだ大半なのは憂慮すべき事態です。
ピシッとスマートに終わらせて、「一日、ヒマになったぞ。本屋に行って、映画でも見るか!」と出かける気持ちよさを知っている人は、もう地獄の進軍に戻りたくはないでしょ。文化的に生きてない人間に、文化的な仕事ができるわけがない。


「スケジュールに余裕をください」と言うと、「甘えるな」と思われるかも知れないけど、僕は言いつづけます。


16日、選挙ですね。東京の人は、衆院選だけでなく、都知事選もありますね。
去年4月、老害・石原慎太郎が都知事に当選した日、僕は「もう選挙なんかやっても無駄」と書いたと思う。その後、デモや抗議活動に参加して「この議員は落とそう」という人がいても、そもそも選挙で趨勢を変える発想そのものが古いぜ、と断じてきた。だから、こうして街頭で叫んでるんじゃないの?って。

だけど、選挙権を手放そうとは思わない。死にぞこないのジジイたちの好きなようには、させたくない。今の社会は、ジジイたちをより長く生存させるのに都合よく出来ているけど、若者に有利な社会を残そう。
だって、若い人は選挙に行かないだろう。日曜日は、デートや交友に使って、人生の豊かさを満喫してほしい。ある程度の歳にならないと、「社会に還元する」実感はわかないだろうしね。

社会に生かしてもらっているから、社会をより良くしなけりゃいけないんだぜ。
「俺は猪瀬直樹に入れる」とかいうのは、知的でクールに決めたい自分のためであってさ。「何も変わらんぜ」とニヒリストぶるのは、非力な自分に酔っているからだろう? 特に、変化に適応できない中年男は、ニヒルになりがちだ。

俺は弁護士なんて大嫌いだけど、宇都宮けんじさんに入れるぜ。俺だけの票じゃないからな。

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2012年12月 2日 (日)

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アニメージュNEXT 2013 WINTER 4日発売
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●『てーきゅう』素材全部載せ
板垣伸監督インタビューのほか、第4話のレイアウト・動画・撮影指示などを全カット分、10ページにわたってカラーで掲載しました。

『てーきゅう』は、この本の企画段階で編集者に教えてもらって、テレビで見てビックリした。一言でいうと、カッコイイんです。たった二分間でも、監督が動画からカメラワークまで律儀にコントロールして、十分すぎる密度を持たせて、パンチラとか、サービスカットも入れている。
枚数を使えば、アニメのクオリティが上がるほど、甘くはない。『てーきゅう』見る人は、カメラの動きを見てほしい。完全な一枚絵でも、すごい勢いでトラックバックさせて、こちらの視点を誘導することで、「動き」を生じさせている。横PANし終わった瞬間に、ギャグのオチが来るとか、ひとつひとつ論理的なんです。そういうカットは、カメラワークの指定をコマ単位でやるんだけど、そこまで監督がやっているからね。

もっと言うと、付けPANの目盛りとか、そこまで指定してこそ作画なんじゃない? 俺には、そう思えてきたよ。描き送りで、たっぷりの動画枚数で、好きなように動かすのが優れた、恵まれた作画なの? 一枚絵をカメラで回転させるのは作画ではないのか? 『てーきゅう』は、そこまで問いかけてくるよ。

この本に掲載した第4話でも、オプチカルでやったら失敗必至の、めんどくさい撮影やってるからね。じっくり読んでいただきたいですね。


ジャパニーズ・オタク・カルチャーの作品発表の場であり、ツイッターのように交流もできるサイト「WONDER !」に登録しました。→
といっても、作品鑑賞のためであって、私のプラモデルをアップしたりはしないと思います。

Facebookの「いいね」ボタンに相当する「LIKE IT !」を押すと、自分のページに気に入った作品をコレクションできます。プラモや完成品フィギュアだけでなく、イラストやコスプレしている人の写真もあります。GIFアニメもある。作っている人でなくとも、「こんなの集めてます」的に、コレクションを紹介している人もいます。
ただ、まだまだ登録している人が少ないですね。外国人が多いのは、面白いけどな。

トップページには、まったく自分の好みから外れたコスプレ写真も流れてくるけど、ようは、僕はアレもコレもひっくるめて、この文化が好き。
より正確に言うと、オタク・カルチャーを構成している、無名の人たちが好き。


先日、市販のリベットを貼ったガンヘッドの頭部をデジカメで撮ったら、キットの凹モールドからズレまくっていて、ショックを受けた。かなりの老眼ですな。
Ca9dkcug百均でルーペを買ってきて、ガンヘッドの横に置くフィギュアを、ちょっとイジっては確認、と(この程度なら、仕事の合間にやれるので)。

この兵士たちは、アメリカ現用歩兵ではあるけど、頭部は戦車兵のものに交換。さらにマテリアルパーツで巨大な「目」を貼り、バイオドロイドっぽくしています。反乱を起こす前のバイオドロイドは、兵士としても使われていたハズ……これを横に並べたら、『ガンヘッド』の模型っぽくなるかな。

しかし、「丸一週間、取材も原稿も休んで、プラモデルだけ作っていたい!」という危険な欲望が、趣味というものには巣食っていると思う。
家で仕事しているということは、オフィスにプラモデルが常備してあるようなもんですから。
少なくとも、「吉祥寺のヨドバシに塗料を買いに行きたいから、今日中に仕事を一段落させるぞ!」とか、そういうことは考えるようになってしまった。


「忙しい」って、「懐かしい」と同じぐらい、嫌いな言葉で。僕、昔の作品を「懐かしい」なんて言わないし、自分の仕事の状態を「忙しい」とも言いたくない。
でも、先週は、駅の周囲で買い物したら、即座に家に戻ってメシを炊いて、夕方でも明け方でも、目が覚めたら、とりあえず何かしら原稿を書く生活だった。
付き合いの長い編集者が相手だから、そんな無茶なスケジュールも飲み込んだわけであって。

明日、何をやるのか(一日中、遊びに行くことも含めて)決められないかぎり、「仕事が自分の手の中にある」とは言えないです。
仕事は、スケジューリングが8割。その8割が自由にならないようなら、豊かな仕事なんて出来るわけがない。

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