« ■1215■ | トップページ | ■1218■ »

2012年12月17日 (月)

■1217■

深夜、いつもは政治の話など嫌がる友だちから、メールがあった。
楽観的な彼が不安そうにしているからには、今回の選挙結果は、よほどヤバイのであろう。

秋田市では、職員が寝坊したため、朝7時に並んでいた有権者たちが投票できずに、帰ってしまった。
「投票の受け付けは20時まで」が常識だと思っていたのだが、多くの投票所が、節電や経費削減を理由に、早々と投票を打ち切ってしまった。
しかし、いざ選挙結果を知ると、違法に違いないトラブルやサボタージュまで、微笑ましく感じられるほどだ。


海外では、貧困層が右傾化するのは、そう珍しいことではないという。
若い世代が、改憲を公約に入れた自民党に投票したことも、考慮したほうがいい。心細いものほど、強い力に憧れる。差別もする。何も持たない彼らは、孤立を怖れている。

アニメ作品に韓国料理が出てきただけで、アマゾンのレビュー欄に憂国のコメントを書き込む若者たちを、「アホか」と笑いとばす気にはなれない。美少女キャラクターのアイコンを使いながら、「脱原発の連中なんて、警察が銃殺すればいい」とコメントしていた彼、あれは本気だったのだと思うほかない。

実際に、大阪で関西電力へのデモ参加者から、逮捕者が出た。その逮捕を不当だと抗議していた大学の准教授も、逮捕された。彼らは、投票すらできなかった。
「脱原発なんて警察がぶっ殺せ」という状況は、もはや限りなく現実に近いものとなった。

しつこく、9月に起きたこと()を引き合いに出すが、警察官は、本当に、蚊を叩きつぶすような目をしている。あのとき、彼は銃を腰にさげていたのだ。
普通に道を歩いているだけで、僕らは自由を奪われる。そこへ来て、原発推進の政党が政権をとってしまった。彼らは、早くも憲法改正の手続きを始めている。


僕が、「なんだか、これは良くない状況ではないか」と不安になるのは、原発の話をしているときではない。アニメやプラモデルなど、取るに足らないかに思われる趣味の話を、友人としているときだ。
例えば、人気のあるアニメ作品のファンが集まっても、議論にならない。黙って何度も見に行くか、最初から話題にすら出さないか、どちらか。みんな、意見や好みを戦わせないのだという。
せっかく趣味の世界なのに、お互いを監視しあっているかのようなムードらしい。なんだか、今回の選挙に通じるものがある。

「いやいや、政治とアニメやプラモの話は別でしょう」と考えるから、分かりづらくなる。
自由であるかに思える趣味の世界にすら、「うかつな発言で、場の空気を乱してはいけない」「へたに、自分の意見など口にすべきではない」というムードが漂っている。それが、いちばん怖い。
そんな不安も作用して、今年は、トークイベントなどで積極的に登壇した。「喋ってはいけないことなど無い」と、証明したかった。いきなり、街頭で意見を叫ぶ自由すら、僕らにはある。
数十分でいい、数十人に向けてでいい、窮屈な自粛ムードをキャンセルしたかった。

『マイマイ新子と千年の魔法』の署名活動、『ぼくのエリ 200歳の少女』で配給会社や映倫に質問を送ったこと、すべて根は同じ。表現は自由であって、ありのままの姿で、万人に公開されているべき……と信じたからだ。


僕が、この国を捨てられないと思うのは、アニメーション文化があるからだ。
いまの仕事をつづけているのは、アニメーションの構造の素晴らしさ、作り手たちの真摯さを伝えられるからだ。
その自由が消滅したとき、僕は本当に、母国と自分の生命の両方を見限るだろう。

文化は、果てしのない沃野であり、僕らには、それを満喫する権利がある。
人の心は、何を愛するのも、何を想像するのも、かぎりなく自由だ。なのに、同性愛者を「マイノリティで、気の毒」と蔑んだ死にぞこないの老人が、また国政に参加してしまった。

"Same thing we always do. Fight them until we can't."(今までと同じ。不可能になるまで、戦うだけよ)。僕の大好きな『ギャラクティカ』のセリフです。

|

« ■1215■ | トップページ | ■1218■ »

コメント

>自由であるかに思える趣味の世界にすら、「うかつな発言で、場の空気を乱してはいけない」「へたに、自分の意見など口にすべきではない」というムードが漂っている。

そおかあ、趣味の世界なのにね〜
私も毎日顔を会わせる人に対して言えない「大事なこと」が、たまに会う友人には何でも言えるのは、まさに「うかつな発言で、場の空気を乱してはいけない」なんだよね。怖いというかね...いやだね〜そんな自分。

投稿: ごんちゃん | 2012年12月17日 (月) 16時23分

■ごんちゃん様
そういう「衝突を避ける空気」こそが、ある種の人々に、都合よく利用されてますよ、という話です。
自分がいやだとか、そんな次元の話ではありません。

投稿: 廣田恵介 | 2012年12月17日 (月) 16時44分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■1217■:

« ■1215■ | トップページ | ■1218■ »