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日航ジャンボ機事故を題材にした『クライマーズ・ハイ』、邦画も実際の事故をベースに敷くと、日本で撮る意味が増す。
他には、『路上のソリスト』、『アメリカを斬る』などを見ている。
アニメでは『エウレカセブンAO』が、どんどん面白くなっていった。
ラスト2話は、11月に放映と聞く。いまや、「待たされること」自体がイベントである。『魔法少女まどか☆マギカ』は、アクシデント的に放映が伸びたが、それを「待つ」期間はエキサイティングだった。
つまりは、「毎週のテレビ放映」という予定調和を壊したほうが作品にとっても、プラスに働くのではないだろうか? 「日本中どこでも、同時刻に見られる」パブリックさは、もはや優位ではなくなっている。「何年たっても、同じものが見られる」パッケージ(特にテレビアニメ)が売れなくなったのは、「今度、いつどこで見られるのか分からない」「あの日、あの場所でないと見られない」イベント性に、まったくフィットしないからだ。
聖地巡礼も、「お茶の間で、毎週の放映を待ちつづけるだけ」のテレビの都合に合わせられるルーティンから、離脱する楽しみだったはず。(ゆえに、製作サイドがあれこれ用意するものであってはならない)
何でも東京に集まっている必要はないし、中央集権はつまらないと、ファンは気づきはじめている。
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『エウレカセブンAO』に話を戻すと、小見川千明の演じるエレナが痛々しくて、良かった。
自分を、この世界の人間ではないと信じ、その実存的孤立感から組織を裏切る過程は、とても切実に感じられる。
つまり、彼女は現実感の喪失がこわい。だから、アニメのセリフで自分を守り、アニメ的な行動で、自分をその場につなぎとめようとする。――そんな精神病理を、ピンク髪の「アニメ・キャラ」に演じさせるのは、白々しくもあり、尖ってもいる。
実は、部分部分で、アニメのあり方は先端を行っている。現実から遊離したキャラクターだからこそ、僕らの心に宿る病巣に肉迫できるのだ。
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先週は、『俺の艦長』の仕上げに専念しながら、細かい打ち合わせやインタビューが入って、スケジュール調整が大変だった。
ある方の「独占インタビュー」と聞いて出かけていったのに、僕らの後ろで、競合誌が順番待ちをしていた。これでは、独占じゃなくなってしまう。
記事がバッティングしないように調整するのが、版元の役目だろうに、僕らは「たいした記事は書くまい」と、足元を見られたのかも知れない。
だけど、「絶対に負けない」という自信がある。
インタビューする相手が雑談っぽく「○○って映画があったでしょ?」と言ったとき、その映画のタイトルだけを知っているのか、ちゃんと見たことがあるか、何歳のときに見たのか、どんな興味をもって見たのか? 見た後、どんな記憶として残っているのか? その体験と感覚だけは、僕のオリジナルだから、話の返し方も、僕のオリジナルになる。他人と同じルートは、決して通らない。
「お仕事」として、狭い知識に特化してインタビューしている人には、絶対に負けないという自信がある。
――逆を言うと、狭い範囲でのお話に終始したほうが、取材が上手くいく場合がある。「お仕事」に徹さないと、取材相手が戸惑ってしまうことだってある。そういう場合は、やんわりとお断りするようにしている(声優さんのインタビューは、なるべく請けないとか)。
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その辺の話は、実はテクニックとして還元可能なのだが、聞いてありがたがる人が少ない。
つまり、プロのライターとして、原稿料だけで食っていこうとする人が少ない。だから、僕のようなピークを過ぎたオッサンに、いまだに仕事が回ってくる。
(C)2012 BONES/Project EUREKA AO・MBS
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コメント
ご無沙汰してます。こちらではハヂメマシテ。
でも、声優さんからすると、廣田さんみたいなインタビュアーを求めている(人もいる、少なくとも)と思いますよ。
声優さんのCDを聴いてライブにも行ってラジオも聞いて……っていう「よく理解されている」方がインタビューに臨まれることが多いご時世だと思いますが、「アニメを知っている」人と話すほうが楽しそうだ、という声優さんもいらっしゃいます。
だって、あちらの仕事は「アニメ」なわけですからね。「趣味がアニメ」な一般人も、そりゃあ詳しくは語れるかもしれませんが、「仕事がアニメ」って人のほうが骨太な内容を語れるはずです。四六時中考えているのはアニメのことであり、アフレコのことなんでしょうから。話す内容もたくさんあることでしょう。なら、歌やイベントについて聞くよりお仕事について聞いたほうが“イイ”話が聞けると思います。
ただ、声優さん側ではなく読者側からすると、そんな話よりライブやラジオの話のほうが聞きたいのかもしれませんし、となると編集もそっちの話を載せたいでしょうけど。
拙文を長々と失礼いたしました。
『俺の艦長』、期待しています。
投稿: 清水耕司 | 2012年10月12日 (金) 10時28分
■清水耕司さま
ご無沙汰しています。
声優さんにインタビューする場合は、「このタイトルを売っていきたいから」というパブリシティであることが、圧倒的に多いですよね。
そんな中でも、「あのシーンの声は、どういうテクニックで出すんですか?」と聞いても「テクニックというより、とにかく一生懸命でした!」「キャラになり切って、自然に演じました!」と返されることが、ほとんとです。
その時点で、「もういいや……」と萎えてしまいます。
>四六時中考えているのはアニメのことであり、アフレコのことなんでしょうから。話す内容もたくさんあることでしょう。
売れっ子の声優さんが、休憩時間に台本を読んでいるところを、ちょっとだけ見たことがあります。
すると、ペンでびっしりと書き込みがある。単純に、何が書いてあるのか見たいですよね。「思い」なんてものより「声優という仕事」を見たいじゃないですか。
「アニメのメイキング」の一工程として、アフレコという仕事を捉えたいのです。
だけど、清水さんが仰るように、そういうニーズが読者サイドにないですし、何より事務所がウルサイ。「可愛く親しみやすく」を押しつけてくる。
ニーズがないところで、僕だけ意欲を燃やしても、誰も嬉しくないですから、声優さんインタビューは、基本的にお断りしています。声優さんサイドが求めてこないかぎり、成立しないでしょうね。
>『俺の艦長』、期待しています。
ありがとうございます。
お待たせしていますが、来月下旬までお待ちください。
投稿: 廣田恵介 | 2012年10月12日 (金) 11時46分