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『伏 鉄砲娘の捕物帳』を見てきた。パンフとシールを買ってしまった。ムックが出そうもないなら、買うしかないでしょう(シールは、色指定を流用したものらしい)。
最初の10分ほどは、「えーっ、この絵を2時間も見るの?」という気分。フォルムはぐにゃぐにゃしているし、カゲはついてない。枚数がかかっているのかも知れないけど、キャラが良くないとか、最初の10分は、もう不満しかなかった。
モブキャラを、あえてグロテスクに描いてるのも、「流行には迎合しない」姿勢が露骨すぎるんではないか……などなど。
僕が思っていたのは、「せめてヒロインは可愛く!」 だって、『チキチキマシン猛レース』だって、ミルクちゃんが出ていたから、欠かさず見ていたのであって、最後にアニメを救うのは、ヒロインだと思う。『伏』のヒロインは、浜路というんだけど、最初はポニーテールで短パンみたいなものを履いている。色気がない。「ちょっと、足がぶっといんじゃないの?」と思っていたんだけど、ふと、「こういう、ぶっとい足が好みの男子もいるかもな……」と想像したあたりから、脳内補正がかかっていった。
浜路は、男装させられたり、かと思うと、桜色のきれいな着物をプレゼントされたり、最後には、その着物姿で、ぶっとい足を丸出しにして走るからね。女っぽい着物から、たくましいフトモモを出して走る姿は、そりゃあ可愛い、カッコいいです。
その頃には、もう「この絵がいいんだよ」「この絵じゃなきゃイヤなんだ」「もっと見ていたい!」とノリノリになっていたんだから、人間、わからないものだよね。
クライマックスでは、浜路が素足(つま先)でふんばるところが、素晴らしい。作画もグーだった。
あと、(あまり書きたくないんだけど)ずっと束ねていた髪がほどけて、爆風でパッと広がるところ。そのカットは、男装までさせられた浜路が、乙女になる瞬間だからね。絵がドラマを語っている。
何より、色っぽいカットだった。
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もうひとりのヒロインとしては、下ぶくれの眼鏡っ子、冥土ちゃんも良かった。総じて、女性キャラが肉感的。坂本真綾さんが声をアテているメシづくりの上手いお姉ちゃんも、ムチムチしていたし……ただ、いずれも様式化された「可愛さ」からは逸脱しているので、脳内補正をかけているうちに、「いや最高だな!」と、こちらが洗脳されていく感じ。
映画を見ているうちに、新しいレセプターが出来ていくというか。
でも、クライマックスのバトルにかけて、映像がパワーアップしていったのは確かだと思う。3DCGのエフェクトも効果を上げていたし、カットも「これ以外の絵は入らない」というぐらい、カッチリと決まっていく。
「あ、セリフが粋なんだな」と気がついたり、絵に慣れようとすればするほど、いい点が見えてくる。「俺は、これは好きじゃないな」と、早々と結論を出さないことだね。
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いま、シネコン中心に『009 RE:CYBORG』がヒットしているけど、同時期にテアトル新宿で『伏』をやっているのは、ちょっと象徴的な気がする。手描きメインのアニメ映画は、こうやって、マイナー化していくのかも知れない。
『おおかみこどもの雨と雪』も、デジタルで仕上げたことが決め手だったし、特に手描きであることにこだわっていたわけではない――いや、それこそ、結論を急ぎすぎないほうがいいか。
ともかく、小奇麗な深夜アニメには飽きたという人、もっと個性的な商業アニメを見たいという人は、映画館で浜路のフトモモに、大興奮してきてほしい。
見た後に、不思議な開放感が広がるよ。
(C)桜庭一樹・文藝春秋/2012映画「伏」製作委員会
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