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2012年9月29日 (土)

■0929■

一迅社にて、マチ★アソビ「アニメの単行本をつくるのはこんなに大変? 『俺の艦長』出版直前トークショー!」()の打ち合わせ。
Untitledゲストは、「キャラ☆メル Febri」の小此木編集長代理。ライター、作家を目指す人、自分の本を出してみたい人は、聞きにくると生の情報が得られるはず。10/8 10:30~ 眉山山頂パゴダ広場にて。

異色のアニメ人生読本『俺の艦長』は、「あとがき」も書いたので、これから本にしていく作業。10月下旬発売(Amazonでは、まだ9月下旬になっていますが、発売は10月下旬です)。


取材、打ち合わせがあいつぐ中、本日はお知り合いの出演している演劇に、誘われる。
歯に衣きせず言うと、「演劇をやることが目的の演劇」。そういうループに陥っている。客席で立ち上がって、「いますぐ、そんなつまんない脚本を捨てて、本当にやりたいことをやれよ!」と、怒鳴りそうになった。

いまの日本では、「苦労して練習してお芝居をやっているのに、入場料を払って文句を言うなんて、とんでもない」って話になるんだろう。でも、寺山修司のエッセイを読むと、観客が自由に参加できる芝居さえあったんだよ。

アマチュア演劇って、普段はアルバイトで食べている普通の人たちが、何もないステージに上がれるわけで、「舞台装置をつくって、衣装を着て、起承転結のある台本を用意すべし」なんて決まりは、どこにもないはず。
なのに、「演劇」という固定観念に、自ら篭城してしまっている……プロにはなれないけど、プロの様式をトレースして、チケットを売って、どうにか満席にして、劇団のグッズをつくって……だけど、プロになれるわけじゃない。プロになるのが目的ではない。
そういう人たちのための閉じられた文化が、いつの間にか出来てしまっている。


その帰り道、同行した友人と、過去に見た演劇の話をした。
アマチュアだろうと何だろうと、舞台装置も衣装も、台本すら用意しない演劇は、たくさん見てきた。別に実験をやろうというわけではなく、きれいな女優もいるし、ダンスやギャグで楽しませてくれる。完全に自由。

アゴラ劇場で出会った劇団ツベルクリンの、何回目の芝居だっただろう?
前半は、着ぐるみを使ったギャグを連発しておきながら、後半では、客席とステージとが赤いセロファンで区切られる。その奥には、さっきまで着ぐるみを着て踊っていた、ひとりの女優が座っている。
彼女は、古い記憶をたどるように、物語のような、詩のような言葉を口にしはじめる。やがて、架空の物語は、女優本人の記憶と重なっていくように感じられる――その場に、「人がいる」って、そういうことなんだよ。

スーツを着た男性が、ただ客席に向かって、えんえんと学生時代の思い出話をするだけの芝居もあった。テレビ的ではない、生身の面白さがあった。
僕は市川猿之助や、坂東玉三郎の舞台も見た。彼らが、その場で自分の記憶を語りだしたら、それは客を裏切ることになるだろう。だけど、別のベクトルで、プロの舞台俳優は自由なんだよ。「その場に、彼がいる」ことの空気感が、ありありと伝わってくる。

だけど、つまんない演劇って、「こんなのテレビでやれよ」って感じ。何かを外すにしても、テレビ的な収まり、約束事のなかでやっている。


僕らの世代は、テレビというよりは、ビデオが娯楽の標準だった気がする。
20代のころに、AVがあったというのは、すごく大きかった。AVでも、監督と女優だけしかいないと、最初は「こういう設定でハメ撮りしよう」と決めてあっても、女優が監督のことを好きになってしまったりして、そういうハプニングすら再生可能というのが、エキサイティングだった。だけど、テレビは予想外のことを排除するからね。いまだに、そうでしょ。

僕より若いはずの人たちが、どうしてこんな予定調和を、わざわざ人前でやってるの?と思ってしまった。

20代の終わりごろ、プロダクションに所属している、俳優の卵みたいな人たちと仲良くしていた時期がある。彼らの中に「俳優よりも、歌手になりたい」という子がいた。僕らは、オッサンが集まるような古いバーで飲んでいて、彼女に「歌手になりたいなら、見も知らない観客を振り向かせてみろよ」と、ほこりをかぶったレーザーカラオケを指差した。
そしたら、彼女は勇気を出して、歌いはじめた。観客は拍手喝さい。それから一年か二年して、彼女はCDを出した。

だけど、CDデビューよりも、知らないオッサンたちを振り向かせた瞬間のほうが、少なくとも貴重な体験ではあるよね。
プロになりたくない人たちに「プロになれ」とは言わないけど、演劇だって、声だけでなく、身体ぜんぶ使えるのに、どうして使わないんだろう?と思ってしまう。自分の肉体だけは、究極のオリジナルなのに。

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コメント

>彼女は勇気を出して、歌いはじめた。観客は拍手喝さい。それから一年か二年して、彼女はCDを出した。

もしかして、その子と私会った事あるかな?カラオケにもいったような...?

投稿: ごんちゃん | 2012年9月30日 (日) 17時37分

■ごんちゃん様
その通り、よく覚えてるね。10年以上も前だけど……。

ただ、本人はどう思っているのか分からないので、ここで細かいことは書かないで下さい。よろしく。

投稿: 廣田恵介 | 2012年9月30日 (日) 18時48分

>本人はどう思っているのか分からないので、ここで細かいことは書かないで下さい。よろしく。

勿論だろうな〜って思っていたから。これ以上は書き込みしないよ(/ ^^)/アリガトネ

投稿: ごんちゃん | 2012年10月 1日 (月) 16時13分

■ごんちゃん様
しかし、よく覚えてたな……。

投稿: 廣田恵介 | 2012年10月 1日 (月) 18時12分

>しかし、よく覚えてたな……。

何か印象に残っていたの(o^-^o)

投稿: ごんちゃん | 2012年10月 1日 (月) 19時48分

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