■0805■
以前に見た戦争映画『グリーン・ゾーン』、うっかりレンタルしてしまったので、二回目を見る。既視感のあるシーンの連続だが、ちゃんと次の展開が気になる。これはたいしたものですよ。地獄の戦場とは別世界のような、バクダッドの宮殿で、各国のジャーナリストやCIAの高官たちがくつろいでいる。華やかなプールサイドに迷い込んだ、煤に汚れた兵士が「おいおい、ドミノピザにビールかよ?」と呆然とするシーンが、今回は印象的だった。
地獄オンリーということはなくて、天国とセットなんだよね。しかも、地獄の上位に天国が位置しているわけではなく、同じ場所に同時に存在している。ネガとポジのように、地獄がなければ天国も像を結べない。
そして、天国の正義は地獄から見れば偽善、その逆もある。すべてが同時刻、同じ場所で発生していることを忘れてはいけない。
イラク戦争だけでなく、今の日本を見るとき、そうやって捉えないといけない。
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備忘録的に書いておこう。
中学生ぐらいで読む本って、自分の知識欲だけでは選びとれない気がする。もっとだらしなく……というか、流されるまま、「文」と出会うのではいなだろうか。
僕だったら、模型雑誌「ホビージャパン」を読みふける以外、残りの時間はプラモをつくって過ごしていた。すると、ホビージャパン中の記事ばかりか、それこそ柱に書いてあるような短文でも、頭に刷り込まれてしまう。30年前に読んだ趣味の雑誌が、自分の文章のベーシックを形成しているんだよ。
オッサンになって「よし、勉強しよう」と思って読んだ文章なんか、どれだけラインを引いても頭には残らない。趣味で、習慣で、中学生ぐらいに読んでいた文章だけが、根幹となり得る。
いや、「ホビージャパン」の記事なんて、えらく雑だったし、脈絡もなかったし、当時の流行語は出てきて恥ずかしいし、別に優れていたわけじゃないですよ? でも、中学生の僕にとっては、ほぼ唯一の言語宇宙だった。
(高校になると「宇宙船」が入ってくるんだけど)
だから、どんな雑誌でも、コンビニで売るような本なら尚のこと、なるべく「ちゃんと書こう」と思うんだよ。どこで誰に影響を与えるか、分からないわけだから。キャプションひとつでも、豊かさを感じられるよう、楽しんで書く。
それは後世のためじゃないですか。いまの読者が、これから後の文化をつくっていくんだから、おざなりに出来ないですよ。
僕が死んだ後に生きつづける人以外に、僕は希望を託せない。
「俺様が啓蒙してやろう」って意味じゃなくて、うっかり俺の記事と出会った見知らぬ人に、ちょっとだけ得してもらえたら、この職業についた甲斐もあったというものでしょう。
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そんなことを思ったのは、石井誠さんから著書「マスターグレード ガンプラのイズム」(■)をいただいたから。
一晩で読んで、「さあ、今日はマスターグレードでも買いますか!」と、夕暮れの吉祥寺へ向かったのだが、買ったのは1/1000ヤマト2199版、F-15Cのキットなどであった。
ガンプラでもアニメでも、「俺たちオッサンは、80年代のいちばん良かった頃を知っています」で、閉じたくはないんです。捉われたくもない。
今の時代を生きる子たちに「君たちだって、こんなに恵まれてるんだよ」と祝福してあげる、背中を押してあげるのは、オッサンの勤めだと思うんだよ。
石井さん、初の単著、本当におめでとう。
そして、10月下旬には、オッサン魂を暑苦しく詰め込んだ「俺の艦長」、出ますよ!→■
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コメント
お久しぶりです(誰だっけ?とか言わないで…)
オッサン魂の本は9月27日発売予定って書いてありますが、10月下旬のほうが正しいですか?
もひとつ質問、廣田さんのブログに特撮博物館の記事ってどこかにありますか?
(みつけられなかったんで…)
書く予定なし?
投稿: kyas リン | 2012年8月30日 (木) 17時46分
■kyas リン様
もちろん、覚えてますよ。しかし、こんなブログ、まだ見ていたとは(笑)。
>オッサン魂の本は9月27日発売予定って書いてありますが、10月下旬のほうが正しいですか?
10月下旬です。すみません。ただ、それ以上は絶対に遅れません。
>もひとつ質問、廣田さんのブログに特撮博物館の記事ってどこかにありますか?
まだ行ってないんです。
こんな暑いのに、明らかにオッサンのみが集う場所に、行きたくないじゃないですか(笑)。
行ったら、確実に書くと思いますよ。
投稿: 廣田恵介 | 2012年8月30日 (木) 18時27分
>しかし、こんなブログ、まだ
廣田さんが覚えてくださってるのに私が忘れるわけないじゃないですか〜
と言いつつも、実はあまりの忙しさに(処理能力が低くて気忙しかっただけともいう…)、うんと親しい友人のブログすら読めない状態が数ヶ月続いていて、こちらもしばらくご無沙汰してたんですm(_ _)m
ようやく余裕ができてきたところに、今日の朝刊で「特撮博物館」のことを知ったので、まずはこちらへ(笑)
>明らかにオッサンのみが集う場所
紹介されていたのは、掛川市「現代アート茶会」の芸術プロデューサーの女性でしたよ。
廣田さんが行かれる日に女性もいますように…
じゃなくて、早く涼しくなりますように。
投稿: kyasリン | 2012年8月30日 (木) 19時22分
■kyas リン様
このブログは、2~3年前のほうが、自由に楽しく書いていたと思うんですけどね。原発事故のこともあって、なかなか苦しまぎれなブログになってしまったと思います。
ずっと読んでくれている人は、たぶん20人以下で、残りの読者さんは入れ替わっているんでは……統計がないので、推測ですけど。
>廣田さんが行かれる日に女性もいますように…
ああいうゾーンに女性がいると、それはそれで戸惑いますけどね。
怪獣は、やっぱり男の子のものだと思うので。
投稿: 廣田恵介 | 2012年8月30日 (木) 20時45分