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2012年8月27日 (月)

■0827■

友人と、IMAXシアターで『プロメテウス』。
13歳の頃に見て、おそらくは『スター・ウォーズ』以上にショッキングだった『エイリアン』。それが、ついに一回りしたという、茫洋たるオッサン的感慨に打ちのめされる。
Prom057_large『エイリアン』公開の少し前に創刊された日本版スターログ誌では、ファンタジックな宇宙船のイラストなどが、誌上で通販されていた。
とても手の出る値段ではなかったが、そんな空想的なイラストを描いて暮らしている人がいるなんて、この世界は、なんて素晴らしいんだろうと、うっとり眺めていた。

『プロメテウス』で良かったのは、宇宙船のコクピットで、くたびれたシャツを着たクルーが、コンソールにもたれているカットだ。彼の右手には、コーヒーか何かの入った透明なプラスティック容器がにぎられている。そして、窓の外には、広大な異星の風景――。スターログが販売していたイラストそのままの、ロマンにあふれた「絵」だった。
結局、僕らはスターログに載っていたようなイラストを、可能なかぎり、リアルに見たいと願っていた。それを本当に見られたのかどうかは、ちょっと分からない。
少なくとも、『プロメテウス』がラスト・チャンスだったのは確かだ。

あの頃から30年がたち、世界も映画も、どんどん複雑になっていった。作品のテーマや演出なんて、気にもしたくなかった。夢やロマンをストレートに仕事にできるのが、SFX映画だと、本気で信じていた。

『プロメテウス』の美点は、沃野を目指して旅だって終わるところ。つまり、未完成である。続編があるとかないとか関係なく、「未完成である」。これは非常に重要。完成しない以上、SFX映画への夢は、永遠に消えないわけだから。
(ちなみに、『エイリアン』のテレビ放映時、「理屈も思想もない、ただし、怖くて美しい」と誉めたのは荻 昌弘さんだった。)


スターログ誌は、特集のタイトルもふるっていた。ロビー・ザ・ロボットの特集タイトルは「ロビーよ、お前がSFをダメにした!」 これほど、ロビー・ザ・ロボットへの愛情にあふれたタイトルはないし、嫌でもロビーという名前をおぼえてしまう。

今は、こういうタイトルは「ネガティブだ」と、却下されてしまう。
文化の豊かさは、すごい勢いで刈り取られていった。「すべてが広告にとってかわられてしまった」という気がする。


『プロテウス』を見てから友人と飲んで、夜中2時すぎだというのに、ひとりで吉祥寺までタクシーを飛ばしてしまった。ガールズバーと朝キャバをハシゴ。トイレで吐いてしまった。
そこまでするなんて、自分は幸せじゃないんだな、と思う。

最近は、誰と会っても、気味が悪いほど、似たような話題になる。
皆、それぞれに完成された人間だ。自分に不満があるなら、黙って努力する人たちだ。

20代のころは、金がなくて腐っていた。それでも、誰かしらが酒に誘ってくれた。
結婚していたころは、妻の監視の目があったので、それほど酒は飲まなかった。たまった不満を、ネットにぶつけていたような気がする。
結局、幸せの基準とは、どこまで目盛りを下げるか。どこまで妥協できるか? それに尽きるのかも知れない。ただし、目盛りを下げるには、社会が豊かでなくてはいけない。いまの社会に「余裕がある」とは、とても言えない。

電車の中で、自分の足元に転がってきたぺットボトルを、思い切り蹴飛ばしているジジイがいた。僕は、本当に不愉快になる。誰かに捨てさせるより、自分で拾って捨てた方が、どんなに気分がいいか、知らないまま何十年も生きてきて、知らないまま死んでいくのだ。
こんな社会が、豊かなわけがない。

(C)2012 TWENTIETH CENTURY FOX

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