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2012年7月 7日 (土)

■0707■

オトナアニメ VOL.25  10日発売予定
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●佐藤竜雄監督が『モーレツ宇宙海賊』を振り返る
●小池 健(キャラクターデザイン・作画監督) 『LUPIN the Third -峰不二子という女-』

上記、ふたつの記事のほか、「私が選ぶ旬のクリエイター」みたいな企画で、『坂道のアポロン』『宇宙戦艦ヤマト2199』の結城信輝さんについて、ちょこっと書きました。

佐藤監督は、『キャラ☆メルFebri』につづいて二回目なので、もう少し雑然とした話を。
小池健さんには、キャラ表にカゲ指定がないこと、カゲを斜線で表している意味や工程など、テクニカルな部分を中心に、お聞きした。
(小池健さん自選の作監修正も掲載!)


いろんなアニメ誌(定期刊行物も含む)が、創刊されては消えていった。
本というのは、一冊をつくるのに関わる人数が少ないので、意見を言いやすいし、ケンカする意味もある。議論のすえに獲得したものは、ありありと誌面に反映される。関わっている少数の人間にさえ志があれば、本はいくらでも良くなっていく。

ところが、議論を避け、向上心を捨て、残ったカネのためだけにつくられる本もあった。
その本には“編集部”が存在せず、ライターや編集者がバラバラに企画を持ち寄って、取材先への交渉、取材、ラフ、原稿、すべて一人でやる。中には“編集”と“ライター”が分かれている記事もあった。
どうやら、“編集”に名を連ねるだけで、ギャラがもらえる仕組みらしい。

それに気がついたのは、僕が自分の記事をつくろうと準備しているとき、その本に創刊初期から関わっている女性から、電話があったからだ。
「廣田さんの好きなように記事をつくってもいいので、“編集”の名前だけ、私にくれませんか?」という。まったく意味が分からず、理由を聞く。「私を“編集”にしてくれれば、(その本を発行する)出版社から、カネを巻き上げられるんですよ」。

僕は、その本に書きはじめて間もなかったので、「他の編集者と組んだほうが、新しい発見があるかも」と思い、その女性に、取材先との打ち合わせ日程を伝えた。
ところが、彼女は打ち合わせには来ず、もちろん取材にも立ち会わない。何もせずに、ただカネだけが欲しい、ということのようだった。

そんな人間が中核にいるのは問題だろう、と思った僕は、次の会議から積極的に意見を出すことにした。「次号から、編集者を立ててはどうか?」という真っ当な意見が、他の心ある編集者から出はじめた。
そんな折、僕は出版社に呼び出された。


出版社の担当は、「この本から外れていただきたい」と無表情に言った。
「カネを巻き上げられる」と言っていた女性編集者は、以前にいた出版社の同僚であり、彼女の収入を最優先に守りたいのだ、と担当は理由を話した。

「彼女の編集者としてのレベルは、この辺りなんです」と、担当は手のひらを腰のあたりへ下げた。「彼女に対して、廣田さんのレベルは、これぐらい」、今度は手のひらを頭の上にかざした。
僕は、思わず吹きだした。「だったら、低いところにいる人を上のレベルに引き上げるべきでしょう!」「それは、彼女にとっては酷なんですよ」。
つまり、「同じ出版社の友だちだから、収入を守ってやりたい」とは思っても、「編集者としての向上心を喚起し、ともに良い仕事をしよう」などとは、微塵も考えていないようだった。

僕を排除した後、編集会議で「廣田のヤツ、どんな顔してましたか?」と、笑われていたらしい。
清い水を探そうとせず、濁った水溜りで満足する魚たちもいる――。彼らは、ただ一匹でいることはない。似たような仲間と群れをつくる。群れのほうが安心できるからだ。

ほどなくして、その本は休刊になった。悪は滅びるのだ。しかし、例の編集者は、絵を描いている人向けのポーズ集などをつくって、いまだに出版界にいる。

彼女は「若い読者をだまくらかして、自分にもアニメをつくれるかのように誤解させ、カネをせしめる」とまで言っていた。
そんなことを口に出しても、殴られない環境で育ってきたのだろう。


僕は、実力以外で評価してほしくない。「昔のよしみで」なんて気持ち悪い理由で仕事をもらいたいとは、思わない。
身内への情だけで、仕事を回している大人がいたら、そんな連中に近づいてはいけない。たちまち、毒をうつされる。

顔を上げて、青空を見よう。君の志を、つまらない場所でくさらせるな。

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コメント

先ほど家族で池袋の東武デパートまで行ってきましたが、屋上のイベントスペースにはこんな雨の中長蛇の列。何事かと思いステージのポスターを見ると『~~~~宇宙海賊』の文字。知らないタイトルだったのでそのまますごい人だなぁと思って帰って来て廣田さんのブログを見ると『モーレツ宇宙海賊』のタイトルが。これだ!と解りググるとメインの声優さんのミニコンサート&サイン会だったようです。

廣田さんのブログでアニメの見方がずいぶんと変わりました。どんなアニメにもスタッフが色々と考えて作り上げて行くと行った当たり前の事も解るようになりました。

最近は娘の撮り貯めたまどマギを仕事から帰ってから深夜にじっくりと見ています。以前マミさんの最後についての感想も書きましたが、改めてあのアニメはすごいですね。構図や音の使い方、キャラの表情...とにかく良く作り込んであって受取手の感受性に訴えかけてる気がします。

後アニメの話だけでなく、仕事や生きる事など色々な事をこのブログから学ばせてたいただいています。

投稿: YASS | 2012年7月 7日 (土) 13時31分

■YASS様
“モーパイ”(『モーレツ宇宙海賊』の略)、そんなイベントやっていたんですか。先ほど、別の作品の取材で、監督とお会いしてきました。あいかわらず、知的でタフで、ユーモアを忘れない方でした。
お誕生日の記念写真も撮ってきました。

>どんなアニメにもスタッフが色々と考えて作り上げて行くと行った当たり前の事も解るようになりました。

雑誌もそうですが、メディアに乗った瞬間、現場のザワザワした感じが、なんとなく脱臭されてしまうんです。
一晩ぐらい、アニメの制作スタジオで待たされていると、有名な監督の怒鳴り声が聞こえてきたりして、そういう実体験を、何とか伝えられないかと悩むんです。

>構図や音の使い方、キャラの表情...とにかく良く作り込んであって受取手の感受性に訴えかけてる気がします。

表現として、極限まで洗練されていますよね。
ただ、物語の是非については、人と話すたびに変わります(子ども同士の殺しあう話ですから)。
そこが「表現」と「物語」の違いであって、「表現」の素晴らしさだけは、認めざるを得ないですね。

>後アニメの話だけでなく、~

いえ、YASSさんは家庭をお持ちですし、僕のような独身のオタクの言うことを、そんなに真に受けないでください。

最近は、デモに参加しているせいもあってか、学生たちの前で講義したりするほうが楽しいです。

投稿: 廣田恵介 | 2012年7月 7日 (土) 23時21分

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