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2012年6月29日 (金)

■0629■

吉祥寺カフェゼノンで、プロデューサー、シナリオライターと打ち合わせしてから、東京駅へ。
丸ノ内口から歩いて、経産省前テントまで行く。おおい町へのバスツアーに、申し込むためである。ところが、バスは40人の定員が埋まってしまっていると聞く。
やむなく、おおい町行きは、あきらめる。荷造りしてたんだけど、今回は、しょうがない。

その足で、首相官邸前抗議へ向かった。
Cacy3x12開始一時間前だというのに、交差点付近は、人でいっぱい。
車椅子の方が、「再稼動反対!」と叫び、周囲が声をあわせる。――「いやいや、18時スタートだから、それまで待ちませんか?」と思うのだが、その時すでに、以前とは違う雰囲気が漂っていた。

交差点では、マイクでスピーチが行われるのだが、みんな聞いてない。というか、回りくどいスピーチに耐えかねたように、「再稼動反対!」の声が、あちこちで上がっている。
最初は、「スピーチしている人に失礼だろう?」と思った。しかし、「再稼動反対」という音色は不思議で、どこか麻薬的な常習性があり、僕もいつしか、シュプレヒコールに加わっている。
いくつものグループが、互いにエールを送るように「再稼動反対!」を叫び、それは車道の反対側や、斜向かいからも聞こえてくるのだった。

後から航空写真を見たら、巨大なヒトデのように、人々が首相官邸前の道路を埋め尽くしていた。
何万人かは、知らない。8万人とも、20万人なんて説も出ている。とにかく「いっぱい」。→


すごかったのは、車道が全面開放されて、歩道に押し込められていた参加者が、自由に歩き出してからだ。
Caplhyii前に、友だちとこの抗議活動に出たとき、殺風景な夜の霞ヶ関を歩きながら、「いっそ、ここが無法地帯になって、銃撃戦でも始まらないものかな?」などと、幼稚な妄想を語ったものだった。

銃がない、暴力がないだけで、その妄想は40パーセントぐらい、現実化した。
いつもは20時で終了だが、主催者は事故・事件を危惧して、早めに解散するよう、アナウンスした。
首相官邸側は、警察の車で封鎖されていたので、僕は坂をくだる。――道路の真ん中、輪になって、太鼓を叩きながら「再稼動反対!」を叫ぶグループがいる。
小さな子どもの手を引いて、呆然と立ちつくすお母さん。スケボーの裏に「NO NUKES」と書いて、高く掲げる一団。たったひとり、巨大な旗を掲げて「原発反対!」と叫びながら、僕と逆方向へ歩いていく男。

『AKIRA』のような光景だった。
『AKIRA』の暴徒のように、僕らは未熟だった。「政治」「総理」「国会」なんて、この前まで、どうでもいいと思っていたノンポリの集まりだ。原発の本なんて、一冊も読んだことのないヤツだっているだろう。
僕は、参加者のひとりが食べていたリンゴの芯を、地面から拾って、ゴミ袋に入れた。自分の食べカスを地面に捨ててるようじゃ、放射性物質を、人の田畑に公然とぶちまけた東電さまと変わらないぜ……。

にも関わらず、僕は喧騒のたえない官邸前に腰をおろし、「これでいいんだ」と思っている。
潮騒のような、人々の声。この一年半の無力感、徒労感、怒り。母の死。石黒昇監督の死。開放された車道は見晴らしがよく、心を無防備にさせる。

JR有楽町駅まで、歩く。今は、これでいい。こんな夜でもなきゃ、やっていられない。
幸せじゃなさすぎたもん、この一年半。


昨日、新しい本棚を買った。
Carjt4l4 『ギャラクティカ』のDVDに、ジュアッグの成形色が、映える。

この大きな本棚を買うまで、僕は地震のとき床に落ちた本を、そのまんまにしていた。
「どうとでもなれ」と、心のどこかで思っていたんだろうな。

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2012年6月26日 (火)

■0626■

今週は、週末に取材が一件、入るかどうか?というヒマなスケジュールなので、著書『俺の艦長』執筆に専念しています。
Caxe52ft気分を高めるために、ガンプラは欠かせません。初期のHGUCは、適度に組み立てづらいので、脳も活性化します。
手前にある紙には、バンダイチャンネル月額1000円見放題で視聴した『ガンダムZZ』から、2人の艦長代理のセリフを、メモ書きしてあります。

著者である私にも、『俺の艦長』の告知が「6月下旬」だったことは聞かされておらず、編集者と話し合って、「9月末」に変更したのは、割と最近のことです。
というのも、一冊まるまる書き下ろしなので、時間がかかるんです。その上、出版されるまで一円も入ってきませんから、すぐお金になる、雑誌やムックの仕事を優先せざるをえません。


そもそも、『俺の艦長』は、魂を込めて書いているので、その艦長を心から尊敬できなければ書けません。心の「艦長メーター」が振り切れると、もう台割を無視して、ページ数をオーバーしてでも書けてしまいます。
(エイパー・シナプス艦長なんて、台割に載ってないのに、編集者に相談もせず、ついうっかり書いてしまったほど)

つまりは、「私の尊敬する艦長」について書いているのであって、「アニメに出てくる艦長オールカタログ」みたいな企画ではないです。ただのカタログなら、何も私が書く必要はない。
45歳、就職も離婚も、肉親の死も経験した私だからこそ、魂を込められるのです。あるときは、自分が艦長自身になったかのように語りだし、あるときは、パイロットになった気持ちで艦長を見上げる。「現実とフィクションの区別をつけろ」と言われますが、イヤです。艦長を「実在の人物」として、愛します。
現実と混同しなければ、アニメというフィクションを見る行為は、永遠に空しいよ。諸君、アニメを肉体化せよ! 物語を自分の人生に練りこむのだ!


たとえば、この本の最初の難関は、沖田十三という巨大な人物を、いかにして自分の腕に抱えるか?でした。
私は、古代進に「お前はまだ生きてるんだから、ドーンと死んでこい」と言い放ってしまう『さらば宇宙戦艦ヤマト』の沖田は別人格だと思うので、この本では『さらば』についての記述はありません。古代も、特攻しません。苦悩の末、「生きのびねばならない」と決意する古代のほうが、好きだからです。

「それじゃあ、シリーズを網羅したことにならないよ」と言われそうですが、だから、それはカタログ本を見ればいいのではありませんか? というか、あなたが書けばいい!
「監督の演出意図と外れている」とか「正しいアニメの読み方ではない」とか、そんなこと、どうだっていいんです。そんな難しいこと言ってるから、いつまでもアニメが解放されない。「アニメを見た、感動した」というのは、あなたの人生に起きた事件じゃないですか!

9月下旬発売予定なので、10月の「マチ★アソビ」で、刊行記念トークショウをやります。
編集者にも来るように言っているのですが、返事はありません(笑)。まあ、とにかくトークはやりますよ。朗読もしますよ!


7月1日、大飯原発、再稼動。
それを受けて、おおい町でデモや座り込みが企画されています。→
僕の愛読するブログ「チダイズム」のチダイさんも、行くみたい。

おおい町の広大な公園にテントを張り、現地の人と語り合い、「ひとりになっても大飯原発を止める」と、まるでνガンダムのようなことを言っているナイスな若者、米原幹太氏。→
前にちょっと書いたけど、このような事態においては、ここまでバカをやれる若者が必要だ。と同時に、またもや若者に任せてしまっている自分を、恥ずかしくも感じる……。

少しでも罪悪感のある人は、29日金曜18時、首相官邸前に集まろう。
「紫陽花革命」とか、いかにも東京らしい、軽はずみな名前が広がりつつある(国会でもそう呼ばれているらしい)けど、今は理想を言っている場合ではない。

行動している人間を批判したくなる理由はただひとつ、あなたが行動してないからだ。

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2012年6月24日 (日)

■0624■

月刊ホビージャパン 8月号 明日発売予定
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●ラグランジェ・アンヴェール Vol.3
今回はヴィラジュリオの乗機にスポットを当てて、ページを構成・執筆しました。
そろそろ、デ・メトリオとレ・ガリテ以外の恒星国家の名前が、ちらほらと出てくるので、「オフィッシャル・ガイド」の世界観ページと合わせて読むと、より理解が深まると思います。


先日、別のアニメの打ち合わせの席で、『おおかみこどもの雨と雪』について、熱弁してしまった。
「廣田さんの今のしゃべりを、Youtubeで流せば、それだけで宣伝になります」と言われて、ちょっと嬉しかった。というか、内臓がカッカと熱くなるような映画なんだ。

「生きていくのが、つらい」なんて、死んでも言えなくなりますよ。
つらいからこそ、お母さんは子どもたちを安心させるために、おまじないを考えたり、絵本で教えたりする。
にも関わらず、子どもたちは大きくなって、勝手に考えはじめるし、とりかえしのつかない失敗もする。それらすべて、お母さんだけに背負いきれないですよ。子どもたちも、ちょっとずつ背負うんだよ。それが「大きくなる」ってことなんだよ。

『おおかみこども~』のレビューかなにかで、「聖母のような母親像」と書いてあったけど、そんな空しい言葉で、持ち上げないほうがいい。
もっと、生々しい肉体がある映画。自然描写にしても肉感的だし、ハートもある。誰かを抱きしめたような、抱きしめられたような、熱い映画なんだ。


僕は行けなかったけど、首相官邸前の再稼動反対抗議、先週を大きく上回る人手だったみたい。迫力ある動画。→
主催者発表で4万5千人。先週の1万1千人のときは、「最大で7千人、累計で1万1千人」。これは、現地のアナウンスで聞いた。ネットで「そんなに集まるわけない」と必死な人がいるけど、警察は、デモ開始時の人数しか数えないんだそうです。

僕が3月に、はじめて官邸前抗議に行ったときは、まだ200人程度だった。参加者1,000人をこえた程度で、「おおっ!」とどよめきが起きたものだった。その頃から比べると、「車道ニ車線を開放した」ってだけで、ケタ違いの人数に増加したんだな、と実感できるよ。
200人のころを知っている自分としては、主催者発表が正確な人数かどうかなんて、割とどうでもいい。

デモや抗議活動には「お前、ここまで遊びにきたわけ?」って軽薄なヤツもいるけど、そんな観光客さえ、「これだけの市民が集まりました!」「どんどん増えてます!」って既成事実に加担するわけで、そこがキモだよ。


首相官邸前抗議が報道ステーションで流れたとき、コメンテーターが「原発は安全保障と切り離せない」と言っていたけど、つまるところ、「原発=核武装=国防」。これはもう、原発導入の黎明期から、推進の旗印だった。

ただ、今は感情的に、「怒る」ことが大切だ。
福島の高線量地域で、子どもを育てているお母さんたちは、泣きながら霞ヶ関まで陳情に来たが、政府はそれを無視して再稼動。
福島第一では、いまだに作業員たちが命がけの労働をしているのに、東京では電力会社がボーナスの話をしている。

――俺は、こうまで倫理を欠いた国に、吐き気をおぼえる。
政府だけじゃない、汚染食材に無頓着な食品メーカー、原発とも放射能とも関係ない一般企業にだって、「自分が儲かりさえすれば、消費者が困ってもかまわん」って考えの人間は、いっぱいいるぞ。
今は、泣き、わめき、怒ることこそが絶対必要なのだ。

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2012年6月21日 (木)

■0621■

『輪廻のラグランジェ』オフィッシャルガイド 25日発売予定
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●世界観解説、メカニック解説、ストーリートリビアほか
この本に関しては、いい意味での裏話が、たくさんあります。

マチ★アソビのときに話したように、「ありきたりな、やっつけのムックだったら、あまり関わりたくない」と思っていました。
ところが、出版社も編プロも、僕の話をよく聞いてくれて、ちゃっちゃっと台割を変えて、「とにかくいい本にしよう」と意気込んでくれました。女性編集者が多くて、柔軟性があって、いい仕事をさせてもらいました。
あと、デザイナーさんのセンスが、抜群によかった。どんな無茶ぶりしても、きちんと『ラグランジェ』の世界に落とし込んでくれる。

でも、すべては、1800円はらってくれるファンの方たちが楽しめるかどうか。楽しめなかったら、僕らの仕事は、ゼロからやり直しです。


さて、『おおかみこどもの雨と雪』、マスコミ試写。
Sub1_large以下、具体的なストーリーなどは書きません。
細田守という人は、「脳の表面の、くすぐったいところを撫でるのだけは上手いよな」という印象でした。だったらむしろ、理詰めでエンタテイメントしている『ぼくらのウォーゲーム!』が一番じゃん、とか思ってました。
今回、認識をあらためました。
もう、体ごと、「俺は本気なんだよ!!」と言わんばかりに剛速球を投げてきます。エンディング曲の作詞も、細田監督です。見直しました。今回は、パンツ脱いでます。脱ぎすぎです。


まずは、自然現象のエフェクトに圧倒されます。
だけど、「ここはエフェクトだから、素材を分けて、各部署に発注して……」ではありません。撮影という役職をおかず、最初にデジタル・フロンティア社がシーン全体をつくった、というようなことがプレスシートに書いてありますが、ようは、「ここはキャラ」「ここは背景」と、機械的に切り分けた感じがしない。とにかくまずは「こういう絵をつくるんだ!」という力強い意志があり、そのためには、3Dでも何でも使いたおす、という勢い。

土砂降りの雨とか、「うわー冷たそう!」って思ったし、夕陽だって、きれいな夕陽だけでなくて、痛々しい夕陽だってあるでしょ。もう、そういうの「全部わかってますから」「全部、表現しますから」という感じ。
例えば、雪の中に飛び込んだら、息が白くなるでしょ。それは人間のほうが、体温が高いからですね? その白い息を表現することで、「人間の体って熱いんだよ!」と伝えてくれる。そういう映画です。
自然現象を、美化しすぎない。あるがままの美しさを描く。こりゃあ、手ごわいよ。

だってね、畑仕事をするシークエンスだけでも、かなり長尺なんです。忘れた頃に、畑仕事が出てくる。
野良仕事なんて、あの細田監督が描くのか! しかも、「自然へ帰れ」みたいな思想とか理念ではなく、単に「生きていくために」畑をつくるんです。そういうプロットになっている。詳しくは書かないけど、「細田監督、本気だ!」 それだけは確か。


そりゃあ、歳くったら「お母ちゃんが、どんなにすごいか」を描きたくなるでしょう。でも、なりゆきでつくってないです。精密に考えて、「これ」という表現を狙ってきます。強いです。
2人の子どもたちの生き方にしても、「子どもはこうでなくちゃ」なんて絵に描いた理想は蹴っ飛ばして、「だって、子どもってこうじゃん!」と強靭に主張しながらも、ちゃんと多様性を残して、開放感もしっかり用意されていて……。
こういう映画をつくることこそ、大人の義務。

来月21日公開だから、いま、いろいろ宣伝やってると思います。
でも、予告編すら見る必要ない。『おおかみこどもの雨と雪』というタイトルだけ、しっかり覚えて、あとは映画館へ行くだけです。つまんないコマーシャリズムに回収する必要ない。

そして、「これからも生きていこう」という意志を、自分の体に、しっかりと刻み込んでほしい。そう思います。
映画でもアニメでも、あなた自身のためにあるんだから。ネットで点数つけるためにあるんじゃない、とあらためて思いました。

(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会.

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2012年6月18日 (月)

■0618■

フリーメーソン 血の陰謀 発売中
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●フリーメーソン映画の謎と楽しみ方
思い切り署名記事にされていました。全12ページ、映画6本のレビュー。
本のタイトルが「血の陰謀」ですから、それはもう、陰謀論が大好きな読者さんにあてて書くんです。ラブレターみたいなものです。

もう何年も前、ある編集者が、「コンビニで弁当のついでに買ってこられて、昼休みが終わる頃には、捨てられてしまう本」という言い方をしました。自虐的なようだけど、それは「読者さんの気分、生活に合わせて本をつくりましょう」ということ。
何年も本棚に置いてもらえなくても、暇つぶしに読まれて、「あー面白かった」と、気持ちよく捨てられる本をつくる――とても魅力的だと思いました。
だから、この仕事がきたとき、とても忙しかったけど、何とかスケジュールを合わせて書いたんです。

下品で雑多なことが、文化の力だと思う。


試写会に行く前、立ち食いそば屋に寄った。メガネの片方のレンズが、めんつゆの中に落ちた。いやな予感がしたんだが、案の定。試写会は午前で終わっていた。時間を間違えたのだ。

「さて、どうしよう」と、日比谷の街に立ち尽くすと、検察庁が目に入った。
提出しなければいけない書類があったので、担当者に手渡ししてきた(犯罪被害者の遺族は、いろいろやることが多い)。

三鷹駅前の古いお店で、メガネの修理をしてもらう。
80歳ぐらいの老人が、「どれ、見てみましょう。ネジが弱いのか、それとも……」と作業台に座る。僕はすっかり安心して、店の時計を見つめながら、「もうすぐ三時だ」などと考えている。


日曜日は、「さよなら原発!三鷹アクション」参加。
Cawez9h6正直、「敵」のいない平和な場所で何を叫んでも意味ないのでは?と思いはしたが、自分より若い人、自分より年寄りの人が歩くのに、すぐ近所で部屋に引きこもっている自分が、どうしても許せなかった。
デモを日常化させるためにも、これぐらいはやる。250名といっしょに、喉がかれるまで叫んできた。

首相官邸前の抗議活動は、今後どうなるのだろう。
そろそろ、次のフェイズじゃないか?と、勝手に思っている。抗議に参加した議員たちは「野田総理、考え直してください」みたいな行儀のいい話しかできないし、僕より若いタレントも「新しい党をつくるべき」なんて言っていて、まるで大昔の話に聞こえてしまう。
政党なんてものに頼っている時点で、それは「既存の枠組みの中でしか、物事を考えません」と言っているように聞こえる。

119人もの国会議員たちが、再稼動反対の抗議文に署名したが、役に立たなかった。
瀬戸内寂聴さんが、経産省前でハンストしたが、これも暖簾に腕押しだった。大江健三郎さんの訴えも、無視された。
こんな言い方はしたくないけど、国会議員も高名な文化人も、僕らといっしょにドブに捨てられたんだと思う。この国は、経済をまわす人間以外は、死んでもいいと決めたんだ。

「原発推進議員は、次の選挙で落とせばいい」なんて、牧歌的なことを言ってる場合じゃない。


母は生前、「外国に旅しなさい」とよく言っていた。
彼女は英語が話せたので、観光客が寄りつかないような田舎の町へまで、ひとりでドンドン分け入っていた。歴史にも詳しかった。

母が殺された日、僕は貪欲に80歳ぐらいまで生きよう、と誓った。
二ヵ月後、原発事故がおきた。僕は「たぶん長生きしても60歳だ」と、母の墓前で謝った。それは放射能がどうとかいうより、僕ごときが長生きしても、次の世代の負担になるだけだと思ったからだ。

「ここから抜け出す方法が  何かあるはずだ」 ペテン師が泥棒に言った
混乱だらけで 気も休まらない
商人たちは  俺の酒を飲み 農民たちは 俺の土地を掘り返す
どいつもこいつも それにどんな価値があるのか 分かってもいない

『見張り塔からずっと』は、こんな歌詞だったと思う。

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2012年6月16日 (土)

■0616■

『輪廻のラグランジェ』Blu-ray & DVD 第4巻 6月22日発売
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●ブックレット構成・執筆
この巻に収録されている第7話で、過去をあらいざらい話したムギナミが、打ち解けたかのように見せておいて、やはり一人で立ち去ろうとするシーンが好きです。

ミッキー・ローク主演の『レスラー』という、素晴らしい映画がありますが、「負の因子」みたいなものを抱え込んだ人間は、ふとしたキッカケで、それを加速させられてしまうんですね。
そういう流れを持っているのが、ムギナミだと思う。「属性」なんかでは語れない流動性がある。season 1の最終回で、また負の方向に加速させられて、ひとつところに留まらない危なっかしさが、実にいいよなあと思うんです。


『おおかみこどもの雨と雪』の試写状、もらった。
月曜日に行ってくる。


仕事していると、リスクなんて発生し得ない局面で、リスク回避している人が多いと感じる。
何をそんなに怖がっているんだろう?と考えてみると、ようは、仕事している各人の間に「気まずいムード」が発生するのが、怖いらしい。
だから、責任の所在を曖昧にしたまま、「そういう要望が出ていますので、原稿を直してください」と、主語を隠す。

納得いかない場合、「それは誰の要望ですか?」と聞くようにしている。
だけど、はっきり「Aさんです」とは答える人は、珍しい。Aさんの名前を明かしてしまうと、その後、Aさんと「気まずいムード」になってしまうのではないか。それを怖れている。
きちんと発言者・責任者を明示して、双方向に意見を交わせるようにすれば、「気まずいムード」なんて乗り越えて、先へ進めるだろうに。
「話し合い」=「もめごと」だと思っているらしい。

じゃあ、日本人の望む「気まずくない状態」とは何か? せいぜい、顔をあわせたときに「どーもどーも」と、頭を下げあう程度のことだろう。
意見のぶつかり合いなんかない、誰もが薄笑いで本音を隠している状態を「平和」と呼んでいる。
「ケンカしたことない」って程度の、消極的な、当事者意識のない「和んだ関係」が、みんな大好きなんだ。

――そんな国だから、汚染食材が出回っているなどという「気まずい」ニュースは見なかったことにして、いまだにグルメ番組を放映している。
そんな「平和」を愛する国だから、産地偽装業者がはびこるのも、道理というものだ。

(私が刑事告発した偽装業者・大兼文喜は、一ヶ月の業務停止中。→ 甘い。何度でも告発してやろう。)


昨日15日、首相官邸前抗議へ。
Ca696o2p関西方面に出張していたはずの友人から、「もう野田を許せん、駆けつける」とメール。この日だけで、一万一千人が集まった。

本日午前、大飯原発の再稼動が正式決定。そのニュースを四ッ谷駅の立ち食いそば屋で聞いてから、官邸前まで歩いた。
何百メートルとつづく人の列、背中をつらぬくような怒号。「私たちは、全員、被害者だ!」と、誰かがマイクで悲鳴を上げる。東京にいる以上、誰もが、何らかの形で被曝している。

東京が首都だから、人が集まるのではない。首都でなくなっても、汚染が広がるかぎり、それが抗議の根拠になるのだ。

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2012年6月12日 (火)

■0612■

EX大衆 7月号 15日発売予定
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●機動戦士ガンダム 開発史
他社の「語れ!ガンダム」で、似たようなページを構成したばかりですが、こちらは『F91』や『Vガンダム』まで含め、「宇宙世紀でガンダムと名のついたモビルスーツのみ」の変遷です。

五十嵐浩司さんが、アニメのデザインとして、玩具・ホビーのデザインとしての「ガンダム」について系統的に語っており、かなり説得力があるはず。
なぜなら、「新旧のアニメを広く見ていて、プラモも組み立てる、オモチャも自分で買う」プロのライターが、実は意外に少ないから。


きゃっとさんという方から、メールで、問い合わせをいただきました。
ただ、返信しても戻ってきてしまうので、お返事がわりに、ここに書かせていただきます。

質問は、テレビや映画のクレジットについてでしたね。
ロスアンゼルスに渡って、SFXアニメーターになった有田勝美さんの著書によると、「日本の映画会社は安い金でスタッフを使っているから、特にギャラがタダ同然の若い人なんかはクレジットに名前が載らないと、皆ついてこないんだ」。

なので、クレジットに名前が載っているけど「一円ももらってない」ことは、あるんじゃないでしょうか。日本は、中身を曖昧にしたまま、形だけ整える傾向にあります。

そして、ご質問にあった『リング2』の海外バージョンには、どうして『リング』原作の鈴木光司さんの名前が、クレジットされていないのか?
まず、『リング2』は映画オリジナル・ストーリーなので、鈴木さんの原作が存在しない。契約書に、「原作者でないなら、クレジット表記しない」と書かれていたのでは?という指摘は、そう間違ってないと思います。

私は、『リング2』のプロデューサーである一瀬隆重さんの『修羅雪姫』に「脚本協力」でクレジットされました。
順を追って説明すると、プロットづくりに参加するとき、まず分厚い契約書を読んで、サインします。内容は「アイデアは御社にすべて提供し、著作権は主張しません」という誓約書のようなものです。
ハリウッドで仕事なさっている、一瀬プロデューサーらしい手堅さだと感心したものです。

私は『修羅雪姫』のシーン構成を書いた段階で、抜けさせてもらうことにしました。
一瀬さんは「残念です」と言いながら、ちゃんと所定のギャラを振り込んでくれました。
完成した脚本には、私のアイデアやネーミングも少しは使われてはいましたが、ストーリーはまったく違っていました。


しかし、にも関わらず、「廣田さんの名前も、脚本協力としてクレジットしたい」と電話がありました。
それは契約書になかった事項なので、「おや?」と思った記憶があります。目的は映画の箔付けなのか、お礼の意味なのか、どちらにしても急に日本的な対応になったな、と思いました。

一瀬さんはニュアンスですまさず、「どうしてそういう展開になるんですか?」「この設定は、どうしてこうなっているんですか?」と、要所要所、キチッと聞いてくれる方だったので、なおさら意外な感じがしたものです。

20代のころは、何十社もの映画会社に持ち込みをしましたが、勝手にコピーはとられるわ、「映画界に契約書はない」と断言されるわ、タダで脚本書かされてボツ!とか、まあ漠然と「俺ら若い才能、可能性にかけて映画づくりにチャレンジしているぜ!」という、根拠薄弱・実効性皆無の熱気だけで、その場だけは盛り上がるんですよ。
だから、今でも「一生懸命になれるものがあるって、いいよね!」などと肩を叩かれると、眉をひそめてしまいます。

僕は、結婚の前後だけ、ゲーム会社に在籍していました。
ゲームのテーマも仕様も決まっていないのに、ディレクターを名乗る人物が「みんな、がんばれ!」と、でっかい字で、社内掲示板に書いてるんです。
テーマも目標もないから、「がんばれ!」としか言いようがないわけですよ。


僕は今週末、首相官邸前抗議に行きます。それは、いかにも軽はずみです。
しかし、あの抗議活動には国会議員も参加しはじめたし、メディアも無視できなくなってきている。行く理由は、「再稼動に反対している国民の数を増やして注目度を増す」ことであって、総理の意見を変えさせることではありません。
いま、決定権をもっているのは福井県知事なので、抗議FAXは、そっちに送ります。

脱原発活動をもって、人に好感をもたれようなどと思ってはいけません。
前にも書きましたが、「ずるい」「卑怯な」ことをやっているという自覚ぐらい持っていたほうが、強く戦っていけると思うのです。

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2012年6月11日 (月)

■0611■

ゆえあって、『機動戦士ガンダムUC』EP1~3までを見直す。
Imagescal7xp38いつもはメカシーン中心に見てしまうけど、なかなかどうして、ドラマがどんどん面白くなっていく。すごくいい芝居も、随所にある。

オードリーに、バナージが「やるべきことよりも、やりたいことを大事にしてほしい」という意味のことを言うけど、そりゃあ、逆だろう。
アニメは青年のメディアだし、若いうちは「やりたいこと最優先」でもいいのかも知れないが、オードリーの立場を理解しているとは、とても言えないよね。

その分、マリーダの言っていることが効くんだ。
「この世界には、改善の余地があると思わせてくれる何か」が必要だとかさ。「自分が、すでに状況の一部となっている、ということだけは覚えておけ」とかさ。自ら、行動している者だけが言えるセリフだよね。
このシーンでバナージがハッとして、「俺、青くさいこと言っちゃったなあ」と反省しているかと思いきや、地球へ向かおうとするオードリーに「それは君がやりたいことなのか?」 って、まだ言ってるのかよ!

さすがのオードリーも苦笑して、「バナージ向けの答え」をしていたように見えたのは、気のせいかな。
で、夕食に招いたり、いろいろ勉強させてくれたマリーダに「この分からず屋!」みたいなこと言って、ボコボコにしちゃうところも……まあ、バナージへのツッコミふくめて、楽しむべきですかね。


メカ的には、EP3のアバンタイトル、ハイパーメガ粒子砲をパラオに向けたネェル・アーガマ……の照準線に沿って、ずーっとカメラが移動していくと、たった一機、飛行形態のリゼルがいる! ここが、鳥肌がたつほどカッコいい。偵察機というか斥候というか、巨大な砲の軸線上に、華奢な可変機が、一機だけいる。“戦術”を感じますよね。
さらに、リゼルを追いこしてカメラが進むと、うっすらとパラオが見えてくる――この広大な“戦場”を見渡すために、一機のリゼルが必要なわけです。

ネェル・アーガマがCG、リゼルが作画、というのも心地よいアクセントになっていた。シンメトリの構図のカットに、タイトルをかぶせるセンス、いいよね。


くるりの公式サイト、「逆に、軽はずみな脱原発デモには、参加できない。」→
軽はずみに、決まってるじゃない。311が起きて、急に気がついた人が、圧倒的多数なんだから。
ぜんぜん論理的でもないし、感情に走ってるのは、こちとら分かりきってるの。ガイガーカウンター片手に周章狼狽し、あわてて徒党を組みはじめたのが、僕らだ。笑ってくれて、かまわない。

「こんなデモで、何が変わるんだ」って、歩きながら思った人も、いっぱいいると思うよ。過程であって、目標ではないし、皆が同じ気持ちではないし。沿道から、うさんくさい目で見られる程度のリスクしかないしね。リスクが少ないから、過度な効果も期待できない。
それでも、ジッとしている自分を、憎いと思う瞬間がある。

それと、さっきのバナージくんの話じゃないけど、若くて軽はずみなバカがいなくては、変わらないこともある……。
僕は、かつて望んだような、きれいな死に方はできないと思っている。死に場所を探している。まだまだ、これから生きる人たちの役に立つ死に方はないか、考えている。
「住みやすい世の中になって、よかったね」とは思えずに死ぬんだろうから、何か焦っているとしたら、そっちです。


僕の年上の友人は、「自分が死んだら、映画『ソイレントグリーン』のように、これから生きる人に食べてほしい」と言っている。
あの映画には、自転車をこいで発電機を動かすシーンがあった。自分で使う電気は、自力でつくる。いま思うと、示唆に富んだシーンだ。

(C)創通・サンライズ

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2012年6月 9日 (土)

■0609■

小雨の中、吉祥寺まで歩く。
Ca6erag3今週は、月曜から大酒を飲んだあおりで、木曜・金曜は、原稿にかかりっきりだった。
やっぱり、大学で偉そうに講義しても、目の前の仕事がおろそかになっては恥ずかしい。


さて、野田ブタの記者会見を見るため、ひさびさにNHK総合を見ました。
同じころ、首相官邸前では、4,000人もの人々が抗議活動を行っていました。僕は、原稿がたまっていたので参加しなかったけど、友人は途中から参加したようです。
ビビった政府は、この抗議場所を「半年間、道路工事で閉鎖する」らしい。そのうち、霞ヶ関全域が「道路工事」されるだろうな。

家を動けないときは、FAXで抗議するのが、効率的です。
首相官邸へのFAX攻撃はもちろん、いまや8千数百人の町民の雇用(命ではない)を守るためだけに、関西全域を危険にさらしている偉大なる世界の破壊者・時岡忍町長にもね。
おおい町には逃げ場がないし、向上心も発展する意欲も感じられないし、もう見捨てるしかない。

野田ブタ会見で、かなり見晴らしがよくなりました。
あれだけ、「滋賀県も地元だ」と言いはっていた嘉田知事も、あっさり「早く決めていただかないと経済界などが心配している」。結局、経済なのかよ。どこの自治体の首長も、経済のドレイって感じだよな。
というわけで、滋賀県もさようなら。琵琶湖より、経済優先だそうなので。


何度でも言いましょう。「やはり、これしか道はない」と決断した瞬間、人は袋小路に追い込まれるんです。
大飯原発が事故る・事故らない以前の問題として、国のリーダーや自治体の首長が「やはり原発しかない」と決断したとたん、ほかに何十通りもあったはずの生き残る方法が、すべて「通行止め」にされてしまう。
その「可能性が消去された」どんづまりの状態を、僕は「破滅」と呼んでいるのです。

「決意」「決断」って、字面はかっこいいけど、具体性がない。
野田ブタ会見がそうだったでしょ。「何とかなるはず!」という、脂汗のにじんだ焦りしかない。そうとう追いつめられてるぜ、あのオッサン。

「自分の考えや行動は、いつ何時、変わるかも知れない」という可能性を、つねに留保しつづけること。執着は、死をひきよせる。


5月30日付で、東京地方検察庁に提出した「株式会社大兼文喜」の告発状。
その後、どうなったのか、東京地検に電話してみた。僕が危惧していたのは、都の福祉保険局が「指示」した影響で、大兼文喜の産地偽装が罪に問われないのではないか?ということ。
しかし、「都の指示は、まったく無関係。刑事罰に相当するかどうかだけを、見極める」と、検察庁の返答は力強い。僕の告発状は、きちんとファイリングしてあったので、「株式会社大兼文喜」は、のうのうと商売している場合じゃないかも知れないよ?→

ついでに、「岡山県にも産地偽装業者がいるのですが、どこに告発状を送ればいいですか?」と聞いてみた。
「所轄の警察署か検察庁に送れば、間違いない」とのことなので、次は、岡山市藤田の有限会社クリーンライス(真辺米穀有限会社)、岡山地方検察庁に、刑事告発させていただきました。

真辺米穀有限会社は、岡山市のHPを見ても、「福島産米を偽装」などとは書いていません。産地不明なのです。その辺り、法廷で明らかにしようじゃないですか。
「産地偽装は必ず捕まる」「間違いなく懲役刑をくらう」新たな常識をつくらなければ。


……それにしても、なんともやる瀬ないのは、総理大臣が「国民の意見など聞かない」と事実上、明言しちまったことだ。
僕ら、脱原発デモに出ていた人間は「ざまあw」とか笑われてもいいけんだけど、笑っている側の「原発どーでもいい派」「放射能安全派」「脱原発うぜー派」もろとも、みんなが捨てられたことが痛恨だよなあ……。

「日本の経済活動の発展のためには」「放射脳どもが」とか、ネットでごにょごにょ言っている君も、まるっきり放射能も原発事故もなかったように平和に暮らしている無関心なあなたも、この国は助けてくれない。

丸一ヶ月以上も、国内の原発が停まっていたのに、何も不自由してないでしょ?
同じように、何も感じないまま、誰も彼も、輝かしかったはずの未来を、音もなく奪われていく。

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2012年6月 7日 (木)

■0607■

昨日は、明治大学のレナト・リベラ・ルスカ講師の授業で、ゲスト・スピーカー。
去年より、かなり品のない講義になってしまった。教材には『けいおん!!』をつかったけど、見たことのある学生は数人程度だった。

Ca8it0fc_2 (講義後、学生たちと入った飲み屋は、フィギュアでいっぱい)
大人たちが、犯罪級にグダグダなのに、まだ20歳そこそこの彼らに「必死にがんばれ」というだけ、罪です。いま、死ぬ気でがんばらないといけないのは、大人たちだろう。
少なくとも、僕は「いま、大人をやっていて楽しいよ。お前らも、早くこっちに来いよ」とは、とても言えない。
この魑魅魍魎どもを、地獄に追いやって、清浄な土地になったら「おいで」と言えるかも知れないけど。

講義の前、学生たちの発表があり、レナト氏が「復興という言い方は、あまり適切ではない」とアドバイスしていた。「元のように戻ればいいのではなく、新しく作りなおす、と考えたほうがいい」。
僕も、まったくそう思う。むしろ、元に戻してはいけない。


『メガゾーン23』のとき、板野一郎さんは「大人は汚い!」と言いながら机に向かっていたそうだけど、もしかすると、「大人は汚い!」は、くり返されるべきテーマなのかな……。
『0083』を見ていたら、連邦軍上層部があまりにも醜く描かれていて、驚いた。大人たちの思惑のために無駄な戦いをやらされたコウ・ウラキが、宙にむかってビームライフルを撃ちつづける姿は、せつなくて見ていられないよね。

――とは言っても、『0083』だって21年前の作品。昨日はなした学生たちが、生まれたころにつくられた。
あの頃は、それこそマンガのように見えた大人と青年の構図が、今ならばリアルに感じられる。そして、つくづく、卓上で金勘定をするような仕事につけず、いまだ使い捨ての一兵卒でありつづけていることに、感謝の気持ちをいだきたくなる。
明日どうなるか分からない身なら、若い学生たちに酒ぐらいおごってやれるからね。

道ばたで己の非力さを感じられなくなったら、そこで人間は終わるんだよ。


311後から、「もう、京都あたりに遷都すればいいよ」と言っていたんだけど、皇室や文化庁が京都に移転するらしいね。
ひさびさに、少しマトモな話を聞いたような気がする。大戦末期、長野県松代に皇居を移そうとした計画に似ているが……ようは、そういうことだと思う。
東京の人間も、危機感を持ってほしい。オリンピックなんてやってる場合じゃないよ。

だけど、京都に首都機能を移すつもりであれば、ますます福井県の原発は、動かしてはいけないよね。
福島の事故後なのに「核シェルターをつくれ」なんて言っているおおい町の町民は、いまだに冷戦下を生きているし、福島事故で何が起きたのか、どういう被害が出ているのか、まったく知ろうとも調べようともしない。
この、悲しいまでの分断。だけど、考え方・生き方を変えられないほうの負けだね。

こういう、激しい変革が求められている時代には、若いほうが有利だと思う。
僕は20代のころ、よく酔っぱらって階段から転げ落ちたんだけど、医者に行かなくても、ケガが治ったんです。今だったら、致命傷になるでしょう。若いうちは、どんなに転んでも大丈夫だから。

そして、僕らオッサンは、若い人が安心して転べる社会を再構築しなくてはならない。

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2012年6月 5日 (火)

■0604■

昨夜は、映画をつくっている人、映画に出ている人たちと酒。「自分の生きてきた時代で、どの頃がいちばん楽しかったか」という話題が、面白かった。
前に3人で会ったときは、311前だった。やはり、あの日を境に、人生観が変わったのだと思う。

早い時間に解散したので、ひとりでガールズバーへ行く。
Cagscvsm ひさびさに指名したり、ゲームしたり、朝まで遊んだ。それでも、キャバクラの半額ぐらいか。
僕がこういう場所でケチらずに、女の子にお金がいっぱいいくようにするのは、なにか罪悪感があるからだと思う。オッサンは、若い子にお金をいっぱいあげるべきだ。

手のうちのカードをなくす歳になったら、次の世代のために何かをするべきなのだ。……そういうわけで、明日は、明治大学で講義をする。


産地偽装でおなじみの株式会社大兼文喜については、ちょっと面白い話が出ている。
こちらのブログ()によると、「大兼文喜をクビになった人間が、逆恨みをして偽装を携帯の写メで撮影し、それを告発して発覚したという事です」。
だったら、なぜ刑事事件にならず、都の福祉保険局の注意だけですんたんだ? 告発状を提出した東京地方検察庁で、聞いてみよう。

放射能対策を実施している外食産業のネットワーク「飲食セーフティネットワーク」が、HPを立ち上げた。→
いまんとこ、神楽坂のワインバーとか、お洒落な店が数軒のみ。若い人や子どもが安心して食事できる店は、日本中、どこを探してもないだろう。
食材全量検査をしているファミリーレストランがオープンしたら、さぞかし流行るだろうに。


日本全国の脱原発デモを撮りまくる、若きカメラマン・秋山理央氏が、福井県おおい町へ向かった。「統一戦線義勇軍による福井県おおい町町議会議員糾弾行動」を記録するためである。→

最初にこの映像を見たとき、「秋山さんは右翼なのか?」などと愚かしい偏見が頭をはなれず、「これじゃあヤクザじゃないか!」と、見るのをやめてしまった。
ところが、よく聞くと、「田舎のじいさんが、小遣いかせぎのバイトに……」「俺の知っとる人はな、30人の従業員、雇ってるんや……」と、町議員は、自分たちの身内がかわいいだけ。
町議会で「再稼動賛成」に起立したからには、全国からの抗議、あらゆる形での糾弾を受ける覚悟がなければいけない。その覚悟もなく、賛成なんかするんじゃない。

僕より若くて、仕事なくて、何日間も食べてなかった友達がいる。僕だって、来月には仕事がなくなっているかも知れない。何の保障もない。
だけど、俺たちは、なんとか仕事を探して生きていくしかない。「労働なき富」を欲するおおい町には、一切同情しません。勝手に過疎ってください。

それに、大飯原発を再稼動させても、結局は計画停電をやるっていうんだから、関西圏の電力需要なんか、ハナっから関係ないんだよ!
誰と誰が得しているか、よく考えてみようぜ?

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2012年6月 2日 (土)

■0602■

昨日、東京地方検察庁から電話。
私の母を殺した廣田年亮被告の上告が、棄却された。懲役6年6ヶ月の実刑判決、確定。
事件発生から、一年5ヶ月もかかってしまった。

小躍りして、喜ぶようなことでもない。「悪は滅びる」ってだけの話だ。
「加害者にも人権がある」と偉ぶっていた弁護士は、看板を下ろしたほうがいい。


しかし、この国には、そろそろウンザリしてくるね。
「関係自治体の一定の理解を得られつつある。立地自治体の判断を得られれば、4閣僚会合でしっかり議論し、最終的には私の責任で判断したい」などと放言してしまった野田首相。
Caxq1vm5「個人の責任」で、原発の再稼動ができるんなら、日本は、独裁国家じゃん。しょうがない、首相官邸前に抗議に行ってきました。昨夜は、2,700人集まったそうです。

でも、この徒労感はハンパではないよ。
ひとり暮らしの俺ですら、「なるべく安全な食糧を」「風の強い日はマスクをしよう」ぐらい、気をつかっている。この感覚、「格納容器の中にしかないはずの物質が、玄関先にある」気持ち悪さは、東北・関東の人間にしか、分からないだろうな。
子どものいる人なら、もっと大変だ。「土に触るな」「雨水のたまってるところは避けろ」とかさ。福島県浪江町の警戒区域に一時帰宅して、自殺するしかなかった人への責任は? 南相馬市の自宅が高濃度に汚染されて、住めなくなった人への責任は?
軽々しく、「私の責任」なんて空疎な言葉を出すなってことだ。

抗議集会には、京都からきた高校生もいたよ。高校一年生に、「僕にも将来があるので、原発は動かさないでください」って、道ばたで叫ばせる国だよ?

原発が、安全とか危険とか以前の問題。
おおい町の宿屋やメシ屋が「もうからない」から、関西電力が「これ以上、原発の維持費を無駄にしたくない」から、若者を不安にさせて、これから先の人生も、原発といっしょに暮らさせる。
そして、半世紀はかかると言われている福島第一の事故処理が終わる頃には、官邸前抗議にきた高校生だって、もう老人ですよ?

若い人から、順番に犠牲になっていくシステムを断ち切ろうって話だよ。


東電OBの年金引き下げだって、やっと3分の2の承諾が得られたけど(それまでジジイたちは抵抗していた)、来年度の社員の平均給与を、46万円も引き上げるんだぜ? 独占企業だから、ぜんぶ俺たちの電気代に加算されるんだよ。

だけど、聡明かつ理知的で“公平な”皆さんは、「東電だって民間企業なんだから」とか「抗議活動なんてしたら、業務妨害だから」とか、自分自身がカモられてるのに、すがすがしいまでの奴隷っぷりだよね。

原発事故当時の清水社長は、石油精製会社の社外取締役に就任。勝俣会長は、日本原子力発電の社外取締役を兼任。
理想も向上心もかなぐりすてて、ただひたすら「高収入」「安定収入」に固執。こういうジャンキーどもが、日本では「勝ち組」になっている。

もう、言葉の通じない、だけど「総理」だとか「東電」だとかのない遠い国に行って、コジキでもしていた方が、幸せなんじゃないの? 少なくとも、吐き気がしなくてすむよね?


さて、産地偽装でおなじみの株式会社大兼文喜の犯罪に対し、告発状を提出したばかりですが、告発状というのは、なかなか受理されないそうです。
その間に、岡山県の産地偽装業者、クリーンライスに対しても、刑事告発を準備します。ネットに「業務停止にすべきだ」とか書いても、業務停止になりませんので、誰かがやるしかないでしょ。

天網恢恢、疎にして漏らさず。

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