■0621■
『輪廻のラグランジェ』オフィッシャルガイド 25日発売予定
●世界観解説、メカニック解説、ストーリートリビアほか
この本に関しては、いい意味での裏話が、たくさんあります。
マチ★アソビのときに話したように、「ありきたりな、やっつけのムックだったら、あまり関わりたくない」と思っていました。
ところが、出版社も編プロも、僕の話をよく聞いてくれて、ちゃっちゃっと台割を変えて、「とにかくいい本にしよう」と意気込んでくれました。女性編集者が多くて、柔軟性があって、いい仕事をさせてもらいました。
あと、デザイナーさんのセンスが、抜群によかった。どんな無茶ぶりしても、きちんと『ラグランジェ』の世界に落とし込んでくれる。
でも、すべては、1800円はらってくれるファンの方たちが楽しめるかどうか。楽しめなかったら、僕らの仕事は、ゼロからやり直しです。
■
さて、『おおかみこどもの雨と雪』、マスコミ試写。以下、具体的なストーリーなどは書きません。
細田守という人は、「脳の表面の、くすぐったいところを撫でるのだけは上手いよな」という印象でした。だったらむしろ、理詰めでエンタテイメントしている『ぼくらのウォーゲーム!』が一番じゃん、とか思ってました。
今回、認識をあらためました。
もう、体ごと、「俺は本気なんだよ!!」と言わんばかりに剛速球を投げてきます。エンディング曲の作詞も、細田監督です。見直しました。今回は、パンツ脱いでます。脱ぎすぎです。
■
まずは、自然現象のエフェクトに圧倒されます。
だけど、「ここはエフェクトだから、素材を分けて、各部署に発注して……」ではありません。撮影という役職をおかず、最初にデジタル・フロンティア社がシーン全体をつくった、というようなことがプレスシートに書いてありますが、ようは、「ここはキャラ」「ここは背景」と、機械的に切り分けた感じがしない。とにかくまずは「こういう絵をつくるんだ!」という力強い意志があり、そのためには、3Dでも何でも使いたおす、という勢い。
土砂降りの雨とか、「うわー冷たそう!」って思ったし、夕陽だって、きれいな夕陽だけでなくて、痛々しい夕陽だってあるでしょ。もう、そういうの「全部わかってますから」「全部、表現しますから」という感じ。
例えば、雪の中に飛び込んだら、息が白くなるでしょ。それは人間のほうが、体温が高いからですね? その白い息を表現することで、「人間の体って熱いんだよ!」と伝えてくれる。そういう映画です。
自然現象を、美化しすぎない。あるがままの美しさを描く。こりゃあ、手ごわいよ。
だってね、畑仕事をするシークエンスだけでも、かなり長尺なんです。忘れた頃に、畑仕事が出てくる。
野良仕事なんて、あの細田監督が描くのか! しかも、「自然へ帰れ」みたいな思想とか理念ではなく、単に「生きていくために」畑をつくるんです。そういうプロットになっている。詳しくは書かないけど、「細田監督、本気だ!」 それだけは確か。
■
そりゃあ、歳くったら「お母ちゃんが、どんなにすごいか」を描きたくなるでしょう。でも、なりゆきでつくってないです。精密に考えて、「これ」という表現を狙ってきます。強いです。
2人の子どもたちの生き方にしても、「子どもはこうでなくちゃ」なんて絵に描いた理想は蹴っ飛ばして、「だって、子どもってこうじゃん!」と強靭に主張しながらも、ちゃんと多様性を残して、開放感もしっかり用意されていて……。
こういう映画をつくることこそ、大人の義務。
来月21日公開だから、いま、いろいろ宣伝やってると思います。
でも、予告編すら見る必要ない。『おおかみこどもの雨と雪』というタイトルだけ、しっかり覚えて、あとは映画館へ行くだけです。つまんないコマーシャリズムに回収する必要ない。
そして、「これからも生きていこう」という意志を、自分の体に、しっかりと刻み込んでほしい。そう思います。
映画でもアニメでも、あなた自身のためにあるんだから。ネットで点数つけるためにあるんじゃない、とあらためて思いました。
(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会.
| 固定リンク
コメント
お久しぶりです!!
先日、ちょうど開いたブログがこの日のブログで驚いたのです。
と言うのは、『おおかみ〜』の試写会当選ハガキを友人からもらった日だったのです。
あまり映画を観たいと強引に言わない娘が、珍しく強引に言うので、公開されたら行こうと決めた矢先に、友人から「当選したけれど、観に行かれないから受け取ってくれ」と連絡があったのです。
でも、夜の試写会でチビをどうしようかなんて悩んでいると、劇場すぐ近くに住む友人宅で預かってくれる事が決まり、試写会当日も予定ビッシリでチケット交換時間もギリギリだなんて思ったら、また別の友人がついでがあるからと交換までしてくれて。
当日観に行くには条件的に厳しかったのに、私と娘は、ただ劇場に足を運ぶだけで『おおかみ〜』を観ることができたという、まるでみるために導かれたような感覚さえ覚えたのです。
何だか、マイマイの時の偶然と必然。
そんなのがよぎりました。
そして、6歳の娘も私も、涙で観ました。
専門的な事はわからないし、絵本かエッセイ集が好きな位で本もたいして読まない私には、難しいことを語れないのですが…
この映画を観て
ただただ主人と子供たちに感謝したくなったんです。
未熟な私に母として歩む道を選ばせてくれて、ありがとう、感謝します。
そんな風に思いました。
そして、これから先、親になるであろう思春期真っ只中!!な若者にも触れて欲しいなと、何故か思いました。
難しく分析は出来ませんが、何故かそう思いました。
そして、もう一度観たいです。
次は景色だったり、見逃してしまったかもしれないところをもう一度観たい。 私には珍しい衝動なのです。
翌日に、教えたがりな私は沢山のママ友に「観て!!」と伝えて回ってました(笑)
チビがいて観れないと言う人には、我が家を託児所代わりに利用してもらって、上の子達と観に行くなんてことにもなり。
沢山のママ友が子供と劇場に足を運ぶと言っていて、何だか楽しいです。
映画を観たママ友の感性にも触れられる楽しみが待っていますし。
でも第一に、ごんちゃんが頭に浮かび、やっぱりごんちゃんにその日のうちに『観て!!』と言っていました。
長々とまとまりもなく書いてしまいましたが、先週観たのに、いまだに興奮がさめないまま、久々のコメントをさせて頂きました。
失礼しました。
投稿: ナトー | 2012年7月17日 (火) 21時51分
■ナトー様
ご無沙汰してます。暑いですね。
現役ママさんの感想が聞けて、良かったです。
>ただただ主人と子供たちに感謝したくなったんです。
>未熟な私に母として歩む道を選ばせてくれて、ありがとう、感謝します。
なるほど。その感情を、頭だけで理解しなくてはいけないのは、何とも辛いです。
父親になれなかった男は、本当に役立たずだと痛感します。
>沢山のママ友が子供と劇場に足を運ぶと言っていて、何だか楽しいです。
同じ地域で、一定期間、映画が上映されるのって、そういうことだと思うんですよ。「いつでも、どこでも」は、やっぱり面白くない。
地元で『マイマイ新子』を上映してもらったときは、古い友人が集まって同窓会のようになったし、逆に知らない人から話しかけられたりもしました。
そういうとき、映画は「生きている」と感じます。
>先週観たのに、いまだに興奮がさめないまま
僕も一週間ぐらいは、会う人ごとに熱く語ってましたよ(笑)
思い出すと、胸がジーンとします。今週末から公開ですね。
投稿: 廣田恵介 | 2012年7月17日 (火) 23時03分
〉映画は「生きている」
素敵な言葉ですね。
今まで私は、映画はDVDでもいっか〜 なんて思うことが多かったのですが、廣田さんのブログに出会ってから、劇場へ行きたいなと思うようになりました。
そして『おおかみ〜』は、また行きたいと思った初めての作品かもしれません。
〉父親になれなかった男は、本当に役立たずだと痛感します
そんなことはないと思います!!
私はいつも廣田さんのブログを読んでいて、父性にも母性にも、独身男にも時には独身女性にも視点が向いていて、それでいて的確で、驚かされるばかりです。
そして、役立たずなんて思ったことないですよ☆
心の底から必要としているものがある人に、確実に必要なことを与えている。そう思います。
投稿: ナトー | 2012年7月17日 (火) 23時22分
■ナトー様
映画との出会いは、作品と人の組み合わせごとに、いくらでも多様になります。点数をつけるのは、一番つまらない見方ですよね。
>そして、役立たずなんて思ったことないですよ☆
歳をとった男というのは、ロクなことをしてないですよ。
道にタバコやゴミを捨てるし、飲食店で酔っぱらって店員を困らせるのも、すべてオッサンです。
原発を容認しているのも、大多数が、もはや未来のないオッサン。そんな連中、生きているだけ迷惑です。
だからせめて、今の状況に対して、戦わないといけないと思うのです。
誰かの役に立たなければ、男の人生は完全にムダです。
投稿: 廣田恵介 | 2012年7月17日 (火) 23時41分