■0612■
EX大衆 7月号 15日発売予定
●機動戦士ガンダム 開発史
他社の「語れ!ガンダム」で、似たようなページを構成したばかりですが、こちらは『F91』や『Vガンダム』まで含め、「宇宙世紀でガンダムと名のついたモビルスーツのみ」の変遷です。
五十嵐浩司さんが、アニメのデザインとして、玩具・ホビーのデザインとしての「ガンダム」について系統的に語っており、かなり説得力があるはず。
なぜなら、「新旧のアニメを広く見ていて、プラモも組み立てる、オモチャも自分で買う」プロのライターが、実は意外に少ないから。
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きゃっとさんという方から、メールで、問い合わせをいただきました。
ただ、返信しても戻ってきてしまうので、お返事がわりに、ここに書かせていただきます。
質問は、テレビや映画のクレジットについてでしたね。
ロスアンゼルスに渡って、SFXアニメーターになった有田勝美さんの著書によると、「日本の映画会社は安い金でスタッフを使っているから、特にギャラがタダ同然の若い人なんかはクレジットに名前が載らないと、皆ついてこないんだ」。
なので、クレジットに名前が載っているけど「一円ももらってない」ことは、あるんじゃないでしょうか。日本は、中身を曖昧にしたまま、形だけ整える傾向にあります。
そして、ご質問にあった『リング2』の海外バージョンには、どうして『リング』原作の鈴木光司さんの名前が、クレジットされていないのか?
まず、『リング2』は映画オリジナル・ストーリーなので、鈴木さんの原作が存在しない。契約書に、「原作者でないなら、クレジット表記しない」と書かれていたのでは?という指摘は、そう間違ってないと思います。
私は、『リング2』のプロデューサーである一瀬隆重さんの『修羅雪姫』に「脚本協力」でクレジットされました。
順を追って説明すると、プロットづくりに参加するとき、まず分厚い契約書を読んで、サインします。内容は「アイデアは御社にすべて提供し、著作権は主張しません」という誓約書のようなものです。
ハリウッドで仕事なさっている、一瀬プロデューサーらしい手堅さだと感心したものです。
私は『修羅雪姫』のシーン構成を書いた段階で、抜けさせてもらうことにしました。
一瀬さんは「残念です」と言いながら、ちゃんと所定のギャラを振り込んでくれました。
完成した脚本には、私のアイデアやネーミングも少しは使われてはいましたが、ストーリーはまったく違っていました。
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しかし、にも関わらず、「廣田さんの名前も、脚本協力としてクレジットしたい」と電話がありました。
それは契約書になかった事項なので、「おや?」と思った記憶があります。目的は映画の箔付けなのか、お礼の意味なのか、どちらにしても急に日本的な対応になったな、と思いました。
一瀬さんはニュアンスですまさず、「どうしてそういう展開になるんですか?」「この設定は、どうしてこうなっているんですか?」と、要所要所、キチッと聞いてくれる方だったので、なおさら意外な感じがしたものです。
20代のころは、何十社もの映画会社に持ち込みをしましたが、勝手にコピーはとられるわ、「映画界に契約書はない」と断言されるわ、タダで脚本書かされてボツ!とか、まあ漠然と「俺ら若い才能、可能性にかけて映画づくりにチャレンジしているぜ!」という、根拠薄弱・実効性皆無の熱気だけで、その場だけは盛り上がるんですよ。
だから、今でも「一生懸命になれるものがあるって、いいよね!」などと肩を叩かれると、眉をひそめてしまいます。
僕は、結婚の前後だけ、ゲーム会社に在籍していました。
ゲームのテーマも仕様も決まっていないのに、ディレクターを名乗る人物が「みんな、がんばれ!」と、でっかい字で、社内掲示板に書いてるんです。
テーマも目標もないから、「がんばれ!」としか言いようがないわけですよ。
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僕は今週末、首相官邸前抗議に行きます。それは、いかにも軽はずみです。
しかし、あの抗議活動には国会議員も参加しはじめたし、メディアも無視できなくなってきている。行く理由は、「再稼動に反対している国民の数を増やして注目度を増す」ことであって、総理の意見を変えさせることではありません。
いま、決定権をもっているのは福井県知事なので、抗議FAXは、そっちに送ります。
脱原発活動をもって、人に好感をもたれようなどと思ってはいけません。
前にも書きましたが、「ずるい」「卑怯な」ことをやっているという自覚ぐらい持っていたほうが、強く戦っていけると思うのです。
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コメント
テラ先生へ
私からの返答遅れました。
ありがとうございます!
契約が全てか、あるいはグダグダか、いろいろありますね。
名前をスタッフロールに出すだけで、努力したものに報いたことになるのか、
契約になければ、原作者へのリスペクトがなくてもいいのか、いろいろと疑問も出てきます。
そういえばアメコミでは、原作者以外の作家が描くことが普通に行われていますよね。古くから、そういう体制になっていると思いますが。
スポーンの作者がそれをして「日本の作家がうらやましい」とか、聞いたことありますが。
最近なんだか私も、「誰がオリジナルか?」ということによく出くわす気がします。
ファントムさんの掲示板でも、その内容を書きなぐっていましたが・・・ハハハ。
投稿: きやていー川中島 | 2012年7月 4日 (水) 00時47分
■きやていー川中島さま
>名前をスタッフロールに出すだけで、努力したものに報いたことになるのか
日本の場合、「スタッフロールに名前出してやるからギャラなし」という話は、ざらに聞きます。出版界でも「ギャラなし」仕事は、たくさんあります。
ハリウッドだったら、どんな細かい仕事でも「仕事」として自立しているので、「タダで手伝う」なんて感覚はないのでしょう。
邦画で「応援スタッフ」なんてクレジットがあると、切なくなってしまいます。
>スポーンの作者がそれをして「日本の作家がうらやましい」とか、聞いたことありますが。
出版社に権利があるんですよね。映画でも、編集権はプロデューサーにありますよね。
漫画や映画を、プロダクツとして考えれば、その方が合理的なのでしょう。
じゃあ、日本では作家が大事にされているかといえば、そんなことはないような気がします。
現場では曖昧にやってきたくせに、いきなり「ダウンロード禁止」なんて法律が出来ている。反発くらって、当然ですよ。
投稿: 廣田恵介 | 2012年7月 4日 (水) 02時04分