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2012年5月21日 (月)

■0521 いわき再訪その2■

本日、二度目の更新。福島県いわき市行きのつづきです。

去年夏以降、「もう一回、いわきへ行くキッカケが欲しい」と思いつづけて半年が経過し、当地との手紙のやりとりも途切れがちになってきた頃(最後に送ったのは、石黒昇監督が寄付してくださった簡易マスクのダンボールだった)、いわき出身のS氏が「福島第一を肉眼で見られる山があるんですよ!」と誘ってくれたのでした。

僕も、事故直後は「この目で見たい」と思ったし、いずれは福一に行くことになるような気がしているので、予行演習の意味で、広野町の五社山へ登ることにしたのでした。


道すがら、Jヴィレッジにも寄ったのですが、若い警官たちに「何しに来たの?」と呼び止められました。
「面白半分に観光に来た気楽な連中」と判断されても、まったく言い訳できないので、聞かれるままに住所・氏名・職業を名乗りました。さすがに「雑誌に記事を書いています」と答えたら、「どんな雑誌に書いてるの?」と、怪訝な顔をされましたが。

「ここ(30キロ圏内への検問所)には、自宅に帰る普通の人たちもいるからね。その人たちが、写真をとられたら、どんな気持ちになるか、よく考えてほしい」。
自分より若い警官にそう言われて、恥ずかしくなって、その場をあとにしました。そうだ、一般の人も通るんだった……。
警官たちは、持ち回りで全国から警備に来ているそうで、関西の人もいました。

この場で、空間線量は0.36ぐらい。S氏の線量計では、さらに高い。五社山の山頂近くの駐車場へ向かうと、ぐんぐん高くなっていきます。


山頂への道は、ワゴン車が一台とまっていた程度で、あとは駐車場まで来て、バイクで峠を攻めに来た若者がひとり……。
015_2こんな写真では何も伝わらないだろうけど、本当にきれいな山なんです。
陽の光が、葉っぱごしに降りそそぐと、視界全体が、ぼんやりと緑色に染まって……「こんないい場所なのに、原発事故が台無しにした」と、S氏も怒りはじめました。
今後何十年もの間、わざわざこの山に観光にくる人は、いないでしょう。原発立地だけでなく、日本人みんな、こんな山河を危険地帯にしてしまう原発の必要性、人類のやらかした大失敗を、無言で許してくれている自然のことを、よく考えないといけない。


地図によると、山頂の駐車場から展望台までは、30分ぐらい。
最初は、使い捨てマスクだけで登りはじめたのですが、山道の途中で、S氏が「やばい、これは引き返しましょう」。僕の線量計は、1μSvを越えています。0.1ではなく、1マイクロ。S氏の線量計は、もうちょっと高い。

駐車場まで戻り、S氏が静電気防止スプレーを吹いてきたタイベック(防護服)を着ます。
マスクもN95規格のガッチリしたものに換えて、再トライです。
山頂への道は、おそらく「通行禁止」の意味で、木が倒してあります。それらを迂回して登るので、汗が噴出してきて、メガネが曇る……原発作業員の皆さんは、この防護服を真夏でも着込んでいるわけです。

山頂の展望台で、僕の線量計は0.7マイクロまで下がりました。S氏の線量計は0.82マイクロ。子どもはもちろん、大人でも来るべきではない場所。しかし、僕は防護服を着る前から、何だか恐怖心が麻痺していました。
(むしろ、東京でのほうがビクビクしているのです。)

展望台にあるやぐらに登って、「ああ、あれじゃないですか?」と指をさす。
018「いえ、あれは福島第二です」と、S氏は冷静に答える。福一はもっと向こうにあり、現地の言葉でガスってる(海から水蒸気が立ち上っている)ので、見えづらいそうです。

それでも、S氏は執念でカメラを構え、「たぶん、あれが5号機と6号機。ちょっと離れて建っているやつですね」と、確認しました。


途中、山の管理をしている人が来たそうですが、僕は気がつかなかった。
駐車場に戻り、N95マスクと防護服を脱いでビニールに密封し、全身にホコリ除去用スプレーを吹きます。
最後に、ガソリンスタンドで洗車。実家に帰宅したS氏が線量を測ると、防護服は思ったほど汚れていなかったそうです。

福一を見られたかどうかより、あれだけ綺麗な緑の山なのに、マスクが外せないほど線量が高い……というのが、ショックでした。
「放射能のどこが危険なんだ」と笑ってらっしゃる方たちは、美しい故郷を手ばなさざるを得ない人たちの心を、踏みにじっています。
今の状況を嘲笑ぎみに眺めている連中は、ただ自分の人生にしらけ、手前勝手に世界をつまらないものと決めつけ、うまく行かないのは自分ではなく世界のせいだ、俺以外の誰かが必死にがんばるべきなんだ、とベルトコンベアに乗ってダラダラと理想もなく生きてきた者ばかりなので、救おうにも救えない。

学習塾経営のGさん、娘さん2人を養うNさんとも再会したので、その話は次の更新で。

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コメント

>本当にきれいな山なんです。

この写真をみてハッとした。屋久島の「淀川林道」に雰囲気が良く似てる。もし同じように汚染されたらと想像してみたら...胸が苦しくなった。

>人類のやらかした大失敗を、無言で許してくれている自然のことを、よく考えないといけない。

ほんとに...「人間のやることは雑すぎる」なんて悲しみ呟いているように思える。

投稿: ごんちゃん | 2012年5月21日 (月) 18時06分

■ごんちゃん様
「原発事故や放射能汚染は、福島だけのこと」と切り離して考えている人間が、僕は怖い。
東京の人間なんて、ほとんどそうだろうけど。

見慣れた山や川、思い出のある自分の故郷が「立ち入り禁止」になったら?と考えられない連中は、もともと土地を愛するような気持ちが欠けているんだろうな。

そういう、無機質な精神構造が何より恐ろしいよ。

投稿: 廣田恵介 | 2012年5月21日 (月) 19時45分

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