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2012年5月21日 (月)

■0521 いわき再訪その3■

一泊2日の福島県いわき市への旅行記、最後の更新です。
福島第一原発を目視するために、高線量の五社山を登り、翌日はスパハワイアンリゾートCa09h9syに行くのが二大目的で、その間に「海竜の里」に寄ったり、ひとりでいわき駅前のガールズバーに行ったり、細かい出来事はいろいろありました。

もうひとつ、一年前と同じように、「いわき市の市民として何をどう思っているのか」、学習塾経営のGさんと、2人の娘さんを育てている会社員のNさんに、あらためてうかがうという目的がありました。


Gさんの教え子のひとりが、原子力関連業に就職するそうです。それは原発推進だからではなく、いわき市は火力発電所も多いし、エネルギー事業は安定していて、手堅いからだそうです。
だから、この話から学ぶべきは、僕らが「脱原発」と叫ぶのは、外野から石を投げているのだということ。「調子のいいことを言っている」ぐらいの自覚は持つ。恥を知ったら、人間は強くなりますから。

そして、Gさんとしては原発には反対でありながらも、「東京に放射性廃棄物を置くべき」と言います。「東京に住んでいるお金持ちの人たちの意識が変わらないかぎり、脱原発など無理」と。
なぜなら、東京でのラジウム騒ぎは福島でも大きく報じられたのに、いま福島がどうなっているのかを気にする東京の人は、少ない。非常に少ない。というか、原発や放射能の話はタブーになっている。あと、首都圏は安全ということになっている。「何があっても、東京だけは絶対に守ってもらえる」という信仰がいきづいている――って、後半は私の意見ですが。
だから、基準値ごえの食品が市場に出回っても、騒がれない。Gさんは、福島県産の米を買って食べているそうです。それはもちろん、基準値以下の。「売れないと分かっているから」と言います。

福島で基準値以下の米なんてあるのか、と思うでしょうけど、いわき市で家庭菜園をやっている方が心配になって土壌検査をしてもらったら、意外にも0ベクレルだったそうです。
でも、だから「食べて応援」とは言いません。調べて、分かっている人は食べればいい。「食べて応援」の怖いところは、「安全に決まっている」という、無根拠な信仰に支えられているからです。

Gさんは、原発ゼロのニュージーランドを例にあげて、「(資源が)なかったら、ないなりに考えよう」と言います。
ただ、この方の考えの前提には「東京に廃棄物を持っていくべし」があるような気がしました。東京の人間には、当事者意識が欠落しているからです。


さて、会社に勤めながら、2人のお嬢さんを育てるNさん。
以前は学校給食と線量測定の件で、学校と話し合っていましたが、いまの心配は、運動会とプール、林間学校だそうです。

運動会は「土に触れない」「椅子を地面に置かない」「地面にはブルーシートをしく」……これが学校側の提案。「その方が安全では?」と思ってしまうところですが、なぜそこまでして運動会を強行するのか?
これには、なかなか面白い裏事情があります。

まず、学校には運動会などの行事に割り当てられる日数、ノルマが決まっている。そして、運動会は午前中で終わるのに「お弁当を食べてから帰る」決まりになっている。お弁当を食べれば「一日授業をやった」扱いになり、代休をとれるんだそうです。
――でも、それはすべて学校サイドの都合であって、児童のことを考えた結果ではありませんね。

プールはもっとひどく、ずっと水を替えないんだそうです(お金がかかるため)。
林間学校も、とにかく山は線量が高いので、本当に子どもたちを行かせていいのか? だけど、「卒業アルバムに何も行事が載っていないのも、かわいそうな気がして……」と、Nさんは困惑気味です。
だから、原発は「当たり前」を壊す。

Nさんは用事があって、福島市へ行ったんだそうです。大きく「0.5~0.6μSv」と表示してあったけど、子どもたちはマスクすらしていない。申し訳ないような気がして、Nさんはマスクをしないで過ごしたそうです。


去年、Gさんの教え子から「東京どもムカツク!」という言葉をもらいました。→
東京のバカヤロウ、東京のバカヤロウ……一年たって、その言葉がしっくりくるようになりました。役人は無能で倫理がないし、汚染食材も産地偽装も見逃すし流通させるし、親なのに、子どもがいるのに、「原発事故は去年のこと」「放射能は福島の話」と対岸の火事に事態を押しやる、見捨てられても仕方がないような無関心な都民。
彼らは、こう思っている。「東京にさえなければ、原発はあってもいい」「原発以外のエネルギーがあるなら、それでもいい」。

S氏の運転する車で、東京に戻ってきました。「なんかこう……人は多いけど、中身がないっすね」と、S氏がつぶやきました。別に何をさして、というわけでもなく。
電車に乗ろうと駅へ向かうと、スマホを見ながら歩いている人の多いこと。自転車の後ろに子どもを乗せて、ゆらゆら歩きながら、ケータイを見ているお母さんもいた。

「私も線量計を買ったのよ」。もうガールとは呼べない、ガールズバーのお姉さんが言ってたよ。ちゃんと俺の顔、おぼえてたよ。
一年間で危機意識をもつようになった、彼女のほうがマトモなんだよ。「当たり前」が崩壊したことを認めて、正気でいることが大事なんだよ。

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