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2012年4月13日 (金)

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これは、僕と一緒に、首相官邸前抗議で、ずぶ濡れになってくれたプラカードの裏側である。
表には、「再稼動、絶対反対」とか、政府に対する言葉を書いたので、裏には集まった人々に伝わるような、あるいは、自分を力づけるような言葉を貼った。
ガンディーの言葉である。

雨が降ってきたのは、別にいい。傘を持ってこなかった自分が、悪い。
二時間予定の抗議が、20分ほど延長されたとき、「NHKを見ていた方から、大飯原発、再稼動決定のニュースが入ってきました」と、主催の方がアナウンスした。

そのときの、どよめきと怒号は、物理的な風圧となって、二列目先頭にいる僕の身体を押した。間もなく、ほとんど意地のように「再稼動反対!」のシュプレヒ・コールが、地鳴りのように始まった。
誰もが、怒鳴っていた。

「僕もくやしいです、こんなタイミングで……。僕だって、こんなことは言いたくありませんが……」と、1000人を超す人々の前で、主催者のひとりが無念そうに言った。「でも、ここで抗議をつづけるために、今日は解散しましょう。来週も、またその次も、続けるために!」


2500人集まった、という説があるが、1600人が妥当じゃないかな。とにかく、先週より多かったのは確か。
0413ca78r6xz元・原発技術者の方もマイクを握ったし、東北から来た、熟年夫婦もスピーチした。
大飯原発の再稼動問題なので、関西弁の若者が多かった。京都から来た人は、「東京まで来て、再稼動反対だなんて、こんな情けないこと、言わさんでくれよ」と、その彼は怒りのあまり、泣いていた。

政府の「冷温停止」宣言を信じているような人には、なぜ1000人をこす人々が「原発再稼動反対」しているのか、意味すら分かっていないらしい。
冷温停止しているはずの、福島第一原発の四号機が「冷却が不可能」になっている。知ってますか、これ? 「冷温停止」しているのに「冷却」が必要なんて、おかしな話と思わない?

それと同じような詭弁が、大飯原発再稼動へのプロセスでは、繰り返された。
完成してもいない設備や施設を、「これから作ります」の一言で、OKにしてしまった。これはもう、仕事ではない。まして、さっき書いたように現在進行形の大事故にすら、どうとも手のうちようがない連中が、「今度は大丈夫です♪」なんて、口が曲がっても、言ってはいけない。

どの業界でも、そうでしょ? 仕事のできないヤツが大失敗したあげく、「次は、きっと大丈夫ですよ」と言ったって信用できないよね? 僕は、そこに腹を立てていた。


抗議に集まった皆は、主催者の言葉を聞いて、地下鉄の駅へ向かった。
駅の入り口に立ちどまって、「再稼動反対!」とコールしている男性がいたので、僕も立ちどまり、彼につづいた。何人か、女性の声も加わった。
最初の男性が、地下鉄の駅へ消えたので、僕が残って、首相官邸の窓をにらみつつ「再稼動反対!」と、ぐしゃぐしゃになったプラカードを、高く掲げた。
駅へ向かう何人かが、コールに加わってくれた。今度は、僕が彼らにつづいた。

やがて、僕ひとりになった。「再稼動反対!」という言葉は、すでに思考を経由していない。
「お前らのズサンなクソ仕事が許せない!」――訳すると、そんな感じだろう。
集会のあった方角で、かすかにコールが聞こえる。僕は、プラカードを首相官邸の方へつきつけ、「再稼動反対!」と叫びながら、その場所へ向かった。

そこには、マスコミから取材を受けている人が、数人いるだけだった。警官にからんでいる人もいたけど、警察は終始、協力的で親切だったので、逆恨みはよくないと思った。
横断歩道の向こうの暗闇を見ると、急に雨の冷たさが、身に染みた。
「このまま、新幹線で福井県まで行っちゃうか?」――30代のころは、結婚する前の妻に、新幹線で会いに行ったことがあった。失恋したみたいな気持ちだった。

地下鉄の入り口へ行くと、まだ帰りづらそうな人たちが、2~3人いた。「再稼動反対!」と、僕は、もう一度、首相官邸を振り返った。本当に、未練がましい、負け惜しみだ。
こういうとき、夜の女たちは、慰めてはくれない。だから僕は、三鷹の自宅へ直帰した。仕事が待っている。明日の都庁デモは……今は、そんな気分ではない。

「こういう世界であって欲しい」――そのような理想を持たぬ者は、楽である。
負ける可能性があるからこそ、勝利という概念をイメージできるのだ。仮に負けたとして、それを「ま、世の中こんなもんさ」と冷笑できる者は、その勝利のイメージも、また貧しく捻じ曲がっている。

僕は、自分の身体をつかった行為が敗れたときには、声をはなって泣きたい。「くやしいな」「今に見ていろ」と思いたいのですよ。
なので、原発の話題は、まだ続きます。

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コメント

廣田さんお帰りなさい。言葉がみつからないです。今日の私は雨に濡れることもなくTwitterや中継にかじりつく何もしてない人でした。再稼働決定の報もミサイルも全てTwitterで知りました。TVを信じてる=冷温停止を信じてる無関心層との距離は開くばかりと感じます。
悔しくて泣きそうだけど廣田さんに同意。声を出して泣いていいのは、やっぱり体を使って動いた人だけだと思います。。。乱文でごめんなさい。

投稿: くりか | 2012年4月14日 (土) 00時45分

■くりか様
ネットの世論調査を見ると、「原発がなくなれば気が晴れるけど、どっちでもいいや」的な、他人事の人たちが、圧倒的に多い気がします。

僕は、ネットでだけ「脱原発」とか言って、デモにも抗議集会にも出ない人は信用していません。ネット限定での世論をつくる分には、役立っているかも知れませんが……。
ジュリーとか坂本龍一とか、決して来ないので、まったく信用してません。

>声を出して泣いていいのは、やっぱり体を使って動いた人だけだと思います。。。

泣いてはいませんが、デモに出れば分かりますよね。「こんな恥かいて、こんな思いしてまで、原発問題には関わりたくないな」って。
それを確かめるだけでも、デモには意味があると思います。

今日の抗議活動でも、黙っている人はいたし、途中で帰る人もいました。それで、いいんですよ。
肉体こそが、最強・最後の武器です。それを痛感しました。

投稿: 廣田恵介 | 2012年4月14日 (土) 01時18分

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