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これといった予備知識もなく、なんとなく、ケチャップいっぱいのハンバーガーの香りがしたので、『SUPER 8/スーパーエイト』を借りてきた。
80年代のSFXブームの頃に見たら、「またすごい映画が来たぞ!」って、大騒ぎしただろうな。完全に、中高校生のころの自分が、憑依していたよ。
それは、いまの45歳の肉体を、映画を見ている間だけは離れられたわけであって、それはちょっと、複雑な気分だった。
『未知との遭遇』は、小学生の僕には、「信じられないほど大きなUFOが出てくる」「ポスターが神秘的でカッコいい」ものであって、それで十分だった。
だけど、中年になってから、ディレクターズ・カット版を見てみたら、どうでもいい知識が邪魔をしてくる。「これはヒッピー・ムーブメントが影響してるんだ」とか、「まずは前史としてニューシネマがあったんだ」とかさ。
『スーパーエイト』は、年寄り独特の垢というか、クソ知識をいっさい思い起こさせず、ただひたすら、マット・ペインティングで描かれたような田舎町の、寂寥とした夜景が懐かしかった。
そして、おそらくは見終わったあとに「ああ、イマイチだったなあ」とガッカリするのであろう“期待感”さえも、あの頃のままなんだよ! 「あれ、イマイチだなあ?」って気持ちは、ようは「一種の満足感」なのだよ。
なんだかオチがよくなかった、期待したほどではなかった……それがどうした?と、俺は言いたいね。ガックシな映画ほど、人と話せるフックが多いってことさ!
不完全な映画ほど、実は創造的なのだ! 分かるかね、採点マニアの諸君!
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だけど、自分自身の「懐かしい」という気持ちとは、どうにかして戦わないといけない。
「懐かしい」は、無条件な肯定なんだけど、それは「過去の自分を否定したくない」防衛本能でもある。
カラオケで、10代のころに聞いていたアニソンを歌ってもいいのは、やっぱり、それを共有できる人たち同士。そして、酒が入ってもいいような状況ならば、許されるんだろう。
「昔のアニソンは、ちゃんとキャラクターの名前を連呼して! 必殺技の名前も叫んで! みんなで、いっしょに歌えたんだよ!」って力説されると、「僕は、この人たちのグループじゃありません」って、逃げたくなっちゃうよ。
12~15歳ぐらいのころって、耳も機能的に優れているし、そりゃあ、鮮明に聞こえたと思うよ。
僕は22歳のころ、失恋したショックで『第二の性』を、すごい勢いで読破したんだけど、今はムリだろう。だけど、その体験だけは、なんらか形を変えて、いまの心を形成しているんだと思う。
「いやー、『第二の性』、すごく懐かしいっすよ!」とか言ったら、ボーヴォワールにひっぱたかられそう。
ようは、「その瞬間、最も効果のあるドラッグを探せ」というだけの話で、ある晩は、「懐かしい歌」が、よく効く薬だったりするんだろう。
だけど、その晩だけしか効きませんから。
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昨夜は、雨がふっていたにも関わらず、霞ヶ関を横断する(関電前も東電前も通過)再稼動反対デモに、なんと700人も集まったらしい。3時間も歩いたみたい。
というか、今週は、連日なにかしら抗議活動がある。金曜日も、もちろん!→■
僕は、後期高齢老害知事が大嫌いなので、土曜日は都庁デモにも参加したい。→■
だけど、再稼動反対もなにも、いまだに「全国の原発がフル稼働している」と思い込んでる人がいるから、困ってしまう。
北海道以外の全原発が止まっているのに、計画停電さえ起きない。それが「答え」だよ。
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コメント
廣田様
『SUPER 8/スーパーエイト』、自分も見ました。
最近の作品なのに、既に古典の香りといいますか、数ヶ月前に見たのに、『E.T.』や『未知との遭遇』と並べて思い出してしまう感じです。
80年代、思春期に洋画を見ていた人なら、「あれ、イマイチだなあ?」って感想まで含めて、愛しく思うのでは?
あと、個人的には主人公がモデラーなのも、見逃せないポイントですけどね(笑)
それと、スリーマイル島原発事故にちょっと触れるところがチクッとしました。
>だけど、自分自身の「懐かしい」という気持ちとは、どうにかして戦わないといけない。
僕は、あまり楽しい青春時代を送っていないので、「懐かしい」って感情は人並み以下です。
でも、何かの拍子に「懐かしい」、「あの頃は良かった」という思いに飲み込まれたら、もう一歩も前に進めない気がしますね。とくに、今の時代は。
>僕は、後期高齢老害知事が大嫌いなので、土曜日は都庁デモにも参加したい。
雨らしいですが、僕は行きます。
発電方法ぐらい、俺達に選ばせろ!ですよ。
口先では男らしいこと言ってますけど、フェアじゃないですよ、やり方が。
投稿: かまた | 2012年4月12日 (木) 21時44分
■かまた様
この映画には、「押してほしくなかった」快楽のツボを押された感じです(笑)。
>80年代、思春期に洋画を見ていた人なら、「あれ、イマイチだなあ?」って感想まで含めて、愛しく思うのでは?
確かめたわけではないですが、いま、映画の見かたを窮屈にしている偏屈者たちも、僕ら世代という気がします……。
>主人公がモデラー
塗料のビンが、パクトラみたいでしたよね(笑)。
「模型をつくる」「映画をつくる」=「現実のニセモノをつくる」行為が、作品と多層構造になっていて、何とも不思議な気分でした。
>でも、何かの拍子に「懐かしい」、「あの頃は良かった」という思いに飲み込まれたら、もう一歩も前に進めない気がしますね。
311前は、80年代のキラキラした思い出だけで、年をとっていけたんです。人生を、全肯定できました。
趣味は趣味としておいとくとして、自分の値打ちは「今」にしかないことに気がついてしまった。
「明日、何かする」ために、「今」を生きているような。「今」は100年後、1000年後に通じているんですよ。
>口先では男らしいこと言ってますけど、フェアじゃないですよ、やり方が。
「年だから」で許してはイカンですよ。
無駄に年くった男は、余計なことばかりして、誰の役にも立たない。情け容赦は、無用です。
投稿: 廣田恵介 | 2012年4月12日 (木) 22時12分
廣田さん雨降ってきましたね。今日は家を空けられずTwitterや中継で官邸前見ながら歯ぎしりです。人すごいですね。再稼働がスムーズにいかないのはこうやってアクションする声が少なからず行く手を阻んでいるからこそ!雨で風邪引かないで下さいね。明日の都庁は仕事終わりで次第行きたいと思ってます。
投稿: くりか | 2012年4月13日 (金) 20時02分
■くりか様
いま、ずぶ濡れで帰宅しました(傘なかったので)。
抗議活動が警察の好意で延長され、その矢先に、「大飯原発再稼動、決定」のニュースが飛び込んできました。
今からブログに書きます。
そして、明日の都庁デモは休みます。友人がノリノリで行くので、ご安心ください。
投稿: 廣田恵介 | 2012年4月13日 (金) 21時42分