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オトナアニメ Vol.23 10日発売予定
●『偽物語』インタビュー
新房昭之監督、板村智幸チーフディレクター、飯島寿治美術監督、渡辺明夫さん(キャラデ、総作監)に、インタビューしました。一部は、ページ構成も手がけています。
特に、ずーっとお会いしたかった渡辺明夫さん。「そもそも、キャラデとは何か?」という面白い話が、聞けました。
『偽物語』の第1話、良かったですね。確立されたスタイルを、熱量で乗りこえていっている感じがしました。
●『輪るピングドラム』解析
まずは、後期オープニングの解析。それと、絵コンテを使って、第1話から後半にかけての伏線を探る記事を、構成・執筆しました(6ページ)。
ページをつくった時点では、最終回までのシナリオと22話までの絵コンテしかありませんでした。コンテを見ている間に泣いてしまって、最後のページの構成を、ぜんぶやりなおしたんです……絵が小さくて、ごめんなさい。
●『輪廻のラグランジェ』 石原夏織インタビュー
放映は、いよいよ今夜から。インタビューの最後、「その若さで、こんないい作品に出会えて、あなたはラッキーですよ」とお伝えした。
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「食べログ」のやらせレビュー問題。
カネのために、思ってもいないことを書かせる食品業者と、あっさり請け負う業者。この良心の欠落は、いまの日本人の全般的な特徴といえる。
僕らの仕事は、基本的に作品のよいところを見つけて、伝えること。
ただ、「ちょっとでも不利なことは書かないでほしい」「われわれの思うとおりに書いてほしい」と、いきすぎた要求が横行しているのも事実。そのたびに戦ってるんですよ、こっちは。良識ある編集者は「ここまで記事の内容がねじ曲げられるのは、不本意だ」と、一緒に戦ってくれる。
この仕事にストレスがあるとしたら、雑誌を広告程度にしか考えていない権利者がいること。そして、話し合う時間が、いつも少なすぎることです。
以上の問題は、実は「話せば分かる」レベルのことだと、私は思っています。
あるいは、メーカーさんから公式に「広告をつくってください」「宣伝に協力してください」とお願いされる場合。その時は、作品の長所を前向きに見つけて、誠実に書くこと。
思ってもないこと、ダメだと思っている部分を「よい」などとは書いてはいけない。フラフラしてちゃダメ。雑誌のレビューよりも、強靭な主体性が求められます。
いちばん正しいのは、「誠意をつらぬけない仕事になりそうだな」と予感したら、「僕には出来ません」と、潔く下りること。
自我のためだけ、カネのためだけに仕事している人は、これができない。
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「食べログ」の話題に戻ります。
こういう問題が発覚すると、「しょせん、世の中はそんなもんだ」と刹那的なあきらめを感じる人が多くなる。それが最大の弊害。悪魔に魂を売った飲食店のダメージなんて、二の次です。世の中の人が、ニヒリズムに傾いてしまうことのほうが問題です。
――いろいろ、汚い世界を見てきたよ。出版の世界にも、カネのために人を売り渡すような連中がいる。そいつらは、作品の真価を見出して、読者の心を豊かにしようなんて、心にも思っていない。
それでも、どんなすさんだ光景を目の当たりにしても、理想を失わないことです。失ったら、あいつらと同じになってしまう。
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コメント
> 誠意と理想
「持ってて当然・アッタリマエ」な事ではありますが、組織の下っぱとして目先の仕事に誠意を見せていても(実際はブーたれてもいますが)、その先の理想は考えも及ばず、上は理想を示しても実行は下に丸投げだったりと、反省することは多いです。
「誠意」「理想」は別々な時に考えがちなので、こうやって一つの文脈に組み合わせると、大変面白いと感じる次第です。
投稿: 印度総督 | 2012年1月 9日 (月) 21時49分
■印度総督さま
先日は、イベントへお越しいただき、ありがとうございました。ゆっくりお話したかったのに、席を離れづらく、失礼をしました。
「理想」って、「こうなったらいいなあ」的な長期的展望ではなく、日々の仕事の中で「こうした方がベターだ」と実働させつづけていくものだと思います。
本当に、毎日のちょっとした工夫や気づかいの積み重ねが「理想的に生きる」ことだと思うのですよ。
>「誠意」「理想」は別々な時に考えがちなので
僕は語彙にとぼしいので、どんな言葉でも、一緒に出てきてしまうのです。「誠意」は好きな言葉です。
投稿: 廣田恵介 | 2012年1月10日 (火) 01時57分
ご無沙汰しております。
「輪廻のラグランジェ」先ほど関西でも第1話が放送されました。軽快なテンポで進んでいくストーリーと、今まで見たことのない言語でまとめられたメカデザインに釘付けでした。主役機をじわっと見せてくれるところなんて、デザイナーへの敬意が感じられてぐっときますね。これからの展開を楽しみにしています。廣田さんの名前もエンディングに出ていましたね。見ていて嬉しくなりました。
食べログの件は、発注した側もどうかと思いますが、そういう情報を享受する側がなければ成立しなかった話ですよね。知人のライター/編集者は「うまい店は自分で探すもんだ」と常々言っています。それは時間がかかるし投資も必要な道ですが、真理かもしれません。
投稿: 綱本武雄 | 2012年1月10日 (火) 03時11分
■綱本武雄さま
『ラグランジェ』、面白いですよね。いろいろな分野から成果物を集めてきて、そのどれも無駄にすまい……という姿勢に好感をもっています。三回ぐらい、繰り返してみてます。
僕は「ファン第一号」なので、名前がクレジットされるのは複雑な気分ですね……。ただ、たとえ仕事で絡んでいようと「こりゃあ、ダメだね」と思ったら、僕は誉めないで黙ってます(笑)。
>食べログの件は、発注した側もどうかと思いますが、そういう情報を享受する側がなければ成立しなかった話ですよね。
その通りですね。求めるユーザーがいたからこそ、やらせが成立してしまったわけです。
ネットでは、好評・悪評に関わらず、手近なところで、簡単に答えを見つけようとしてしまいがちです。
ネットにあるのは、あくまでも要約された二次情報。自分の五感で体感していることが一次情報で、これにかなうものはありません。
投稿: 廣田恵介 | 2012年1月10日 (火) 12時00分