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オトナアニメ年鑑2012 14日発売予定
●論考「新房昭之・幾原邦彦の“作家性”に耽溺する」
これ、たぶん僕の記事だと思うんだけど……論考? そういう文章は苦手なので、いつものように、場面カット中心のレイアウトにして『輪るピングドラム』と『魔法少女まどか☆マギカ』について構成しました。
●『輪るピングドラム』第9話「氷の世界」の絵コンテ・演出・総作画監督を務めた武内宣之を直撃!
これはインタビュー+絵コンテ解説です。武内さんは、たいへん話の面白い方でした。「こんな風に話せたら、どんなに楽しいだろうか」と、憧れました。小さいころに会った、面白い話をしてくれるオジサンという感じで。素敵です。
インタビューの合間、3ページぐらいを使って、絵コンテ解説をしていますが、藤津亮太氏の「アニメレビュー勉強会」のときみたいに、もう肉声で伝えたいんですよ。「こんなに面白いんだぞ!」って、もう空気を使いたいというか、目の前で説明したほうが伝わるのかな?とか思ったりしている。
それと、「誌面デザインをカッコよくしてね」と編集に言っていたら、ちゃんとこの別冊からデザインが変わってきました。「ウザイから、廣田さんは、もういいや」と切られるのを覚悟で言ってみたんですけど、ちゃんと聞いてくれましたね。
でも、だから、「オトナアニメ」は続いているんですよ。人の話を聞くから。読者にどの記事が人気あったかも、ちゃんと把握してます。いい編集部ですね。
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僕が「若い」と呼んでいた編集者たちは、そろそろ、30歳を越えつつある。
彼らは、あいかわらずの激務の中で、ボロボロになりながら職場で寝起きしている。それでも、地獄の底から「ちょっと頼みたいことがあるんすけど……」と電話してくる。
彼らに相応の見返りがあるとは思えないし、僕の原稿料だって、高いわけじゃないですよ。でも、地獄まで付き合いたくなるような、不思議な輝きを、彼らは持っている。
一方、ここ何日かで人から聞いた話では、「若い人は割り切りが早い」と。
そういう若者とは仕事してないので、なんとも言えないけど……飽きっぽいのも、若さの特権だと思う。波乗りするように、どんどん思想をとっかえひっかえ、いろんな人に心酔したり覚めたり。それが「若い」ってことでもある。
でも、その人が言いたいのは「今の若い子たちはビジネスライクだ」と。若い子ほど、損得にえらく敏感なのだ……と言われると、思い当たらないでもない。得することがないと思ったら、さっさと消えてしまう。ちょっとでも損しそうなら、「さわらぬ神に祟りなし」。
こう思ったことはあるな。「初めから未熟さを売りにするな」と。
自称2次コンが口にする「3次元なんて興味ねえよ」も同様で、それを前提にするのは姑息だよ、とは思う。
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僕らが若いころはバブルで、東京に住んでいることは誇りで、その感情は「懐かしい」より「愚かだった」に変わりつつある。
ギョーカイ人が、麻布や六本木でよろしくやっていて、それに乗らなきゃ損だ……と、ありもしない幻想に酔っていた。
それはリアルな損得ではなく、ヴァーチャルなものだった。より幼稚だったんだ。
そして、若い人たちがビジネスライクに生きねばならないとしたら、そんな価値観に僕らが加担してないとは言い切れないわけで。
少なくとも、「社会に無関心」という形では、間接的に加担してきた。なので、僕らは――僕は、損をしても仕方がないのだ、と思っている。
少なくとも、あぐらをかいて安全に生きたいとは思わない。
人生も後半戦に入ると、防戦一方になる。失うことが、当たり前になっていく。
その時になって、若いころに精神的にむさぼったあれこれが、途方もない強度をもって、君を支えてくれる。
だからせめて、「貪欲であれ」とは言っておきたいかな。
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コメント
内田樹さんのブログの
「平松さんの支援集会で話したこと」
というエントリーが
「今の若い子たちはビジネスライクだ」
についての一つの回答かもしれません。
「消費者になってしまった生徒」には唖然とします。
投稿: DH98 | 2011年12月11日 (日) 13時21分
■DH98様
そのエントリー、検索して少しだけ読んでみました。http://blog.tatsuru.com/2011/11/24_2042.php
引用させていただくと、「60点で済む試験のために、70点分、80点分の勉強をするのは、恥ずかしいと思っている。それは100円の価値しかない商品に200円、300円を払う消費者と同じように愚かなことだと思っている」。
――非常によく、思い当たりますね。絶対確実な対価だけを狙ってくるんです。
「若いやつは、誰でも可能性があるよ」と、僕には言い切れなくなってきました。
投稿: 廣田恵介 | 2011年12月11日 (日) 14時04分