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2011年11月30日 (水)

■1130■

約6年ぶりに、女友達と会った。
Cawh04b4母が死んでから、花をたずさえて、三鷹に来てくれる人が多くなった。
僕の母は威勢のいい性格で、なぜか、僕の女友達も、元気のいい人ばかりだ。沈痛な面持ちで思い悩んでいる女性も、魅力的だとは思うのだが……。

その女友達とは、かつて、少し仕事をしただけなのだが、およそ僕とは接点のありそうもない、華やかな雰囲気の人だった。
6年たって、髪の色は黒く戻っていたが、喜怒哀楽の激しさは、あいかわらずだった。一気呵成に話したかと思うと、少し下を向いて、何か反省するかのように、ぼそぼそと口の中で話をつづける癖。

母を殺されてしばらく、僕は誰と会っても、必要以上に話をした。人の心には、そういう防衛機能があるらしい。
今は、違う。今はもう、話すほどのことが無いんだ。だから、ただ穏やかで、思慮深い男のふりをする。

確か、20代の終わりごろから……何があっても、傷つかない心を作り上げようと努めた。それまでは、泣いてばかりいる男だったから。
その作業の多くは、自分の価値を、低く見つもること。自意識という汚れを、なるべくこすり落として、真っ白な心でいることだ。もちろん、そう、うまくは進まない。
しかし、離婚が追い風になった。離婚を決意した日から、僕は、悲しむことが少なくなった。

ひとりで泣いたのは、母が殺された日だ。
あの日、数年間、我慢していた気持ちが、一気に戻ってきた。


女性の編集者とは、たいてい上手くいかない。
ひとりだけ例外がいて、ひょっとしたら、最後の仕事かもなあ……というムックの打ち合わせをしてきた。

彼女は自分のプランを話したあと、「どう思います? これじゃ、ダメだよねえ」。
でも、そのプランの中には、もう変更できないほど進んでしまったところと、まだまだ引き返せる部分の、両方が含まれているのだ。
彼女が「ダメだよねえ?」と聞かなかったら、僕がそのまま聞き流していたら、本当にダメになるだろう。――いい打ち合わせだ。

「なんだ、勝てるじゃない」と、僕は切り出す。だいたいな、そうやって人の話を聞く態度のあるヤツは、勝てるんだよ。
負けるヤツは、ほぼ間違いなく、人の話を聞かない。自分の信念にかじりついて、その重みで沈んでいく。……ま、男に多いね(笑)。


ひさびさに中央線に乗ったら、座席の上にマスクが、下には缶コーヒーの空き缶と紙片が散らばっていた。
降りるときに片づけようと思ったら、そのマスクの上に、どっかと中年男性が座ってしまった。

われわれが公共の場にゴミを捨てているかぎり、放射性物質をはらんだ瓦礫は拡散される。それは自治体の方針などではなく、「日本人の性格」だからだ。
国や電力会社は、国民の性格を利用したにすぎない。

利権は、何も原子力帝国にかぎらない。どんな業界にもあるよ。「リスクを回避し、せめてウチだけでも儲けよう」と、誰もが考える。「いい品質のものを提供するから、その分の儲けさえ出ればいい」と考える人間は、とても少ない。

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