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2011年11月19日 (土)

■1119■

韓国映画『息もできない』。
1119index_615400_3吉祥寺バウスシアターで『マイマイ新子と千年の魔法』を上映していただいたのと同時期に、同じスクリーンで上映されていて、気にはなっていた。
DVDを借りてきて、深夜に見はじめた。ペ・ドゥナの魅力を引き出したポン・ジュノ監督が絶賛しているだけあって、見事な女優映画だった。

監督・主演は、ヤン・イクチュン。彼の演じるチンピラが、強気な女子高生にからまれ、やがて仲むつまじくなっていく。その過程が、本当にすばらしい。女子高生役はキム・コッピ。顔の造形より、表情で惹きつける。シーン展開につれて、じわっと味が出てくる。

僕が好きなのは、キム・コッピが、ヤン・イクチュンに名前を尋ねるシーンだ。
その前のシーンで、名前は分かっているので、キムは思いだし笑いをしてしまい、「確か、サンフンでしょ。子供っぽい名前」と言ったあと、彼をからかうように、小声で「……サンフン」と呼んで、また笑い出す。
その笑い方、間合いが、すばらしく愛らしいので、予告編は見ないように。いきなり、本編を見てほしいですね。


その名前を尋ねるシーンから、キム・コッピはどんどん良くなっていく。寺山修司だったか、「どんな物語でも、美しいのは名前を教えあうところだ」。その通りなんだよね。
2人は母親を事件で失っていて、基本的には血なまぐさい話です。ラストシーンも、苦いというか痛いというか……僕は、ドンヨリした気持ちになったけど。

でもね、ストーリーだけが、映画じゃないですから。
主演・監督のヤン・イクチュンは、キム・コッピに恋していたと思う。少なくとも、撮影中は。編集も彼だから、キム・コッピのアップは長尺だし、表情をよく捉えている。ちょっと、やりすぎなぐらいに。
そうやって、舞台裏というか、出演している人、つくった人の人生に思いを馳せることが、僕にとっては映画を見る楽しみ。

僕の人生は、一人暮らしの方が長くなりつつあるので、よけい体温に敏感なのです。


中学校のころだったと記憶するが、生徒会かなにかの議論中、「自分の意見を持つのはいいけど、押しつけになってはいけないから……」。そういう意味のことを言われた。
たぶん、教師に刷り込まれたんだと思う。反対意見があるなら、戦わせればいい。「押しつけになってはいけない」、つまりそれは、自分の意見をもてない多数の弱者に配慮しましょう……という「気づかい」。

「国民がパニックになるといけない」という気づかいで、放射能拡散情報を遅らせる。
「風評被害にあう人がいるから」という気づかいで、汚染食品を流通させる。

みんな、「気づかい」サイドに立ったほうが攻撃されなくてすむから、放射能も汚染食品も「たいしたことないよ」「まあ、大丈夫だろ」と、話を合わせる。汚染地域や農家を思いやって……ではない。
自分が責められたくないから、「意見をもてない弱者」にあえて身をかくす。

中学校のころから、みんな横並びが大好きだったから、別にいまさら驚きもしないんです。


「子どもたちを守れ」というのは、それは彼らの人生に賭けたいからです。
子ども一人が、仮に80年、生きてくれたとする。その80年の間に、どれだけのことをやってくれるか。また、同じように人生を重ねた人たちと、どう出会い、彼らと何を為してくれるのか。
可能性に可能性を、かけ合わせる。そこにしか、希望はないんです。

僕とか、もう老境にさしかかっている大人たちに、可能性なんて残されているんでしょうか。できることがあるとすれば、「子どもたちを守れ」ですよ。
そして、可能性イコール希望ではありません。絶望に転がることも、考慮しなくてはいけない。それでも、ないよりはあった方がいいのが「可能性」です。

子どもたちが大切なのは、彼らの人生に期待するからです。その頃、僕らはもう死んでいるけど、だからこそ……なのです。

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