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2011年10月31日 (月)

■1031■

本日がシメキリなので、再告知。
藤津亮太氏の主催する「第二回アニメレビュー勉強会」です。→
現状20名ぐらいで、まだ余裕あるみたいなので、迷っている方は急いで!

廣田は、12時回のゲストです(15時回は上田繭子さん)。
商業本に書いていると、時として「判で押したような」レビューを求められることがあります。そういう時は、己を殺して書くのです。しかし、思考は判で押せません。
レビューは、これから作品を見る人に期待を抱かせ、世の中を少し明るくするものですから、書ける人が多くなるのは、喜ばしいことです。

僕はそう思って、文筆業をしていますが、勉強会当日は、ヘンな話をいっぱいすると思います。よろしくお願いします。


さて、今日は「除染」の話をします。

いわき市で『マイマイ新子と千年の魔法』上映会をやったおかげで、当地の知り合いが増えました。その中のお一人から、「子どもの通学路を、除染してもらえることになった」と喜びのメールが来ました。
他にも、「ちかくの川でストロンチウムが検出された」とか、あるいは「この辺りのアスファルトは0.07μSvぐらい」と、意外な情報が聞けました。
いわき市と言っても、北のほうは30キロ圏内ですが、首都圏より線量が低いところもある。すっごく広いんですよ。だから、「まだ福島に住んでるの? 早く避難を!」と、それこそ判で押したように叫ぶ人には、違和を感じます。

僕は最初、自分の居住圏内にある玉川上水の緑は、汚染されてないと信じてたんですよ。
でも、その後に出てきた情報から、玉川上水どころか、この部屋のベランダの排水溝や換気扇、ぜんぶ汚染されてると考えたほうが、自然だよなあ……と(笑)。

そうあきらめた時、頭に浮かんだ浅知恵は、「せめて、井の頭公園や玉川上水の一部だけでも除染しよう!」「地元の友だちと一緒に、除染のためのNPOをつくるのだ!」という、壮大すぎるプラン。
すでに除染専門のNPOがあることを知ったのは、友だちに呆れられた後でした(その話をした春ごろは、節電のために吉祥寺の街は暗かった)。

ともあれ、自分の故郷ぐらいは、何とか綺麗にしたいと思うんです。だって、くやしいじゃないですか。


で、そのいわき市の方からのメールを踏まえたうえで、ETV特集「果てしなき除染 ~南相馬市からの報告~」を見たわけですよ。→コレ
Etv1030_03b国会でのブチキレぶりが素晴らしかった、児玉龍彦教授が出演。

番組を見ていて「?」と思ったのは、「除染しないと、子ども達が帰ってこられない」という、地元の方の発言。
それは、地域のエゴでしょう。僕は、三鷹・武蔵野がゴーストタウンになっても、ひとりで除染をつづければいいや――ぐらいに思っていたので。
早い時期に逃げた人、これから避難する人に、戻ってきてほしいとは思わないなあ。ただ、残るんなら、気休めだろうがなんだろうが、除染を……くらいの気持ちでいたんですが。

ともあれ、原発事故は、人間関係をズタズタにするよなあ……と、番組を見て、あらためて思ったのでした。


児玉教授は、SPEEDIの公表を遅らせた原子力安全保安院を「悪意があるとは言わないが、能力がなかった」という責め方をしていました。
僕も、そう思います。すぐ政府や東電の「陰謀」にしたがる人がいますが、彼らは、謀りごとが出来るほど、優秀じゃありません。たんに無能なんすよ。

ものすごいミスしちゃってるのに、気がつかないか、気がつかないフリする人って、どこの職場にでもいるでしょ? 後から、みんなにバレて大騒ぎという――ああいう困った人が、恐竜的に肥大しちゃったのが経産省や東電だと思ってください。

……いろいろありますが、今日は、新しい仕事の打ち合わせ。吉祥寺です。

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2011年10月27日 (木)

■1027■

最初に告知です。
藤津亮太氏が主催する「アニメレビュー勉強会」の第二回に、ちょこっとゲストで出ることになりました。12時の回のみ(15時の回は上田繭子さん)。詳細→

僕は文章だけでは勝負できないし、してないと思うので、一度はお断りっぽい返事をしたんですけどね。
「レビューお願いします」という依頼には、いつもビビってしまう。

しかし、多分、おかしな話をすると思うので、ご興味のある方は参加してください。参加シメキリは、31日(月)です。


あまりに仕事が溜まりすぎているので、隔月連載の記事を「一回お休みしましょうか」と、編集者が気を使ってくれた。
その合間に新規の仕事を請けたり、酒を飲みに行っているので、なんとも複雑な気持ちですが……。

出版業界の、ほぼ同業の人とも飲みに行ったのですが(ほぼ同業というのは、その人は経営者でもあるので、完全に同業ではないという意味)、いろいろ合点のいくことがあって。
僕らは、アニメとかプラモデルとかの記事を、40歳をすぎても書いているけど、それぞれ原体験があるんだよな……。

つまり、そろそろアニメもオモチャも卒業しなきゃいけない歳になって、周囲から「幼稚だな」と笑われながらも、けっして離れられなかった。離れたら、たぶん、頭がどうかなっていた(笑)。
それぐらい、過酷な家庭環境から、アニメやオモチャは、自分を救ってくれたような気がする。実体験とフィクションとは、相互に補完する関係にあり、切り離せない。
少なくとも、僕らの少年時代には、逃避せざるを得ない現実があったんだ。

前にも書いた、「アニメはセラピーになり得る」という話とも、ぴったりリンクしてくる。
実写とアニメとでは、アクセスする精神領域が違うのではないだろうか。


そんなことを考えた翌日、今度はまったく異業種の人と飲み。
実は、放射能漏れ以前から、工場跡地に残された毒物などは、かなりの割合で東京に埋まっている……とか、怖い話いろいろ。
「だから、今さら放射能でビビるな」とか、そういう話では一切ない。

東村山市の小学校で、2.153μSvを観測……東京の西は大丈夫だと、根拠もなく思っていたんだけどなあ(これは、市が主体的に測定した結果)。
僕がいつも、枯れた花々を埋めにいく玉川上水。枯葉もあるし、思い切り線量が高そうなんだけど、「自分の地元は汚染されてない」って信じたいもんですよ。

福島県の女性たちが、経産省前で座り込みをはじめました。→
若者たちがハンストをやったときは、「テロ行為だ」「卑怯だ」と批判する大人がいたけど、経産省のボンクラ職員を目の前にしてごらんなさい。そんな紳士的なことは、言ってられなくなるから。

3月下旬、三鷹駅で、大きなカバンを持った若い女性や親子連れを見た。
だけど、残らざるを得なかった人たちと、僕は話をしてみたい。三鷹・武蔵野の方たちへ。→
おお、賛同人に高畑勲さんの名前が! あと、主催のママさん、美人だ美人!(リンク先参照)
……って、こういう気持ちを忘れてはいかんよ。泣く場所、怒る場所をまちがえてはいけない。

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2011年10月24日 (月)

■1024■

モデルグラフィックス 2012年一月号 明日発売予定
1024mg_5
●巻頭特集 I ♥ GM Secondo Piatto
「GM好きのたわごと」的な巻頭文と、「量産機に寄り添うSFSのルーツと進化をめぐるサブフライトシステム礼賛」というページを担当しました。

折りしも、モデグラ誌に関するツイートで誤った情報を伝えてしまい、多くの方に、ご迷惑をおかけしました。
しかし、おかげで、自分と世代や価値観の違うガンダム・ファンやガンプラ・ユーザーのメンタリティに触れることが出来ました。

モデグラ誌に書かせてもらっている記事は、常に「偏愛」のようなものを求められている気がします。
私自身はボコられてもいいので、「いや違うだろ」「俺はこう思う」と言っていただけたら、それが、この本の役割だと思っています。


土曜日は、関西在住のイラストレーター、綱本武雄さんと再会。綱本さんの大学での先輩にあたる、高名なアニメーターの方を紹介していただきました。
なにしろ作監レベルの方ですから、聞きたいことが山ほどあり、ほとんど質問攻めとなってしまいました。

綱本さんもそうなのですが、「ただ絵を描くのが好き」で終わらず、地元や地域に恩返しできないかと考えているところが、大変素晴らしい。
1024ca2xstn6_2(←綱本さんのご友人の作品。周囲にモノづくりする人が多いと、いろいろ刺激があって、よいですね!)

プロとして足場を固めたあとにやるべきは、その技術を行使して、「新たなプロ」を育てることではないでしょうか。
若い可能性・多様性に賭けて、文化を維持していくこと。ある程度の年齢になったら、それを考えていかないといけない。
自分という個体は、いずれ滅びるのですから、技術や考え方だけは伝授していくべきでしょう。


そうは言いつつも、最近は文化的なものに触れてない気がします。
レンタルDVDでは、『ペイバック』とか『グリーン・ゾーン』とか、人から薦められた作品を見て、それなりに満足感はあるのですが、舞台とかお芝居とか、ぜんぜん……。

今夜も取材で出かけますし、目の前の仕事に、振り回される日々です。
でも、時間ができたらできたで、今度は単行本の仕事が待っているので、おいそれと出かけたりできないのです。

綱本さんからは、母のために、豪華な花をいただきました。

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2011年10月21日 (金)

■1021■

この二~三日は、仕事しては風邪で倒れ、治ったかと思うと仕事の直しが来て、また風邪をひいて……の繰り返し。
今週末から週明けにかけては、いろんな人とお会いするので、風邪ぐらい、何とかしないといかんのですが。

「ヤングガンガン」の見本誌が届きました。
20cavu8vw2『輪廻のラグランジェ』の情報ページ「ラグりん通信」の第三回が掲載されています。隔週連載は、ふと気をゆるすと次のシメキリが来ているので、けっこう大変。

最近は、こういう地味なものか、ヒネリの効いた仕事ばかり来ます。
「好きに構成していいよ」と言われると、自分でもヒネリを入れちゃうし、たぶん、王道というか、ド真ん中には行けない人生なんでしょうね。


昨夜、うとうとしながら、『ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図』の再放送を見ました。
これは5月放映だから、もう5ヶ月前か……福島の農村がズタズタにされていく様を追っていますが、いま見ても辛いです。

最近、気になっているのは、やっぱり食品。
岐阜市で、基準値の三倍近いセシウムを含む牛肉が販売されたとか()。もう、販売されちゃった後ですからね。
もともと暫定基準値が引き上げられているのに、サンプル検査しかしてないので、そりゃこうなるわな……。

僕は今、風邪をひいているわけだけど、何のための健康だろう?と考えてしまう。だって、外食するたびに、寿命を縮めているかも知れないわけだから。
関東のスーパーで抜き打ち測定したら、かなりすごい結果が出たそうです。


もうひとつは、各地の汚染の広がりかなあ……。
足立区の小学校で、3.99μSv(除染ずみ)。葛飾区の公道で、最大0.67μSv(測定地点は公表せず)。
昨夜は『ブラタモリ』の録画も見たんですけど、去年の収録だから、まだ放射性物質が降りそそぐ前の東京なんです。「ああ、うらやましいなあ」なんて思ったり。

作家・ロックミュージシャンの山川健一さんは「ネガフィルムの世界」と表現していたけど、レイヤーが重なっているように感じるんですよ。東京を歩いていると。
「汚染」というレイヤーを外さないと、普通に歩けないような感じです。

あと、これは千葉県ですが、水源地近くに汚染汚泥が搬入されている、という話題。
主婦の方が、ひとりで署名を集めているそうなので、千葉県の方はぜひ。→
僕も協力したいけど、県民でないと、法的効力がないそうです。――今の僕には、こんな戦闘力はないです。風邪だからじゃなくて、他のところで精神力を使ったので。

なので、せめて地元の話題。11月6日、井の頭公園駅集合で、パレードあり。→
地元のことなので、無視はできないです。どうしても、「危険なのは福島」「いや、世田谷だけだ」「足立区だ、葛飾区だ」って、頭の中でラインを引いてしまう。
僕が6月に福島県へ行ったのは、そういうラインを消したいがためだったんです。


……で、特にコレといった結論もないのですが、まずは「誠実に、自分の仕事をやりとげようぜ」という気持ちです。

仕事でお金がもらえるのは、他人の役に立つからですよね。「そういうお前は、好き勝手なことを雑誌に書いているだけだろう」と言われそうですが、それだって、読者さんのためにならないのであれば、方向性を改めるべきです。
決して、クライアントだけを喜ばすためとか、自分のギャラ最優先ではいけないのです。

僕はよく、ティッシュ配りを例えにだすのですが、あれは笑顔で配るから、見知らぬ人に受けとってもらえるんですよ。イヤ~な顔をして配っているとしたら、バイト代のことしか頭にないからです。
「どんな仕事も、他人のため」と意識すれば、世の中、ちょっとはマシになっていくはずだと思うのですよ。

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2011年10月17日 (月)

■1017 ラグランジェ■

昨日は、NISSANホールで『輪廻のラグランジェ』()製作発表会でした。
16cadv2eet_2(ラッピングカーが作られていることは知っていましたが、まさか、こんなお洒落なデザインとは!)

僕が『ラグランジェ』(愛称:ラグりん)で、どういう仕事をしていたかは、具体的には書きません。
同業者なら、何となく察せられるんではないでしょうか。テレビ放映前から関わらせていただくのは、『ノエイン』以来となります。

僕が最初にプロダクションI.Gさんから連絡をいただいたのは、今年5月末です。だから、約五ヵ月の付き合いになります。
昨日の製作発表会が、ひとつの区切りだと思うので、守秘義務を守ったうえで、雑感を。


昨日、ようやく日産自動車によるロボット・デザインが公表され、朝のニュースでも取り上げられたそうですが、私は最初の打ち合わせで、ロボットのデザイン・スケッチを、大量に見せられたのです。
だから、てっきり、シリアスな重たいストーリーかと思いました。なので、終末感のただようキーワードを頭に思いうかべつつ、シナリオを受けとって、帰途につきました(IGは、自宅から徒歩数分)。

だけどまあ、読めども読めども、学園なんです。ジャージ部なんです。だから、「先に女の子キャラだけ出して、ロボットは隠す」という宣伝戦略は、正しいように思えてきました。
ただ、お客さんをだまさないように、後から考えても「確かに部活モノだよな」と思えるような方向で、ビジュアルもコピーも決まっていたんです。
むしろ、自分から割り切って「ジャージ部押し」に加担していったように思います。

ただ、文章を納品して、やっとお金のもらえるのが、私の仕事です。会社員の方と違って、打ち合わせ時間は、お金にならないんですね。
でも、打ち合わせに出ると、プロデューサーの方や宣伝担当の方が、どういう要素を重視しているか、よく分かるんです。なので、皆さんの意向を汲むために、なるべく打ち合わせには出席したほうがいい。
その場で、自分の意見も言えますし、逆に、外部の人間である僕に意見を求められることもありましたし……IGが近所だから、たまたま出席しやすかったんですけどね。

ほぼ毎週、顔を合わせていた各社の皆さんが、製作発表会でジャージを着て生き生きと働いている姿は、ちょっとウルッときました。
だって、「製作発表会、どうしましょうか?」と話している時期は、「ホントにできんの?」という感じだったんです(笑)。ネット配信とか、「本気?」とか思っていて。でも、やっぱり皆さん、プロでしたね。

やっぱり、現場を見ていかないと、人間のことは分かりません。


だけど結局、すごく良かったのは、「ラグりん」が重苦しいシリアス物ではなく、何が出てこようが、青春一直線だったことだと思います(って過去形で語っていますが、放映開始は来年です)。
第1話をご覧になった皆さん、ロボットが出てきても、部活っぽさは消えなかったでしょ?

これが「運命」とか「破滅」とかのテーマだったら……ある意味、5月ごろの僕の気分にはハマったかも知れないけど、気分的に、どんよりしたままだったでしょうね。

だから、この五ヶ月、三鷹界隈で打ち合わせをつづけてきて、その間に、いろいろ気持ちが救われていたんじゃないかって、昨日の発表会で、気がついたんです。
現実が重たかろうが、他のアニメがどうであろうが、このアニメは常に青空、青い海なんだ、と――気がついた人もいるかと思いますが、背景のカゲ色が、黒ではなくて「青」なんですよ。

本放送まで、3ケ月もありますけど、『輪廻のラグランジェ』をよろしくお願いします。

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2011年10月15日 (土)

■1015 ラジウム■

この3日ほど、ダルい系の風邪をひいていて、せっかく予約してあったトークイベント『センムのプラモ・ナイト第1夜 ファインモールド風雲録!』も、断念。
15images明日、『輪廻のラグランジェ』の製作発表会に呼んでいただけたので、そっち最優先で、今夜はダラッと過ごします。
(『ラグランジェ』は、さり気なく私の仕事と繋がっているので、さすがに現地に行かないと……)

来週は、打ち合わせに飲み会と、いろいろあるので、体力温存。


さて、世田谷のホットスポット騒ぎは、「民家の床下からラジウムを発する夜光塗料のビンが出てきた」ところで、幕となったようです。
何十年も、ずーっと放置されたまま、放射線を発していたということになります。

この何週間か、ちょっと奇妙な想像をしています。
つまり、僕は、今でこそ内部被曝を怖れてマスクをしたり、食べ物を限定したりしているけど、とっくの昔に、空気も水も食べ物も「危険」だったんじゃないか?と。
それは農薬がどうとかいう話ではなく、僕らの情報や感覚は、何十年もヴェールをかむったままで、今ごろになって「危険」というアラームが作動しはじめたに過ぎないのではないか。

そんな「原発が事故らなくても、東京はずーっと危険地帯だった」という錯覚に、世田谷の事件は、うまいことフィットしました。
キツネにつままれたような、奇妙な感覚とともに。

世田谷の話を知ったのは、ツイッターでした。そこでは、木造家屋・木の茂み・土が揃っていれば、「高濃度で当たり前」の世界です。ただ、今回はマスコミが大騒ぎしていたので、僕はひさびさに、テレビのニュースを見たのです。ずっと見ていたら「実は、ラジウムだ」って話が出てきた。
テレビで「ラジウムだ」って言われると、ものすごく「つかまされた」感じがする。「仕込みだろ」と思ってしまう。
それと同時に、あろうことか、「なんだ、ラジウムか。意外と、東京に降った放射性物質の量は少ないんじゃないか?」とも思ってしまった。

だから、テレビというメディアは、まだまだ影響力が強大なんです。僕は、バラエティ番組とかグルメ番組は大嫌いなんだけど、「ニュースだけは別だろう」と、どこかで思ってる。
それが、「習慣」ってやつです。


結局、「みんな同じ」「例外は許さない」という学校教育の育んだ国民性が原因だと思うんだけど……柏市の「放射能から子供を守る会」が、活動休止しちゃったんです。
その理由は、周囲との温度差に耐え切れなくなったから、だそうです。

――問題意識を持った側から見ると、意識を持っていない人たちは、腹立だしいもんですよ。「どうして黙ってるんだ?」「早く目をさませ!」って。
でも、その腹立だしい相手をも、間接的に救うぐらいのつもりでないと、自分が、先につぶれてしまうってことなんだろうね。

とりあえず、私はネットやテレビではなく、生身の人たちと話したい。→「 パパ ママ ぼくの 脱原発ウォーク 」 in 武蔵野・三鷹

(C)ラグランジェ・プロジェクト

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2011年10月12日 (水)

■1012 棘■

「お早うございます。何時まで経っても原発と言う棘が刺さっている様で元気が損なわれます。一刻も早く良い方に回転してくれないかと祈るばかりです。有意義な1日を(祈)」
震災・原発事故から七ヶ月目、10月11日の大河原邦男さんのツイートです()。

大河原先生だけでなく、アニメ業界には、フッと思い出したように原発について発言される方がいるので、なかなか気が抜けません。
……誤解されると困るのですが、私はエンターテイメント業界の人たちは、依然として、エンターテイメントをつくりつづけて欲しいと思っています。問題意識のために、手を止めるべきではない。どんな環境下でも、状況が過酷であればあるほど、エンターテイメントは必要不可欠と考えるからです。

東京が危険ならば、西日本に制作拠点を移してでも、アニメ制作をつづけるべきだと、けっこう本気で考えてます。

私自身、ツイッターでは、アニメの話しかしてない。そこに、読者の存在を感じるからです。
ただ、このブログは(HP時代からさかのぼっても)個人の記録と位置づけて、思うところを書いています。


横浜市でストロンチウム90が発見され、ちょっとした騒ぎになっています。
ただ、これはもともと個人の方が独自に計測し、その人が調査会社に依頼し、その結果を、ようやく市が認めたものでしかありません。つまり、横浜市が、積極的に調査したわけではない。だから、最初の発見から二ヶ月も経過してしまった。

学校給食については、あちこちで運動が激化しているように見えます。
そもそも、3月17日以降、食品の基準値が引き上げられたことを知らない大人が、まだ多い。おそらく、給食や牛乳を残す児童をつるし上げている教師たちも、なにも勉強してないんでしょう。
その暫定基準値だって、少量のサンプルを検査しているだけなので、当然、ザルなわけですよ。何しろ、「基準値をこえた放射性物質満載の食材が、流通にのってしまっている可能性」を、厚生労働副大臣まで認めてしまったのだから。(そういう番組をやってくれる分、NHKには受信料を払う価値がのこっていると、僕は思います)。

その暫定基準値のせいで、広島に住むママさんの母乳から、セシウムが検出されてしまった……と中國新聞は伝えます(気になる方は、検索してください)。
もともと広島に住んでいたママさんの場合は、食品による内部被曝らしい。まさか、広島にいて被曝するなんて思わないでしょ? 僕だって、徳島にいる間は「西日本だから絶対安全」と、愚かにも思ってしまったもの。

そして、羽田空港から東京駅へ着くと、マスクしている女の人の多いこと。風邪のせいか、花粉症なのか。
地元の玉川上水では、3月以来、止まっていた箇所でも水が流れはじめました。しかし、台風で舞い散った枯葉はそのままだし、僕は必ずマスクをして、行くようにしています。


でも、「だから怖れろ」とは、僕は絶対に言いません。
今年のクリスマスをケーキで祝うカップルに、「乳製品の暫定基準値を知っているか?」とは聞きません。
「怖れない自由」も選択肢として残されるべきだと、最近は思うようになったのです。……それって、最後の選択かも知れないけどね。

ただ、私は賛同人に挙手したし、何より地元のことであるから、これだけは宣伝します。11/6に「パパ ママ ぼくの脱原発ウォーク in 武蔵野・三鷹」が開催されます()。パパもママもいない独身男でも、歓迎してくれるそうです。

僕は、自分のためにだけ生きたくない――ただ、それだけのこと。

追記:などといっているうちに、世田谷区で2.7μSvのホットスポットが見つかりましたね()。でも、この数値が高いか低いかも分からない人が、ほとんどでしょうね。
■■

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2011年10月 9日 (日)

■1009 徳島紀行■

7日夕方、徳島入りして、翌8日、「マチ★アソビ」でトークショーやってきました。
09can9rccg(←一年ぶりの眉山山頂!)

もともとは、明治大学のレナト・リベラ・ルスカ講師と2人でやる予定が、レナトさんのスケジュールが折り合わず、そのまま流れるはずでした。
そこへ、「廣田さんが出るなら、飛び入りで参加させてほしい」と、バンダイビジュアルの大河原健プロデューサーの申し出があり、「じゃあ、2人でやりましょう」と決まったあとに、やはり、レナトさんも「行けることになった」と。それで、3人でトーク……という形に落ちついたのでした。

僕と大河原Pとは、来年放映の『輪廻のラグランジェ』()でご一緒しているので、『ラグランジェ』のクリアファイルとスタッフ用ジャージを持ってきていただき、それぞれ、プレゼントとオークションに出品しましょう、と決めました。
クリアファイルは10枚プレゼント、宣伝用に作ってもらったポップもプレゼントしたのですが、そのジャンケン大会の一体感が、すごい快感でした。あの幸せな光景は、壇上からしか分からないのではないかなあ……希望者30人ぐらいで、ただジャンケンするだけなのに、なぜか楽しいという。

あの瞬間を味わうために、去年につづいて徳島まで行ったような気がする。


トーク内容は、レナトさんが、海外版DVDと国内版DVDの価格を調べてきて、「なぜ日本では、こんなに高いのか?」と質問したり、けっして薄くはなかったと思います。
『マクロスF』に字幕をつけて、海外で販売すればいい……あたりの話は、なかなかレアだったんじゃないかな。あんな話は、たぶん、国内では誰も知らないと思う。

その後、お客さん何人かと、さらに話して、大河原Pと控え室で話した後、さらにレストランで話し、夜の「マチ★アソビ関係者レセプション」で合流。夜中まで、話しっぱなしでした。
懇談会では、ショウゲートさん、サンライズさん、マッドハウスさん、アニメージュさん、アニメスタイルさん……東京で仕事してきた方たちと、徳島で話す。一同に介することはないので、これはこれで楽しかった。

特に、マッドさんは、こっちから声をかけようと思っていたら、宍戸淳監督以下、『とある飛空士への追憶』チームを連れてきてくださったので、これには感激した。
僕が「18歳ごろの気持ちに戻れる映画でした」と言うと、監督は「そう思ってもらえるように、つくりました」。もう、それだけで大満足。あの映画に、ふさわしいやりとりだった。

空港では、やっぱり徳島ラーメン、ライス付きで。
09cawcekdt今年は、疲れることが多かったからね。たくさん食べましたよ。水も、徳島産のものがペットボトルで売っていたし、ホテルの朝食では牛乳も飲んだし、サラダも食べたし。

空港の展望台から見た、海と山の稜線が、すごく綺麗だった。


さて、帰宅すると、いくつか郵便物が来ていたのですが、検察庁からも。
私の母を刺殺した廣田年亮被告が、判決を不服として、控訴したそうです。今度は、東京高等裁判所で公判です……。

皆さんは、こんなみっともない老人にはならないでください。罪を犯してしまったら、見苦しく命ごいなどせず、きっちりと罰を受け入れましょう。

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2011年10月 6日 (木)

■1006 徳島で会いましょう■

マチ★アソビ 10月8日(土) 13時~ 「バンダイビジュアル 大河原健プロデューサーに聞く、メーカーP裏話」
Bandai
とくに席があるわけではないので、会場である眉山山頂パゴダ広場に、13時ごろに集まってください。
大河原プロデューサーに質問するのは、明治大学特任講師のレナト・リベラ・ルスカさんです。レナトさんは、ペルー生まれのイギリス人で、日本のポップカルチャーを研究している人です。その一環として、飯島真理さんとケーシー・ランキンさんのドキュメンタリーを制作したほど、日本のアニメに思い入れがあります。

ただ、大河原プロデューサーとレナトさんの接点がないので、一体どんな混沌としたトークになるのかは、分かりません(笑)。
私と大河原プロデューサーの接点は、実は来年放映の『輪廻のラグランジェ』なんです。→
ただ、僕がどう関わっているかは公にしてないし、まだ話してはいけないことが、多すぎる……。なので、その他の大河原Pの担当作品が、話題に出るかと。

徳島に着いたら、まず空港で徳島ラーメン、ご飯付きかなー。
日が暮れてから、ほとんど人の乗っていないケーブルカーで、眉山山頂へ登るのも、なかなかムードがあって良いんだよなあ。

では、眉山山頂に来られる方は、土曜日にお会いしましょう。
東京に戻るのは、日曜午後です。


わりと大きな仕事が終わったので、徳島行きまではゆっくり出来るかなあ……と思っていたのですが、なんと今月発売の某誌から、オーダーが来ました。
出発ギリギリまでかかるかと思ったら、文字数の多い割には、あっさり書けてしまった。
なので、遅れていた『輪廻のラグランジェ』の連載記事を、半日で入稿。これで、明日から三連休しても大丈夫なはず。

だからね、俺は公判があろうが、プライベートで泣こうが怒ろうが、仕事だけは必ずやる男なんです。
一月に、僕と仕事した人なら、分かっていると思う。僕は、事件を言い訳に、シメキリを遅らせたり、取材の場を悪くしたりはしてないでしょ?
そのころは、事件のことは、必要と思われる人にしか話してなかったんだけど、これが仇にもなった。

今年に入ってから、まったく書かなくなった本が一冊あるんだけど、その編集長には話してあったんです。
だけど、その本には書くのをやめるつもりでいたから、ケンカ別れになってしまった。それは、俺にも責任があるから、仕方ないかと思ってるよ。だから、電話で謝った。
ところが、その編集長が、どういうニュアンスかは知らないけれど、社内の別の部署に話してしまったんです。
結果、「今の廣田は、とても仕事ができる状態ではない」と判断され、レギュラーから外されてしまった。冗談じゃない、僕は正月から打ち合わせにも出たし、取材にも行ったし、原稿も書いてたよって。

――本当に俺が仕事できなくなったんなら、こんなにオーダーがくるわけないよ。「アニメスタイル」最新号だって、手伝ったんだから。
さらに言うなら、そんなに落ち込んでいるんだったら、徳島県まで行って、トークショーやらないでしょ(笑)。頼むよ、ほんとに。

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2011年10月 3日 (月)

■1003 オトナアニメ Vol.22■

オトナアニメ Vol.22 8日発売予定
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●『輪るピングドラム』 絵コンテ解説、オープニング解析、美術監督インタビュー、アイコンデザイナー・インタビュー

これらの記事に関しては、すべて、自分でラフを切りました。
今までは、インタビューページは編集に任せていたのですが、美術ボードを見ていたら、どうしても自分でやりたくなって、1ページぜんぶ美術ボードだけで構成したりしてます。
誌面の雰囲気を、ちょっとでも変えていきたい。

絵コンテ解説も、今度は、「コンテそのものを絵として見せる」ようなレイアウトにして、見せたくない部分はトリミングするとか。パターンにはまったら、終わりなんで、いろいろ考えるのです。

●『とある飛空士への追憶』レビュー
●『花咲くいろは』コラム

これは、たいした量ではないんですけど、ピンポイントで「好きだ」と言える作品を書かせてもらえたので……。
『花咲くいろは』は、ふたつのオープニングについて、かなり細かいことを書いています。「印象」を書くのではなく、「なぜ、そのような印象が生まれるのか」を書いたつもりです。
それによって、一度見た人でも「そうだったかな?」と、もう一度、見てもらえるようにね。

「お前は、好きなアニメのことを、好きなように書いているだけじゃないか」という指摘は、半分は当たっているけど、読者に刺激を与えたいとは思っている。
嬉しかったのは、僕の記事を再構成して、個人ブログでバージョン・アップしてくれた人がいたこと。そうやって、「俺ならこうする」「こう考える」と、読者が主体的に動いてくれることを、何より望んでいる。
それはもちろん、僕の記事への反論でも構わない。

僕らの仕事は、「他人にあてて文章を書く」ことだけど、それは編集者や宣伝会社のためではなく、読者のためでなくてはならない……と自戒をこめて思います。


人間は、ある年齢をすぎたら、人のために生きなくてはならない。
ただ、20代の人は、精一杯、自分のために生きていいのではないかと思います。野心や夢があるなら、かなりの程度、ムチャクチャやってもいいんではないか。

もちろん、ムチャをした分、挫折もあります。だけど、20代の挫折って、絶望には直結しないから。挫折して泣いても、「もう死にたい」とか思っても、心の底では「何か別に道はないのか?」と考えはじめているはずです。それが「若い」ってことなんです。

ある程度、齢をとってから挫折すると、野心は妬みや逆恨みに、転化しやすいです。大勢、ダークサイドに落ちた人たちを見てきました。他人のために生きねばならない年齢なのに、自分のために生きようとしちゃってるから。

若いうちに、手痛い挫折をくり返しておけば、どんなに夢がかなわなくても、ダークサイドに落ちなくてすむ。それは、経験的に思ったことです。


僕も、そろそろ立ち直らなくてはならないんですけど……。
だから、自分を元気づけるために「人のために」って言ってるところも、あるんだよ。

これは、樋口真嗣監督も絶賛の、岩井俊二監督の新作ショートフィルム。→
内容に反して(?)きれいな映像なので、じっくりと見て欲しい。

 

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2011年10月 2日 (日)

■1002 6年6ヵ月■

メールで、何人かの方から心配していただいたので、報告の意味も兼ね、廣田年亮被告に下った判決を書きます。
求刑懲役8年に対して、「執行猶予なし、懲役6年6ヵ月」です。――短い、と思った人がほとんどだと思います。

しかし、出所時に犯人は、81歳です。証人についた犯人の妹は「仕事を世話したい」などと言っていましたが、殺人の前科のある高齢者を、いったい、どこの誰が雇うのでしょう。
そもそも、犯人には莫大な借金があり、かつて居住していたマンションからも、金銭面のトラブルで、告訴されています。
うっかり、証人についてしまった親戚連中は、間違いなく、これらのトラブルに巻き込まれるでしょう。
(私が不覚にも笑ってしまったのは、犯人の妹に「被告を助けるとは、いっしょに暮らすという意味か」と聞いたときです。こちらの質問が終わらないうちに「いいえ違います!」と即答したので、「ああ、今度は自分が殺される危険性があるからな」と得心したものです)

鑑定医の証言によると、犯人はドメスティック・バイオレンスを振るいやすい性格だそうです。そんな危険人物を「助ける」と言ってしまった証人たちが、どんな目に合うかは、容易に想像がついてしまいます。
また、刑務所では、殺人犯にたいしては、かなりしつこいイジメがあるそうで、どちらにしても「生きてるだけで地獄」になるのは間違いないので、これはこれで妥当な判決という気がするのです。

犯人は、母の身体の障害、「介護疲れ」を責任逃れの言い訳にしていましたが、これは裁判所から却下されました。やっぱり、保身のためのウソは、すぐバレるのものです。


しかし、裁判所から帰ってきたとき、私は久しぶりに、声を出して泣きました。
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たぶん、こんなことで、犯人はかすり傷ひとつ負わず、たった2日間の公判と判決だけで、母の人生が、本当に終わってしまったのだ、という事実が、くやしくて。

母は、祖父とたいへん仲がよくて、実家に帰ると、いつも長く話し込んでいました。
また、早い頃に母親を亡くしていたので、継母のことは実名で呼び、「お母さん」というときは、必ず、生みの親のことを呼んでいるのでした。
いつだったか、母の子どものころの絵日記が出てきて、そこには、家族で買い物に行ったり、正月を祝った思い出が、たくさん書いてありました。
――彼女だって、幸せな人生を思いえがいていたはずです。

というか……そんな簡単なもんじゃないよ。こんなことになって、そんな簡単に片づけられるわけがない。

ただ、どこかで一区切りをつけなくてはならないと思うので、私とともに怒ってくださった方、母の死を悔やんでくれた方、何もいわずに花をくださった方たち、皆様に、心よりのお礼を、母とともに申し上げます。


最後に、私らしく屈折したことを付け加えると、犯人の猟奇的な殺し方も気持ち悪いのですが、そこまで考えを至らせず、浅いところで「お世話になった兄、叔父さん、友人なのだから、助けるのが当然」とする「普通の人たち」のほうが、僕にはもっと怖い。
決して、深淵をのぞこうとしない、薄っぺらな倫理観で、簡単に物事をすまそうとする人たち。

そういう者たちは、「~するのが当然」などという条件反射で行動しているので、平然と矛盾することを言ったり、やったりします。
もし、私が殺人を犯した場合、私の友人たちは、誰ひとり、私を許さないはずです。それが、友だちというものではないでしょうか。

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