■0927 Untile The End of The World■
丸2日間に及ぶ公判が、終わりました。30日が判決です……と書くと、俺が犯罪をおかしたかのようですが、分かる人だけ、読んでください。
どちらにしても、裁判の詳細を書くつもりはなく、何となくの雑感です。
初日は、ヘトヘトになりつつも、地元の安いラーメン屋でチャーハンを食いました。
気がつけば、今年元旦、犯行のあった日も、同じ店・同じメニューでした。まあ、偶然だろうけども、「あの日」に戻ってしまったような寂しさは、やっぱりあった。
ただ違うのは、この事件について、(ネットを通じて)僕に好意的な人が増えたこと。
若い検事3人が、ギリギリまで頑張ってくれたことだ。むしろ、金で雇われたはずの被告側の弁護人コンビ(就活中の大学生かと思ったぜ)は、可哀相だったね。
まあ、事務所から押しつけられたんだろうな。サラリーマン以上でも以下でもない。
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しかし、本当に怖ろしいのは、「市井の人の善意」さ。
「だって、私は普通の人だし、普通に困ってる人を助けたいと思ってるし、それのどこが悪いんですか?」――これが、いちばん怖い。ゾッとした。
そういう「善意の一般人」は、自分を疑う視点を持っていないから、何も調べないよ。気分だけで出廷してしまう。矛盾したことを指摘されると、怒る。「だって、当たり前のことでしょ!」といった具合に。
ちょっと前から、反原発の人たちに感じていたのと、同質の怖さ。彼らにとっては「自分を疑わない」ことこそが、正義なんだ。自分を疑うのは「悪魔のささやき」なんだろうな。
「正しいことをやっているのだから、正しい結果になるはず!」――だから、それが怖いんだって。客観が欠けている。平穏に生きてきたオバチャンって、自分を客観視なんてしたことないから。
だから、「なんとなく同じ方向を向いているかも知れない人」同士で、安易に結託する。疑わない。
ま、そんな輩が、弁護側の証人たちでした。
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そういう「普通の人」たちが傍聴席にいたので、僕は、いちばんのヒールだったと思うよ。
目つきは悪いし、ハゲだしヒゲだし、声は怖いし、被告に対する尋問は容赦ないし。
だけど、俺は好感度を得たいから、出廷したわけではない。その場にいる全員から嫌悪されてでも、母の名誉を守りたかった。母が、好きなように「殺されてもしょうがない女」にされていくのを、絶対に看過できなかった。
母の名誉のためなら、俺は鬼にもなるよ。
被告が、ぺらぺらと図にのって自説を展開しはじめたから、俺は「質問にだけ答えるように!」と何度か怒鳴った。奴さん、まるで反省してないからな。
そういう厳しい言動は、公平で穏やかな裁判を求める人には、ヒールに映ったと思うよ。俺は、弁護人も証人も、被告と同じぐらい激しく責めたから。
裁判員の心証を害しようとも、俺は「怒り」に徹した。
被告の「泣き落とし」戦略を、先に見せてもらっていたから、なおさらだ。泣くのは、楽。死者を悼むのも、楽。センチメンタルに自分語りするのは、この世でいちばん、楽な道なのだ。
俺は、被告はもちろん、証人も弁護人も、憎んだ。そういう、陳述をした。しかし、彼らには分からないわけ(笑)。憎まれることに対する、受容体がないから。
ヒールに徹したつもりだが、その効果は、判決まで分からない。
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思うままに書く。
たとえば、あなたがストーカーに追われて悩んでいるとする。そして、とうとう、ストーカーがブチ切れて、あなたを殺してしまう。
そのとき、世の中の温厚な人たちは、将来あるストーカー少年の味方につきますよ。「死んだ人は、あきらめろ」「死人のことを考えても、しゃあない」と、そういう考えの人たちが結束します。彼らは、べつに悪人ではないんです。自分を疑えない人たちなの。
そんな連中を寄せつけないためにも、夫婦になった以上は、せめて仲良く暮らしてね。恋人同士でも、もし不安なら、友人に頼ってほしいよね。
いろんなルートを残しておいて、最善の道がつくれるようにね。こんな、世界の果てまで、来なくてすむように。こんなところに来るのは、私ひとりで最後にしよう。
元旦から、ずーっと思っていたことです。まとまりがなくて、すみません。
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コメント
どうかお体には気を付けてください。
ひとりじゃないです。
投稿: silver_copper | 2011年9月28日 (水) 00時51分
■silver_copper様
ありがとうございます。
今から、仕事の打ち合わせなので、ちゃんとやりたいと思います。
ただ、「どうしてこうなってしまったのか」という理不尽な気持ちは、正月より強くなってしまいましたね。
投稿: 廣田恵介 | 2011年9月28日 (水) 07時35分
おつかれさまでした。
もし自分が同じ立場だったら、
やはり母の名誉を守ると思います。
お母様が亡くなられてしまっている以上
どういう判決が出ても廣田さんにとって
いいものには成り得ないわけだけど、
それでも、今より少しでも、
廣田さんの胸が楽になる判決が出る
ことを望みます。
投稿: 杉本晃志郎 | 2011年9月28日 (水) 08時59分
■杉本晃志郎さま
ありがとうございます。杉本さんも、お母さん想いでしたね。よく覚えていますよ。
私は裁判で、胸に包丁二本を突き立てられた、母の写真を見ました。背中や大腿部の刺し傷も見ました。
つまり、全身メッタ刺しだったのです。
そんな凶行を起こしたのに、被告は「外へ出て、妻との思い出の場所を歩きたい」と泣きました。まるで、ほかの誰かに、妻を殺された被害者のように。
このような人間を「許す」者たちがいたこと、それだけで人間不信になりそうです。
今朝、打ち合わせで、仕事の人たちと話してこられたから、何とか笑顔でいられました。
人を苦しめるのも人、人を癒すのも人ですね。でも、本当にありがとうございます。
投稿: 廣田恵介 | 2011年9月28日 (水) 12時41分