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2011年8月31日 (水)

■0831 上映会裏話その3■

2日間での来場者数は、のべ210名と聞きました。もうちょっと多かった、という情報もあります。
いわき市民の集まるショッピングセンターで無料上映する以上は、暇つぶしに来たり、託児所がわりに使ったり、それで構わないと思っていました。途中から入るのも歓迎、出ていくのも自由。そういう気軽な雰囲気にせねば、エブリアで上映する意味がなくなってしまう。
一見さん、大歓迎。それが基本スタンスです。

ただ、それでも熱心なお客さんは、チラホラといらっしゃいました。2日間、思いつくままに……。


初日第一回の上映がピンチだったことは、昨日、書いたとおりです。
私が「是が非でも上映せねば!」と思ったのは、開場20分前に来て、ギャラリー横のミスタードーナツで、ジッと待っていた女性のお客さんが、いらしたからです。
まずは、この方を裏切るまい……と思いました。エンドクレジットが始まると、ちゃんと見てくれていたお客さんも席を立たれるのですが、この方は違いました。コトリンゴの主題歌まで、ばっちり最後まで。

全般的に、女性客は最後まで見ていかれます。年配の方も、小学生も(幼稚園まで下がってしまうと、ちょっと飽きちゃうみたいです)。
Img_3651_2初日だったか2日目だったか、記憶は曖昧ですが、子どもさんが「帰ろうよ」と席を立ったのに、コトリンゴの主題歌が終わるまで、前の席に乗り出すようにして、最後まで見ていったママさんも、いらっしゃいました。

あと、初日三回目だそうですが、20分前に来て、最後までジッと見ていった女の子数人組がいたそうで……気がつきませんでした。
初日二回目にも、最前列を陣取った、女の子グループがいました。同じ回に、ロマンスグレーの髪の女性もいて、出口で、スタッフに笑顔で話しかけていました。
何を話していたか、私は知りませんし、知る必要もありません。映画は、見た人それぞれのものだからです。


両日とも、14時からの回が、8割ぐらいの入りで、盛況でした。
僕が覚えているのは、2日目だと思いましたが……会場に入ってくるなり、「(座っても)いい?」と聞いてきた女の子でした。ちょっと年下の妹と、お婆ちゃんを連れていました。

お婆ちゃんが「最後まで見ていくんでしょう?」と聞くと、その子は「うん」と大きくうなずきました。お婆ちゃんは、買い物をするから、終わる頃に一階で待ち合わせようと話しています。
私は「だいたい、12時半ごろに終わりますよ」と、お婆ちゃんに伝えました。
さて、女の子は最後まで見て行ってくれたのですが、途中、2~3分の間だけ、席を立ちました。そして、お婆ちゃんの腕を引っ張ってきて、横に座らせたのです。
そして、妹と3人、最後まで見て、笑顔で帰っていきました。

あるいは、帰るとき、お母さんに「面白かったね」と話しかけている子もいたとか……。
やっぱり、主役はお客さんです。映画をめぐって、あちこちで小さなドラマが起きた。それでいいじゃないですか。

失敗とか成功とか、そういうレベルのものではないです。途中で帰った方も、この映画というか、この上映会と「何らかの関係を結んだ」ことは、確かだと思います。


さて、ちょっとバックヤードの話を。
初日には、片渕須直監督が、お忍びで来ていました。チラシを独力でつくった友人Bも一緒です。もう一人、早々と写真入りレポートをアップしてくれた()イラストレーターのひぐちりかこさん。
ひぐちさんは、いわき出身なので、監督に「連れていってあげてください」とお願いしたのです。

私は、彼ら3人を「お客さま」として出迎えたつもりでしたが、友人Bもひぐちさんも、廊下でチラシを配ってくれました。監督は、いわき側応援スタッフの方たちに、サインを書いてくださいました。
Cahq0m7xすさまじかったのは、友人Bですね。持参したウエダハジメさんのイラストのほか、手元にある素材をすべて駆使して、入り口を飾ってくれました。
彼は、「これでは入場無料と分かりづらい」「迷っているお客さんがいたから」と、根拠があってポップをつくるんです。

彼らは臨時スタッフでしたが、常駐スタッフとして、最初に企画を相談したSさん、映像ディレクターの加納氏を紹介してくれたYくんも、東京から車で来てくれました。彼らのおかげで、残ったチラシは、すべて配りおえることが出来ました。
6月に取材したNさんは、親子で撤収作業を手伝ってくれました。また、会場手配をしてくれたG先生のお父さまも、2度、会場に来てくださり、いわき市の現状について、話して聞かせてくださいました。

……だから、私は「DVDプレーヤーの再生ボタンと停止ボタンを押しただけ」です。
会場を訪れた皆さん全員が、上映会という場をつくったのです。

(場内写真は、加納真さんによるものです)

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2011年8月30日 (火)

■0830 上映会裏話その2■

上映前日から上映初日にかけては、映像ディレクターの加納真さんに、命を救われました。

前日金曜、夕方4時に、エブリアの搬入口で加納さんと待ち合わせです。台車にスクリーンやプロジェクターなど、大量の機材を載せて、ギャラリーへ移動。
Icaect41mエブリアの担当の方たちにも手伝ってもらいながら、スクリーンの組み立て。細かい配線やスピーカーの設置は、ヘタに手を出さず、加納さんに任せます。餅は、餅屋。
ただ、大事なのは「こうしたい」と最低限の要望を伝えること。指針を立てる人間がいないと、せっかく来てくれた専門家を、迷わせてしまうことになります。

閉店間際まで、4時間ぐらい作業。スピーカーは左右にふたつ立て、スクリーンの下にもふたつ。業務用DVDプレーヤーなので、画質は良好。スピーカーのおかげで、隣のゲームセンターの音も、かなり軽減できました。最後列で見ても、ちゃんと聞きとれる。

ほぼ同時並行で、暗幕をもって現れたNさんと警備員さんたちが、入り口づくり。
洗濯竿にハリガネの輪を通して、そこに暗幕のフックを引っ掛けて、開閉自在にしてもらいました。ただ、借りてきた暗幕を引きずるわけにはいかないので、Nさんはエブリア内の文具屋で、安全ピンを買ってきました。
Ica1snamlピンで止めてスソを上げてやれば、こすったり踏んでしまったりする心配は、ありません。さすがは二児の母。
(お客様として招待したかったのに、すっかり、スタッフの一員です)

とまあ、ここまでは良かったんです。加納さんは、いわき市内のホテルに一泊。……もし、「じゃあ、僕はこれで」と帰られてしまっていたら、たぶん上映は不可能でした。


加納さんは「一回目の上映だけ確認して、帰る」とのことで、翌朝(27日・土曜日)、私といっしょにエブリアへ行きました。
さて、「上映前に、ちょっとチェックしてみましょうか」とDVDを再生すると、開始後、数分のあたりで、見たこともない巨大なノイズが現れ、音声も途切れるのです。
「何ですか、今のは?」と、青くなって聞くと、「ちょっと設定を変えたから、そのせいでしょうかね」と加納さん。それでも心配なので、何度か、同じシーンを再生してもらいました。
……何度やっても、同じノイズが出ます。とても、お客さんに見せられるものではありません。

上映30分前。「本日は、お見苦しいシーンがありますが、ご容赦ください」と謝るか、「機材不調のため、本日第一回の上映は、中止とさせていただきます」か……。
迷っていると、加納さんが、荷物の中から、黒い小さな箱を取り出して、ラインを繋ぎなおしています。「これで、再生してみましょう」。
それは、小さなスクリーンのついたポータブルDVDプレーヤーなのでした。これで再生すると、同じシーンでも、ノイズが出ない!

つまり、最初にセットした業務用プレーヤーは、小さなキズでも拾ってしまい、画面には大きなノイIca4o20lmズとなって現れる。しかし、民生機は、そのあたりを割り切った構造なので、多少のキズは補正をかけて「知らないフリをする」というのです。
「よし。第一回上映のみ、その手でいきましょう」。民生機でも、プロジェクターを介すれば、画質的に見劣りするわけではありません。音声を調整して、本番へ。

私も、気が気ではないので、第一回は最後列で見ました。大丈夫。絵も音声も、問題ない。
ただ、第二回以降は、業務用プレーヤーで上映できるように再調整してもらい(次の上映まで、一時間以上もあったので)、ポータブルプレーヤーの方は「バックアップ」として、残してもらいました。

何はともあれ、プロ用機材を満載してきたのに、「念のため」と、市販のポータブルプレイヤーを用意してきた加納さんの危機管理能力に、拍手ですね。


初日は、手伝いやお客として、よく知った顔の人たちがチラホラ。
入れ替わるようにして、加納さんは機材を残して、東京へ帰ります。機材の撤収は、われわれがやるのです。

さて、もうひとつ心配事がありました。並んでいるお客さんは、上映10分前(多い場合は20分前)に入れるようにしていたのですが、お待たせするのが悪いので、DVDのメニュー画面を表示させていたのです。
これなら、BGMが流れるし、静止画だけど、絵も表示できますから、ちょっとは退屈がまぎれるかなと。

しかし、プロジェクターは朝11時から、夕方18時までフル稼働するわけですよ。それが二日間もつづく。
「これ、電灯のタマが切れたら、終わりだよね?」と、私は東京から応援にきてくれたYくんにこぼしました。「加納に、メールで聞いてみるよ」というので、返事を待ちました。
答えは、「電灯の寿命は一万時間で、まだ500時間しか使ってないから、大丈夫」。……そこまで言い切った加納さんですが、実は、荷物の中に「予備の電球」が入っていたのです。

「大丈夫」と言っておきながら、ちゃんと予備を置いていく。
つまり、今までの仕事の経験から、「絶対安心」なんてないことを知っているのだと思います。僕らの仕事でも、はじめから「絶対安心」と決めてかかる人は、トラブルに対処できません。
また、原発事故の番組で知った「バックアップには、多様性を持たせる」というセオリーも、よく理解できました。業務用DVDプレーヤーを二台もってきても、バックアップにはなりません。正反対の、シロウト用のポータブルプレーヤーを用意してあったからこそ、対応できたわけですよね。

以降、機材のトラブルはいっさい起きませんでした。
次回は、いわき市に集まってくれたボランティア・チームと、お客さんたちの反応について書きたいと思います。

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2011年8月29日 (月)

■0829 上映会裏話その1■

26~29日まで、福島県いわき市に行ってきました。
27・28日に、ショッピングセンター・エブリアで『マイマイ新子と千年の魔法』を無料上映するためです。
何度かに分けて、ひょっとしたら、誰かの役に立つかも知れない事がらを取り上げて、上映会裏話を書いていきたいと思います。

私のやったことは、DVDプレイヤーの再生ボタンと停止ボタンを押したことぐらいです。
あと、最後の上映のとき、音量レベルをちょっと上げた。その程度です。


僕が、いわき出身のSさんに「いわき市で、『マイマイ新子』の上映会をできませんかね?」と相談したのは、7月下旬、都内の居酒屋でのことでした。
Sさんは、「やれる会場があるとしたら、ココとココ」と、いくつか候補をあげてくれました。それが、7月31日のメール。
翌日、第一候補の大きな公民館に電話をしました。ところが、館内は避難者の方たちでいっぱい、とても催し物はできない……という返事でした。

他の会場候補は、予算と折り合わない、交通の便がよくない……などの問題が気になって、踏ん切りがつかない。
迷ってばかりもいられないので、『マイマイ新子』の幹事会社であるエイベックス・エンタテインメントに、いわき市で自主上映したい旨、メール。
同時に、友人Aにチラシを発注。ところが、友人Aは「今回はスケジュールが合わないし、そもそも、僕より向いている人材がいますよ」と、友人Bを推薦してくれました。
友人Bは、ふたつ返事でオーケー。ただし、会場や上映時間などの詳細データが欲しい……って、そりゃそうですよね。
(チラシは印刷期間を考えて、早めに発注することにしたのです。友人Bは、独力でチラシを印刷したばかりか、いわき市に来て、ポップづくりに大活躍することになります)


とにかく、はやく会場を決めたい。それと、上映機材も、いわき市内で調達できないか。
その時、最初に相談したSさんから、「僕の知り合いのGさんに電話してみてください」と、メールが来たのです。Gさんというのは、私が6月に、いわき市で取材させていただいた学習塾の先生です。→
このG先生のお父様が、ショッピングセンター内に、ファンシー雑貨のお店を持っているんです。そのショッピングセンターと話をつけて、ギャラリー・スペースで上映できるよう、話をつけてきたんだそうです。

しかも、「27・28日の土日」と上映日を決めてくれていたのです。そればかりか、「一日三回ぐらいやろう」と盛り上がっている様子です。
何しろ、G先生のご家族は『マイマイ新子』をDVDで見て、原作本を買うほど、気に入っていたのです。これは、まったくの偶然。

さて、そのショッピングセンターが「いわき市民なら、誰でも知っている」と有名な「エブリア」Img_3658です。
私は、G先生に教えられるまま、エブリアに電話しました。「はい、うかがっております。子どもから大人まで、皆さんで見られるアニメだそうで……」と、すべて話が通っています。
あとは、私が詳細を詰めれば、会場は決まってしまいます(本当は使用料がかかるようなのですが、申請書の「料金」欄には、×がしてありました)。
今月8日に、私はエブリアの担当者さんとお会いし、上映時間を決定。その時間を、すぐにチラシ制作のBさんへ連絡。Bさんは、チラシの印刷代を「カンパで集める」と、とんでもいなことを言い出しました。


さて、心配なのは、機材です。いわき市内にも、レンタル屋はあるようなのですが、やはり料金が……エブリアのギャラリー・スペースは、ゲームセンターの横です。スピーカーも絶対必要。

私は8月中に、小学校時代の友人であるYくんと『トランスフォーマーズ3』を見に行く約束をしていました。
しかし、機材が決まらない、お金もかかりそうでは、とても映画へ行く余裕はありません。断りのメールを入れました。
ところが、事情を聞いたYくんは「俺の中学時代の友だちが、役に立つかもよ?」と、ある人物の名前を口にしました。
それが、映像ディレクターの加納真さんです。私が日芸映画学科を受験するとき、アドバイスしてくれた先輩でもあります。
ひさびさに加納さんと電話で話すうち、「僕が現場に機材を持っていって、ぜんぶセッティングしちゃいましょう」という理想的展開になりました。機材は、加納さんの会社「スターゲート」の備品を運ぶというのです。
それが、11日。たった10日で、会場と機材調達の準備が、ととのってしまいました。私は、各方面に連絡しただけです。おまけに、覚悟していた予算の心配もなくなりました。

もうひとつ。エブリアで打ち合わせしたとき、「廊下との壁は我々が組みますから、暗幕を使って、出入り口をつくってください」と頼まれていたのです。
演劇関連で借りればいいのか、それとも、黒い布を買ってしまおうかと悩みつつ、「暗幕が必要」とブログに書きました。
それを読んでいたのが、やはり6月に取材させていただいたNさん()。
Nさんが、娘さんの通う小学校に暗幕があるので、それを借りてこられるかも……と言うのです。そのメールが、24日。

上映前日の26日に、加納さんが機材を、Nさんが暗幕を持ってきてくれさえすれば、もう上映できてしまいます。
その間、エイベックスさんから、東和プロモーションさんへ連絡がいき、「被災地応援キャンペーン」として、『マイマイ新子』の業務用DVDが送られてきていました。これも、無料です。
もし、この「被災地応援キャンペーン」作品に『マイマイ新子』が入っていなかったら、どうなっていたでしょう?

さて、万事順調と思いきや、上映当日朝、とんでもないハプニングが起きたのです……。

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2011年8月28日 (日)

いわき市アニメ映画無料上映会『マイマイ新子と千年の魔法』

8月27日(土)、28日(日)の二日間、鹿島ショッピングセンター・エブリア内の「ギャラリー・エブリア」にて、アニメ映画『マイマイ新子と千年の魔法』(片渕須直監督)を無料上映いたします。

時間は両日とも、11時~、14時~、16時~です。席数が40席と少ないので、なるべく早くお越しください。整理券などは、発行しません。
(なお、業務用DVDでのプロジェクター上映となります)


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大きなチラシは、こちらから見られます→
ご自由に印刷してくださって、結構です。

上映会の問い合わせ ★ 0246-46-0100 エブリア 佐藤さん

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2011年8月24日 (水)

■0824 上映会前々々夜■

別冊オトナアニメ プロフェッショナル100人が選ぶ ベストアニメ 29日発売予定
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東京へ戻った翌日も、また忙しいので、今のうちに紹介しておきます。
書いたのは200文字、時間にして、40分ぐらいですかね。モノクロページに、大き目の切手ぐらいのサイズで、「僕の選んだベストアニメ」が載っていると思います。

もともと、「プロ」というのは、「その仕事で食費・光熱費・税金を払っている」、つまり「自立している」以外の条件はない、と思っています。
だから、「プロ」という言葉に、なにか権威があるとは、僕は思わない。
100人足らなかったから、僕なんかに声がかかったのでしょう(笑)。

「とにかく、大急ぎでページを埋めてください」みたいな仕事もやってきたし、それを恥とも思わないし、むしろ恥なのは、ギャラもなしに書いちゃうことだと思うし……。
プロになりたかったら、どんなオーダーが来ても、しっかり書いて原稿料をもらうこと。儲けがなければ、プロとは名乗れない。

僕が、何を「ベストアニメ」に選んだかは、さておきます。あの企画を、初めて知ったときの電撃に打たれたような驚きは、今でも忘れられない。でも、「企画そのものに感動した」ことは、200字では書けなかったなあ……。


金曜日に、いわき入りし、夕方から会場設営です。
プロの映像ディレクターが、自分の機材を運んで、東京から来てくれます。彼は、『マイマイ新子と千年の魔法』は、一回しか見てない(笑)。
暗幕をどう調達しようかと思っていたら、いわき市の方が、お子さんの小学校から借りてくれることになりました。この方は、『マイマイ新子』は、タイトルしか知らない(笑)。

上映会前夜は、こういう異色メンバーで、コツコツと準備することになりそうです。なんかもう、文化祭みたいだよね。
翌日は、小学校の同級生が手伝いにくるしね。

「満席になるといいな」とか、あんまり思ってないです。お客さん2~3人でもいいから、印象0186_2_00010強く残ってくれれば、それでいい。そのために、仕事ストップしてまでやるんだから。
映画っていうのは、内側から、人間を支えてくれるんで。それは、見た人それぞれの問題だし。

もし運があえば、いわき市の皆さん、鹿島町のエブリアでお会いしましょう!→

(C)2009 高樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会

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2011年8月22日 (月)

■0822 ノエイン■

『ノエイン もうひとりの君へ』 Blu-ray BOX  24日発売
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●ブックレット 構成・執筆
なにしろ、『ノエイン』とは、2005年の放映前からの付き合いです(フライヤーや各話あらすじなども、私が書いていました)。
バラ売りのDVDでは、原画を選んで、掲載していましたが、今回は「まったくの新編集でやりたい」とのことで(DVD-BOXには、僕は関わっていません)、美術ボードやレイアウト修正もいれてみました。

大量にデータを渡されたのですが、まず「キャラ表」と「色指定」は、違うんですよね。
色指定は、それこそ、必要なところにだけ色を塗ったもの。キャラ表は、原動画が使うことに特化しているので、情報量が多いのです。
それぐらいは、僕らのような仕事なら、把握してないとね。

ブックレットでもムックでも、ただ何でも詰め込めばいいというもんじゃない。
何を見せないか、載せないか……という方針を立てないとダメ。それは、ファンの人たちが喜ぶかどうかが基準であって、「俺の中の愛情」なんかでは、編集方針は立てられないのですよ。
よく「愛情のこもった本」とか言われるけど……。

さて、「月刊アニメスタイル」2号()には、赤根和樹監督と岸田隆宏さんの対談が、掲載されています。当然、ブックレットの監督インタビューとは方向性が違いますし、なにしろ12ページもあるので、こちらも是非どうぞ。


「三鷹コミュニティシネマ映画祭」というイベントが、9月23日から始まります()。
プロダクションI.Gが三鷹駅近く(でも、三鷹市ではなくて武蔵野市)に越してきたせいもあってか、押井守監督も、来場されます。

あと、『地下鉄のザジ』と『アリス』、この2本はビデオでしか見たことがないと思う。
いや、文芸座とイメージフォーラムで見た気もするけど、とにかく、フィルムで見直すなら、この二本立ては、結構いいよな。

本当はボランティア参加したかったんだけど、その頃は、また忙しいと思うので、サポーターに登録しました。
吉祥寺ではなくて、文化的にさびれた三鷹でやるというところが、何ともいい。

いわき市での『マイマイ新子と千年の魔法』上映会()は、とうとう、今週金曜出発。土日で上映、月曜に帰ってきます。
100516_15460001実は、吉祥寺バウスシアターの上映でつくってもらった巨大ポスター、新潟シネ・ウインドでも掲示してもらったやつ(もう一年三ヶ月前ですね)、あれをいわき市へ送ってある……。
あれ以外にも、なにかポップみたいなものを作っていかないと、会場らしくならないので、東京・福島混成のボランティア・チームで、がんばりますよ。


それで、殊勝にも、「いわき市に行きたい」という西日本の方があらわれたのですが、いわき市の汚染状況です。→
このデータは専門家の計測だから、正確なはずだけど、何しろ4ヶ月前なので、今より薄くなっているとか、そういうわけでもない。そんな単純なものではないんですね。

それだけでなくて、津波で家を失った人、家族や友人を亡くした人もいる中で、なんでアニメ映画なんてやるの?と。どうして、わざわざ、東京から来るんだよ?とかね。
たとえ、お客さんがガラガラでも、たとえ一人でも見てくれた人は、前よりは強くなれると信じるから、やるんです。

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2011年8月19日 (金)

■0819 愚痴■

26日から、いわき市へ行く。
荷造りは前日にやるとしても、下着やなんかを買い揃える時間はなさそうだ。上映会場が、巨大ショッピングセンターなので、何でも揃うのであるが。
都内で暗幕を借りるつもりだったが、いっそのこと、いわき市で黒い布でも買った方が、早いような気がしてきた。

25日までに、三本の仕事を終わらせるか、ある程度のケリをつけなくてはならない。昨日から始めているが、なかなか厳しい。
スピードを重視して、クオリティが犠牲になるのが、こわい。息抜きにアニメを見るにしても、来月、仕事で書く予定の番組を優先して、見なくてはならない。きっついなあ。

それでも、上映会()は、決行されねばならない(今朝、東和エージェンシーから、上映用DVDが届いた!)。
チラシは、すでにいわき市内のコンビニなどで、配布されているはずである……。
あと、8日か。


昨夜は、ブログを書く時間がなく、ツイッターで愚痴っぽいことを書いてしまった。

たとえば、神戸市で、給食の放射能検査を求める署名が行われています()。
地元の教育委員会に訴えるなら、署名という正攻法は、効果があるかもしれません。しかし、この署名をツイッターにリンクした人は700人を越えているのに、署名した人は400人にも満たない。
仮に、同じ人が何度もツイートしていると仮定しても、リンクだけ貼って、署名してないヤツも、確実にいるわけ。
これで、食品汚染の広がりを食い止められるわけがない。

もちろん、泊原発の営業運転なんて、止められるわけがない。もっと厳しく状況を見渡さなくては、ダメなんですよ。
ツイッターを見ていると、自己満足で「反原発」「脱原発」とくり返している人がいます。呟くだけで原発が止まれば、誰も苦労はしない。
ツイートしただけで、“何かした気”にならないで欲しいんですよ。そんなものは、あなた個人の自己実現のネタでしかない。

原子力発電をやめるのは、国土や子孫のためではないのでしょうか。54基の原発が廃炉になるとして、それを見届けられるのは、せいぜい、いま中高校生ぐらいの若い子たちでしょう。
つまり、廃炉作業が終わる頃には、僕ら世代は死んでいるわけです。僕らは、後世に原発(の後始末)を残さざるを得ない。その予定された未来を、少しでもマシにするには、今どうしたらいいのか、という問題でしかない。

いま、汚染食材や内部被曝でストレスをためているあなたが、「311前の生活に戻りたい」動機で、「脱原発」を叫んでいるとしたら、それは幼稚なエゴでしかない。
死にゆく大人の務め、という立脚点から、原発や放射能、電力会社と対峙していただきたい。


何だか、殺伐としてしまったけど、時間がないもんで(笑)。

『キズナ一撃』は、なかなかツボだった。とっても強い少年が、実は少女でした……って、それだけで、もうOKみたいな。
では、仕事に戻ります。

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2011年8月17日 (水)

■0817 Water■

深夜のツイッターで、「いわき市が水不足」とのツイートを読んだので、すぐ、記載されているメアドに連絡した。
翌朝、LOTS災害支援PROJECTの担当者から、メールが入る。保育所用に、軟水が必要だというので、昼過ぎからコンビニやスーパーを回る。ボルヴィックは軟水なので、500ml入りを12本買う。

先日、防府からマスクの寄付を受けたばかりで、その箱がちょうどいい。12本を詰めて、夕方には発送。
その旨、LOTS担当者に連絡すると、いわき市の歴史、いまの状況などを細かく教えていただけた。14もの市町村が合併してできた市であること(だから、あんなに広いのか)、まだ45年しか歴史のないこと等、いろいろ。

僕が6月に行ったときは、大震災から3ヶ月、4月の地震からも2ヶ月が経過していたので、実は、かなり落ち着きをとりもどした町を見ているだけだったのだ。

ボルヴィックを詰めた箱に、こっそり『マイマイ新子と千年の魔法』上映会()のチラシを入れようと思ったが、人の救援活動に便乗するのは、下賎なので、やめておいた。

荷物を送った後、残り2千枚のチラシを引き取ってもいい、とのメールが入って唖然とする。
僕が上映会をやっているのではなく、上映会が、ひとつの意志をもって、いわき市に行きたがっているような感じ。


いわき市でお会いした方たちからは、しばしば連絡をもらう。
51mxff4tm4l__sl500_aa300_ちょっとした『マイマイ新子』ブームなのか、レンタル屋に5枚もあったのに、すべて貸し出し中とか……。
原作本まで読んで、感動してらっしゃる方がいるとか……。

会場であるエブリアの担当さんにも、DVDとメイキング本を貸してあります。
機材は、東京から運び、現地で設置までしてくれる人が現れました。彼は、『マイマイ新子』は一度しか見てないはず。
その友人が、最終日の撤収作業をやり、東京に機材を持って帰ります。その彼も、僕の付き合いで2回見た程度。
高速代・ガス代は出しますが、僕から「来てくれ」なんて頼んでない。彼らが「行く」と言い出した。

――なるべく、進行中の話は書くまいと思ったけど、上映会が終わったら、いろんなことが起きすぎて、ぜんぶは書けないような気がして。
僕だって、いわきで奔走してくださっている方とは、まだ顔さえ合わせていない。

ともあれ、乳幼児用の水が不足してしまう、そのような場所に、僕らは行くのです。これは、いやでも気がひきしまります。

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2011年8月15日 (月)

■0815 おぢいさんのランプ■

3月11日は、映画に行くつもりだった。『若手アニメーター育成プロジェクト PROJECT A』が、その日で終わりだったので、夜の回を予約してあったのだ。
その日の午後、地震が起きて、上映は中止になった。

7月になってから、『若手アニメーター育成プロジェクト』はテレビ放映された。ウトウトしながら、録画したものを見ていたが、二本目の『おぢいさんのランプ』で目が覚め、いつの間にか、身を乗りだしていた。
さっき、二回目を見終わったところだ。とにかく、すべてのカメラワーク、構図に裏づけがある。無駄なく、きれいに組み立てられている。

明治初期、生活必需品が、ランプから電灯へ変わっていった頃の話だ。原作は、戦前に出版された児童文学だそうだが、普遍性がある。
監督は滝口禎一さん、演技スーパーバイザー(作監的な役職?)は友永和秀さん。


キャラクターの目にハイライトがなくて、ただのグラデだけというのが気になったけど、感情表現で必要なところには、ちゃんとハイライトが入る。あと、暗いところから明るいところへ出ると、スッと色が変わったり、仕事が地味で丁寧。

PANに、いちいち意味があるのにも、感心した。特に後半、主人公が火打石をもって、家をPhoto07出ていくところ。PANで追っていくと、そこに妻が座っている。うまい。
←あと、このカットにもあるけど、無数のランプの揺れ。これは3Dなのか、それとも作画したものを増やしたのか?

ランプの色は、赤々とした「火」の色になっている。ちょっとキツすぎるんじゃないか?と思って見ていると、後半に出てくる電灯の色を、シャープに見せるためであった。
こういう計算を、ひとつひとつやっていくのが、「演出」という仕事です。ただ、思いのたけをぶつければいいってもんじゃない。
演出家は、技術職。まず、それを忘れてはいけない。

「世の中が変わったのだから、俺も、もっと人の役に立つ商売を探すんだ」という主人公の結論に、深く共感した。3月11日に見ていたら、また、感想も違ったんだろうけど……。


今日は、終戦の日。例年は気にしないのに、今年は意識してしまう。
「8月15日」は、『マイマイ新子と千年の魔法』にも出てくる。そういうところに、作家の歴史観が見え隠れする。
この作品を、福島県いわき市で上映する()のは、実は大変なことに思えてきた。「大変」というのは、メンドクサイという意味ではなく、ある種の責任がともなうであろう……ということ。

いわき市は、だいたい、僕の家の前の倍ぐらいの放射線量。室内では、ほとんど、この辺りと変わらないらしい。いわき市より高い数値は、関東では散見される。
だから、関東地方の人間が「福島から避難しろ」「福島には住めない」というのは、こっけいだ。まして、「福島おわった」などとほざく権利は、世界中の誰にもない。

ただ、「これは日本全体の問題なのだから、あなたも考えろ」とは言わない。あなたが考えない分、私が考えるよ……というだけの話だ。

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2011年8月13日 (土)

■0813 東京から■

あまり途中経過などは書かないようにしているのですが、チラシは顔も知らない有志の方たちのおかげで出来たものなので、報告を。
13371176099_2福島県いわき市で開催予定の『マイマイ新子と千年の魔法』無料上映会()のチラシづくりに協力してくださった方、ありがとうございます。
先ほど、1000枚が、いわき市に向けて発送されました。

引き受けてくださる鹿島ショッピングセンター様、アニメイトいわき様、LALA各店補様、ありがとうございます。

まだ、2,000枚もありますので、引きつづき、チラシを置いていただける場所を探しています。
いわき在住の方、福島・いわきに縁のある方からの情報も、お待ちしています。


深夜のファミレスで、友だちといろいろな話をした。
ふだんは顔にも出さないが、やっぱり放射能のことを心配していた。……ま、そりゃそうだよね。

首都圏からは、どんどん人口が流出しています。自治体がホットスポットの存在を認めず、何の対策もとらないのだから、当然のことです。
東京でオリンピックをやるなんて、不可能です。海外メディアは、東京の高濃度汚染エリアを把握しているので、大事な選手をよこすわけがない。

いまコミケが開催中ですが、こういうイベントも、安全の確認された地方へ、どんどん分散させたほうがいい。東京中心主義だから、いろいろな嫉妬や軋轢がおこる。


311以降、どこか憂鬱な気持ちですごしている人に、ぴったりの漫画を、友人が貸してくれた。

『あの日からのマンガ』()は、311以降の僕らの実感そのままだと思う。
作者はしりあがり寿だけど、彼が皮膚で感じた戸惑いや怖れ、混乱が、そのまま紙に印刷されている。
『方舟』()は、11年も前の作品だが、とめどなく降りつづける雨は、そのまま放射性物質に置きかえられる。洪水で沈みゆく東京の中、「世界が滅びるわけない」とキレるのは、必ず男だ。その辺りのリアリティに、ぞっとさせられる。

この二冊は、決して明るい内容ではないが、読むとホッとさせられる。それは、現状を凝視する、力強い視点が感じられるからだ。

だから、僕はまだ、フィクションの力を信じつづけている。

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2011年8月11日 (木)

■0811 リトル・ランボーズ■

今日一日まで、暫定的夏休みなので、『モールス』でも見に行くべきなのだが、27・28日の上映会が終わるまでは、とにかく節約。

TSUTAYAでの200円レンタル二本目は、『リトル・ランボーズ』。
5404_2新潟シネ・ウインドの会報「月刊ウインド」で、いい感じに紹介されていたからなんだけど……僕はもう、『ランボー』の公開されていた少年時代に、そこまでシンプルな郷愁は、いだけない。
僕の過去は、ほんの静かに、だが、決定的に変わってしまった。変化は歓迎したいから、なんの後悔もないんだけど。

『ランボー』に刺激された少年たちが、こっそりと自主映画をつくる、こじんまりとしたお話です。


冒頭近く、主人公の少年の家。「台所で、ママが調理している→窓を抜けると、ダイニングで、妹と祖母が過ごしている→さらに窓を抜けると、少年の好きな納屋が見える。」
少年のところへ行くのに、ふたつも窓を抜けねばならないわけ。ママから少年への距離は、それだけ遠いんだってこと。「映像の文学性」って、こういうことなんです。

もうひとつ、主人公が悪ガキと出会う(初めて出会う廊下のシーンも、カメラワークが素晴らしい)。
その悪友が、主人公を物置に案内する。天井の電気がチカチカして、物置にある珍しいあれこれに、スポットライトを当てる。
そうした照明と編集で、ひとつひとつの物が鮮烈に見える。映画に「自由な筆致」があるとしたら、そういう演出の手練手管のこと。

映画評では、「自主映画をつくる少年たちは、映画の中だけは自由なんだとメッセージを伝えてくれる」とか書かれているけど、どこに目をつけてるんだよ? そんなのは、シナリオ・レベルのことでしかない。映像を見なさいよ。
どうして、そこでカメラがドンデンになるのか、ドリー移動になるのか、ちゃんと意味があるんだからさ。

同じように、「アニメ表現の可能性」を語るとき、なぜかストーリーやテーマのことばかり持ち出す人にも、首をかしげてしまうけどね……。

『乙女の祈り』なんて、映像表現の宝庫だよ。だから俺は、「オトナアニメ」の特集でオススメ作品として挙げたんだ。アニメの特集でアニメをオススメするなんて、視野が狭すぎるだろう。


27日・28日の福島県いわき市での『マイマイ新子と千年の魔法』上映会()は、毎日、「ええっ?」と驚くような展開で、着々と進んでいます。
すべてが終わったら、裏話を書きます。

これは、東京といわきのコラボレーション。だけど、被災地の人たちに見せるためにやっているので、大騒ぎはしないでほしい。僕らは、先方から見れば「ボランティア」という扱いです。家を失った人たちも、市内の避難施設で暮らしています。
それを忘れてはいけません。

あと、忘れずにマスクの寄付をしてくださる方、ありがとうございます。

(C)Hammer&Tongs, Celluloid Dream, Arte France, Network Movie, Reason Pictures

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2011年8月10日 (水)

■0810 FLOWERS■

二日ほど時間が空いたので、TSUTAYAで200円レンタル。

まず、『FLOWERS-フラワーズ-』。6人の女優の競演が売りだが、映画冒頭に「ADK」のロゴが……ツイッター監視業務、ご苦労。
化粧品メーカーとのタイアップとか、確かに代理店の考えそうな企画だが、映像はけっこう綺麗だったな。ストーリーは、オムニバスなのか年代記なのか混乱したし、時代設定が古いのも、『コクリコ坂から』並に、必然性がなかった。
だけど、それを救うのが、女優であって。

……でも、どうだったかな。田中麗奈は、よかったかな。
T201006064舞台は昭和40年代。色調は当時の映画を見事に再現していて、流行歌を流すようなミエミエの演出もなかった(他のパートでは、ちょっとあった)。
田中麗奈は、官能小説家の担当編集者で、仕事のストレスをつのらせている。夏休みをつかって実家に帰るんだが、その田園風景が、きれいでね。
田中は、竹内結子演じる姉と、縁日に出かける。夕闇に沈んだ田舎道を、浴衣姿で歩いていく。「日本って、美しいな」と思ったよ。

竹内は、新婚時代に夫を事故で失っている。その姉に、妹の田中は「結婚って、幸せ?」と聞く。このとき、泣く寸前だから、声がうわずっている。こういうところを、よく見ないとな。
なにか過激な、過剰な演技をすると評価される傾向があるけど、それはガキの見方。歳をとらないと気がつけない良さって、あるんだよ。

田中麗奈は、この映画では、得した方だと思う。……広告屋の考える映画は、見えすいてるけどね。広末涼子も蒼井優すらも、お飾りでしかなかった。

田中麗奈の編集者が駆け回っていた、昭和44年。僕は、よちよち歩きの二歳。そして、すでに東海発電所が、営業運転を開始していた。
自分の中の、甘いノスタルジアの感覚が、少しずつ崩れていく。


福島県いわき市での『マイマイ新子と千年の魔法』無料上映会(27・28日、エブリアにて)は、順調に準備がすすんでいます。
Cagqm1ck地元の人は、ご存知とは思いますが、エブリア2階の「ギャラリー・エブリア」(写真)を、簡易映画館に改装して、上映させていただきます。

この件に関しては、本当に筆舌につくしがたいほど、多くの方の無償の努力(いや、有償で協力してくださる方もいる!)で成り立っています。

12日夜に、チラシが刷り上ってきます。その翌日、現地に発送。
なるべく早く、宣伝用のエントリを立ち上げます。


首都圏の汚染実態が、明らかになっています。→
「同心円から外れているから大丈夫」でもなければ、「250キロも離れてるんだから大丈夫」でもありません。
しかし、私は「逃げろ」とは言いません。それは、いわき市への取材で「逃げようもない人たちが、いっぱいいる」と知ったからです。一度避難して、すぐ戻ってきて、もうお金のない人たちがいるんです(当然、補償もない)。

だから、ツイッターで「とにかく、福島から逃げて!」という人を見ると、「う~ん」と思ってしまいます……東京だって、もう住めない場所があるのに。食べられないものだらけなのに。

福島第一20キロ圏内で、置きざりにされた牛や鶏は、餓死しました。猫や豚たちは、共食いしているそうです(ネットに写真もあります)。
猫はもちろん、豚って知能が高いんですよ。だけど、飢えのあまり、豚であることをやめてしまった。

いつか、人間が人間であることをやめてしまいそうな気がして、僕はそれが怖いんです。
そうならないためには、頭だけで考えるのではなく、行動することです。どんどん、人と話しましょう。

(C)2010 映画「FLOWERS」製作委員会http://cinema.pia.co.jp/piaphoto/title/240/153500_1.jpg

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2011年8月 8日 (月)

■0808 いわき市の皆様へ■

福島県いわき市の皆様、あるいは、いわき市にお知り合いのいる皆様へ。
来たる27日(土)と28日(日)の二日間、鹿島ショッピングセンター「エブリア」(2階ギャラリー・エブリア)にて、アニメ映画『マイマイ新子と千年の魔法』の無料上映会を開催いたします。
0753_1_00123_3
土日とも、上映は一日三回。11時~、14時~、16時~です。40席と少ないのですが、よろしくお願いします。

お問い合わせは、0246-46-0100 エブリア(担当:佐藤さん)まで。
あと、いわき市内でチラシを置いてくださる方、募集します! メールください。


以下は、エブリアまで打ち合わせに行ったついでの、個人的旅行記です。……と言っても、いわき市にいたのは、トータル2時間ぐらい。あとの8時間近くは、ずーっと電車と高速バスでした。

前に来たのは、ほんの二ヶ月前だったから、いわき駅前は、よく覚えていた。
泊まったホテルの方角も、さんざん飲んだバーやクラブのあるあたりも。今日は、「たいら七夕祭り」最終日だったから、店も出ていたし、浴衣姿のお嬢さんも多かった。
08cajyqcp3_3……原発から、40キロだったよね、確か。マスクしてるのは、俺だけでした。

路線バスに乗ると、ロープで立ち入り禁止になったステーキ屋に「8月12日再開!」と横断幕が飾られていた。
それを見てからだ。何だか、悲しいような、嬉しいような気持ちになり、あやうく泣くところだった。
いわきの人たちを憐れんでいるんじゃない。むしろ、彼らは健気だ。人にもよると聞くが――何かを始めよう、やり直そうとする人間は、美しい。醜いのは、あきらめた人間さ。


汚染されているかも知れない田園は、それでも青々としていて。
信号機の向こうに、洒落た洋館風のレストランが見える。その向こうにも、さらに信号機が点々と灯り、光にあふれたコンビニが、遠くにある。
そんな、何でもない風景に、心を打たれる。

七夕祭りの雑踏を離れた、いわき駅前とか。
08casrpntiこれが何、というわけじゃない。どこかで、見た風景だ。
だのに、街路樹に隠れて、ぼんやりと灯るバーの看板を、美しいと思う。その下をそぞろ歩く男女も。

帰りのバスの中で、僕は、ほとんど涙目だった。
「今」と「終わり」が、二重写しになって見える。最近、よく見る夢が、そんな感じなんだ。

ともあれ、今月は『マイマイ新子』を、いわきの方たちに見ていただく。仕事以外の時間は、それに費やす。

(c)2009 高樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会

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2011年8月 6日 (土)

■0806 ふたたび、いわき市へ■

月曜日、急にいわき市へ行くことになりました。
『マイマイ新子と千年の魔法』、無料上映会の会場に行って、詳細をつめるためです。すでに、東京ではチラシ作りが大詰めを迎えておりまして、その確認作業もあります。
最大の難問である、機材レンタルも、何とかしてこなくてはなりません。

とにかく、「自己満足にしない」「映画の箔付けにしない」「いわきの人たちのためにやる」。これが大原則です。

いわきといえば、先日、ジブリ美術館に来てくださったNさんが、「栄養が足りてない」と、野菜ジュースと手料理をクール宅急便で、送ってくださったんですよ。
まあ……私の主食は、インスタント麺と栄養ドリンクになりつつありますからねー。そこを心配してくださったのです。
もちろん、肉も野菜も外国産です。よく、気づかってくださったと思う反面、いつも、お子さんの食事に気をもんでいるお母さんらしい心遣いだと、感心しました。

三鷹市は、何をどう勘違いしたか、「東日本応援ショップ」なんてものをつくってしまいました。野菜も売ってます。眠りこけているのは、東京のほうですよ。

ともあれ、被災地から食事を送っていただいた廣田です。


先日、いっしょに飲み歩いたM氏から、訃報が入りました。ちょうど、原爆投下ぐらいの時間です。
僕は、ちょっとは彼の家庭の複雑さを聞いていたから、するっと返信が打てました。僕は「お悔やみ申します」なんて、絶対に言いません。その相手に必要なことだけを、言います。
それが言えなかったら、黙っているのが、礼儀だと思います。

人間って、複雑なんですよ。一見、きれいに整理がついているような人間の中にも、壊れた部分はある。そこは、笑ったり軽蔑したりせず、「許す」んです。
それは、あなたの敵じゃないよ、ということ。許せるかぎりまでは、許す。その限界を突破したら、つまりは敵なんじゃないでしょうか。

M氏は、酔わないかぎりは、「別人か」と思うほど紳士です。だけど、僕は、いわきでの上映会が終わって、彼の法事もすんで、また2人で、吉祥寺を飲み歩くのが、今から楽しみ。
清濁両方ないと、人間って、つまんない。


今日、東電前でデモがありました。主催は、4月10日に高円寺デモを行った「素人の乱」です。「これは、若い人がいっぱいくるな」……と臆して、仕事を優先しました。
それと、東電なり他の電力会社なりに対して、何をつきつけるのか。いまや、そっちの方が、僕にとっては重要です。何らか、補償させてはどうだろう? 具体的目標を欠いたデモは、応援こそすれ、体力を使う気にはなれない。

その感覚は、4ケ月前にデモに初参加したときとは、あきらかに違う。
25cautnuuzどこかセンチメンタルな気分で、「井の頭公園と玉川上水だけでも、除染できないか」と思いはじめた5月とも違う……。

いまや、問題は巨大になりすぎている。悪夢を見るぐらいに。
そして今は、「日本は核武装すべき」「プルトニウムはいっぱいある」と公言する78歳後期高齢知事を、かなり本気で、許せなくなっている。
彼らは「しょせん、愚民どもには何もできまい」とタカをくくっている。その油断が、命とりだと、そろそろ分からせてやるべきではないか。

それでも、隣の大学生は毎晩、お笑い番組を見て笑いころげている。若い彼だって、被曝してるだろうに……。
嘆きすらしない君たちのために、俺が代わりに怒ってやろう。そういう気分。

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2011年8月 4日 (木)

■0804 夜の顔■

もう発表してしまっていいと思いますが、福島県いわき市で『マイマイ新子と千年の魔法』の上映会を行えることになりました。
04images日にち・会場も、ほぼ決定しているのですが、念のため、後日。今月下旬にやります。あまり告知期間がないのですが、会場は「大人も子どもも見られる、いい映画みたいですね」と、おおいに乗り気です。

この件には、6月に取材させていただいた、学習塾経営のGさん()が、大きく関与しています。この方が、まさか『マイマイ新子』にハマってくれるとは、思ってもみませんでした。この場を借りて、Gさんにお礼申し上げます。
そして、「外で遊ぶな」と言われた子供たちが、地元のショッピングモールで時間をつぶしていた……という取材時に聞いた話が、ストンとつながります。

「福島県なんて、危ないんじゃないの?」と言われそうですが、いわき市だけでも、とんでもなく広大です。そこを、丸二日間、線量計を3台も積んだ車で、走破したわけです。いわき市が危険だったら、そもそも上映しません。
基本は「マークワン・アイボール(自分の眼で確認せよ)」です。

近く現地へ行って、詳細をつめてきます。
本当にね……この映画は、2月に僕を助けてくれましたから。これからも、多くの人たちを助けてくれるだろうと思い、被災地で上映することにしたのです。

さあ、忙しくなるよ!


話はガラリと変わって、昨夜も放蕩した。五軒ぐらいハシゴしたと思う。
ガールズバーで知り合った、仮にM氏としよう、彼が「今から吉祥寺で飲みますよ」とメールをくれた。
まあ、もともと飲みに行く予定だったから、付き合うか……と出かける。

酔ってないときのM氏は、堂々として、話す内容もしっかりしていた。
まず、彼の友人の居酒屋で一杯。それまでは、近場のバーで飲んでいたそうだから、ひとり飲みに慣れているんだろう。
M氏の身の上話を聞く。彼は独身だが、なかなか辛い立場のようだ。

二軒目が、M氏いきつけのガールズバー……なのかな、あれは。女の子がカウンターに三人。だけど、M氏は「あの長髪のボーイ、いないの?」と、なぜかボーイを探しながら店に入っていく。
その長髪のボーイが、ガノタというか、モビルスーツやガンプラに詳しく、グフの話題で30分ぐらい盛り上がる。これだから、夜の街は面白い。

三軒目が、やはりM氏のなじみのキャバクラ。もう、かなりへべれけで、意味不明な行動をとって、女の子を呆然とさせていた。「こんなMさん、初めて見た……」。
俺は、彼の酔ったところしか見たことないので、まあ、こんなもんだろうと思いながら、「そろそろ、俺らの出会ったバーに行こうよ」と急かす。

しかし、僕があれだけ好きなガールズバーなのに、M氏は気乗りがしないらしい。女の子の顔すら覚えてない。そういう飄々とした、誰にも頼らないようなところが、この男にはある。

僕は、甘える。酒にも甘えるし、夜の街の女の子にも甘える。何かが、欠けているのだ。


さて、お気に入りのガールズバー。一ヶ月に5回も来ているので、けっこうポイントが溜まっている。サービスのオリジナル・カクテルをつくってくれた女の子が、「指名してよ」なんて、図々しいことをおっしゃる――でも、いいヤツだったな。メールで、自分の撮った写真おくってくれたりして。

M氏は、いよいよ、言動が意味不明なる。それはいいとして、女の子の手を引っぱって、「痛い痛い!」と叫ばせていたので、「痛がることだけは、ヤメロ」と注意する。それだけで「優しいね」と言ってもらえなんて、やっぱり、夜の街って最高。
とうとう酔いつぶれたM氏を、タクシーに押し込む。千円では帰れないというから、二千円わたす。それを後ろで見ていた女の子が、また「優しいねぇ」。

ひとりで店に戻ると、別の子が、「お絵かきしようよ」と、自分の手帳を破る。「アヤナミ描いてよ、アヤナミ」。……アヤナミって一般名詞なの? 彼女は、自分で描いたガンダムを見て、笑いころげている。なんと、かわいいヤツ。
やばい、楽しい。ガールズバー、楽しい。こないだ泣いてくれたあの子がいなくても、この店は楽しい。

だけど、その店の子たちがバイトしている朝キャバに移動してからは、最悪だった。
俺は、目の前で誰がタバコをすおうが気にしない。我慢されると、イヤなんだ。ところが、この店では、客に指名されるまで、吸ってはいけないのだという。
――そういうつまらないルールのせいで、店の雰囲気がギスギスする。僕は、無言で席を立ち、エレベーターに向かった。そこでオーナーと鉢合わせたので、ムッとしている理由を説明した。
これで、あの店に行く理由は、なくなった。

どうして、僕は気持ちのいいころあいを見はからって、サッと帰ってこられないのだろう?
そして、昼過ぎに目覚めると、きっちり現実が待っているのだった。

(c)2009 高樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会

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2011年8月 3日 (水)

■0803 広い場所へ■

酒にいく約束をしていた、若い編集者が、扁桃腺を腫らして、寝込んでしまいました。
今週後半は、ゆっくり仕事をします。

彼は、脅えて部屋の中にこもっていた僕を、あいかわらずのムチャクチャな行動力で、引っぱり出してくれた男です。
僕らの仕事は、どのような状況下でも、個人を解放し、楽しませることです。そして、僕らも勉強するから、読者の方たちにも、ちょっと勉強になればいいな……と、思っています。

彼のおかげかどうか、仕事だけは、途切れずにあります。うーん、いろいろ無理もしているけれど、仕事している間だけは、夢中になれる。ありがたいことです。


父もとい廣田被告の公判日程が、ようやく決まりました。
悔いのない結果を出すために、どう戦えばいいのか、短い時間で考えなくてはなりません。いろんな制度があるのですが、ここで手の内を明かすようなことは、書きません。

これまでの、理不尽な怒りや、心ない者たちに対するくやしさは、とても言葉にできるものではありません。
――僕は作家ではないけど、言葉にはしなくちゃいけない。

すべて終わったら、その時々に何を感じていたのか、すべて明かそうと思う。その頃には、どんな心境になっているかなあ。
何もなくていい、誰もいなくていいから、湖のような、草原のような、広いところに立っていたい。


今 敏監督の遺作である『夢みる機械』が、制作頓挫してしまったそうです。→
すでに、ツイッター内では「われわれの力で、なんとか出来ないか」という声が、あがっています。
03k242919151_4制作は、百戦錬磨の丸山正雄さんですから、ただ手をこまねいているわけはありませんが、ファンの間から「何とかしたい」という声が上がるのは、作品にプラスになります。
「誰かが何とかしてくれるのを待っているだけ」よりは、断然いい。

口をあけて待っているだけの、消極的「お客様」は、どんどん損をしていく時代がくると思います。
ツイッターを見ていても、眠い目をこすって、リアルタイムで番組を実況している人のほうが、明らかに豊かに見える。いずれ、日本は貧しくなるのですから、自分の声で伝え、自分の足で楽しみをさがす(聖地巡礼なんて、まさに)ファンが、圧倒的に得をしていきます。

自由を手に入れるには、まず積極的であらねばならない。
私もいま、いわき市でイベントを計画中です。先方から、願ってもない話をいただいたので。

『夢みる機械』公式HP→

(C) 2009-2010 MADHOUSE / 今 敏

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