■0815 おぢいさんのランプ■
3月11日は、映画に行くつもりだった。『若手アニメーター育成プロジェクト PROJECT A』が、その日で終わりだったので、夜の回を予約してあったのだ。
その日の午後、地震が起きて、上映は中止になった。
7月になってから、『若手アニメーター育成プロジェクト』はテレビ放映された。ウトウトしながら、録画したものを見ていたが、二本目の『おぢいさんのランプ』で目が覚め、いつの間にか、身を乗りだしていた。
さっき、二回目を見終わったところだ。とにかく、すべてのカメラワーク、構図に裏づけがある。無駄なく、きれいに組み立てられている。
明治初期、生活必需品が、ランプから電灯へ変わっていった頃の話だ。原作は、戦前に出版された児童文学だそうだが、普遍性がある。
監督は滝口禎一さん、演技スーパーバイザー(作監的な役職?)は友永和秀さん。
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キャラクターの目にハイライトがなくて、ただのグラデだけというのが気になったけど、感情表現で必要なところには、ちゃんとハイライトが入る。あと、暗いところから明るいところへ出ると、スッと色が変わったり、仕事が地味で丁寧。
PANに、いちいち意味があるのにも、感心した。特に後半、主人公が火打石をもって、家を出ていくところ。PANで追っていくと、そこに妻が座っている。うまい。
←あと、このカットにもあるけど、無数のランプの揺れ。これは3Dなのか、それとも作画したものを増やしたのか?
ランプの色は、赤々とした「火」の色になっている。ちょっとキツすぎるんじゃないか?と思って見ていると、後半に出てくる電灯の色を、シャープに見せるためであった。
こういう計算を、ひとつひとつやっていくのが、「演出」という仕事です。ただ、思いのたけをぶつければいいってもんじゃない。
演出家は、技術職。まず、それを忘れてはいけない。
「世の中が変わったのだから、俺も、もっと人の役に立つ商売を探すんだ」という主人公の結論に、深く共感した。3月11日に見ていたら、また、感想も違ったんだろうけど……。
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今日は、終戦の日。例年は気にしないのに、今年は意識してしまう。
「8月15日」は、『マイマイ新子と千年の魔法』にも出てくる。そういうところに、作家の歴史観が見え隠れする。
この作品を、福島県いわき市で上映する(■)のは、実は大変なことに思えてきた。「大変」というのは、メンドクサイという意味ではなく、ある種の責任がともなうであろう……ということ。
いわき市は、だいたい、僕の家の前の倍ぐらいの放射線量。室内では、ほとんど、この辺りと変わらないらしい。いわき市より高い数値は、関東では散見される。
だから、関東地方の人間が「福島から避難しろ」「福島には住めない」というのは、こっけいだ。まして、「福島おわった」などとほざく権利は、世界中の誰にもない。
ただ、「これは日本全体の問題なのだから、あなたも考えろ」とは言わない。あなたが考えない分、私が考えるよ……というだけの話だ。
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