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2011年7月30日 (土)

■0730 王子様も、お姫様もいなかった■

昨日、駅前のクリーニング屋に、シャツを受けとりに行ったら、明治大学のレナト・リベラ・ルスカ氏に呼び止められた。
学校が休みになったし、奥さんと出かけるのだという。レナトさんの奥さんは、日本人だ。想像していたより、よほど、ざっくばらんな感じの方だった。

そういう雰囲気って、人に波及しやすいのか、いつもは余計な口をきかないクリーニング屋のおばさんが、「雨、また降ってますか?」と話しかけてくれた。


それこそ、よせばいいのに、またガールズバーに行った。
執着を断ち切るには、相手に呆れられ、自ら呆れるしかない。金も時間も精神力もいるが、もっとも効率的な道すじだ。

他人の同情心など、二ヶ月ももたない。僕は知っている。夜の街では、二日ともたない。
いつまでも、身の上の不幸を、売り物にできるわけではない。友だちに、「結婚はさておき、恋愛はしたほうがいいよ」と言われたが、無理だ。正月に起きたことを「なかったこと」にしなければ、無理だ。

くだんのガールズバーに近づくと、すぐ店のオーナーが話しかけてきたので、例の子を指名した。相手は、迷惑だったと思う。
「実は、わたしの彼氏がね……」と、三回ぐらい言ったもの。「わたしの彼氏」って、それは魔よけの呪文だからさ。この一言で、一メートルは、遠ざかってしまう。
そうやって、執着心を消していく。それは、希望を捨てていく作業でもある。時には、必要なことだ。未練は、足かせになる。

誰か、「分かってくれる人」が、自分のそばにいるのだ――それは、亡霊のような思い込み。
僕は、彼女の好きな煙草を買い、箱のまま、彼女に手渡した。そして、一緒に煙草をふかした。
「なんだ、煙草をすう人だったのか」。たったそれだけで、もう失望してしまう。失望は、現実に目を向けさせてくれる。
(酒や煙草をたしなむ女の人は、好きなはずなんだけどね。夜の街を歩く男としては)

彼女は、新しい煙草の箱に、自分のフルネームを書いた。いい名前だった。しかし、どんな名前だったか、もう覚えていない。


彼女は、この店が引けると、同系列の朝キャバに勤務しているという。
その事実に失望しながら、結局、朝キャバまで着いていってしまう。ここまで来ると、もう幻想も愛着も、へったくれもない。
ガールズバーは、店内の装飾もいいし、言うことなかった。女の子たちの私服は、どれも素敵だ。しかし、朝キャバはひどいもんだった。王子様も、お姫様もいなかった。
「君もさっさと、あの酔客たちの相手をしたらどうなんだ?」 何度もそう言いかけて、やめた。

TSUTAYAで借りた映画は、『ツォツィ』と『ココ・アヴァン・シャネル』。
C333578view002後者のほうが、断然いい。素敵な映画だった。
ココとあだ名される彼女は、大金持ちの家に居候する。髪を短くして、いつも、男のような格好をして、世俗をきらい、野心があって――彼女は、最愛の人を失う。

映画のラストは、ひとり残された彼女の、ファッションショーだ。華やかなモデルたちに囲まれて、ココは、ひっそりと階段のうえにたたずむ。
幸せじゃないんだ。

僕には、幸せじゃない人の気持ちのほうが、よく分かるようになってしまった。
そのことで得した経験は、今のところ、ない。だけど、なぜか寂しくない。「ひとりでいる」ことは、いつだって自由だってことだから。

(C) Haut et Court - Cine@ - Warnerbros. Ent. France et France 2 Cinema

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