吉高由里子主演なので、新宿へ『婚前特急』を見にいく。
タイトルと「5人の男を手玉にとるヤリ手OL」という設定から、勝手に『ハンサムスーツ』のようなドタバタを想像していたが、これは大人のための、機知に富んだコメディ。滋味深い。女性多めの場内は、最後まで笑いにつつまれていた。
吉高は『蛇にピアス』『GANTZ』と、ハズレを引き続けていたが、今回はよろしい。『紺野さんと遊ぼう』の頃にやっていた、あの異常な身体のひねりも、「ここぞ」という場面で披露している。
女優陣は、杏、石橋杏奈、いずれも役相応で素晴らしい。特に、石橋杏奈は「ちょっと残念な美人さん」で、こういう痛々しい役は、演じるのも演じさせるのも、勇気が必要と思う。
今回、吉高は相手役に恵まれた。浜野謙太の実直な芝居にリードされて、クライマックスで、じわじわと浜野に惹かれていく様子が、「む~ん」とスクリーンから伝わってくるもの。
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タイトルこそ『婚前特急』だけど、結婚要素はオマケ程度。
この映画が素敵なのは、はじめに「恋愛」ありきではなく、具体的な事象・ディテールを積み重ねて、結果的に「恋愛」としか呼びえないものを組み上げているところだ。
だって、ほとんどの映画は、何か神様か幽霊のように、実体のない「恋愛」ありきでスタートするでしょ。
この映画は、打算と計算で「まずは、あの男からフッてやろう」と行動すればするほど、「自分がフラれたことになってしまう」という論理が働いている。そこが知的だねー。「情念」とか「愛」とか、そういう無責任な解決法も無い。理屈、理屈で押していく。
理詰めだから、オチも読めてくるんだけど、ラストで価値の決まる映画は、三流。
語るべきことを語り終えたら、そこが映画のラストシーンよ。
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『純喫茶磯辺』が認められたように、この映画もヒットとは無縁のところで、評価されるだろう。
昨夜、大ヒットとなって日アカ賞をとった『告白』を見たんだけど、あれを問題作・衝撃作と呼ぶのは、『海猿』を感動巨編と呼ぶのと、変わらない。
女優目当てでも、ハダカ目当てでもいいよ。地味な映画をきっちり見に行って、自分の言葉で語ろうではないか。
(C)2011『婚前特急』フィルム・パートナーズ
コメント
新潟は、5月7日からだって。
まだ見れません。
その、主演女優さん、郵便局の「もよりの」というフリーペーパーの表紙になってました。
郵便局から、無料で持ち帰れます。
『告白』、映画館で予告編は見ましたが、まるで見に行く気になりませんでしたんで、見てません。
賞をとったんだ。
投稿: 鷲 | 2011年4月 4日 (月) 21時07分
「婚前特急」知りませんでした(汗)
なんだかすごく私向きっぽい映画です(汗笑)
上映館はちょっと遠いけど、頑張って行ってみようと思います。
投稿: やや矢野屋 | 2011年4月 4日 (月) 21時21分
■鷲さま
「モヨリノ」、画像検索で、すぐ出てきました。しかし、映画女優は映画に出てナンボと考えているので、写真にはあんまり興味がなかったり……すみません。
でも、『婚前特急』、新潟でもやるんですねー。嬉しい。
『告白』は見なくていいですよ。
■やや矢野屋さま
女性から見たらどうなんだろう…と思っていましたが、皆さん、大声で笑っていました。
意外だったのは、脚本を男性二人で書いていることです。『婚前特急』というタイトルに騙されては、いけません(笑)
投稿: 廣田恵介 | 2011年4月 4日 (月) 21時31分
あら「モヨリノ」、ネットでも読めるのですね。
まあ、郵便局へ行くついでがあれば、無料ですから。
>『告白』は見なくていいですよ。
判りました、見ません。
松たか子は良いと思うのですが、あの映画、予告編見ただけでも、とっても後味悪い。
投稿: 鷲 | 2011年4月 4日 (月) 21時48分
■鷲さま
いえ、ネットで見られたのは表紙だけでした。
>あの映画、予告編見ただけでも、とっても後味悪い。
じゃあ、本編はもっとヒドイですよ。
「目をそむけずに見るべき」とか、そういうヒドさではありません。単に、底が浅いというだけなので。
投稿: 廣田恵介 | 2011年4月 4日 (月) 22時01分
ああ、観て良かったと思える映画は、「救い」が必ずあって人の精神を解放するね。「告白」はそれが無さそう...落ち込ませて放置みたいな。
投稿: ごんちゃん | 2011年4月 5日 (火) 14時53分
■ごんちゃん様
おー、よく分かったな。
>落ち込ませて放置
まさに、それだ。
頭の悪いうえに、悪意満載の映画でした。
投稿: 廣田恵介 | 2011年4月 5日 (火) 15時31分
>落ち込ませて放置
あら、やっぱりそうなんですか。
後味悪すぎる映画ですね。
見ないことにします。
ブラッド・ピットが出演した、SE7EN とかいう映画も、そんな調子で、後味悪い事この上ないようでした。
あれ並かな。
投稿: 鷲 | 2011年4月 5日 (火) 20時13分
■鷲さま
いえ、『セブン』は、まだエンターテイメントになっていたし、露悪的な態度をとっていましたからね。
『告白』は、とにかく頭が悪いんですよ。中学教師にすぎないはずの松たか子が、爆弾を解除して、さらに組み直して、別の場所に仕掛けるプロフェッショナルな技をシリアスに見せたり……あ、そう考えると、けっこう笑える映画かも知れません。
投稿: 廣田恵介 | 2011年4月 5日 (火) 21時41分
あれより悪とは、
なんで、そんな映画が賞を獲るの?
>中学教師にすぎないはずの松たか子が、爆弾を解除して、さらに組み直して、別の場所に仕掛けるプロフェッショナルな技をシリアスに見せたり……
それは、笑えすぎます。
酷いもんですね。
投稿: 鷲 | 2011年4月 6日 (水) 15時30分
■鷲さま
>なんで、そんな映画が賞を獲るの?
映連に関係した作品は、賞をとりやすいのでしょうね。
投稿: 廣田恵介 | 2011年4月 6日 (水) 16時40分