■0413 権利■
震災に関連して、友だちから、ある誘いを受けました。ボランティアに行くとか、そういうことではありません。ちょこっと、アニメーションの監督にもご協力してもらえることになり、「ポケットの中の支援活動」という趣きになってきました。
あまり、表立って言うことではないので、この話は、これでオシマイです。
花見の予定でしたが、友人が調子悪いようなので、中止にしました。よって、本日もブログ更新します。しかし、とても不愉快な内容ですので、ご注意ください。
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昨日の日記は、メールでも反響をいただきました。もしかすると、この体験が、人のお役に立てるかも知れません。思い切って書いて、よかったです。
しかし、公判が始まれば、具体的なことは書けなくなるでしょう。
事件以来、何より私を苦しめているのは、母の死だけでなく、殺人者の息子である、という事実です。世間は「殺人者を生かす」方向を向きますから、彼らの相手をするのが疲れる。
父は激昂して、脅える母を刺し殺したので、死刑は当然です。
1万人を越える無実の人々が死に、13万人が不自由な避難所生活をしているのに、あの男は、安全なコンクリートの壁の中で、三度の食事にありつける。そんなことは、間違っている。
私が面会や差し入れを拒むと、親戚や弁護士が代わりに行くことになり、時として「息子のくせに、あなたが行かないからだ」と責められもします。
私を放り出した雑誌の編集長が言っていました。「人を殺したからといって、人権がなくなるわけではないんです」。
母の人権は、消えてなくなったのに?
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特に、私の神経を逆なでしたのは、父の友人の弁護士の言葉でした。
父は、弁護士にこう言っていたそうです。「妻は病気の後遺症で、ほとんど寝たきり。介護に疲れて、刺した」。私は思わず顔を上げ、「そんなバカな」と叫んでいました。
確かに、母は病気をしました。リハビリにも通っていました。しかし、私に「任天堂のWiiを買ってよ。部屋でフィットネスが出来るんだろ」とねだってきたほどです。寝たきりの病人が、ゲームで遊べますか(笑)。
そもそも、私が母に会った最後の日、彼女は駅前までタクシーに乗ってきたのです。もちろん、誰の介護もなしに、ひとりで。「父は、母を殺した上に、ウソをついて罪を逃れようとしている」。
私は現在、母の弟さんと連絡をとりながら、両親の暮らしていたマンションをどう処置するか、話し合っています。
マンションの管理会社あてに、父が送ってきた手紙を見て、私は手が震えました。いわく「私の再スタートのために、部屋はそのまま残しておいて欲しい」。再スタートだと? 妻を殺した部屋に戻って、あつかましくも自分だけ生きていこうというのか?
母に、再スタートはありません。彼女は花となり、花を流れる水となり、空気として私に寄りそい、夕陽となって、町のあちこちにいます。
しかし、母は歯医者に予約を入れていました。歯の治療中だったのです。血まみれのベッドには、読みさしの本がありました。タンブラーには、飲みかけの水が残っていました。彼女だって、生きたかったのです。
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それでも、弁護士は言います。「お父様にも、権利がありますから」と。そんな言い方をされて、誰が私に怒鳴るな、冷静になれと言えましょうか?
人の心は、水と火で出来ています。
私は毎朝(といっても昼近く)、母に供えた水を、祭壇の花たちにやります。この週末、私の友人が子供たちを連れて、母に挨拶に来てくれます。
その一方で、私の心の底には、煮えたぎるような炎が流れています。
その炎は、あの男を死刑台に送る日まで、決して消えはしないのです。
慈しみを持つのは、とても必要なことです。しかし、怒りをなくした人間は、何事もなしえないとも思うのです。
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コメント
そんな状況の中であの本を書いておられたのですね。
大事に、大事に読んでいます。
何も言えませんが、
毎日読ませていただいてます。
お体だけは気を付けてください。
投稿: silver_copper | 2011年4月13日 (水) 23時32分
■silver_copper様
あの本の、いちばん大事な部分は、12月中に終わっていたような気がします。
なので、特に影響なし、ただちに健康に害はないと思って読んでいただけると、助かります。
>お体だけは気を付けてください。
ありがとうございます。
ここのところ、酒の誘いだけは多いので(笑)、気をつけます。
投稿: 廣田恵介 | 2011年4月14日 (木) 00時16分
>「お父様にも、権利がありますから」
そんなことをサラッと言えてしまう(マニュアルなんでしょ)、弁護士だけど「権利」の意味、本当にわかって言っていますか?権利とはなにか...と問いたくなります。
...と私は、単純にムカつきました。
投稿: ごんちゃん | 2011年4月15日 (金) 00時01分
■ごんちゃん様
「加害者の人権」は、弁護士の商売道具だよ。それを被害者遺族の前で繰り返すので、「こっちは、その男に母親を殺されたんだぞ!」と全身で怒鳴りつけました。
弁護士というのは、ありとあらゆる詭弁で、「仕事」を果たそうとするけど、こっちは仕事ではないのでね。
怒らせたら、怖いよ。
投稿: 廣田恵介 | 2011年4月15日 (金) 01時16分