■0409 トイ・ストーリー3■
『カールじいさんと空飛ぶ家』を3Dで見せられて以来、ついにピクサーまで信用できなくなって、今ごろレンタルで見ました。不勉強で、すみません。だけど、「ピクサーの作品をケナすなんて、信じられない」というムードは、大変苦手。 どうしても、この手法でつくられた映像を「アニメ」と呼ぶのに、抵抗がある……。なにか、いい呼び名はないものか、考えてしまうね。
3作目にして、ジョン・ラセターはプロデュースに回った。風刺も効いてるし、スペクタクルもあるし、堂々たる完結編。
人間の出てくる比率が、シリーズ毎に多くなってくるのに違和感があったけど、ラストシーンは大変、美しかった。典型的なアメリカの住宅街の風景が、あまりに清潔で、くやしいぐらい綺麗だった。
だから、人工美だよね。ストーリー自体、「古いオモチャがいつまでも大切にされる」という感傷的なメルヘンだもの。ノイズが入ってはならない、美しい世界。
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『トイ・ストーリー』は、一作目から一貫して、移民たちが居場所を求めて彷徨する物語だった。どのオモチャも、出自や外見が違うものね。
移民たちの中で階級差ができてしまう本作は、特にシビアだったと思う。幼稚園が、まるで移民局のようになっていて、動くに動けないという……。バズ・ライトイヤーが、モード変換でスペイン語を喋るシーンには笑ったけど、移民の国ならではの風刺だね。
クライマックス、処分場に捨てられたオモチャたちが、溶鉱炉を前にして、死を覚悟する。俺は、あそこで一回、この映画は終わったと思っている。かろうじて延命されただけで、映画の外では、いつかはああなる運命が待っているわけで、やけに痛々しく、リアルに感じた。
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今回の一件以来、『ギャラクティカ』的な気分を、ずっと引っ張っている。「だけど、人工生命体サイロンの反乱なんて、この世にないし」と苦笑もしてたんだけど……。劇中では詳しく説明されないだけで、冒頭で「サイロンは、生活を快適にするため、人類がつくった」とナレーションが入る。その「生活を快適にするため……」というところで、ドキッとするわけです。
つまり、原子力発電所も、人間のための奴隷みたいなもんだよね。
すると、アダマ艦長の「サイロンの反乱にあったのは、人間たちのせいとは言い切れないと自らを慰め……そればかりか、自分たちの子孫に、そのツケを払わせようとしている」という演説が、シャレにならなくなってくる。
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明日は、選挙に行き、それから高円寺の反原発デモに参加します(こちら)。
デモに行くのは、きっと自分のためですね。
結婚生活にも失敗したし、「アニメ新世紀宣言」にも参加しなかったし(笑)、どこにも自分の居場所がなかった。
「死んだ母の代わりに、80歳まで生きのびてやろう」と思った矢先、コレですから。どうやら、80歳までは生きられそうもない。
ならば、自分の中途半端な生涯と、歴史の重なる瞬間を、この身で体験してやろうじゃないか。ひょっとしたら、その程度の動機なのかも知れません。
ブログを毎日更新しているのも、おそらく似たような気持ちが、そうさせているのでしょうね。
(C)Disney/Pixar
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コメント
トイ・ストーリー 三部作、面白かったですよ。
リバイバルで、3D化した、1.2同時公開と、3も、息子と2人で見ました。
CGアニメなのに、表情に感情があふれて居るのが凄いと思いました。
投稿: 鷲 | 2011年4月10日 (日) 11時29分
■鷲さま
表情が止まっていても、ジワ~ッと感情が伝わってくるんですよね。あれは、本当に見事。
>リバイバルで、3D化した、1.2同時公開
ああ、前二作も3D化したんですか。
でも、2Dでも十分に面白いですよね。
投稿: 廣田恵介 | 2011年4月10日 (日) 12時00分
トイ・ストーリーを見た後の、NHKのCGアニメが、まるで感情こもってなくって、かなりガッカリした覚えがあります。
>>リバイバルで、3D化した、1.2同時公開
>ああ、前二作も3D化したんですか。
去年の2月に、2本同時で上映したんです。
3の宣伝を兼ねてなんでしょう。
2Dで十分です。
2本続けて3Dを見たら、息子は頭が痛いと言い出しました。
すぐに治ったようでしたが、子供に3Dは良くないかもしれません。
投稿: 鷲 | 2011年4月10日 (日) 13時05分
■鷲さま
3Dにすると、単純に入場料を高くとれますからね。邦画の興行収入に水をあけられている洋画にとっては、もう3Dしか活路は残ってないのでしょう。
>2本続けて3Dを見たら、息子は頭が痛いと言い出しました。
まあ、そうでしょうね(笑)。大人でも疲れるはずです。
投稿: 廣田恵介 | 2011年4月10日 (日) 18時00分
トイ・ストーリーは特に2が本当に好きで何度も繰り返し見ていたのですが「移民」というワードは恥ずかしながら思い至りませんでした。
トイ・ストーリーは、自分達が流れる時間に対して有限な存在であることをどう受け入れるかという話だと思っているので、トイ・ストーリー3に関しては、あそこで一度「死の覚悟」を経ていることで、都合が良いとも思える「幸福な延命」を物語として受け入れることが出来るように思えます。
投稿: 米田京平 | 2011年4月11日 (月) 15時36分
■米田京平さま
いえ、僕も3を見て、「この幼稚園は移民局じゃないか!」と思い当たっただけですよ。それも、移民女性がアメリカで苦労する映画を見ていたから、そこからの連想です。
>トイ・ストーリーは、自分達が流れる時間に対して有限な存在であることをどう受け入れるかという話
なるほど、そうですね。「古くなる」ということは、耐用年数が限界を迎えることに他なりませんものね。
そこをファンタジーで乗り切り、ラストシーンでは、古いはずのオモチャたちがピカピカになっている――これ、実写でやったらウソに見えるでしょうね。CGの強みだと思います。
投稿: 廣田恵介 | 2011年4月11日 (月) 15時55分