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2011年4月 3日 (日)

■0403 ポケットの中の戦争■

『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』のアル少年は、ずっとジオン公国と連邦軍の戦争に憧れていた。それは、「戦争という大状況を、生身で感じたい」欲求である(アルは好戦欲をゲームで満たし、駄菓子屋でおもちゃの階級章を買いあつめていた)。
P_0080アルは、ジオンの新米兵士と仲良くなるが、彼が無駄死にするのをとめることができず、またしても、まんまと生きのびてしまう。
終戦の日に、アルが泣くのは、友だちを亡くしたからではない。自分だけが、無傷で生きのびてしまったからだ。

この物語の最大のクライシスは、コロニーが核攻撃されることだが、その阻止にすら、主人公は関与できない。

――余談になりますが、『ポケ戦』のストーリー原案は、現サンライズ社長の内田健二さんによるもので、初期プロットは「Bクラブ」誌に掲載されました(当初は、破滅願望を持つ女の子が主人公だったと記憶します)。
この作品から数年たって、私は内田さんと出会うことになりますが(当時は企画推進室長)、いくら『ポケ戦』を誉めても、「私の手柄ではない」と謙遜していました。
しかし、児童文学を愛好する内田さんが『カラフル』のアニメ化を立案したとき、私は思わず、ひざを打ったのでした。


ミリタリー系のオタクであれば、国情や経済にも通じていますから、このような時に含蓄ある発言ができるのでしょう。
私は、そうではありません。フィクション(特にアニメ)を参照するしかないのです。

母の死亡通知をもって、携帯電話の解約に行ってきました。行くたびに、店内の節電が甘くなって、少しずつ明るくなっていくような気がします。
中華料理屋で食事していたら、東北なまりのオジサンが、店の人としゃべっていました。「まだ電話がつながらない」「屋内退避だから動けない」「地震ではなく津波にやられた」……親戚のことなのか、はたまたテレビの聞きかじりか、それは分かりません。

ともあれ、三鷹は腹ただしいまでに、平和です。


再び、『ポケ戦』の話。
泣きじゃくるアル少年に、事情を知らない悪友たちが声をかけます。「大丈夫だよ、また戦争はすぐ始まるさ」。
これは、的外れな励ましでしょうか? アルは、今度こそ自分が被害者か加害者になりたい、不条理な社会に身を置いて、その痛みを分け合いたいと望んでいるはずです。

(C) 創通エージェンシー・サンライズ 

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