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2010年12月19日 (日)

■Eくんのこと■

過去に何度か話したように、僕は結婚の前後だけ、ゲーム会社に勤務していたことがある。
3年間で16億円をドブに捨てたといわれるそのゲーム会社の凋落は、それこそ一冊の本になるほど劇的だった。エキサイティングな体験だった。
以前に、『海物語』のデザインの話を書いたと思うが、パチンコ企画をやっていたのも、その会社でのことだ。

パチスロの企画もやっていたのだが、スロットのキャラクターは、もうちょっと若者向けでもいいという。何十人といるデザイン・チームからも、企画を募集することになった。
その中で、やけにエッチな女忍者の絵を大量に描いてよこした者がいた。仮にEくんと呼ぶ。
僕はすぐに、Eくんの机に飛んでいって、「こういうキャラが好きなの?」と聞いた。最初Story_imgは遠慮がちに「まあ、好きですよ」とぽつぽつ話すEくんだったが、「『グラヴィオン』ってアニメ、知ってますか? ……ロボットを整備するのが、メイド服の女の子なんすよ」と言って、小さく笑った。
(←『超重神グラヴィオン』)
僕はいずれ、この会社の設備を使ってアニメをつくるつもりだったから、彼にキャラクターをお願いした。
なにより、エッチなキャラを描きたくてモヤモヤしているEくんの絵を、とにかく大量に見たかったのだ。


その頃は食玩が流行っていたから、彼の好きそうなものは差し入れに持っていった。社内メールでキャラに注文を出すと、「かしこまり~」という短い返事がかえってきたのを、よく覚えている。
Eくんの絵は「エッチ」ではあったけど、エロではなかった。彼は、エッチとエロの間に、一本の線を引いていた。その線が、僕には、はっきりと見えていた。
「廣田さんは、俺の絵を誉めすぎっすよ。誉め殺しですよ」と、Eくんは苦笑するのだった。

そのうち、Eくんのお母さんが亡くなって、彼は郷里に帰った。ひさびさに会社に出てきても、なかなか顔を合わせるチャンスがなかった。……いま思うと、しょんぼりしている彼に「残念だね」と、声をかけた気がする。
それから再び、Eくんは会社を休むようになった。ある朝、社長が朝礼で、Eくんの死を告げた。病死と聞いた。

なぜ、Eくんのことを思い出したのだろう?
僕の生きかたは、車輪が外れても走りつづける、ブレーキの壊れたクルマのようなところがある。Eくんは、ほんの数ヶ月だが、壊れたクルマに乗っかってくれた。そして、先に降りてしまった。

僕は今も、崖っぷちを走っている。一緒に走ってくれる仲間は、みんな去ってしまった。

(C)大張正己・赤松和光・GONZO/グラヴィオンツヴァイ製作委員会

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コメント

一緒のチームとは言わないまでも、YELLOWLINEを併走してるつもりくらいは、あるんですけどね。僕は性能悪いんでだいぶん後ろを走ってますが。

REDLINEのエントリー権獲得もまだこれからじゃないすか。

パトロンやオーナー、名メカニックとの出会いで状況が劇的に改善される事だってあります。
レーサーとして走れなくなってもチームオーナーとして関わる方法だってある。(近藤雅彦!)

馬鹿をやりましょうよ。
人生50年を100年にも200年にもしましょうよ。

投稿: てぃるとろん | 2010年12月19日 (日) 03時59分

■てぃるとろん様
ありがとうございます。自分のこれからを考えたとき、あなたのことが真っ先に思い浮かんだのは、お世辞でも何でもありません。

「グレメカ」の見本誌が届いて、自分のページを開いたとき、僕は声を出して泣きました。「くやしい、くやしい」と声に出していたから、よっぽどです。
でも、それは「編集者、憎し」の涙ではありません。「あんなに頑張ったのに、結局はこうなってしまうのか」という残念感からです。

夏以降、残念なことばかり続いてきたから、ドッと疲れが押し寄せたんだと思います。

>馬鹿をやりましょうよ。
>人生50年を100年にも200年にもしましょうよ。

僕も「しぶとく、図々しく生きのびて、好きな場所で死ぬんだ」とずっと思ってきました。
今はガス欠なのに、まだ走りつづけている感じです。『新子』本が出たら、ピットインしようと思います。そのとき、ゆっくり、話を聞いてください。

投稿: 廣田恵介 | 2010年12月19日 (日) 04時20分

落ちついたらぜひ休暇を取ってほうふにあそびにきてください。私をはじめバカばっかりなで、廣田さまもきっといやされるかもですよ(^-^)/

投稿: なお | 2010年12月19日 (日) 08時26分

■なお様
ありがとうございます。
そちらへは、少し先になってしまいますが、必ずうかがいます。
その頃は、もう少しあたたかくなっていると思います。

投稿: 廣田恵介 | 2010年12月19日 (日) 12時51分

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