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2010年12月31日 (金)

■コトバのない冬■

録画してあった『天使の恋』を見ていたら、ドカン隊長から「ラピュタに来ませんか」という電話があり、一度は「まあ、また次回でいいでしょ」と断った。しかし、以前からお会いしたくても会えなかった方が上京中と聞き、「これも縁かな」と阿佐ヶ谷へ。
101231_00130001個人的には、いくつか驚く話も聞いたけど、それは『新子』がどうとか言うより、誰がどの会社に移ったとか、そういうレベルの話なので……。
『新子』本については、どの記述を直したらいいのか、何点かポイントが分かりました。7月のDVD発売時は、なんとなく悲壮感があったんだけど、昨夜は「来年も、まだまだ続きますよね」的なごやかムードで、お開きとなりました。

「今回、初めて見た」というお客さんが、まだまだいらっしゃったそうで、それは我がことのように嬉しいです。


『天使の恋』の前に、高岡早紀の『コトバのない冬』を見ていた。
Images3_2高岡早紀、38歳。僕ら世代にとっては、『バタアシ金魚』の人。いい感じに、色気がにじみ出てきた。

映画は、『ハルフウェイ』のような、『好きだ、』のような即興メインの撮り方。テレビドラマでいうと、『四季・ユートピアノ』風。あのドラマ、1980年なんだ。確か、再放送で見たはず。
もともとは、ジョン・カサヴェテスが『アメリカの影』で始めた手法じゃないかな。役者に最低限のシチュエーションだけ説明して、あとはヨーイドンでカメラを回す。

『コトバのない冬』は、それぞれの役者の演技よりは、映像がよかった。雪の中、光量がとぼしくて、ほとんど、画面が鉛色に染まってしまっている……とか。まるで、この世の果てだよ。
ときどき出てくる遊園地は、雪に埋もれて、誰もいないしね。こういう、わびしい風景を見るのも、映画の楽しみだよね。そこに、高岡早紀がはかなげに立っているだけで、もう十分。
「お話」ってのは、映画が戯曲から導入したものに過ぎないので、実は、本質ではない。いやおうなく映画につきまとう、「3秒」とか「24コマ」とか、機械的な制約。その刹那を味わわないと。

年末に、しんみりとするには、ふさわしい映画だった。

(C) 2008 Laetitia,Inc.All Rights Reserved.

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2010年12月30日 (木)

■食堂かたつむり■

忘年会の前、メモ帳をめくっていたら、11月末には、もう『新子』本の制作がスタートしている。ということは、1ヶ月ぐらい、映画をレンタルしていなかったことになる。

で、ようやく時間ができたので、TSUTAYAで『食堂かたつむり』。
Images01志田未来が気になっていたんだけど、登場シーンは3分ぐらい。主役のくせに、たった一言しかセリフのない柴咲コウが、けっこう良かった。大作映画ばかり出ているイメージだが、こういう規模の作品のほうが合ってるんじゃないか。『メゾン・ド・ヒミコ』とか。

監督は、PVやCM出身。ストーリーが劇中歌で説明されたり、画面いっぱいが切り絵アニメになってしまう演出には、かなり面食らう。『のんちゃんのり弁』みたいな、意思の疎通をこばむヤバい映画かと思ってしまう。なんかこう、稚拙美をウリにしたようなさ。
しかし、だんだん、この映画なりの理屈だとか、一貫したリアリティの基準なんかが見えてくると、これはかなり愛らしい映画だよ。


料理で他人を幸せにしてやれるが、自分はあまり幸せではない柴咲コウの周囲に、ときどき、真っ白いハトが飛んでくるんですよ。それも、ところどころアニメだったりするので、決して、リアルな鳥ではないんだけど。
そのハトが、最後に柴咲の食堂の前にパタッと落っこちてきて、死ぬわけです。「ああ、このハトを食材にして、自分のための料理を初めてつくるのだろうなあ」と思っていたら、案の定。彼女を見守ってきたハトだからこそ、これは食べることで自分の体の一部にするよな、と。
「それで、最後にいいセリフを言って、エンドマークだな」と思っていると、確かにそうなるんですよ。

だけど、「予想のつくラスト」が、予定調和とばかりは限らない。この映画の場合、「そうなって欲しい」という展開になるのが、甘ったるくも気持ちいい。
世の中には「意外なラスト」こそ、優れた映画の条件みたいに言う人がいるけど、そんなにありがたいかねえ、意外なラスト。
「そうなって欲しい」という映画の願望と、観客の願望が一致するのって、幸せなことだと思うんだが。

女優的には、満島ひかりが、イヤな役で登場していたのがショックだった。あの役だけは、最後まで救われなかったものな。
でも、ほとんどセリフなしで、目をギョロギョロさせて感情表現しなきゃならない柴咲コウ、ちょっと見直した。もう、局主導の大作映画になんか、出なくていいよ。


早いもので、明日31日、コミケ最終日ですね。
『メガゾーン23』同人誌『2325』は、「東6ホール ヌ-22a 時祭組」にて。先着プレゼントもあるみたいです。
D_hyousi
改めて読み返してみると、本当に皆さん、好き勝手なことを書いてます。でも、それが同人誌だからね。
『メガゾーン』関係者は、今回は一切登場せず……と思いきや、最後のページに、あのお方の直筆メッセージとお写真が。

そうそう、『ブラックラグーン』の一挙放送なんてやってたんですね。夜中に起きて、ぜんぶ見ちゃいました。

(C)2010「食堂かたつむり」フィルムパートナーズ

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2010年12月27日 (月)

■アニメの特権■

時間ができたので、昼すぎ、ラピュタ阿佐ヶ谷に行って来た。昨夜、「新座のでかいポスター、また貼ってもらおうか?」と思ったけど、展示物が増えてると聞いたので、お邪魔かな、と思って自粛した。
101227_12350002『新子』本の取材の合間、エイベックスさんから見せてもらった「シャドーボックス」。同じ絵を何枚もズラして貼り込むことで、擬似的な立体に見せるという凝った工芸品。これも商品化されたら、いいんですけどね。

あと、『新子』本の一迅社がらみの展示物。チラシに「2月下旬発売予定」と書いてあったので、ちょっと延びた様子ですね。ごめんなさい。
原画やレイアウトが展示してありましたが、本に収録されるものもあれば、ないものもあります。いずれにしても、原画はカラーで掲載しますから、綺麗ですよ。
『マイマイが風にさわぐ日々』も置いてありましたが、これもデータを発掘してもらいましたので、掲載いたします。


ラピュタに行った一番の目的は、同人誌『防府にイマココ!』。オールカラーで300円、同人誌ならではのスピリットを感じます。写真も印刷も、また綺麗なんだ。
編集長の押井徳馬さんは、吉祥寺バウスシアターで『新子』ご覧になったそうで、すっかり好感。知っている執筆者が、お2人ほどいるのも嬉しい。


『STAR DRIVER 輝きのタクト』は、毎週見ている。
タクトくんが「この島のサイバディ(敵ロボ)は、僕がぜんぶ壊す」と決意したのに、今回はサイバディが復元可能になってしまった。「前に倒したはずなのに?」とタクトくんはビビるだろうと思ったら、何もいわずに破壊した。
「この島のサイバディは、ぜんぶ壊す」と宣言したからには、ただそうするだけなんでしょう。カッコいいっす。

僕は、このアニメの設定や世界観は把握できてないけど、舞台になっている島には、Story08_02 因習があるんでしょ? 「血筋が」とか「あの家は代々…」とか、そういう設定のベースを、タクトくんは「ぜんぶ壊す」わけですよね? おおいにやって欲しい!と願うばかりです。
若者は、大人のつくった価値観を壊してください。大人なんて、どんな善人でも、長生きしすぎれば老害です。

日本のアニメは、『ヤマト』『ガンダム』以降、ティーンに向けて、何かつくりつづけなければならなくなりました。ティーン向けにアニメをつくるのは、決して「売れる」からではなく……むしろ、この30年、どんどん売るのが難しくなっているわけですね。
ティーンに向けて「自由」と「解放」の物語を提示しつづけるのは、慣例でも習慣でもなく、アニメという媒体の背負ってしまった、義務のようなものです。大人を正当化した瞬間、アニメからは何かが抜け落ちていくんですね(実写映画の場合は、大人を描くと成熟と見なされるというのに)。
メディアにこもった良心のようなものが、「若者を解き放つ」物語をアニメに描かせつづけるのです。

僕は僕で、硬直化した古いシステムに戦いを挑み、老害を排します。だから、僕より若い人たちも、僕らを倒しに来てください。

(C)BONES/STAR DRIVER製作委員会・MBS

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2010年12月26日 (日)

■『新子』本、制作日誌23■

とうとう、ラフとテキストのしめきり、前日となりました。
私が「すべて間に合わせる!」と豪語したせいか、誰とも連絡とれず、えんえんと書いては編集部に送信、体力あれば作業続行、なければ寝て、起きたら作業……という孤独な日々でした。

さて、美術設定は図版が大きく、描きこみが細かい。本のサイズはA5なので、絵がつぶれてしまわないか、GIMPで実寸まで縮小してみる。
101225_22110001 「この大きさなら、ぎりぎり入る」サイズまで小さく表示し、モニタの上に紙をおいて、シャーペンであたりをとる! 最後の最後で、原始的な方法に戻ってしまうのだ。
どうしても、絵にノド(本の真ん中のところ)がかかってしまう場合は、デザイナーさんに向けて「ノド、気にしなくて良いです」と書いておく。


美術のページは、建物の絵が並んで単調になりがち(上原さん、こんな言い方してすみません)だが、場面カットを挿入しながら、ストーリーを追えるように構成した。
101226_16070001ただ、場面カットを入れるときは、絵コンテで流れを確認し、それでも分からんときは、DVDを見る。新子の家なんて、もう目をつむってても歩けます。

あと、あれですよ。平安時代の国司の館は「諾子ちゃんのおうち」と呼ぶと、博物館的な気分が吹き飛んで、グーですよ。西対屋なんて、「諾子ちゃんのおへや」ですからね。
「諾子ちゃんのおへや」ページを、どう盛り上げるか、構成を考えました。


本日夜から、ラピュタ阿佐ヶ谷で『新子』、上映ですね。
生意気を言わせてください。この映画は、僕の戦友です。こうして一年たっても、まだリングに立っていられるのですから。

私は徹夜になりそうなので、ラピュタに行ける皆さんは、楽しんできてください。私もクジビキしたいぞ。

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2010年12月25日 (土)

■『新子』本、制作日誌22■

朝10時起床。キャラ表の最後の4ページを終わらせる。
昼食は、「多加はし」のカツ丼。ちょっと高いけど、栄養ありげなので。クリーニングに出していたDish04シャツ5枚うけとり、栄養ドリンク3本買って、帰宅。

残り30ページ、美術設定と小道具を配置し、各コーナートビラの文章を書けば、とりあえず一区切りのはずである……が、それらをすべて、明日中に形にする約束なので、がんばる。
紙とシャーペンとボールペン、そしてパソコンとケシゴムだけの単調作業なので、もはや作業風景を載せても意味ないでしょう。

キャラ解説のキャプションは、ちょっと調べ物しましたが、監督チェックで直されると思います……でも、たとえ付け焼刃でも、僕は調べないと気がすまない性格みたいです。


まだ大学を卒業するかしないかという頃、若手監督の映画企画にかかわったことがある。具体的には、原作漫画をベースにした脚本があり、その脚本のプロットはいっさい変えないまま、シーンの密度やセリフを増すという作業だった。
(まったくの偶然だが、その企画には『マイマイ新子』の山本宣伝プロデューサーも参加していた)

ストーリーの核になるのは、ロケットである。だけど、もとの脚本には固体ロケットなのか、液体ロケットなのか、燃料はどうするのか、まったく書いてなかった。
なので、僕は図書館に行って、まず、子供向け学習図鑑でロケットの基本を学び、それからアポロ計画のビデオや最近の専門書なども拾い読みして、脚本にディテールを入れていった。

すると、監督は「これはロケット・マニアではなく、ロケットのことなんて知らないお客さんが見る映画なんです」と反発した。
それは逆です。(ラブストーリーであれ何であれ)ロケットのことをしっかり考証しておかないと、ロケットの映画なんて撮ってはいけないんですよ。
「自分が知らないんだから、お客さんも無知のままでいい」という態度は、たとえば実写版『ヤマト』なんか見てても、感じられる。


原作の『ナウシカ』を読むと、「抜刀!」とか「土塁が邪魔で、俯角がとれねえ」なんてセリフが、当たり前のように出てくる。
「細かいことは分からないけど、しっかりした知識を裏づけに書いてあるんだなあ」と、頼もしい気分になる。どうしても気になる言葉があったら、調べればいい。それだけ、世界が広がるわけだから。

本を読む楽しみなんて、自分がいかに無知かを知るためじゃないかという気さえ、するのです。

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2010年12月24日 (金)

■『新子』本、制作日誌21■

一迅社さんの公式ブログ「マイマイ新子と千年の魔法の本ができるまで」、まだオープンしていない様子。代用というにはお粗末ですが、今日も制作日誌です。

本日は、キャラクター設定画のページを再開。この後、美術・小道具と設定画がつづくのだが、やはり読者はキャラの絵が見たかろうと思い、「まったく触れないキャラ」はないようにページ割を考える。とりあえず、三年三組は全員のせよう!とか。全41名、けっこう大変。
545_6 (←こんなの出来てたんですね。さりげなく表紙も載ってる)

まあ、平安時代まで合わせると、キャラ表が膨大な数になるんですわ。でも、画面に出ていないキャラはいないので、全網羅したくなってしまう。

シーンの確認用に、ちょっと台本を読んでいたら、多々良のセリフに涙してしまった。
今夜と明日が勝負かな。日曜日、小道具ページをいじっている程度なら、間に合うかな。


さて、『メガゾーン23』25周年記念同人誌『2325』が刷り上ってきたので、何部か見本誌をいただきました。今回はスタッフ・インタビューはないのですが、「ネタですか?」というぐらい貴重な資料が掲載されています。今まで、どのムックにも載っていません。
D_hyousi執筆陣を紹介しますと、いぬ/榊大悟、魚谷 潤、オーバーダード/佐藤弘、きみづか葵、木村世忍、ギムレット、ことぶき つかさ、彩工家、@sculptd90、武神 拳、氷川竜介、廣田恵介、ぷぅ、帆足剛彦、前岡和之、ムスタング、もん太、よっちむ、乱化 嫁乃助、レナト・リベラ・ルスカ(敬称略・五十音順)となっています。

序文が氷川竜介さんなので、「なに? 公式?」とか思ってしまいます。
どちらかというと「ガーランドが好き」「メガゾーンの立体物が好き」という人向けの本かも。廣田は「非実在歌姫小史~イヴはミクでもミンメイでもない~」という文章を書かせてもらい、きみづか葵さんにカラーイラストを描いていただきました。

発売は、コミケ最終日にて!

2010年12月31日(金)
東6ホール ヌ-22a 時祭組
メガゾーン23 25周年同人誌「2325」
発行/時祭組 制作「2325」制作委員会
価格1000円
A4横サイズ32ページ(カラー&白黒)

※「フェスティバルタイムズ」バックナンバーの販売もあります。

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2010年12月23日 (木)

■『新子』本、制作日誌20■

早起きして、ラフ2ページを終わらせる。
仮眠して、栄養ドリンクを飲んでからテキストを書けば、とりあえず、カラーページは形になるはずである。
『新子』本の制作は、一日も休まない!

昨夜、ある友人と「去年の今ごろ、同人誌で『新子』の資料本を出そうなんて話してたよね~」と、しみじみ。
一年前は「大人のためのマイマイ・ナイト」に毎日通っていたのだから、よっぽどヒマだったんですね。あ、防府巡りの同人誌は買いに行かないとなあ。

今日はカラーページのテキスト終わらせて、明日からモノクロ・ページに戻る予定。


仕事の合間を縫うようにして、キネカ大森へ。
101223_12050001デジタル版『ぼくのエリ 200歳の少女』。2本立て1,300円とお得なので、未見の方はどうぞ(明日24日まで)。

何も引かない、足さない、水のような映画。
エリの内面からほとばしる生命力に、震えるほど圧倒される。ラストの列車のシーンには、何か肉眼で見ているものとは別の、つまり、「今の私」がそこに映っているような気がした。「作品と関係を結ぶ」とは、このような体験をいうのだろう。

二度目のせいか、ディテールの繊細さにも、目を見張った。どうやら旅立ちを決意したらしいオスカーが、部屋に飾ったミニカーのドアを、ひとつひとつ閉めていく。
それが、どんな意味なのか説明はできないよ。でも、それがどうしても欠かせないカットであることだけは、なぜか分かる。

この映画を見た以上、「何かをあきらめる」とか、「生きることに消極的になる」とか、そんなことは許されない気がしてくる。エリの、あの瞳に凝視されてしまった以上は。


さて、肝心のモザイクですが、フォトショップの「ぼかし」ツールで消したような処理になっており、初見の方は、何が映ったのもかも気がつかなかったと思います。事実、同行したお姉ちゃん(キャバ嬢ではない)は「えーっと、どこにモザイクが?」と首をかしげていた。
この処理なら、僕も見逃したと思う。

しかし、忘れてはいけません。映画倫理委員会は、性器さえ映っていないのに、このカットの処理を配給会社に命じたのです。回答書には「事前に申請者に伝えてある」という意味のことが書かれていますが、これは事実ではありません(配給会社に電話で確認済み)。
実写映画においては、すでに表現規制は始まっています。そして、日本に映倫を止める機関・団体は存在しません。

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2010年12月22日 (水)

■『新子』本、制作日誌19■

師走ですね。
ラフ作業中に電話があり、納品済みの某原稿、本文に使ったネタを別のものと差し替えたいという。ということは、キャプションも同時に直さねばならない(『新子』本の話ではありませんよ、念のため)。
こういう場合は、文字数はまったく変わってないのに、ちゃんと別のネタになっている……というのがクライアントさんも嬉しいし、こっちも直しがいがあるというものだ。
40分で書き直して、『新子』の作業に戻ったが、返事がない。さらに直しが出たら、どうしましょ。


4ページ、ラフ完了。カラーは、残り2ページ。
101222_15140001今日は、エイベックスさんから送られてきていた場面カットを、ひとつのフォルダにまとめる作業から始めた。どうして、こういう基本的なことを最初のうちにやっておかないかな、と自分でも思う。

思えば、『新子』本を書きませんか、と最初に言ってくださったのは、エイベックスの岩瀬プロデューサーであった。「ようやく、恩返しできるときが来ましたよ」と電話してくれたのだった。
岩瀬さんに最初にお会いしたのは、署名が始まる直前あたりで、もしかして「勝手なことしないでください!」と怒られるのではないかと、ヒヤヒヤしていた。にこやかな方だと思ったけど、あの日は一日、署名の「しょ」の字も出なかったよな~。しみじみ。

よく分からんが、佐波川の写真を探していたら、涙が出てきた。この本を作っていると、こういうことが、よくある。
テキスト書き終わって、体力が残っていたら、残り2ページもやっておくか。明日は、ほとんど作業できないのだから。


昨夜は、『海月姫』第6巻を読んで、まやや様のトリコになってしまった。
51gbyapncbl最初に見たときは「だから、オタクが自分を肯定しようとして、こういうキャラを親しげに描くなよな」とイライラしていたのだが、この漫画、「そのままでいい」とも「そこから変われ」とも言ってないんだ。

「オタク/オシャレ」の間を、服装一枚で、軽やかに往還するだけなんだよな。
権力……もっと言うと、社会的な「親」を共通の敵にすることによって、「オタク/オシャレ」の対立を、どんどん無効化してしまう。
でも、だからこそ主人公たちの闘争は、学園祭っぽいんだよな。「親」に対する反抗だから。

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2010年12月21日 (火)

■『新子』本、制作日誌18■

昨日、メイキング・ページのラフとテキストが終わった。
さて、次は『新子』ならではの目玉コーナーだ。改めて素材をチェックし、どう配置するか考える。……これは、なかなか大変なことを始めてしまったようだぞ。
編集女史に調べてもらった情報を、テキストに起こして整理するという、難解な方法をとる。それを参照しながら、なんとかラフを書いてみたが、どうしても収まらない。

そうこうしているうち、因縁の深い『アクエリオン』BD-BOXのブックレット・デザインが上がってきたので、チェックして戻す(3月発売なのに、なぜこんなに進んでるんだ)。

その後で、もう一度、撮出し素材まで戻って、ひとつひとつレイアウトを見ていき、プリントアウト101221_16560001してみる。
そうしたら、突破口が見えてきた。面白いもんで、紙にした瞬間、パッと分かった。
今夜中に3ページぐらいやって、明日3ページやれば、もう出口は見えてくる。一時は、どうなることかと……。

『新子』本、深く静かに制作中。


TSUTAYA三鷹北口店が、ずーっと品切れにしていた『海月姫』第6巻、南口の本屋で、やっと買ってきたよ。
でも、一日のノルマが終わるまでおあずけ。『ハイジ』の再放送も今日で終わってしまうし、だんだん癒しアイテムが減っていく。

クララの「立てない」は、あなたに置き換えると何ですか? あなたにとって「できない」「やれない」ものって何ですか? そういう問いを発しているね、このアニメは。
「立ちたい」と言っているくせに、同時に「できない」「やれない」と言い訳するのは、やっぱり「弱虫」「意気地なし」なんですよ。
35年かけて、ようやく僕は、このアニメに追いついた。

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2010年12月20日 (月)

■『新子』本、制作日誌17■

一迅社さん公式の「マイマイ新子と千年の魔法の本ができるまで」ブログ、もうちょっとスタートが先になりそうな気配なので、進捗日誌を再開します。
もうブログ自体は出来ているので、今週末にはオープンするでしょう。


カラーページのラフとテキストが、OKとなったので、昨日はモノクロ・ページに載る設定画を配置していました。
Sscan20001(作業風景は殺風景なので、北海道・北見から送られてきた『新子』本の書店用ポップを。まだ本が出来てないのに、この熱気!)

単に設定画を並べるのではなく、監督インタビューの未使用部分を聴きなおして、台本も読んで、なるべく情報を込める。
山口弁の台本(ちゃんと本に収録されます!)を読んで、「これ、発音できないよ……」と笑う程度の、静かな部屋。


ふと、「俺と『マイマイ新子』の関係は、これで良かったはずだよな」と手を止める。
吉祥寺での上映とイベント、あの時、協力してくれた人たち。わざわざ見に来てくださった石黒昇監督を、深夜の吉祥寺で見送ったこと。名も知らぬお客さんとの会話、福田麻由子さんに渡した花束。
――幸せだった。あの春の日の思い出があれば、まだ、いくらでも進んでいける。『新子』本は、粛々と制作中です。

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2010年12月19日 (日)

■Eくんのこと■

過去に何度か話したように、僕は結婚の前後だけ、ゲーム会社に勤務していたことがある。
3年間で16億円をドブに捨てたといわれるそのゲーム会社の凋落は、それこそ一冊の本になるほど劇的だった。エキサイティングな体験だった。
以前に、『海物語』のデザインの話を書いたと思うが、パチンコ企画をやっていたのも、その会社でのことだ。

パチスロの企画もやっていたのだが、スロットのキャラクターは、もうちょっと若者向けでもいいという。何十人といるデザイン・チームからも、企画を募集することになった。
その中で、やけにエッチな女忍者の絵を大量に描いてよこした者がいた。仮にEくんと呼ぶ。
僕はすぐに、Eくんの机に飛んでいって、「こういうキャラが好きなの?」と聞いた。最初Story_imgは遠慮がちに「まあ、好きですよ」とぽつぽつ話すEくんだったが、「『グラヴィオン』ってアニメ、知ってますか? ……ロボットを整備するのが、メイド服の女の子なんすよ」と言って、小さく笑った。
(←『超重神グラヴィオン』)
僕はいずれ、この会社の設備を使ってアニメをつくるつもりだったから、彼にキャラクターをお願いした。
なにより、エッチなキャラを描きたくてモヤモヤしているEくんの絵を、とにかく大量に見たかったのだ。


その頃は食玩が流行っていたから、彼の好きそうなものは差し入れに持っていった。社内メールでキャラに注文を出すと、「かしこまり~」という短い返事がかえってきたのを、よく覚えている。
Eくんの絵は「エッチ」ではあったけど、エロではなかった。彼は、エッチとエロの間に、一本の線を引いていた。その線が、僕には、はっきりと見えていた。
「廣田さんは、俺の絵を誉めすぎっすよ。誉め殺しですよ」と、Eくんは苦笑するのだった。

そのうち、Eくんのお母さんが亡くなって、彼は郷里に帰った。ひさびさに会社に出てきても、なかなか顔を合わせるチャンスがなかった。……いま思うと、しょんぼりしている彼に「残念だね」と、声をかけた気がする。
それから再び、Eくんは会社を休むようになった。ある朝、社長が朝礼で、Eくんの死を告げた。病死と聞いた。

なぜ、Eくんのことを思い出したのだろう?
僕の生きかたは、車輪が外れても走りつづける、ブレーキの壊れたクルマのようなところがある。Eくんは、ほんの数ヶ月だが、壊れたクルマに乗っかってくれた。そして、先に降りてしまった。

僕は今も、崖っぷちを走っている。一緒に走ってくれる仲間は、みんな去ってしまった。

(C)大張正己・赤松和光・GONZO/グラヴィオンツヴァイ製作委員会

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2010年12月17日 (金)

■謝罪■

双葉社より発売中の「グレートメカニックDX15」の129ページで、声優の小見川千明さんのお名前を「小早川千明」と誤記しました。
当方のチェックミスであり、ご本人および関係各位に、深く陳謝いたします。


また、122ページ右下の図版が「天地が逆」と明記してあるにもかかわらず、そうなっていません。
Gm15_p122_123_01_2 (左のようになるのが正しい絵です。スタッフ様には、大変ご迷惑をおかけしました)

さらに『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の『熱砂の攻防戦』は第4話ですが、123ページでは「第5話」と書かれています。
これはデザインおよび編集段階のミスです。重ねて、お詫びいたします。

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■『新子』本、制作日誌16■

昨日は、一迅社にて打ち合わせ。
デザイナーさん呼ぶ前に、「本当にコレで構成いいのか? 読んだ人、分かるのか?」会議。
この本には、映画を見た人が知っているようなストーリー説明とかは必要ない。それは、いい。でも、101216_16560001今のままでは、レンタルで見て買ってくれる読者(非アニメ層)が、置いてきぼりにならないか?
それは確かに危惧していたところではあるので、テキスト増量でフォローすることにする。

こういう時は、相手の条件をのみながら、自分のやりたいところは死守する。結果的に、あきらめていた原画を一枚、載せることが出来るようになった。
非は非と認める。反省もする。こういう席でいばらず、結果を見せる。

帰ってきたら、某ムックの直しが大量に……慌てず騒がず、冷静に書き直していく。さっき送ったから、いまから『新子』本の作業に戻ります。今日は、朝までがんばるよ。

ところで、一迅社さんは『新子』本のために公式ブログを準備中だそうで、それがスタートしたら、この日誌はやめて、通常運転に戻ります。
だって、何の情報もなく「まさか、制作中止?」「無期延期?」とか思われるのは、すごくイヤじゃないですか。そのための日誌だったので。

発売まで、あと43日?


今年は、アニメそのものより、そのアニメを嫌いな人や、好きな人のリアクションに学んだ年であった。

『けいおん!』を誉めると⇒インテリな高等アニメ・ファンに「あんなアニメの演出に感心してるのか」と笑われます。

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の悪口を言うと⇒「フィクションと現実の区別がついてない」と怒られます。

後者に関しては、このブログに反論を書き込んだ人たちの心理を分かりたくて、辛抱強く見つづけてます。『けいおん!』だって、最初は「キャバクラ・アニメ」とさげすんでいたけど、見つづけているうちに、評価が180度とまではいかなくとも、150度ぐらいは変わったと思う。

僕は、自分がどこまで変われるか知りたいがために、作品を見てるようなところがある。「自分」というのは、変化の断層面でしかないと思う。そんな、絶対的なものじゃないよ。

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2010年12月16日 (木)

■『新子』本、制作日誌15■

やれやれ、やっぱりTwitterはおそろしいよ。ポッドキャストで『けいおん!』を誉めた瞬間に、アレコレ言われてしまった。
なんで、あの人たちの言葉は、ああまで自信満々で暴力的なんだろう……。


昨夜は、あるムック用に、実写映画の解説20本。たいした文字数でもないのに、2時間半もかかってしまった。
101214_17570001本日午後、デザイナーさんと打ち合わせなので、なるべく材料は多いほうが良かろうと思って、キャラクター初期稿のラフを切る。
(絵コンテも、ページの許すかぎり掲載します。何枚ぐらい入るかなあ)

初期稿のページはたいした量ではないので、午前中のうちに終わらせてしまおうかと思う。
メイキングのページは「絶対にこう」という配置の仕方があるが、キャラクターの絵は違うように思う。どうしても迷いが出てしまうので、デザイナーさんに任せる部分が大きい。均一に、ぜんぶ同じサイズというのは、やっつけ仕事みたいで面白くない。デザイナーさんが「この絵は、ぜひ大きく」と積極的になってくれると、いい本になる。

さて、どんな打ち合わせになるんだろうか。

発売まで、あと43日! 大丈夫、間に合います。


もうひとつ、Twitterで見つけた話。猪瀬直樹副知事が、都条例について「出版倫理協会や映倫などの人が審査するのです。せいぜい月に数冊が区分棚へ移される程度。「非実在青少年」という役人言葉が消えたことにむしろ感謝していただきたい。」
……えっ、ちょっと待って。なんで、映倫が出てくるの? 映倫は表向きには劇場公開映画のレイティングが仕事であって、その権限は二次利用(テレビ放映、ソフト化)までだったはずだろう。出版にまで権限、拡大するの?

確かに、映倫のサイトの「配慮すべき法令」に「青少年の健全育成に関する条例」と書かれてはいるが、それは飽くまで映画に関してだろう。猪瀬副知事のウッカリ発言だと思いたいが……。

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2010年12月15日 (水)

■『新子』本、制作日誌14■

談話室オヤカタ、「廣田さんに聴く、アニメ『けいおん』の魅力」→こちら
以前にブログで書いたことを喋っているだけです。「いいストーリーあってこその、いい演出」というのは幻想で、僕は「演出が面白ければ、すなわちその映像作品は面白い」と思っている。


ここ二日ほど、仮眠映画は『グレート・ブルー』。むしょうに『ナチュン』が読みたくなって、最終巻だけ引っぱり出してきた。

原画集、10ページのラフは、とりあえず終わった。
101214_23550001つづいて、メイキングのラフに入ったが、やはり素材が足りないことに気がつき、何枚か切り出す。これが自分のPCで全部やれてしまうのだから、いい時代になったものだ。
熱でフラフラなのだが、面白くてやめられない。
夜中すぎに終えて、今日は別コーナーのラフを切ることにする。なぜなら、明日、デザイナーさんとの打ち合わせがあるかも知れないからだ。

自分で台割をいじれると、「やっぱり、このコーナーは減らそう」とか出来て、楽です。この本のサイズ(A5判)、意外と悪くないかも知れない。密度が出しやすく、逆に素材が少なければ、デザイナーさんに遊んでもらえる。

発売まで、あと44日!


いつもは総理大臣のブログなんか見ないんだけど、なんかこの記事はイヤだったな。
「青少年育成は重要な課題。同時に、日本のアニメを世界に発信することも重要。『国際アニメフェア』が東京で開催できない事態にならないよう、関係者で努力して欲しい。」……総理大臣って、やっぱり、ただの役人なんだと思ったよ。国内で売り上げが落ち込んでるのに、「世界に発信」と言えば、それで仕事した気になっちゃうんだろうな。

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2010年12月14日 (火)

■『新子』本、制作日誌13■

グレートメカニックDX15 明日発売
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●ギャラクティカNOW(最終回)
カラー、4ページです。タイトルは「さらば、バトルスター“ギャラクティカ”」としました。『ヤマト』のページもあるみたいですよ。

●ロボット演出事始 第六回
今回は『0083』から、ロングショットを効果的に使った第4話をピックアップ。

●グレメカ人生波止場 第九回
今回は、なんと新房昭之監督が登場!
101214_12130001このページの、どこがグレメカなんだよ! 何革命だよ!
でも、内容は「萌えアニメの専業監督」みたいにかん違いされてる新房監督の誤解をとくための、真面目なインタビューです。全6ページ。

●オヤジ酒場
前半は『STAR DRIVER 輝きのタクト』、後半はテーマを決めず、「まったく最近の若いオタクは……」的なボヤキというか、ひょっとすると、藤津さんと僕がケンカしてるように見えるかも知れない。なんかこう、最終回っぽいんだよなあ。


台割を直して、女史に送る。すでに素材は出揃った。いや、マッドに追加発注した分が、まだか。

我慢できずに、ラフのラフを書きはじめる。
101214_12470001どのページに、どの絵を配置するか考えるのは、楽しい。原画はカラーのほうが良く、作監修正はモノクロのほうが、味が出るような気がする。
あと、「原画はリアル・サイズで掲載するのがベスト」と思っていたが、『新子』ぐらいの描き込みだと、小さいほうが密度感が出るみたい。

なんというか、「完成から遠い」絵に、世界の広がりを感じる。明らかに迷いの残った、ざりざりした絵に魅力を感じる。各キャラクターの初期稿も載るので、お楽しみに。

原画は、4大ヒロインのみで構成。つづくメイキングでは、けっこう地味なカットも取り上げる。寝覚めのとき、夢うつつの状態で「あのページにはコレ」と考えはじめたら、だいぶ参っているか、調子のいいときである。

発売まで、あと45日!


今朝は市役所からの電話で起こされた。健康保険税を払ってないでしょ、という。「先週、駅前の市政窓口で払いましたよ?」と返事すると、「……先週のいつですか?」と疑っている様子。
ムカついたので、市政窓口へ行って問い合わせてみると、なんと税金を支払ったことが市役所に届くまで一週間かかるという。おいおい、昭和何年だよ。

こういう前近代的なトロさに、公務員という職業の「油断」を感じてしまうのである。

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■『新子』本、制作日誌12■

いかん、いかん。
起きたら、女史からガッツリと添付ファイルが来ていた。ちなみに、仮眠映画は『インベージョン』というやつであった。こんな最近の映画でも、ぐっすりと眠れてしまった。

いつのまにか女史が作ってくれていたラフに、文字数を入れていく。
101214_00410001昔なら、このpdfをプリントアウトして、ボールペンで書き入れて、FAXしているところだが、今はいろいろなソフトが出ているので、いきなりpdfに書き込んで、そのまま送信できる。

なので、FAXは使わない。FAXは、嫌い。朝9時からFAXでプレスリリースを流してくるようなメーカーってどうなの?……と、ある編集に話したら、試写状のたぐいは、コピーされないようにFAXで流すのだとか。

でも、あのヘロヘロしたFAX用紙に「出席か欠席に○をして、送り返してください」って、どうなの。慎重にやらないと、絶対に紙づまりするじゃん。

あとは、○○ページと□□ページのサムネールを手書きして、スキャンして送信。FAXなぞ、一度も使わずにすむではないか。
○○が手に入らなかった(というか、存在すら知らなかった)皆さん、ついにこの本で復刻されますよ!

発売まで、45日! いま、南米ジャブローあたり。


都条例、15日に成立。

『ぼくのエリ 200歳の少女』のモザイク処理に激怒したら、映倫という検閲機関にブチ当たった。映倫は、なんと私の生まれる、はるか前から存在していたというではないか。
自国の映画にモザイクを入れられるなんて、さぞかし恥だろうと思ってスウェーデン大使館に連絡したら、「日本の法律に従います」という意味不明の返答がかえってきた。
さすがに映画館は観客の味方だよね、と全興連(日本中の映画館の組合)に連絡したら、「映倫の指示なら、仕方ない」とのことだった。

そして、映倫に質問状を送ったら、虚偽の返答が返ってきた。かろうじて好意的だったのは、配給会社だけである。
映倫の独裁を半世紀も容認してきたのが、この国なのだ。倒すんなら、まず映倫からだろう、というのが私の実感。

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2010年12月13日 (月)

■『新子』本、制作日誌11■

昨夜は、『それでも町は廻っている』の4ページ記事を書いて、すぐ眠ってしまった。ちゃんと『メガゾーン23』の文字を入れられたのは嬉しかった(オープニングが梅津泰臣さんなので)。

起きると、女史からメールが来ていた。
「山口県から届いた、例のブツどうしましょうか?」とのことであった。これはこれから先、この本のためにしか使い道がないので(多分)、ちゃんとテキストに起こしましょうと返事した。労働量的に大変だったら、私も手伝う。

あと、撮出し素材ではジャギーが出てしまうため、完成画像を女史にキャプチャしてもらった。
101213_11590001無論、DVDからのキャプチャ画像でも、解像度が高いとはいえないが、今回は大きく掲載するわけではないので、これでヨシとする。
見開きにドンと載る場面カットは、マッドハウスから、新たに切り出していただいた。

「キャプチャするなら、海外版のブルーレイを貸しましょうか」とメールいただいたのですが、大丈夫です。

まあ……これから進めていくうちに、予想しないトラブルが発生するもんなんですけどね。
某劇場映画のパンフのときは、ほぼ半日単位で新しい画像が上がってくるので、せっせとデザイナーさんに差し替えてもらったのに、「ようやく出来た!」という段階で、制作プロデューサーが台割から何から、すべて変えてしまった。だから、私はパート2のパンフ制作は、お断りした。
また土壇場でひっくり返されては、かなわんからな。(デザイナーさんは、パート2も請けたみたいだけど、そういう態度こそが、プロなのかも知れない)

その点、今回は版権元とは、深い信頼関係が築けているので(多分)、万が一のトラブルにも対応できると思う。

発売まで、あと46日! さらば、太陽圏。

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2010年12月12日 (日)

■『新子』本、制作日誌10■

仮眠しようとして「ムービープラス」をつけたら『パイレーツ・オブ・カリビアン』だった。こういう映画は、眠れないのである。

デザイナーさんからのフォーマットを待ちきれず、カラーページの原画を割りふりはじめた。見開きが、いきなり貴伊子づくしになってしまった。主人公をさしおいて、これではイカンような気がする。
101212_14330001_2だけど、せっかく見開きから始まるので、開いたときの一貫性というか、まとまりが欲しい。なので、貴伊子ばかりになってしまう。
新子の絵も、けっこう選んできたつもりなのだが。

あらかじめ、データでもらっていた総作監集の絵を、フォルダに入れていく。当初は使わない予定だったが、デザイナーさんのセンスに任せて、本のポイントに使ってもらおう…のつもりが、貴伊子の絵が多めになってしまう。シゲルやクラスメイトの絵なども入れて、バランスをとる。

麦の穂の作監修正も、綺麗な絵なので入れておいたが、あとはデザイナーさんの裁量にゆだねよう。ぜんぶ自分だけのセンスでやろうとすると、ろくなことにならない。デザイナーさんには、自由に遊んでもらったほうが、いい本になる。

……と思っていたら、他誌から『それでも町は廻っている』の原稿依頼がきた。
『新子』本は、明日からが大変なので、『それ町』については、今夜中に終わらせる。

発売まで、あと47日! そろそろ冥王星あたり?

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■『新子』本、制作日誌9■

昨日の仮眠映画は『大空港』。60~70年代の大作映画を見ていると、よく眠れるらしい。

本編ではカットされたセリフを、テキスト・データに書き起こした(データをプリント・アウトしたものしか、現存していないため。だって、教室の生徒のセリフなんて、カントクがスタジオで書いて、その場で方言指導の人が直してるんだもん)。
101211_19520001映画では、千古の設定って、ほとんど語られなかったでしょ? それがカットされたセリフを復元すると、実は……!
このセリフがカットされてなかったら、もっとすごいこと(?)になっていたと思う。
カントクも「ふっふっふ」と笑ってたものな。確信犯だよな、あれは。

撮出し素材をいただいた時の、カントクのコメントも一応、テキストに起こしていく。
撮影段階で実際の効果が入っているので、DVDからキャプチャする以外、完成カットを掲載する方法がない。画像キャプチャについては、エイベックスさんから許可いただいている。
しかし、一言いいたい。あのDVDは、異常にチャプターが少ないので、場面を探しにくい(笑)。チャプターは、あの3倍ぐらい欲しいぞ!

さて、レイアウトの絵には、決定稿とちがった可愛らしさがあると前に書いた。なので、なるべく掲載したい……レイアウトも、なるべく保存中。
原画の選定方針も「キャラがかわいい」「カラー映えする」。動画枚数が多いとか、そういうことは選定基準にしていない。読者の方は、キャラを見たいわけだから。
レコミンツさんの原画集を横において、なるべくカブらないように選んだんだけど、さて満足してもらえるかどうか……。

発売まで、あと47日!(土日祝日も作業続行)

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2010年12月11日 (土)

■『新子』本、制作日誌8■

双葉V文庫『ガンダムの常識 一年戦争篇』 15日発売
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だいぶ前に出したコンビニ本をオールカラーで文庫化。ライター陣は何も書き足してないのですが、編集の女の子が一人でつくったそうで、デザイナーもコンビニ版とは違う人です。

この本(コンビニ版)が15万部売れたというのはウソではなく、「じゃあ、文庫でもう一度」という気持ちも、分かるでょ。


『新子』本、昨夜は「これがないと、さすがに読者は納得できんよね」という素材を、追加発注。それが今日届いたとしても、明日には素材別けできてしまうんだよなー。

本日はデザイナー氏が「フォーマット」を作成するのを待つしかないので、画像カットをまとめ直したり、後々の作業をスムースにするためのアレコレの整理と、そろそろ「序文」を書かねば。
エイベックスさん、カントクまじえての編集会議で「この本には、文学性が必要だ」と言ったんだけど、いよいよ、そこに触れることになった。

「序文」のバックには、「これぞ!」という絵を選びました。この絵を汚さない文章を書かなくては……散歩にでも行ってくるか。

――散歩から帰宅。いろんなフレーズが頭に浮かんできた。忘れないうちにメモる。

発売まで、あと48日(実質制作期間は、その半分以下)。


TAF2011、出展拒否しているのは大手出版社ばかり。DVDが売れなくて困っているメーカーさん、最前線でアニメつくってるプロダクションさんは、さすがに出展するよね。
……というか、大手出版社って、TAFに出展してたっけ。ほぼ毎年、行っているはずだけど、気がつかなかった。

『マイマイ新子』はTAFに残っているけど、どう思うか、とTwitterに書いてあったけど、何をいまさら。『新子』は、映倫という検閲を通ったじゃないですか。『ヱヴァ』だろうが『ハルヒ』だろうが、ありとあらゆる劇場映画は、映倫の審査なしには公開できません。

『ぼくのエリ』で無理やりなモザイクがかかったでしょ。でも、全国の映画館(全興連)は、映倫の判断に従っている。
とにもかくにも、劇場アニメは、半世紀も前から、ずーっと検閲対象だったのです。

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■『新子』本、制作日誌7■

本日の仮眠映画は、『天地創造』。ぐっすり眠れた。「ムービープラス」、大好き。

面倒な作業は、女史(担当編集)が引き受けてくれて、えらく気が楽になった。しかも、おそろしく仕事が速い。
101210_13490001今は、メカページ(『マイマイ新子』には、けっこう色々なメカが出てくるのだ)のレイヤー分けをやっている。
でも、何のメカかは秘密なので、あえて違うカットの写真を。
定番「メカと女の子」の絵も発掘してきたので、もちろん掲載します!
カラーページ、思いつきで言った企画がとんでもない量になってしまった。でも、この企画だけは『新子』じゃないと出来ないから……意地だよね。

あと、メイキング・ページは私個人の勉強にはなるんだけど、飽くまでも『新子』のファンが喜んでくれるように、加減しなければならない。アニメの技術専門書じゃないんだから。
私たちの好きなキャラクターに、どんだけ手間ひまがかけられているか。それが伝わるページにしたい。

あと、山口県からも、貴重な資料が送られてくることになった。
しかし、「アレは活字で表現できないよ」とカントクがおっしゃってたので、掲載方法を検討中。実物を見ないと、なんとも……。

発売まで、あと48日!(印刷所の休み期間のぞく)

※アニオタ保守本流の古谷氏が『ヤマト』を酷評してくれたが、「観てから言え」は、まさにその通り。『私の優しくない先輩』もそうだったなー、見てもないヤツらの酷評ぶりがすごかった。

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2010年12月10日 (金)

■『新子』本、制作日誌6■

カラーページは、A、B、C、Dに分かれており、AとDは、すでにデータ化してもらってある。
今やっているのは、BとCの素材づくり。

ほとんどCが終わったので、Bにとりかかっていたら、前に書いた原稿(マイマイ本ではない)のデザインが出来てきた。
101210_16390001キャプション類を埋めなくてはならないのだが、こういうのはpdfにビュワーで連番をふって、同じ番号でテキストを書いていく。7ページ、2千文字ぐらい。2時間で終わらせる。

忘れた頃に、こういうのが来るので、寝る時間もないぐらいスケジュールを詰め込むわけにはいかないのだ。「3日徹夜すれば出来る」とか「寝ないで書きました」とか、そういうのは偉いとは思わない。

寝ると、脳がリセットされて、効率も上がるよ。


『メガゾーン23』同人誌『2325』の表紙を、送ってもらった。
D_hyousi今回は関係者インタビューはないそうなので、「その辺を期待していた人はごめんなさい」ということでありました。

その代わり、「こんなの、よく残ってたな?」という資料が載っているはず。25年間、どの書籍にも出ていないと思う。
コミケ最終日に発売(東6ホール ヌ-22a 時祭組)です。


『それでも町は廻っている』は面白いんだけど、「だったら原作を買ってくれ」と言われているような気がする。「原作と違う」と言っている人がいると、ますますそう思ってしまう。
そういう窮屈さがないと言ったら、ウソになる。ビジネス臭がないといったら、ウソになる。小見川千明の芝居が素晴らしいので、ずっと見てるんだけど。

さて、「ムービープラス」で適当な映画を見ながら、仮眠だ。
発売まで、あと49日。

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■『新子』本、制作日誌5■

仮眠をとるため、なんか映画やってないかな~とテレビをつけたら『トリプルX』がやってた。
ぐっすり眠れて、ちょうどラストシーンのあたりで、目が覚めた。いや、そういう映画の使い方も必要なんですよ。「その映画に価値がない」のではなく、そういう価値もあるんだってことです。

さて、糖類ゼロ、低カロリーの女性向け栄養ドリンク「バイトL」を飲んでから、作業再開。
101210_01280001あまり、どのカットを取り上げてるのかは、バラさないほうがいいのか……怒られたら、画像は外すことにしよう。

これはもう、マイマイ考古学だよ。「この絵画をX線で調査したら、その下に、こんな描きこみが!」とか、そういう発見ってあるじゃないですか。
レイアウトがあって、原画を描いて、動画で割って、彩色して……なんて理解の仕方は単純すぎる。各素材の微妙なところに、軽~くタッチが入っていたり、ほぼどのカットにも光のフレアが重ねてあったり、あとパラっていうんだけど、彩度を押さえるために、薄~く色が乗せてあって、しかも、そのパラが何枚もある。
ちょっと、クラクラしてきます。

冗談でなく、ジブリ美術館で『マイマイ新子の絵づくり』展でもやってはどうか。メイキングにはカラー10ページほど使うけど、この重層感が出せるものだろうか?

このバラした素材を構成しなきゃいけないんだけど、一枚のパラを外したときの「うお、こんな所にこんな処理が!」という驚きは、たぶん研究者とか科学者というのは、この手の驚きを日々、味わっているのだろうな。

感動というよりは、驚愕。……とか言いながら、俺は今、泣いている。
発売まで、あと49日。

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2010年12月 9日 (木)

■『新子』本、制作日誌4■

GIMPというフリーソフトを使って、ワンカットの素材をひたすらjpgとpsdに分けて、保存していきます。
101209_16350001たまに、レイヤーが41枚とかあって、笑ってしまう。
セル画時代は、背景の上に重ねられるセルは、7枚ぐらいが限界じゃなかったかな。『ナウシカ』DVDのコメンタリーで、バカガラスが飛ぶシーンで、BOOK5枚ぐらいを別々の方向へスライドさせているんだけど、庵野秀明が「こんなことやらせるなんて、宮さんは鬼だよ」と言ってたよね。

『マイマイ新子』は、たぶん『ナウシカ』は軽く越えてるよな……。
でもいま、あるカットを分解していたら、何だか目頭が熱くなってきた。ここまでやって伝わらなかったら、もう何を信じていいか分からなくなるぐらい、手が入ってるから。
お寺なんかで、地味にすごい彫刻があったりするけど、ああいう感じなんですよ。

スタッフさんのインタビューが戻ってきたので、文字数を合わせる。もう、何人にインタビューしたのか、覚えてないよ……。

さすがに疲れてきたので、仮眠。
発売まで、あと50日。

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コミケで、『メガゾーン23』の同人誌『2325』が出ます。
2010年12月31日(金)
東6ホール ヌ-22a 時祭組
メガゾーン23 25周年同人誌「2325」
発行/時祭組 制作「2325」制作委員会
価格1000円
A4横サイズ32ページ(カラー&白黒)

コミケ後は、1月9日のスーパーフェスティバルでも販売予定だそうです。
私に与えられたお題は、「初音ミクと時祭イヴ」。あいかわらず、論理性のないとっちらかった文章になっていますが、挿絵をきみづか葵さんに描いていただいたそうで、楽しみです。
こちらは、発売まで、あと22日。

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■『新子』本、制作日誌3■

今日は、女史が他の仕事で動けないので、自主的にやれることをやる。

これは何かというと、撮出し素材である。
101209_11590001カントクが、一迅社の外付けHDDに「これもあげる」「あと、これもこれも」と放り込んでくれたのだが、そのままになっていた。だから、これをページ企画ごとに分けないといけない。

BOOKが一番上に来ていたり、レイアウトが乗っていたり、一見すると統一性はないのだが、「確かこれは○○のページに使うやつ」と、自分の中では分かっている。
それぞれのカット、レイヤーごとに見ていって、さらに分けていく……という作業を始めてみたが、これが難しい。どうやればいいんだ、これ。

レイアウトは、キャラの顔が本編と違っていて、それぞれ可愛らしい。本当は、こういうのもすべて掲載したい。
昨夜、貴伊子のどえらく可愛いラフが出てきたので、容赦なくカラーページに掲載する。対比用にチョコンと描かれているだけなのだが、これはカワイイ。

女史の立てたスケジュールを厳守すれば、30日にはラピュタへ行けるはずである。
発売まで、あと50日。

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■『新子』本、制作日誌2■

そういえば、取材前に監督が廊下を走っていたな……と思っていたら、どうやら本の表紙を仕上げるためだったらしい。

本の表紙は、いま、二回目のダウンロード中だが、何しろデータが重すぎて、私のPCでは開けない。何にせよ、今まで見たような、でも何だか違うような絵柄である。
もう、なんでこんなヒネったことするのかなー!と、苦笑してしまうのである。でもまあ、皆さん「これなら!」という表紙になっているはず。

私は、女史(担当編集のこと)のお願いで、サムネールなるものを作成している。
101209_00380001この「サムネール」をもとに、デザイナー氏が「フォーマット」をつくり、私は「ラフ」をつくりやすくなるという、一石二鳥の作戦なのだ。

確かに、いきなり「ラフ」をデザイナーに投げつけるというのは、ライターにとっては、少し怖い戦略だ。女史、頭を使ってくれたと思う。

しかし、まだまだ未知数の領域があり、深い森を分け入るようなゾクゾク感を一人で味わっている。

発売まで、あと50日。『四畳半』もいい作品だけど、なんかちょっとなー。

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2010年12月 8日 (水)

■『新子』本、制作日誌■

マッドハウスから帰ってきて、仮眠でもするかな……と思ったら、一迅社さんから電話がきた。いきなり、カラーページが増やせることになったという。一折ということは、16ページも。

急にそんなこと言われても、どうしよどうしよ!と、絵素材をチェックしたら、初めて見る絵がゾロゾロ出てきたので、「これ全部カラーで載せましょう」。

台割を打ち直していたら、監督からメール。『ギャラクティカ』風に言うなら、「艦隊司令部から速報です。暗号ではなく、平文で」という感じ。

URLが貼ってあって、混んでいるせいか見られなかったけど「文化庁メディア芸術祭 優秀賞」のタイトルだけ見られた(ブラウザの上のところに表示されるでしょ)。
『ギャラクティカ』風に言うなら、「こりゃあ、ジョークさ。艦隊の連中がアンタをからかってるんだよ」という感じ。

すぐ、「おめでとうございます」と監督に返信し、いただいた言葉がもったいないので、「それは違います」とお返しし、カラー増ページは賞の効果かなーと思ったので、編集さんにメールしていたら、涙が出てきた。

監督のTwitterを見たら、「妻子がヤマトを見に行ってしまった。ひとりうちへ帰って、ギャラクティカでも眺めるかね。」と書かれていた。
……まあ、そうですよね。お気持ち、お察しします。

いろいろあったので、今夜は昨夜よりは元気に仕事できそう。
発売まで、あと51日。

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■現在位置は?■

談話室オヤカタ、今年何度目かの出演です。→こちら
タイトルは「廣田さんご来店。要チェック女優とシャア・アズナブル」で、谷村美月について語っています……この収録の頃は、そんな余裕あったんだな。今は無理だ。
来週配信分では『けいおん!!』について語っているけど、そっちのほうが池田憲章さん、元気なんだよな。


先日、実写版『ヤマト』は『惑星大戦争』と書いたけど、『惑星大戦争』には『惑星大戦争』の面白さがある。今回の『ヤマト』は、そっちのカテゴリに入るよね、というだけの話です。
『惑星大戦争』と『スター・ウォーズ』を本気で比較する人は、いないでしょ。それは競技種目が違うから。


『ギャラクティカ』では、ワープならぬ「ジャンプ」で宇宙を跳躍する。
Bsgcic2その理論は一切説明されないんだけど、ジャンプに至るまでの描写がいい。副艦長から「弾薬補給基地までは3日かかる。その間に、敵がウヨウヨいるぞ」と聞かされたアダマ艦長は、「技術兵。現在位置は?」とだけ言い、海図(宇宙だから星図か)を持ってこさせる。
副艦長は「……それだけはやめろ。無謀すぎる。何年やってないと思ってるんだ?」 ジャンプとは一言も発してないのに、艦長がジャンプしようと決意したことが分かる。

航路を計算せねばならない若い航海士は、「こんな長距離、やったことありません」とビビっている。「誰もやったことはない」と艦長。そのやりとりだけで、「ジャンプ」が、いかに危険なことなのか伝わってくる。
奮っているのは、ジャンプが成功した後。航海士が現在位置を告げると、拍手が起きる。そして、彼は他の技術兵と握手をかわすのである。
ここでも「ジャンプが成功した」とは、言っていない。何というか、観客が「これだけはウソだよな」と思っているものほど、それに対する人物のリアクションを、たっぷり描いてやる。その芝居がリアルなら、ウソはウソではなくなる。

航海士が技術兵と握手をかわすシーンなんて、確かどっかで見たんだよね。戦争映画か何かで。だけど、「どこかで見た描写」ほど、説得力のあるものはない。


これから2週間ほどが、勝負だ。
人を心配させずに、仕事をするやり方って、ないものだろうか。仕事が詰まってくると、同じ仕事にかかわっている人に影響が出てしまう。それがイヤなら、ゼロから自分でやるしかないんだけど。

Film (C)2006/2007 Universal Studios. All Rights Reserved.

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2010年12月 7日 (火)

■12月某日・新たなる旅立ち■

『新子』本を優先するため、もう一冊の本の担当ページを減らしてもらうことにした。
101206_18090002「だったら、少しでも早く原稿を書けよ」と、自分でも思うのだが、前からの約束なので『ヤマト』を見に行く。
(←コンセッションは、こんな状態)

黒木メイサも、本当にいい顔になったと思うが、今回は相原役のマイコが光っていた。キュートだったな。
読売新聞が『惑星大戦争』を引き合いに出して、「日本のSFX映画も、とうとうここまで」と感激していたけど、リサーチ不足じゃないのかな。
『惑星大戦争』と、そんなに変わらなかった気がするんだが。マイコは素晴らしく良かったけどね。


融資の審査で、国策金融公庫へ行って来た。
担当者は30代の男性で、私の経歴を見るなり「サンライズに在籍? 勇者シリーズとかの?」と身を乗り出してきた。
「えーと、97年だと『ダグオン』ですか?」
「私のいた時は、『ガオガイガー』の準備中でした」
「ああ、『ガオガイガー』ですか!」
ほかに、「女優についても、たまに書いている」と言うと、
「女優……たとえば!?」
「来月に出る本には、谷村美月について書きました」
「谷村美月って、特撮ドラマに出ていませんでしたか!?」

……まあ、これらの会話は審査には一切関係ないんですけどね。「審査の雰囲気を和らげる」以上の何かを感じたし、もちろん悪い気はしなかったよ。何しろ、こっちは相手を怒鳴りつけて、途中で帰ることになるだろう……と、意気込んでいたんだから。

提出書類をあえて不備にしたし、審査には落ちるでしょう。
でも、「人に会う」って、こういうことなんだ。担当者が親しげに話しかけてくれたことで、公的機関への偏見を引きはがされ、敵だと思っていた相手をどう判断したらいいのか、分からなくなった。それでいいと思っている。
人間だけは、白と黒に分けられない。

くやしいような嬉しいような気持ちで、帰り道は、泣いてやりたくなった。


先日、心療内科について書いたのは、モデラーの平田英明さんのブログで「神経症への偏見」について、やりとりがあったからだ。→こちら
僕は、拍手コメントで「平田さんのように堂々とできない自分が、みっともない」と書いた。それによって、仕事が減ってしまうんじゃないか、という危惧もあった。

被害者ヅラをしたいんじゃない。同情がほしいんでもない。
「偏見をもっている人が悪い」というのは論理のすり替えで、偏見を持つのは、その人の自由だし、一切の偏見をなくすことは不可能なんだよね。
私の中にも「大学のラグビー部=レイプ事件を起こしても、社会で高い地位につける人たち」という、猛烈な偏見があるしね。

都条例に関しても、互いに歩み寄れない偏見が、大きな壁をつくっている気がする。

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2010年12月 5日 (日)

■12月某日その2■

コメント欄で情報をいただいた、都条例への反対集会。明日月曜、中野だそうです。→詳細
勉強のために行きたいけど、前々から友達と『ヤマト』を見に行く約束してたので……せめて、告知ぐらいはする。

「都条例」で検索をかけてみる。「石原知事はキチガイ」と書いてある。
私も、名指しで「あいつはキチガイ」と書かれたんだけど、吉祥寺の心療内科に20年もお世話になっているので、いっちょまえに傷つくわけです。でも、私をキチガイと呼んだ人の権利を、私は守らなければならない。
たぶん、私の言動にカチンときたんだろうな、ぐらいの想像はする。

ただ、いくら腹が立っても「心療内科へ行け」という煽りだけは、やめた方がいいと思うけどね。入院しなきゃならないぐらい、苦しんでいる人を見てきたから。
だけど、「キチガイ」って言葉は別にいいと思うんだよな。テレビで「キチガイ」って言葉がカットされてると、イラッとくるものな。


あと、「どうして実写は例外なんだ」と言われてるけど、『ぼくのエリ』で映倫にすっとぼけられた私の感覚からすれば、実写はとっくに規制されている。映画雑誌も映画評論家も、何もしなかったじゃん。

そういう事態に直面したとき、やっぱり相手の言い分を聞き、できるだけ顔を合わせて話を聞くんですよ。印象を実感に変えていく。
そうすると、どんどん自分は汚れていくんだけどね。考えはまとまらなくなっていくし、誰が敵なのかも、分からなくなっていく。その話した相手だって、どんどん変わっていくわけだから。だけど、実感、体感もなしに思考はクリーンなまま、というのが耐えられないんだ。

自然農の畑みたいに、雑草も野菜も同時に生えてるような状態が理想……という気がする。見てくれは悪いけどね。


『アルプスの少女ハイジ』、フランクフルトへ行ってからの描写が痛烈。このプロットをあらかじめ知らなかったら、あまりの辛さに、見るのをやめていたかも知れない。
にも関わらず、世界は豊かだと感じさせる。おそるべき作品だと思う。

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2010年12月 2日 (木)

■12月某日■

吉祥寺バウスシアター用に、原健一郎さんに制作してもらった『REDLINE』の特製パネル。
O0408030610798574158東北新社さんのご厚意で、広島の福山ピカデリーに置いてもらえることになった。→こちら

仕掛け人は、地元のアニメ・ファンである。
昨日、業界歴30年の方と話したのだが、「アニメ・ファン」の定義が変わってしまった。今の「アニメ・ファン」とは、ようするに深夜アニメのファンではないのか。

ボランティアで、損得ぬきに作品を盛り上げようと頑張るのが、かつての「アニメ・ファン」であった。『ガンダム』公開時、長蛇の列の観客を仕切ってくれたお兄さんたちが、いまや50代。「何か事故があったら、『ガンダム』のせいにされてしまう」――彼らは、このメディアが社会からどんな目で見られているのか、よくわきまえていたのだ。


『新子』本の取材は、つづいている。
「楽しい、良い仕事だった」だけではなく、多角的に作品の成り立ちを感じさせたい。
そのかすかな狙いは、どうやら達成できそうだ。

負担を少しでも減らそうと思い、他作品のブックレットを一気呵成に書き上げた。誰も「ご苦労さま」とは言ってくれない。
妻が「がんばってね」と一言でもいってくれたら、私は彼女と離婚しなかったのに……と、ふと思う。


推測だけで断ずるのはよろしくないな、と思って、朝から駅前の国策金融公庫に行ってきた。

人様の預金通帳を見せろという要求が、本気なのかどうか、知りたかったのだ。
「書類として、上に提出せねばなりませんので……」
「それはつまり、私の通帳のコピーをとるという意味ですか?」
やはり、呑めない話だ。
「そんなのはお断りですが、それでも審査は受けられますか?」
「受けられますが、不利にはなると思います」
そりゃ、そうだろう。だが、面白い。提出書類不備のまま、審査を受けることにした。

それでも、彼らが職務に忠実に、お客様である私の味方になってくれるか、最初から敵として接してくるか。お手並み、拝見だ。


ウィリアム・アダマ提督は、最終作戦の前、砲兵部隊を集めてブリーフィングを行った。
Imagescaa9hh7e「二隻の老朽艦が、にらみ合っての撃ち合いになる。砲撃部隊は到着後すぐ、弾がなくなるまで撃ちつづけろ……弾薬が尽きたら、石でも投げつけてやれ」。

そういう生き方をしたい、と思う。
幸い、僕の仕事は、紙とえんぴつと人間がいれば、成り立つ。

Film (C) 2006/2007 Universal Studios. All Rights Reserved.

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