■『新子』本、制作日誌22■
朝10時起床。キャラ表の最後の4ページを終わらせる。
昼食は、「多加はし」のカツ丼。ちょっと高いけど、栄養ありげなので。クリーニングに出していたシャツ5枚うけとり、栄養ドリンク3本買って、帰宅。
残り30ページ、美術設定と小道具を配置し、各コーナートビラの文章を書けば、とりあえず一区切りのはずである……が、それらをすべて、明日中に形にする約束なので、がんばる。
紙とシャーペンとボールペン、そしてパソコンとケシゴムだけの単調作業なので、もはや作業風景を載せても意味ないでしょう。
キャラ解説のキャプションは、ちょっと調べ物しましたが、監督チェックで直されると思います……でも、たとえ付け焼刃でも、僕は調べないと気がすまない性格みたいです。
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まだ大学を卒業するかしないかという頃、若手監督の映画企画にかかわったことがある。具体的には、原作漫画をベースにした脚本があり、その脚本のプロットはいっさい変えないまま、シーンの密度やセリフを増すという作業だった。
(まったくの偶然だが、その企画には『マイマイ新子』の山本宣伝プロデューサーも参加していた)
ストーリーの核になるのは、ロケットである。だけど、もとの脚本には固体ロケットなのか、液体ロケットなのか、燃料はどうするのか、まったく書いてなかった。
なので、僕は図書館に行って、まず、子供向け学習図鑑でロケットの基本を学び、それからアポロ計画のビデオや最近の専門書なども拾い読みして、脚本にディテールを入れていった。
すると、監督は「これはロケット・マニアではなく、ロケットのことなんて知らないお客さんが見る映画なんです」と反発した。
それは逆です。(ラブストーリーであれ何であれ)ロケットのことをしっかり考証しておかないと、ロケットの映画なんて撮ってはいけないんですよ。
「自分が知らないんだから、お客さんも無知のままでいい」という態度は、たとえば実写版『ヤマト』なんか見てても、感じられる。
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原作の『ナウシカ』を読むと、「抜刀!」とか「土塁が邪魔で、俯角がとれねえ」なんてセリフが、当たり前のように出てくる。
「細かいことは分からないけど、しっかりした知識を裏づけに書いてあるんだなあ」と、頼もしい気分になる。どうしても気になる言葉があったら、調べればいい。それだけ、世界が広がるわけだから。
本を読む楽しみなんて、自分がいかに無知かを知るためじゃないかという気さえ、するのです。
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コメント
廣田さま
こんばんは。
>「細かいことは分からないけど、しっかりした知識を裏づけに書いてあるんだなあ」
廣田さんが以前触れていた、ポニョのポンポン船の事を思い出しました。
僕はあれに参ってしまい、実際にポンポン船を買いましたから(笑)
それと同時に、キューブリックの『2001年宇宙の旅』で、当初、ディスカバリーは原子炉を冷却するパネルを装備する予定でしたが、それが空を飛ぶ為の『翼』に見えるとの理由で、悩みに悩んだ結果、ボツにしたという有名な話も思い出しました。
『分かっているのに、敢えて捨てる』ってのもすごい勇気だなと。
いずれの話も、キムタク・ヤマトには全く縁が無いと思いますがねー
投稿: かまタロウ | 2010年12月25日 (土) 22時50分
■かまタロウ様
こんばんは。
ディスカバリー号の話は、まったく知りませんでした。考証ガチガチでも、それもまた、つまらないんだという好例ですね。
宮崎駿も、ある程度までは調べるけど、あとは「いい加減な妄想」と自嘲しているほどです。そのサジ加減が、気持ちいいんでしょうね。
マンガでは『ピンポン』でも、似たような感動がありました。
「テンハン、ダブテン、スコンク、何だって出来ます」と卓球用語を口にするから、強そうに見えるし、ゾクッとするわけです。知性と情熱が、並立してるんですね。
>いずれの話も、キムタク・ヤマトには全く縁が無いと思いますがねー
僕があの映画を嫌いなのは、観客が知っていること以外、やっていないからです。
投稿: 廣田恵介 | 2010年12月25日 (土) 23時33分
「そんなところまで作りこんでも、お客さんには分からないよ」という悪魔の甘言を振り払って仕事しなくちゃいかんなと、反省させられます。
仮に自分がお客で、見た時わからなくても、見返したり、思い出したり、調べた時に「ああ、そういうことか」と気付くとうれしいものですし。
理解しやすい言葉だけで構成されたものは結局、広がりを持たない貧相な印象を与えてしまうし、売り手の「これで良いんだろ?」という態度は簡単にバレると思っています。
そういう態度は自分が消費者だったらハラ立ちますしね。
まあ、自分が成仏したいから、そうしているだけなので、エゴっちゃエゴなんですが(笑)
ともかく勇気付けられるお話です。
投稿: べっちん | 2010年12月26日 (日) 07時44分
廣田さま
>ディスカバリー号の話
晶文社の『未来映画術「2001年宇宙の旅」』という本に詳しいです。
13年前に発刊された本ですが、今見ても鳥肌が立つような逸話や情報が満載で、『2001年~』が好き嫌いに関わらず、SF好きには絶対お勧めの本です。
>『ピンポン』でも、似たような感動がありました。
自分は、この作品、映画しか見ていませんが、よい機会なんで原作も読んでみます。映画も十分にテンション上がりましたね。
アクマの台詞が好きなんです。
「飛べない鳥もいるってこった」とか。
挫折が多い人生なので、心に染みますねぇ(笑)
投稿: かまタロウ | 2010年12月26日 (日) 10時20分
■べっちん様
村上春樹の『風の歌を聴け』だと思いましたが、小説を書いている男が「少なくとも、自分自身が啓発されるような小説でないと、書く意味がない」と言うんです。
自分で驚いたり、発見したりしたことこそを、世の中に広めるべきなんですね。
>売り手の「これで良いんだろ?」という態度は簡単にバレると思っています。
だけど、80億円ぐらい稼ぐ日本映画は、バレてないですよ(笑)
分かりやすくて声の大きいものに、みんなが飛びつくのも、確かなんですよ。
(邦画は、低予算の作品のほうが面白いですね)
誰もが向上心をもっているわけではない。そこが、ジレンマですね。
■かまタロウ様
お勧めの本は、中古で買い求めたいと思います(良さそうな本ですが、お値段が…)。
ディスカバリー号をパクって、ミレニアム・ファルコンの初期案が描かれたって話は、知ってるんですけど(笑)
『ピンポン』原作、映画と同じセリフでも、活字で読むと説得力が違います。マンガって、やっぱり「読む」「読みとる」「解釈する」ものなんですよ。
『宮本から君へ』なんかも、熱血マンガなんですけど、場所・出来事・人間の背後に広がるバックボーンに冷徹な考証がなされていて、うなります。手元に置いておきたいのは、そういうマンガですね。
投稿: 廣田恵介 | 2010年12月26日 (日) 11時50分
廣田さま
>良さそうな本ですが、お値段が…
高いですよねぇ。
新品で買った、当時の自分を褒めてやりたいです(笑)
でも、お値段だけの価値はあると思いますよ。中古なら尚更です。
時々、古本の整理をしますが、この本だけは僕の書棚の一等地を13年間占拠し続けていますから。
投稿: かまタロウ | 2010年12月26日 (日) 14時23分
■かまタロウ様
今月、3,000円ぐらい古本を通販で買ってしまったので、来月、買います。
放蕩してるように見えて、意外とケチなんです(笑)
投稿: 廣田恵介 | 2010年12月26日 (日) 16時17分