■「生きつづける」とは、「自分が変わっていく」可能性を保ちつづけること■
昨夜は、サンプルDVDで『海の上の君は、いつも笑顔。』を見て(この映画はなぜかソフト化されていないのだ)、今夜は立川シネマシティで『行きずりの街』。初日だけど、たぶん座れるでしょう。それを見て、ようやく原稿に入れる。
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『海月姫』は、うっかり原作を読んでしまったばっかりに、脚本や演出で、あれこれ工夫しようとしているのが分かるようになってしまった。「マンガは、空間的な広がりではなく、飽くまで読み取るもの」と言ったのは、押井守。マンガだと、自分の生理で読みすすめられるんだけど、映像はどんどん先へ行ってしまう。
『海月姫』第5話の「鎧を身にまとえ!」というセリフは、マンガでは、もっともっと痛烈だし、爽快だし、迫力があった。でも、それは演出が悪いのではなく、こっちがどう「読み取ったか」の問題だから。
あの、「着るものひとつで、人間これだけ変われるんだよ」というセリフは、僕、人生で3回ぐらい言われたんだよな。実体験によって、作品の重みは変わる。それぞれの人生ごとに、作品はカスタマイズされるんだってことを分かってない人が、作品を数値化する。自分を永遠不変だと思っているから、作品を採点できるわけであって。
「生きつづける」というのは、「自分が変わっていく」という可能性を保ちつづけることなのに。
話がズレたけど、『海月姫』は、育った環境やそれによって育まれた個性を、服装という「鎧」で、どこまで変えられるか――という話だと思う。「変えられる」という可能性の話であって、「変えろ」とは言ってないところが、小気味いい。
少なくとも、「汚いカッコ」「オタクっぽい服装」と言われつづけた僕にとっては、すごくエキサイティング。
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『それでも町は廻っている』第七話、Aパートは学校さぼって河原で平日デート、Bパートは 眠れない弟をつれて深夜の町を探検。それぞれ、面白かった。千葉繁のおまわりさんが出てきたしね。
どっちの話も、実体験的なんだよな。学校さぼってデート? ありましたよ。多摩川じゃないけど、ちゃんと川にも行ったよ。
遠くまで行けるギリギリの距離がバスの終点であるとか、結局はコンピニに行き着くとか、この地域性、ご町内感覚。「懐かしさ」という囮が待っている気がして、ちょっと怖くはある。
いや、東京にも、こういう商店街って、いっぱい残ってるんだけどね。心地よすぎて、怖いのよ。
――こういうアニメこそ、夕方6時に放映しろよ、という意見は、時代錯誤なのでありましょう。「深夜に乱立している状態こそが、2010年代のテレビアニメのあり方なのだよ、キミ」と言われたら、片足をノスタルジアにとらわれている私は、狼狽するしかない。
テレビの視聴のされ方が、昔とは違うのかも知れない。「昨日の木曜スペシャル見た?」という会話は、もはや過去のものなのでしょう。
でも、このアップデートされたテレビの視聴のされ方や、テレビアニメの居場所というものに、ちゃんと理想は込められているんだよね? みんなが望んで、こうなったんだよね?
『それ町』の原作は、テレビ放映が終わってから読んでみようと思っている。
(C)東村アキコ・講談社/海月姫製作委員会
(C)石黒正数・少年画報社/それ町製作委員会
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コメント
夕方6時にこどもは家庭にいない、
というのが現状かも…
小学生は日替わりでお稽古ごとあるいはスポーツ少年団、
中高生は部活のあとに塾というお子さんの多いこと…
となると「録画して観る」のが基本形?
「サイタマノラッパー2」観て来ました。
20代の若者の人生はもう応援する側の気持ちだし
熱く夢を追った人生経験がないせいか号泣とはいきませんが
見応えのある内容でした。
くすっと笑えるラストの笑顔がお気に入りです。
はままつ映画祭でIKKU、TOMのおふたりがSRの舞台挨拶でラップを披露されたようですが、
上映時間に間に合わなくて観れず残念でした。
私と娘が次の映画を観るため使ったエレベーターをおりるときに
お帰りになる彼らがちょうど乗り込んでこられたのですが、
輝いてみえたおふたりにびっくりして慌てて降りてしまいました。
惜しい事をした…
投稿: kyasリン | 2010年11月20日 (土) 23時38分
■kyasリン様
>夕方6時にこどもは家庭にいない
ええ、だから、「夕方、アニメを見るためにダッシュして帰る」なんていうのは、ノスタルジーなんだと思います。
子供の見られる時間帯に放映しているアニメで十分…ということで、今の形に落ち着いたのでしょう。
レンタル屋にも、子供向けのコーナーありますし。
だけど僕の場合、中高校生の部活(生徒会)の時間、ずーっとアニメの話してたんですよ。ビデオデッキもなかったし、いつ見てたんだろう(笑)
>「サイタマノラッパー2」観て来ました。
確かに、あのラストは気が利いてましたね。どうして、岩松了がお父さん役なんだ?と思っていたら、ちゃんとラストで……。
いま思い出したけど、前作のラストには、ああいうオチがなかったんですよね。「えっ?」というところで、いきなり終わる。僕は、あっちの方が好きでしたね。
>輝いてみえたおふたりにびっくりして慌てて降りてしまいました。
僕も降りたと思います。どんな好きな女優が乗ってきても、なんか畏れ多い……俳優さんたちは、別の次元に生きてらっしゃるのだ、と思ってますから。
投稿: 廣田恵介 | 2010年11月21日 (日) 00時00分
廣田さま
こんばんは!
>「着るものひとつで、人間これだけ変われるんだよ」
この台詞、自分も刺さりました。
そしてよく言われてました(笑)
僕の場合、お洒落人間の手ほどきにより、多少は服に気を遣うようになりました。
ある意味、オタク道から転落しているのですが、服ひとつでも自分の心持ちがだいぶ変わったのを思い出します。
服って社会とのインターフェイスに用いるツールだと考えると、スペックは高い方が良いって話になるのだと思います。
そうそう、数日前についにメビウスのギャラクティカが到着!
大好きな戦闘エピソードであるシーズン3の『大脱出(後編)』を観ながらほとんど不眠不休で建造しています。
戦闘ダメージを施すか迷ったのですが、この熱い気持ちを維持したままカタチにしたくて、スピード勝負の100%素組です。
でも、せめて右舷のフライトデッキはギフトショップに改造すべきだったかも?^^;
そのうちFGに投稿します。
投稿: かまタロウ | 2010年11月21日 (日) 01時02分
■かまタロウ様
こんばんは。僕も、オシャレに詳しい編集者に「オタクの服装は、なんで黒々としているんだ。アンタの服は、俺が選んでやる!」と、銀座に連行され、その日にうちに20万ぐらいかけて改造されたんです。
やっぱり、ネクタイしめて仕事なさっている方を取材するのに、Tシャツ一枚では、相手にされないんですよ。こちらが弛緩したままではね。
>服って社会とのインターフェイスに用いるツールだと考えると、スペックは高い方が良いって話になるのだと思います。
その通りです。「見かけで判断するヤツは心が狭い」なんて言っていると、必ずどこかで負けます。社会と接していれば、分かることですね。
>そうそう、数日前についにメビウスのギャラクティカが到着!
fgで素組みしている方がいたんですけど、劇中そっくりなんですね。かまタロウさんは、お気に入り登録してますから、楽しみにしてます。
フライトデッキは収納できないっぽいですけど……。ギフトショップは、透明プラ版でも貼ればいいんでしょうけど、やっぱり就役直後の雄姿がいいんじゃないですか?
しかし、「不眠不休」というと『33分の恐怖』を思い出しますね。「ジャンプ、238回目、終了」「タイマーをセットしろ」……あの絶望的な徒労感、リアルでしたよねえ。
投稿: 廣田恵介 | 2010年11月21日 (日) 01時46分
廣田さま
>その日にうちに20万ぐらいかけて改造されたんです。
こういうのって『迷惑』と思いつつもかなり高揚する体験だったりしますね。
マヤヤ様が自然とポージングしちゃうのも、分かる気がします(笑)
>劇中そっくりなんですね。
どうもCGデータを基にしているようです。
部品点数も非常に少なく組立も簡単。
これで、あれほどの立体物が手に入るなんて幸せです。
>やっぱり就役直後の雄姿がいいんじゃないですか?
自分も同じように考えました。
右舷のフライトデッキは現役時のほうが模型映えするように思えますし。
>「不眠不休」というと『33分の恐怖』を思い出しますね。
あれも傑作エピソードでしたね!
なんの説明もなく、2百数十回のジャンプの最中に放り出されて僕らも混乱しました。
『ギャラクティカを見届けよう!』と決心したエピソードかもしれません。
あと、タイ大佐の名台詞が蘇ります。
自分も『己に課せられた義務』を果たせねば!
fgに投稿したら、お知らせしますね。
投稿: かまタロウ | 2010年11月22日 (月) 00時04分
■かまタロウ様
>マヤヤ様が自然とポージングしちゃうのも、分かる気がします(笑)
本人も、まんざらではないんでしょうね(笑)
でも、あの戦闘スタイル以外のときは、またジャージに戻っているのが、この漫画のいいところだと思います。
「常にオシャレでなきゃいけない」とは断言していないんですよね。
>あと、タイ大佐の名台詞が蘇ります。
>自分も『己に課せられた義務』を果たせねば!
あのセリフは、今の自分にもガツンときます。
何度も何度も、理由も分からぬまま追いかけてくるサイロンの理不尽さ、実は日常にも潜んでいるような気がしますね。
【追記】fg、拝見しました。ギャラクティカ、ああまで劇中ソックリにできるとは、お見事!
投稿: 廣田恵介 | 2010年11月22日 (月) 10時58分
廣田さま
あら!お知らせする前にご覧になりましたか??
お褒めのお言葉ありがとうございます^^
昨夜一睡もせずに朝まで作業し、完成です。
塗装が楽しくて時間を忘れていました。
集合住宅という環境上、エアブラシが使えず、ドライブラシでバリバリやりましたが、結果良かったかと思います。
やはり同スケールで、ペガサス、バルキリーが欲しくなりますねぇ(笑)
投稿: かまタロウ | 2010年11月23日 (火) 13時09分
■かまタロウ様
お気に入りに登録してるので、すぐ分かりましたよ。
ストライプまで筆塗りとは、恐れ入りました。パネルラインをシャーペンで……というのも渋い。好きな塗り方です。自分に出来ないだけで(笑)
>同スケールで、ペガサス、バルキリー
バイパーMk-Ⅶは出るんですよね。バトルスターは、劇中でも、もっと種類を出して欲しかったですね。
「あの最終回に納得いかない方っているの?」は同感ですね。確かに、「物語」の臨界点に到達していたと思います。
ともあれ、徹夜で完成、お疲れ様でした!
投稿: 廣田恵介 | 2010年11月23日 (火) 13時24分
廣田さま
>「あの最終回に納得いかない方っているの?」は同感ですね。確かに、「物語」の臨界点に到達していたと思います。
あっ!実は一箇所だけ、挿入して欲しい場面がありました。
アダマ艦長と、タイ大佐の最期の別れです。
あれだけ、二人の友情の深さを描いていながら「なぜ?」と思います。
でも、ゲータが反乱を起こすエピソードで、アダマ艦長が発した「お前と闘ってきたことを誇りに思う」って台詞が全てのような気もします。
タイ大佐がサイロンであることを呑み込んだうえでの発言ですからね。
製作陣がそれらを踏まえたうえで敢えて二人の別れのシーンを入れなかったとしたら・・・もう完敗ですよ^^;
カーラとリーの別れのシーンだけで、もう完敗は決定なんですけどね(苦笑)
投稿: かまタロウ | 2010年11月25日 (木) 00時42分
■かまタロウ様
>「お前と闘ってきたことを誇りに思う」
僕は、あのセリフを聞いたとき、体が震えました。一生に一度は、言われてみたいです。
ただ、あのエピソードでさえも、比重はロズリンとアダマの関係に移行していきましたよね。
だから、製作陣は「アダマとタイに関しては、もう描ききった」と判断したものと思います。
別のエピソードで、アダマが自殺できないから、タイを怒らせて撃ってもらおうとするでしょ。あのシーンで、もう十分……と、私も思うんですよ。
>カーラとリーの別れのシーンだけで、もう完敗は決定なんですけどね(苦笑)
あの素晴らしいシーン、「意味が分からない」という人がいて、困ってしまいます(笑)
確かに説明はできないけど……でも、分かるでしょ?って感じなんですよねー。
まったく同じではないにしても、ああいう別れってあったじゃん?的な。
投稿: 廣田恵介 | 2010年11月25日 (木) 01時31分
廣田さま
>だから、製作陣は「アダマとタイに関しては、もう描ききった」と判断したものと思います。
>別のエピソードで、アダマが自殺できないから、タイを怒らせて撃ってもらおうとするでしょ。あのシーンで、もう十分……と、私も思うんですよ。
なるほど。
廣田さんのご意見を踏まえた上で、僕なりにアダマ艦長とタイ大佐の別れのシーンを想像してみるのですが、どれもシックリこないんですよね。
でも、こんな想像も楽しいです。
>「意味が分からない」という人
このような感想を持たれる方は字幕をご覧になったのでは?と思うんです。
ほんとギャラクティカの吹き替えはベストな仕事でしたもの。
>ああいう別れってあったじゃん?的な。
僕が小学校の頃に転校した親友を思い出します。最期にもう一度挨拶しようと家に行ったらもぬけの空だったんですよ。
なんか、あのときの感じに似ていました。
なんだか久しぶりにギャラクティカについてお話しできて楽しかったです。
当初のエントリーテーマから大幅にずれてしまい、済みません。
しかし、ギャラクティカって終わった後の余韻がいいですね、ほんと。
投稿: かまタロウ | 2010年11月25日 (木) 22時49分
■かまタロウ様
腹を割った『ギャラクティカ』の話は、もはやここでしか出来ないので、楽しいです。エントリーテーマなんて気にしなくていいですよ。
>僕なりにアダマ艦長とタイ大佐の別れのシーンを想像してみるのですが、どれもシックリこないんですよね。
シーズン3第4話ラスト、「お前が皆を連れてきてくれた」「皆じゃない」とかね。あそこはもう、何度も何度も何度も見ました。
「30年来、俺の知っている男として戻ってきてくれ」「その男なら、もういないよ」……すべて、名シーンですね。
>ほんとギャラクティカの吹き替えはベストな仕事でしたもの。
「吹き替え」という仕事の歴史に残りますよね。
実はけっこう、意訳してあるんですよね。
クーデター話のとき、カーラがリーを助けて「死ぬのはつまんないよ。私は知ってる」と言いますよね。あれ、原語ではそうは言ってないように思うんですけど……台本が欲しいです。
「Frack you」も、実にいろんな日本語に訳されていました。
>僕が小学校の頃に転校した親友を思い出します。
あのシーンを見た後だと、よく雰囲気が分かります。
だから、フィクションと自分の人生って、溶け合っているんですよね。両者を厳密に分け隔てる人とは、話ができないと感じます。
投稿: 廣田恵介 | 2010年11月25日 (木) 23時18分