■『新子』ブーム■
廣田の同人誌、『REDLINE』特製パネルとお世話になりっぱなしの友人であり、イラストレータ ーである原 健一郎さんが、ふたつの展覧会に参加しています。
ひとつは、縄文文化をテーマにした「JOMO-T展」。ラフォーレミュージアム原宿で、31日まで開催されています→詳細
もうひとつは、「20年後の未来」をテーマにした「あれから20年、これから20年」未来に届くアート展です。こちらは11月18日まで、銀座ガーディアンガーデンにて。→詳細
重たい原稿から解放されたし、ひさびさに原宿、行ってみようかな。キディランド、好きだしね。
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その原さんに、「映画館以外では見る気がしないから、どうぞ」と貸してあった『マイマイ新子と千年の魔法』のDVD、故あって見なければならなくなりました。この「故あって」という部分がポイント。まだまだ終わりませんよ、『マイマイ新子』!
まず特典ディスクのメイキングから見はじめたのですが、膨大な資料をめくりながら、生き生きと構想を語る片渕監督の姿に、「ああ、俺はこの映画を応援して、間違っちゃいなかった」と変な確信を抱いてしまいました。そして、資料の山を前に「?」という顔をしている松尾プロデューサーに萌えッスよ、萌え。
あと、まだ絵も何もできてない段階で、早くも印度総督さんの姿が……「ははは、あれだけ一緒に飲んだ人が、当たり前に座ってるよ!」と、私はもう、テレビを見て笑うサル状態。ロケハンの頃は、岩瀬プロデューサー、ちょっと太ってたんだねー、なるほど。チラシづくりでお世話になった折本さんも、働いてるよ働いてるよ。
あと、監督から何度も何度も聞かされていた「水沢奈子が、福田麻由子にお団子を分ける シーン」、うわこれ映像あったんだ! もはや、本編より面白いよ、メイキング!
そして、監督自らの演技指導(普通は音響監督が指示だします)、これが見たかったんだ! だって、監督の演技指導がなかったら、福田も水沢も、あんないい仕事できなかったよ? 特に、奈子ちゃん(と呼ばせてほしい)の貴伊子は、早くも生涯ベストワークでしょう……。コメンタリーで、氷川さんも誉めてたもんね。
なんか今ごろ、俺の中に『新子』ブームが来てますよ!
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『マイマイ新子』もそうだが、『宇宙ショーへようこそ』『REDLINE』と、トレンドとは無関係に膨大な時間を費やして完成され、銀幕という荒波へこぎ出すアニメたちを愛している。
興収20億で、ようやく「ヒット」と呼んでもらえて、80億で「稼ぎ頭」と認めてもらえる、過酷な世界だ。でも、彼らは人気原作にも、オタクにだけ通じる記号にも頼っていない。
僕らは、新しいものが好きだった。見たことのないものを見たいと思っていた。アニメという児童文化が、大人社会に属する「映画」の世界へと、力づくで壁を乗り越えていく瞬間を、固唾をのんで見守った。
そう、確かに「壁」があったのだ。今は違う。「大きくなった児童文化」を「大きくなった子供」が見ているだけだ。
この状況を、僕の嫌いな言葉であらわすならば「嘆かわしい」。
今敏さんの作品は好きではなかったが、『夢見る機械』は全力で応援したい。もちろん、同情なんかじゃないよ。
だけど、今さんがこんな時代に残してくれた「希望」には間違いないから。
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今夜は、『ギャラクティカ』完結イベントです。「優待席を用意できます」と言ってもらえたんだけど、それは図々しいし、職業意識もあって、プレス席を選ばせてもらいました。
『ギャラクティカ』最後の出撃を、記者として見届けたいのだ。最前列に座ってるハゲがいたら、それが僕です。
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コメント
廣田さんが挙げられた三作品、劇場で観ることが出来て本当に良かったです。
すごく大雑把かつ乱暴な言い方で恐縮ですが、これらの映画、私には「ヤマトの子ら」のように思えます。
第一作ヤマトが「誰も見たことのない世界」を映像にし、「語られたことのない物語」を紡いでいったように、アニメの持つ力を信じて飛び立っていった勇者たちであると。
それと、極めて個人的な話ですけど、去年の「ヤマト復活篇」をきっかけにアニメージュオリジナルを購入して「新子」を知り、局地的ウルトラマイクロ第二期アニメブームが発生したという意味においても(汗笑)
投稿: やや矢野屋 | 2010年10月27日 (水) 01時58分
色々お世話になってます。
メイキング、編集の最後の最後に尺の都合で落とされちゃった部分があって、あのラピュタ最終日舞台挨拶の直前(廣田さんはまさに2階の客席におられたわけなのですが)、下のロビーで監督が配給会社ほかの皆さんに舞台挨拶をお願いしている場面です。
そういうところこそ、廣田さんが見たかったんじゃないかなあ、と思って、何か心残りになってます。
どこかに仮編集のDVDがあるかも知れません。
投稿: 片 | 2010年10月27日 (水) 03時16分
>映画館でしか見る気がしないから
よくわかります。私もマイマイはあんまり本編をDVDでは見てないですもの。
劇場であると聞けばウキウキして足を運ぶのに(笑)
「REDLINE」もDVDでいいやなんて思ってる人がいるとしたら、本気でどうかしてると思いますよ。
ケツをケリ飛ばしてでも劇場に行けとプッシュしたいですね。
もちろんTVのアニメーションも好きです。でもTVシリーズの延長の映画ではない、劇場の為にだけ作られたアニメーション映画は作品の覚悟が違う。そう、「覚悟」って言葉はこういう状況を切り開く為に使うんです。その心意気を感じる事の出来ない者を「アニメファン」と呼ぶに値しないというのが僕の最近の考え方。
専業声優を使ってないのが嫌、キムタクだから嫌、先入観だけで語る価値観の狭さ、マイマイやREDLINEを見てから言えるものなら言ってみなよ、と思う。REDLINEのキムタクや蒼井優が魅力的なベテラン声優達に一歩も劣らぬ掛け合いを見せる事に幸福を感じ取れないなんて、ニュートラルな感性なら有り得ないですよ。
もういい加減にオタクの価値観だけで語れる程に作劇の世界は狭くないって事に気付いてほしいんですよね
投稿: Miya-P | 2010年10月27日 (水) 09時03分
■やや矢野屋さま
実は、あなたが不愉快な思いをするといけないので、あえて『ヤマト』の話は避けたんです(笑)。『ヤマト』も最初はトレンドとは無縁のところから信念のみで出発しました。ところが、続編を重ねることで、「ビジネスにしてしまうと、こうなってしまうのか」とファンを落胆させもしたと思うんです。
今はもう、ファンのニーズに完全合致させた狭くて安全な作品のみがメインストリームを形成していて、野心をもった作品が肩身の狭い思いをしています。
■片さま
こちらこそ、本編だけではなく、あんな面白いメイキングまで残してくださって、誠にありがとうございます。
>下のロビーで監督が配給会社ほかの皆さんに舞台挨拶をお願いしている場面
それも、お話で聞いたのみのシーンですね。映像あるんですか、それは見たいですねえ。もはや、メイキング映像のファンになりつつあります(笑)
私が見たり聞いたりしたものは、この巨大なドラマの千分の一にも満たないんですね。でも、それは、まだまだお楽しみが残っているということでもあります。素晴らしいことです。
■Miya-P様
専業声優が出ていれば、彼らにとって「安心」なだけだと思います。劇場作品として一般のお客さんの方を向くだけで、もう排他的な心理が働くんでしょうね。だから、ずーっと子供でいられてしまう。
『マイマイ新子』を見て、「アニメばかり見ている自分がイヤになった」という人がいたんですけど、それはアニメの外からの情報がいっぱい入っているからでしょう。
>ニュートラルな感性
それを獲得したいがために、それぞれ苦労してきたはずだろうに…と思うんですが(映画を見たり本を読んだり)、とにかく今はオタク文化を全網羅するだけで、人生が満たされてしまう。
自分が欠けている、足りないものがあるということを認めたくないんですよ。
それと、映画館で知らないアニメを見て「損する」のが怖いんでしょうね。とにかくリスクを負いたくない、安全圏にいたいだけの人が増えました。
投稿: 廣田恵介 | 2010年10月27日 (水) 11時40分
わかります、私も正直「ある時期からのヤマト」は色々キツくて、観返しもしてないですから(汗笑)
でも今にして思えば、その後期ヤマトも「ファンのニーズ」ではなく「作り手のワガママ」を原動力としていたんだなと、妙に感心したりもするんです。
少なくとも消費されていくだけの「商品」ではなく、愛好や批判の対象となる「作品」として成立してるんじゃないかと。
昨年の復活篇は、(どうしてもそう思えてしまったのですが)激しい逆風と偏見の中で「作品」自体の姿を見てもらえないにも関わらず、果敢に旅立っていく様が、かつての第一作シリーズや「さらば」を思い起こさせ、個人的に強い印象の残る映画となりました。
そういえば、こちらのブログで石黒昇監督のお話も読ませていただきましたね。
何か象徴的なものを感じます。
投稿: やや矢野屋 | 2010年10月27日 (水) 12時34分
■やや矢野屋さま
後期『ヤマト』……といいますか、テレビ版の3あたりになると、「あんなもの」と笑い飛ばす人と「でも、やっぱり『ヤマト』だから」と着いていった人たちに分かれていきましたよね。それはやっぱり、「なかったこと」には出来ませんね。身近にも「俺は最後まで見届けるよ」と言っている友達がいたので……。
話を合わせるわけではありませんが、確かに『復活篇』もトレンド関係なく、信念と執念で製作・公開された作品だと思います。むしろ、僕より若い30代のライターたちが「ヤマト、熱いです」と、グレートメカニック誌で特集を組んだぐらいです。
やっぱり、「誰がどう思おうと、俺はこれが面白いと思うんだよ」というワガママでつくられた作品は、人を動かします。
だけど、そういう作品を支える土壌が、現場になくなってきている……という話を、さっきも池田憲章さんとしたばかりなんですよ。
投稿: 廣田恵介 | 2010年10月27日 (水) 13時06分
『マイマイ新子』のDVD、僕も通して観ていません。ある小さい悪だくみのために、ひづるのお墓を確認したくらいで(^^
12/25にWOWOWで放送するようですね。まだ知らない人にも観てもらいたいので、ぜひ地上波でも放送してほしいです。
『REDLINE』は来月から隣の市で上映するようなので、行ってみようと思っています。
それと、遅ればせながらゼーガペイン、全話観終わりました。近所のレンタル屋さんに9巻しか置いてないのをTwitterで嘆いていたら、2日後に川口サーバーからブツが届きました(^^
僕がこの作品に出合えたのは、廣田さんと前岡さんのおかげなのです。ほんとに感謝しています。
一巡目で圧倒されたので、いろいろ調べたり考えたりしながら、ゆっくり二巡目を楽しんでいます。でも気が付いたら13話と14話のEDを繰り返し観ていたりするんですが。
投稿: silver_copper | 2010年10月27日 (水) 23時07分
■silver_copper様
>ある小さい悪だくみのために、ひづるのお墓を確認したくらいで(^^
そう言いながら、いつも小さくないじゃないですか(笑)
>12/25にWOWOWで放送するようですね。
あ、WOWOWでしたか。テレビでやるかも、とは聞いていましたが、一応、全国放送ですね。
それにしてもクリスマスって、よく枠がとれましたね! どちらかというと、大晦日にコタツで……という雰囲気なんですけどね。根拠はありませんが。
『REDLINE』は、「頭が悪い」「バカ」という魅力が、なかなか伝わりづらいのですが、見ていただければ分かるかと。ネットで書くと、ただの悪口にとられちゃうんで。
『ゼーガ』は、13話のラストを見て「うわあ!」と叫んだのを覚えています(笑)
この作品もねえ、表面的にはトレンドから離れてしまったけれど、でも今の時代が内在している不安感をあぶりだしたからこそ、熱烈に支持されているんだと思います。
ガツンと魂をもったヤツがいいんですよね、作品も人間も。
投稿: 廣田恵介 | 2010年10月28日 (木) 00時46分