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2010年10月15日 (金)

■映倫からの返答■

映画倫理委員会に、『ぼくのエリ 200歳の少女』でのモザイク(ボカシ)に関する質問状を、内容証明郵便で送付しました。
こちらが勝手に決めた「一ヶ月以内」という期限どおり、昨日14日に、映倫からの回答がポストに投函されておりました(普通郵便です)。

封筒の裏にも、便箋(ワープロ打ち)にも、「2010年10月12日」と明記されており、消印も同様ですから、まずは誠意ある対応と言えるのではないでしょうか。便箋には、映倫委員長の大木圭之介さんの名前の上から、押印されています。

こちらから送ったものは「公開質問状」とし、ネットでの公開も自由とさせていただいたので、以下に全文を掲載します。
文中の「当該カット」とは、例のモザイクのことです。

 

映画「ぼくのエリ 200歳の少女」に関する回答書

 

 

 

 

 

 

 

 平素は当委員会の活動につきましてご理解、ご協力を賜りましてありがとうございます。この度廣田様よりご質問がございました下記4件につきましてお答えいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問1 私は「ぼくのエリ 200歳の少女」を配給している株式会社ショウゲートを、2010年7月23日に訪れ、当該カットが引っかき傷だらけになった経緯を聞いてまいりました。担当者から、映画倫理委員会が「何らかの方法で当該カットを視聴不可能にしないかぎり、審査はしない」と通告したと聞きました。これは事実でしょうか。

 

 

 

回答 事実と異なります。申請のあったものはすべて審査をしており、「審査はしない」と申し上げることはございません。

 

 

 

質問2 もし、映画倫理委員会の通告が事実であるとしたら、どのような観点から、そのような判断を下されたのか、具体的にお聞かせください。

 

 

 

回答 回答1の通りです。

 

 

 

質問3 「ぼくのエリ 200歳の少女」を海外で鑑賞された方から、当該カットには女性器も男性器も映っておらず、手術跡(特殊メイクであり本物ではない)が映っているだけだと聞き及びました。これは事実でしょうか。

 

 

 

回答 映倫では申請された作品について審査しております。海外で上映された作品には関知しません。

 

 

 

質問4 もし、当該カットに映っていたのが手術跡ではなく、女性器あるいは男性器であった場合、やはり、「何らかの方法で当該カットを視聴不可能にしないかぎり、審査はしない」と配給会社に通告したのでしょうか。通告したのであれば、その理由もお聞かせください。

 

 

 

回答 回答1の通り「審査はしない」と申し上げることはございません。未成年者の性器の描写については、一般の映画館で上映するために修正する必要があると申請者に伝えてあり、修正の方法は申請者にまかせております。

 

 

 

以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 


……藪の中ですな。プランBを延期し、もう一度、ショウゲートさんに当たってみるしかないか。だって、映倫の回答が真実なら、私は配給会社にだまされたことになるわけだから。

それにしても、たったこれだけのことが、どうしてこんなにも不透明で不鮮明なのだろう? なぜ責任者にかぎって、他人に「まかせてある」などと言えるのだろう? 実体も中心もない、思想や主張すらも存在しない、この得体の知れない世の中!

だってさ、上の4番目の回答の最後の一文って、「未成年のチンコとマンコには、あらかじめ、お前らが工夫してボカシ入れて来るんだぞ、いいな」って、配給会社に通達してあるって意味でしょ?
それを表現規制というんだよ、映倫の大木委員長!

そもそも、『ぼくのエリ』には未成年者の性器なんて、出てこないだろう……。


つまり、この目に見えない霧を、僕は消し去りたいわけだ。だとしたら、霧の中を進むしかない。
ここで、『ぼくのエリ』を見失ったとしても、また別の霧の中に迷い込むだけだ。日本中、どこへ行っても、何を見ても、誰と会ってもそうなの。本当のことなんて、誰も教えてくれないの。

そんな気色悪い国に生きてしまっているという事実を認めたなら、さあ、出口を探そう。エリが200歳なら、僕は100歳まで戦う。

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コメント

全然オッケーじゃないですかね。
予想通り。
こっからが勝負ですね!

投稿: ごんちゃん | 2010年10月15日 (金) 02時13分

審査しないとは「言ってない」という表現を盾にして
全ての質問からうまく逃げましたね。

>一般の映画館で上映するために修正する必要があると申請者に伝えてあり

これを満たさなくてはならないので、
ショウゲートさんは廣田さんをだましたわけではなく、
実質的には審査してもらえないことになるんじゃないでしょうか。
(知らんぷりをしてそのまま出しちゃえば、通過してたりして…)

ちょっと長くなりますが、私の実体験を。
10年くらい前に合併処理浄化槽の市の補助金申請をめぐって、
設計士さんたちと一緒に当時の環境省に乗り込んだことがあるんです。
施主じゃないとできないから、って持ちかけられて、
だめ元で賛同した施主です(笑)
市が、私たちのいい分を突っぱねる理由を国にふったため、環境省行きが実現しました。

申請条件に「国に認定されたもの」というのがあって、
零細メーカーさんにはこの認定料金が高すぎて登録できないため対象外。
「認定されたものより性能が抜群に良いのに
補助金が支給されない制度はおかしい」
という訴えをするためでした。

その後、市の担当者も環境省に出向く等真剣に取り組んでくれて、
「認定されてないけど特別に性能が良いから補助金を支給する」
ということになったんです。

が、そこでやっと手にした市の申請書類には認定番号の記載箇所が。
形式がそれである以上、そこに記載できない事には
書類不備で受理されないわけです。
市の担当者もそこで初めて「あ…」って感じで
あっけない幕切れとなりました。
(さらにもがく手があったのでしょうけれど、
市の規約を正式に変えるには申請期間の年度内には間に合わないし、
私たちのような変わり者の後継者はいないでしょうからそこでやめました。
数年後にメーカーさんは認定申請をされました。)

配給会社が「審査してもらえない」というのと似てるでしょ?

投稿: kyasリン | 2010年10月15日 (金) 10時01分

■kyasリン様
書類に記載箇所があるから……という物理的要因で、その話はチャラになったわけですよね。
映倫の場合は、「言った言わない」レベルだと思います。よく「審査基準が曖昧」「不透明」と言われるのは、ちゃんとした書類がないからでしょう。いや、あるんでしょうけど、一般に開示しないかぎり、ないも同然です。

僕が不思議でしょうがないのは、こんな子供の喧嘩レベルでフィルムに傷をつけられ、映画ファンからは憎まれながら、なぜ配給会社も、映画館もだんまりを決め込んでいるのか、ということです。みんなで押しかければ、映倫なんか潰せるだろうに。

実は、『ぼくのエリ』を上映予定の映画館さん(支配人さんとは顔見知り)に、今回の規制についてどう思うか、質問してみたんです。そしたら、黙っちゃいましたね。何が怖いんだか知りませんが、だったら映画館なんかやめてしまえ、と思いました。

沈黙するということは、映倫を支持することと、まったく変わらない。観客にここまでやらせて、恥ずかしいと思ってほしい。

投稿: 廣田恵介 | 2010年10月15日 (金) 13時56分

「映倫は口で言ってないけど、配給会社は言われてると同様」
ってことかなと思って書きましたが、さて、真実はいかに。

関係者のみんなが黙ってしまうのは、
彼らの生活がかかっているからでしょうね。
だからといってそんな映画館がやめてしまったら
他の作品も観られなくなってしまうではないですか。
それでなくとも身を切って運営してる映画館が多いでしょうから。

鼠が猫の首に鈴をかけるには、勇気と知恵が必要。
観客は鈴をかけたい猫と同等な猫になれるけれど、
関係者は鼠でしかいられない。
鼠が猫以上の大きさになるためには団結するしかないですが…
組織ゆえに、ややこしくて難しいんだと思います。
廣田さんが組織の人間ならどんな展開になるのかな?


原作のMORSEを2週間前に読み始めました。
就寝前にちょびちょび読んでやっと上の88ページまで来ました。
3字以上のカタカナの名前が頭に入らない私は
ページをめくりなおしては行ったり来たり、
情けないなぁ…

投稿: kyasリン | 2010年10月16日 (土) 09時36分

■kyasリン様
私も個人事業主ですが、ポリシーに反する仕事は、すべて断っています。あるいは、議論して妥協点を探します。人からは嫌われるし、収入は減りますが、真に身のある記事を書きたいから、この職業をつづけてるのです。
映画館も、まったく同じことだと思います。
それで赤字になるのであれば、それは経営の才能がないというだけの話ではないでしょうか。

また、私は他の多くの映画を見たいがために、一本の映画が傷つけられてもいいとは考えません。本末転倒です。
『ぼくのエリ』一本を救わなければ、他の映画もすべて救われないんですよ。いまの僕には、すべての映画に刻印された映倫マークそのものが、モザイクに見えます。

『MORSE』は、性的・社会的マイノリティに対する優しさの感じられる小説ですよ。『ぼくのエリ』は、そのエッセンスを丁寧に視覚に置き換えた映画です。

投稿: 廣田恵介 | 2010年10月16日 (土) 13時12分

僕はレンタルで観ました。あのボカシはきっと未成年者の性器が映っているからなんだろうと思っていました。しかしネット上で【違う】ということを知り、映倫に怒りを覚えました。ストーリーに影響のあるボカシって一体何なんだろう。映倫ごときに作品を変えてしまう力があるのがおかしい。ネット上ではノーカットのポルノが簡単に観れる。それなのに何で映画はストーリーまで変えかねないボカシを入れられてしまうのだろうか。文化を壊す映倫は無くなるべきだと思います。

投稿: | 2011年3月27日 (日) 18時45分

■ 様
レンタルだと、ややソフトなボカシになっていたと思いますが、最初の頃に映画館で見たら、もう画面が見えないぐらい、傷だらけだったんです。
だから、すごくいい映画だったのに「何だか、騙された」という気分でした。

この回答が来たあと、もう一度、配給会社に連絡してみたのですが、映倫がウソをついていることが判明しました。

>文化を壊す映倫は無くなるべきだと思います。

まったくです。映倫は、映画の敵ですよ。なんとか潰せないものかと思ってます。

投稿: 廣田恵介 | 2011年3月27日 (日) 21時38分

映倫は「ぼくのエリ」以外にも色々モザイクつけて映画ファンを怒らせているのも事実です。だから今回の件もショウゲートではなく、映倫に責任があるのでは?
実際、日本は表現の自由が認められており、映倫とは別に法律とはかかわらず、勝手に年齢制限を付けているだけだったような気がします。だから、映倫にはこのようにモザイクを付ける権利なんてないはずです。僕はMPPAがモザイクつけた例は知りません。キューブリック作品とかにもモザイクを付けて作品観賞中にいきなり現実感をなくすのは僕は許せません。映画=芸術という観点で審査を付けてほしい。
別に、ぼくのエリは教育によくない、というわけではないのだから。
(ちなみに何故か「時計じかけのオレンジ」だけは芸術作品としてモザイクなし(だっけ)でG指定です。)

グダグダ文章ですみませんでした。
まあ、中学生が色々いうことではありませんねww

投稿: 映画頭巾 | 2011年12月16日 (金) 16時19分

■映画頭巾様
映倫の存在に疑問を感じている人が多くて、嬉しく感じています。
勝手に設けた年齢区分を、審査料をとってまで割り振るだけの形骸となっていますので、僕は「いらない」と思います。

ただ、映倫の歴史を紐解くと、映画会社の強い味方だった時期もあり、その頃は映画会社ともども検察に訴えられたりもしているんです。
そんな経緯も影響してか、いまは法律をこえてボカシを入れさせる(その作業料は配給会社負担です)だけの組織に成り下がってしまいました。

『ぼくのエリ』の件では、平然とウソをついてきましたからね。誠意がない。

>(ちなみに何故か「時計じかけのオレンジ」だけは芸術作品としてモザイクなし(だっけ)でG指定です。)

そうなんですか? 20年以上前ですが、私が映画館で見たときはモザイクばかりで、観客は苦笑しながら見ていました。
『エル・トポ』は、逆にモザイクかかるようになったそうで、一貫性ないですね。

投稿: 廣田恵介 | 2011年12月16日 (金) 16時44分

こちらで、こんな事を言っても仕方がないかもしれませんが・・・

進撃の巨人について

あれほど、残虐でエグイシーンがあるのになぜR指定が掛かっていないのですか?
娘(高3と小6)と3人で見に行ったのですが、途中から娘たちが、人が食べられるシーンが見て気分が悪くなり、途中で出ました。

テレビ等でもそんなシーンが予告されていなく、R指定も掛かっていないため大丈夫かと思っていましたが・・・
テレビの予告シーンやR指定や、残虐なシーンがあるとか言ってくれてたら見なかったのに非常に不愉快な思いをしました。

どのように映画倫理員会で決めているか知りたいです。

投稿: にーさん | 2015年8月 7日 (金) 15時27分

■にーさん様
コメント、ありがとうございます。
映倫のサイトで調べてみましたが、実写の『進撃の巨人』はPG-12指定ですね。
http://www.eirin.jp/list/index.php?title=%E9%80%B2%E6%92%83%E3%81%AE%E5%B7%A8%E4%BA%BA&eirin_no=&s_year=&s_month=&e_year=&e_month=&x=0&y=0
「親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。」という区分です。

邦画の場合、映倫は脚本段階から内容をチェックしますが、ヒットの見込める作品の場合、やや基準が甘いような気がします。
映倫より、配給会社に一言いった方が良いかも知れませんね……。

投稿: 廣田恵介 | 2015年8月 8日 (土) 12時13分

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