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2010年9月14日 (火)

■感情のアイドリング■

EX大衆 10月号 明日発売
Ex_taishu
●『伝説巨神イデオン』のすべて
サブタイトルは、「接触&発動クロニクル」。編集者が考えました。こういうのは、アニメ音痴な人のほうが、いいのを考えてくれます。

●杉原杏璃 グラビアポエム
ひさびさに、EX大衆でポエム書きました。

急な告知ですが、10月10日の「マチ☆アソビ」で氷川竜介さんと対談……というか、私が氷川さんに聞くつもりでトークショウやります。


NHK-BS『MAG・ネット』、原恵一監督の特集。
原監督のアウトローっぷりが、もうひとつ伝わってこなかったけど、『カラフル』で「徹底的に演出の要素をそぎ落とす」ってのは、面白いテーマだった。

その究極が、「真くんのお母さんが、居間でうたた寝しているシーン」だと番組は言う。完全なトメで、呼吸している仕草さえない。
計ってみたら、5秒ちょっと。長い。120コマぐらい、同じ絵が映っている。実写なら、完全なストップモーションです。

以前、『千と千尋の神隠し』の取材で、武重洋二さんにお話をうかがったとき、いわゆるBGオンリーのカットでも、ピタッと止めないで、ゆるやかにカメラを移動させていると聞きました。
原監督の言葉を借りると、何か動かさないと「死んだ絵になってしまう」。
だけど、『カラフル』の当該カットは、決して死んだ絵ではない。そこには、5秒間という時間が流れていて、決して、止まってはいないんです。


似たカットを例にあげると、『エヴァ』の24話で、カヲルくんをつかんだまま動かない初号機。なんと、60秒も止まっている。
96f3b042ようするに、カヲルくんをつかんだエヴァ初号機の絵ってのは、感情のアイドリング状態ですよね。シンジくんは、悩みに悩んで、前へ進めない。だから、この絵は、決して止まっているわけじゃない。緊張は持続しているわけです。

『カラフル』のお母さんも、疲労困憊して寝てしまったわけでしょ。それまでの積み重ねがあるからこそ、あそこで絵を止められる。止めることで、真くんの感情がアイドリングする。
初号機を映すから、映っていないシンジくんの感情が気になる。お母さんを映すから、映っていない真くんの感情が気になる。

変なたとえだけど、彼女からメールが来ないと、「一体どうしたんだろう?」「何を考えてるんだろう?」と気が急いてくる。あれは、焦らしのテクニック。同じことです。
シーソーゲームみたいなもんで、相手が引くと、こちらが乗り出す。相手が乗り出すと、こちらは引いてしまう。それが、映画と僕らの関係です。


つまり、感情の主体が見えないと、主体はわれわれ、観客サイドへ移ってこざるを得ない。
どちらかというと、感情の主体を「見せない」ことの問題じゃないかな。ただし、感情を「止めず」にアイドリングさせておくには、被写体を「止めて」見せる必要がある……見えないものを感じさせるために、見えるものを止めてしまう……だとしたら、アニメって、ほんと面白い。

(C)GAINAX/Project.Eva.・テレビ東京

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コメント

あのシーンまさかまた自殺?とか思っちゃいました。見事に見てる方の感情を揺さぶる監督の思惑に乗ってしまいましたね(笑)ホントに上手いです。

投稿: Miya-P | 2010年9月14日 (火) 21時59分

■Miya-P様
ああ、お母さんがストレスに耐えかねて、自殺したように見えました?

でも、それは監督の思惑に乗ったんじゃなくて、Miya-Pさんの心がそう捉えたわけであって、そっちの方が重要だと思いますよ。

映画を見て面白かったら、「監督の才能だ」って納得する人が多いんですけど、面白がっているのは観客ですから。
観客サイドに「面白がれる能力」があるかどうかです。

で、「面白がれる能力」のない人は、「つまんなかったぞ」って、えんえん書き連ねるわけですね(笑)

投稿: 廣田恵介 | 2010年9月14日 (火) 22時21分

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