■ワンカットの効能■
本日より、『カラフル』公開。「日曜の夜、こっそり見に行くかなあ」と思って、グーグルで検
索したら、トップに上映館が表示されるのはいいとして、なんで素人レビュアーのつけた★印まで見なきゃならんの?
しかも、公開前ですよ? これで「やっぱ、見に行くのやめた」って人がいたら、営業妨害にならないの?
★印を表示しない設定には出来ないので、ググったら目にしなきゃならない。素人レビュアーの採点も、先日書いた、ブックオフの強制参加キャンペーンと同じだよ。「誰も困らない、むしろ、自分は社会の役に立っている」と信じ込んでいる。
いやいや、人によっては邪魔なだけなんで。
■
どうにも腑に落ちんな……とストレスをためつつ、DVDで『扉をたたく人』を見る。
ある意味、これも理不尽な現実を描いた映画なので、スッキリとはしないけど、主人公が太鼓を叩かずにいられなかった心境は、痛いほど分かる。
偏屈ものの大学教授が、アラブ系移民の若者の叩く太鼓に、少しずつ魅せられていく。
彼は、学会のためにニューヨークに来るんだけど、孤独癖があるから、教授同士の話の輪に加われない。
だから、公園でランチをとるんだけど、そこでポリバケツを叩いて演奏している黒人たちを見かける。
その夜、同居しているアラブ人から、ライブに誘われ、彼の見事なパーカッションに引きこまれる。
翌日、またも公園でランチをとる教授。だけど、今度はワンカットの引きの絵で、ポリバケツを叩いている黒人たちの、すぐ横で食べているんだよ。
もう、そのワンカットだけで、この映画を信用できた。教授の表情なんか映らないんだけど、同じフレームの中に、黒人たちと教授が、同じサイズで入っている。それがすでに、ドラマチックなわけだよね。
こういうカットに出会ったとき、ハッとするんですよ。「見てよかった!」と思うわけです。
その後の展開には、ご都合主義も散見されるんだけど、俺はもう、ぜんぜん許すよ。そのワンカットを成立させた、というだけで、価値は十分にあるから。
ラストも良かった。ちょっと、『SRサイタマノラッパー』を思わせるブツ切り感が、いい。「言葉で表現できなくなったとき、音楽がはじまる」という、ドビュッシーの言葉を思い出した。
だからね、映画というのは、自分の人生に有機的に役立ってくれるものなので、人によって効いたり、効かなかったりするわけです。
それを★印や点数におきかえて、あまつさえ「平均点」を出そうとする発想が、いかに貧しいものであるか、採点マニアの人たちは、よく考えてほしい。
■
ようやく原稿から解放されたので、吉祥寺バウスシアターへ『SRサイタマノラッパー2』を見に行こうか。
いやいや、その前に『ミルク』を、DVDで見るべきか。社会的マイノリティのために、身を挺して戦う人は、大好きです。
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しかも、公開前ですよ? これで「やっぱ、見に行くのやめた」って人がいたら、営業妨害にならないの?
★印を表示しない設定には出来ないので、ググったら目にしなきゃならない。素人レビュアーの採点も、先日書いた、ブックオフの強制参加キャンペーンと同じだよ。「誰も困らない、むしろ、自分は社会の役に立っている」と信じ込んでいる。
いやいや、人によっては邪魔なだけなんで。
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どうにも腑に落ちんな……とストレスをためつつ、DVDで『扉をたたく人』を見る。
ある意味、これも理不尽な現実を描いた映画なので、スッキリとはしないけど、主人公が太鼓を叩かずにいられなかった心境は、痛いほど分かる。
偏屈ものの大学教授が、アラブ系移民の若者の叩く太鼓に、少しずつ魅せられていく。

だから、公園でランチをとるんだけど、そこでポリバケツを叩いて演奏している黒人たちを見かける。
その夜、同居しているアラブ人から、ライブに誘われ、彼の見事なパーカッションに引きこまれる。
翌日、またも公園でランチをとる教授。だけど、今度はワンカットの引きの絵で、ポリバケツを叩いている黒人たちの、すぐ横で食べているんだよ。
もう、そのワンカットだけで、この映画を信用できた。教授の表情なんか映らないんだけど、同じフレームの中に、黒人たちと教授が、同じサイズで入っている。それがすでに、ドラマチックなわけだよね。
こういうカットに出会ったとき、ハッとするんですよ。「見てよかった!」と思うわけです。
その後の展開には、ご都合主義も散見されるんだけど、俺はもう、ぜんぜん許すよ。そのワンカットを成立させた、というだけで、価値は十分にあるから。
ラストも良かった。ちょっと、『SRサイタマノラッパー』を思わせるブツ切り感が、いい。「言葉で表現できなくなったとき、音楽がはじまる」という、ドビュッシーの言葉を思い出した。
だからね、映画というのは、自分の人生に有機的に役立ってくれるものなので、人によって効いたり、効かなかったりするわけです。
それを★印や点数におきかえて、あまつさえ「平均点」を出そうとする発想が、いかに貧しいものであるか、採点マニアの人たちは、よく考えてほしい。
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ようやく原稿から解放されたので、吉祥寺バウスシアターへ『SRサイタマノラッパー2』を見に行こうか。
いやいや、その前に『ミルク』を、DVDで見るべきか。社会的マイノリティのために、身を挺して戦う人は、大好きです。
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(C)2010 森絵都/「カラフル」製作委員会
(C) 2007 Visitor Holdings, LLC All Rights Reserved
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コメント
今日「カラフル」観てきました。
何というか・・・心が決壊を起こした、という感じでしょうか。
心の奥深くに何年も何年も押し込めてきた物を
無理矢理曝け出されました。
そこには中学生の自分がいました。
とても、とても痛かったけど優しく優しく撫でてくれました。
話を聞いてくれました。何度も何度もうなずいてくれました。
そして、そっと大切に戻してくれました。
みんながみんな救われなくてもいい。100人に1人、1000人に1人でもいればそれでいいんだと思います。
語り合いもしたくないし評論なんて見たくもない。
点数なんて冒涜以外の何物でもない。そんなもので汚されたくない。
この作品は私の宝物になりました。心の一部になりました。
大切にしていきたいと思います。
ここでこんなこと言っちゃってすみません(笑)
投稿: mn | 2010年8月21日 (土) 12時36分
■mn様
コメント、ありがとうございます。
『カラフル』を見て、傷つかない人は、かなり鈍感だと思います。
おっしゃるように、忘れ去りたかった過去を、曝け出されますから。
僕も、見ている間は、つらかったです。
>そして、そっと大切に戻してくれました。
最後には、希望を持たせてくれますからね。誰をも、許してくれるというか……。
だから、ノンフィクションだと思うし、人生の一部として、溶け込んでしまうんですよね。
>心の一部になりました。
はい。mnさんも映画を受け入れ、映画もmnさんを受け入れた。そういうことだと思うのです。
そのような関係を、点数なんかで計れるわけがありません。
また、ご遠慮なく書き込んでください。自分の言葉で語ってくださる方は、大歓迎です。
投稿: 廣田恵介 | 2010年8月21日 (土) 14時52分