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2010年8月29日 (日)

■『けいおん!!』21話が、面白かった■

先週は、やたら飲みに出歩いていて、ほとんどアニメを見てなかった。
ようやく見れたのが、『けいおん!!』 21話。絵づくりというか、演出が良かった。

このアニメは、複数のキャラをフレームに収めるので、バスト・ショットが多い。
Story(←これこれ。こういうカットが多いはず)

ところが、今回は、唯の髪の毛のクローズアップから始まる。いや、正確には、唯のベッド→机の上に広げられたヘアカタログ→部屋全体の引き。キャラがいない。空舞台、3カット。
その後が、髪をすく唯の手。足元に、登校カバンがある。これ、完全なトメ。次が、髪をすく唯なめ鏡の中の唯。でも、顔は映らない。執拗ですね。キャラの顔を出さない。髪の動きだけ。しかも、安易なリピートでなく、適度に変化つけてるところが、なんともゾワゾワッとくる。

その次のカットが、洗面化粧台のパン・アップ。で、ようやく唯の正面顔が映るんだけど、鏡の中なんですよ。このシーン、「生」の唯は、横顔ぐらいしか出ない。「鏡の中の正面顔」だけで、40秒ちょっとの長回し。挑戦的だ。
長回しといっても、実際は、アクションとばして3~4カットなんだけど、「髪をいじる」芝居を40秒。髪の毛って、「残し」があるから、めんどくさいはずなんですよ。
だけど、それを徹底してやっている。


もうひとつ、部室で、唯が自分で前髪を切ろうとするカット。これも良かった。
唯の見た目だから、画面に大きく前髪が入っている。奥には、4人のキャラがいるけど、ピンが外れている。
このカット、10秒ちょっとだけど、「ハサミで前髪を切る」芝居だけ、見てきたように描いている。しかも、慎重に、ちょっとずつ切っていく。その、じれったい時間の流れ。
このカットだけでも、見たほうがいいよ。

その後、「もうちょっと切りたい」と唯が言う。また唯の見た目なんだけど、今度は、奥のキャラたちにピンが合っている。唯の前髪はボケ。今度は、奥のキャラたちに芝居の主導がうつるからね。
その次の、唯がクシャミするアップも、上手い。タイミングが上手い。こんなところに、枚数を使う心意気がいい。


あと良かったのは、職員室で唯たち3人が、進路希望用紙を先生に提出するところ。
進路希望が通った瞬間、廊下で聞いていた紬が、小躍りするんだけど、先生のセリフがオフで続いている。その臨場感ね。
職員室でも廊下でも「同じ時間が流れてる」んだよ。

この回の絵コンテ・演出は、北之原孝将。アップと引きの絵の使い分けが、上手い。
だからね、アニメの面白さっていうのは、やっぱり、絵づくりなんだよ。カットの効果であり、作画の工夫であり……みんな、そこを見てなさすぎる。
「ストーリーがない」とか、見えやすいところしか、見てないんだもん。

(C)かきふらい・芳文社/桜高軽音部

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コメント

みる角度いろいろですね。
よいとこ探しの評価を読むと知識が増える上に良い気分になれます。
廣田さんのように技術を文章で語れる方は、
その技術を知っているからこそですよね。
私なんかはもう、絵が動いているだけで拍手ものなので、
「感じ」だけがたよりです(笑)

娘に「けいおん!!」はアニメを語る人々には不評みたいだよって伝えると、
「なんで〜?おもしろいのにぃ〜。おかあさんもみてごらんよ〜」
と言うんですね。
中高生にとってはストーリーもひっくるめて面白いわけですね。
観る機会がないまま今に至ってるんですが
観て「ストーリーがない」と感じたら、若い感性を失っているようで悔しいなぁ…

投稿: kyasリン | 2010年8月29日 (日) 09時37分

■kyasリン様
僕だって、「絵が動くのって、すごいな」と感じたから、発作的に書いたんです。
技術や知識にかんしては、もっと詳しい人が、いっぱいいます。
僕は、感情的に「今回の『けいおん!!』は、なんか違うぞ」と、それだけですよ。

>よいとこ探しの評価を読むと知識が増える上に良い気分になれます。

ようするに、「面白い」と感じる心とか、前向きな興味をもてる「経験欲」みたいなものが大事なんだと思います。
それがない人は、何を見ても、点数をつけて分かったつもりになってしまう。

>中高生にとってはストーリーもひっくるめて面白いわけですね。

僕みたいなオッサンとは、見ている角度が違うのでしょうね。
だからといって、若いアニメ・ファンは見る目がないなんて、ぜんぜん思いません。
あらゆる物事は「変化していく」、ただそれだけです。変化を受け入れられなくなったとき、年寄りの小言が始まるんでしょうね……。

投稿: 廣田恵介 | 2010年8月29日 (日) 11時42分

お久しぶりです、フォレストのガンダムファンクラブでお世話になっていたかつのです。

いつも見ている某有名ブログにここの事が載っていたので思わず投稿しました。
私は例によってあの仕事を続けていますが元気です。

けいおんは私もハマっていて登場人物の描写には癒されています。
最近だと中の人のラジオやライブにも行ったりしてますが演技力・歌唱力共に伸びまくっていて驚かされます。

描写的には、ハルヒの時から更に一歩進んだ背景描写の生きた空気感や、ライティングも含めた見せ方が上手いですよね、とても勉強になります。

それではまた、遊びに来ますね~ノシ

投稿: かつの~っす | 2010年8月31日 (火) 22時29分

■かつの~っす様
ああ、ご無沙汰してます。というか、社名だして大丈夫ですか(笑)
あの業界は、不況知らずということでしょうか。

僕は『けいおん!!』にハマっているわけではなくて、21話は、なぜだかダントツに面白いと思ったんです。
このエントリの最後に書いた「みんな」というのは、ろくすっぽ見もしないで「萌えしかない」「中身がない」と断罪している人のことです。『けいおん!!』ファンのことじゃないです。

実は、『けいおん!!』は、背景がすごく良いときがあるので、それで見ていたんです(笑)
だから、全部がすごいとは言っていません。
個々の描写が重なって出来たものが、「作品」「番組」なのであって、それ以外は「見た人のイメージ」以外の何ものでもないわけですよね。

「イメージ」だけで軽視されては、ちょっともったいないと感じたのが、この21話でした。

投稿: 廣田恵介 | 2010年8月31日 (火) 23時26分

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