■サヨコの立ち去るワンカット■
明日金曜、『めざましテレビ』で、『マイマイ新子と千年の魔法』が紹介されるそうです。
このブログも、画面に出るようですが……下品な話題も満載なので、『新子』がらみのページだけだと良いんですけど。
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週末公開の『カラフル』大プッシュ中の日本映画専門チャンネルで、『河童のクゥと夏休み』。原恵一さんに、お話をうかがって間もないので、いろいろ考える。公開時は、もっとシンプルに楽しんでいたと思う。
いま見ると、この作品は「アニメという手段を使った別の表現」という感じがする。
『カラフル』は、この「ひょっとしたら、アニメじゃないかも?」感が、より推し進められている。なんというか、フィクション性が低い。ストーリーはあるんだけど、非物語的。セル画ではあるんだけど、非アニメ的。
アニメに期待される、お約束的な快楽がないから、現実とずーっと地つづきな感じ。だけど、いまの僕には、そっちの方が安心できる。
快楽はないんだけど、お母さんとか、いじめられっ子のサヨコとか、ちゃんと色っぽい。「俺とは違う性別の人たちだ」って、ちゃんと認識できるんですよ。実写映画では、そんなこと意識しないでしょう?
その「性」を感じさせる、という点では、『カラフル』より『クゥ』のほうが、強い気がする。
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好きなシーンは、康一とサヨコが、東久留米駅で別れるところ。
今回、「おっ」と思ったのは、康一がホームに下りたあと、改札前から立ち去るサヨコのロング・ショット。
サヨコの手前と奥を横切る人物が、全員、女なんです。
まず、右手前からインして、サヨコを追いこしていくのが、20歳ぐらいの茶髪の女性。左奥からインして、サヨコとすれ違うのは、サヨコより小さな女の子と母親。この母娘は、改札をくぐって、どこかへ出かけるわけです。
サヨコは、両親が離婚して、引っ越すという設定だったでしょ。
だから、サヨコとすれ違った母娘は、サヨコの運命をあらわしているように見える。実際、サヨコが画面からアウトしても、その母娘だけ3秒ぐらい撮っている。
もう一人、手前を歩いて、サヨコを追いこす女性は、何だか未来のサヨコのように見える。サヨコと同じ方向へ、どうどうと歩いていくから、そう見えてしまう。
とすると、母に手を引かれていく娘が、サヨコと別方向へ、サヨコの背中側へ歩くのが、気になります。つまり、母と一緒に引っ越すであろうサヨコの明日は、すでに捨て去るべき「過去」なのではないか。
通行人が女性ばかりというのは、その前のシーンで、サヨコが浮気男のクツを捨てたことと、関係してると思う。
女の子が、男物の革靴を捨てる。これだけで、「性」を感じますよね。そして、一人で立ち去るサヨコの前後を歩く、年齢の違う女性たち。このワンカットで「サヨコの自立」という、もうひとつの物語が、さりげなく語られている気がして、しょうがないんです。
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コメント
日本映画専門チャンネル『河童のクゥと夏休み』今日の午後7時からですね。未見の人には是非見て欲しいです。
投稿: Miya-P | 2010年8月19日 (木) 10時00分
こっちに触れてませんでした
>『めざましテレビ』で、『マイマイ新子と千年の魔法』が紹介されるそうです。
日テレじゃなくフジテレビですか、笠井さん、時かけもサマーウォーズもプッシュしてくれたからまた推してくれるんでしょうか。
投稿: Miya-P | 2010年8月19日 (木) 10時53分
せっかくなので、番組表へのリンクを。
http://www.nihon-eiga.com/prog/003186_000.html
8月中に、あと5回も放映します。
■Miya-P様
紹介されるのは、「検索ワードランキング」というコーナーだそうです。
2分30秒ほどだそうですが、地上波のメジャー番組で取り上げられるのは、初めてではないでしょうか。
投稿: 廣田恵介 | 2010年8月19日 (木) 11時05分
私も『マイマイ新子』の影響で昔みたいに?アニメや映画の事を考えてたおかげで原監督のすごさを再認識し、『クゥ』のコレクターズBOXも最近買ってしまいました。おっしゃるシーンについては同感です。コメンタリーでも、そのシーンの演出について少しだけ触れていました。
松元環季ちゃんの妹の演出が、また絶妙です。
投稿: zapo | 2010年8月19日 (木) 17時01分
■zapo様
そうそう、松元環季ちゃんは「今度、いつくるの~」って泣き出すところが、上手かったですね。
男と女を、パッキリと「別の生き物」として描きわけているのが、気持ちいいんです。
>コメンタリーでも、そのシーンの演出について少しだけ触れていました。
おそらく、僕の読みとはぜんぜん、違うんでしょうね(笑)
でも、映画の答えというのは、各人の人生の中にあると思うので、別にいいんです。
コレクターズBOXって、全長版が入っているやつですよね。それは、いつか見たいと思っているんです。
投稿: 廣田恵介 | 2010年8月19日 (木) 17時29分