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2010年8月 5日 (木)

■『Colorful』の食卓■

原恵一監督の『Colorful カラフル』の試写に行って来た。
100805_15580001(このプレスシートだが、大学ノートを模しているのは、『私の優しくない先輩』のパンフと同じ。両作品とも、アニプレックスが出資しているけど、別に意図して似せたわけではなさそう)

自分の中では、『宇宙ショーへようこそ』で、アニメに依存しすぎているのではないかと疑い、『私の優しくない先輩』で、妄想より現実と対峙しろと叱咤され、この『カラフル』で、ヒリヒリするような現実の痛みを味わった感じ。


母親の不倫経験を、中学生の主人公は不潔と感じる。彼女の手づくりの食事に、主人公は手をつけようとしない。
画面にクローズアップになった、ハンバーグの痛々しさ。食事シーンは何度も出てくるが、確かに、おいしそうには見えない。ジブリ・アニメに出てくるような、魔法のかかった食事ではないのだ。

ファンタジーではなく、本当においしい食事、しかも、家族の食事とは、何なのか。その答えにたどり着くまでが、とにかく長く、辛い。しかも、絵づらではなく、物語で回答を出そうというのだから、辛くないはずがない。

僕も、いちばん思い出したくないのが、家族の食卓だから。いい思い出、ないですよ。
結婚中も、妻に「まずそうに食べてる」とか言われて、せっかくのおいしい食事が台無しだったし。
でも、だからこそ、目をそむけられない。
辛いなら辛いなりに、この映画と、関係を結びなさい。それだけの価値も救いも、ちゃんと用意されているから。


僕は、不倫経験のある女性と仲良くさせてもらった時期があるし、主人公の母親にいちばん、感情移入できた。そういう人が、心を病んでしまうのも、理解できるし。
ただ、声が麻生久美子だからね。麻生は、顔より声が好きなので、ちょっと戸惑った。というか、声優たちの演技は、誰もが一長一短。それを許せてしまえるのは、「同じ人間でも、さまざまな色を持っている」というメッセージの、寛容さゆえだろう。

意外にも、プラプラ役のまいけるが、かなりの芸達者で笑わせてくれる。プラプラが出てくると、かなりホッとします。
どんなことでも、予想通りよりは、予想外のほうがいいじゃない?


いい歳こいた大人なら、逃げも隠れもできない、そういうアニメです。そういうアニメに、40すぎて出会えて、たぶんラッキーだったんだろうと思う。21日より公開。

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