■7月のメモ「子ども扱い」■
M大学のR講師を誘って、『RED LINE』試写へ。Rさんは、外国人のくせに(外国人だからか?)、日本の古いOVAにやたら詳しい。試写が終わってから、「うん、この映画は『カリフォルニア・クライシス』に、絵の感じが似ている。北米で受けるかも知れません」などと、言う。
その一方で「でも、キムタクが出てるから、日本でも、そこそこ受けるんじゃないですか?」とニヤリ。
ただひたすら、偏執的にオタクな外国人は珍しくないが、Rさんは、そこはかとなく皮肉の混じるところが、抜群に面白い。
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2回目の『RED LINE』、初見のときはゴチャゴチャして見えたシークエンスが、ぱっきりとキレイに見えて、102分、あっという間だった。
(シークエンスとは、シーンが集まって「ひとつの意味」を形成している部分のこと。「シーン」の高級な言い回しを、「シークエンス」だと思っている人がいるようだが、それは間違い)
今回は声優名を公表しての上映だったが、驚いたのは、蒼井優。『鉄コン筋クリート』のときとは、わけが違う。生っぽさがない、というか、ものすごいアニメ声なのだ。
ぜんぜん、蒼井優の声に聞こえない。十分、アニメ的にセクスィーだ。
それで思ったんだけど、アニメって、線と色から成り立ったファンタジーなんだよね。どんなに写実的に描いても、どこまで行っても「絵である」ということ。孤高のジャンル。
だから、アニメ・ファンは、アニメというファンタジーに、俳優のような「リアル」が混入することを、嫌がる。
俳優嫌いのファンたちの気持ちも、分からないでもない。
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それに、前よりもアニメを好きになれたのは、確かだな。『宇宙ショーへようこそ』以降……もちろん、夏紀と僕の関係は、いずれ精神科医に見てほしいぐらい、密接なものだ。
だけど、何だか、『宇宙ショー』のことを考えると、涙が出てくる。理由は、分からない。語弊のある言い方だけど、気がねなく、幼稚な気分になれるから…かも知れない。
僕は『かみちゅ!』も好きではないし、監督や脚本家にも、思い入れはないです。この映画のどこが優れているか――むしろ、欠点のほうが多いと思うので、周囲の友達にも、すすめていない。
だけど、祖父がクリスマス・ツリーを飾ってくれて、叔父がディズニー映画に連れて行ってくれた頃……つまり、自分が「子ども扱いされていた頃」に、戻れるような気がする。
43歳になっても、そういう気持ちに戻ってもいいんだ、と気づかせてくれたのは、このアニメなんだ。
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次の仕事のために、何本か実写のDVDを買った。『pieces of Love vol.2』、これは谷村美月、仲里依紗、星野真里が、それぞれ主演しているオムニバスだ。特に、2本目は仲さんと吉高由里子の夢の競演が見られる。
1本目の監督は、『渋谷区円山町』の永田琴!
だけど意外にも、星野真里がよかった。何度見ても、「こういう顔の女優です」と言い切れない。これといった特徴がない。特に、大きな役に恵まれているわけでもない。
なのに、女優をつづけている。それが本物の女優だ、という気がするのだ。
(C)2010 石井克人・GASTONIA・マッドハウス/REDLINE委員会
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コメント
>だから、アニメ・ファンは、アニメというファンタジーに、俳優のような「リアル」が混入することを、嫌がる。
わかりますけど、僕は今のすっかり声優声の花澤香菜さんより
ゼーガペインのカミナギの頃の花澤さんの生っぽい演技の方が好きですねー(笑)あれを棒とか、君らはまるでわかってない!みたいな(笑)
投稿: Miya-P | 2010年7月13日 (火) 07時21分
■Miya-P様
花澤さんは、俳優というより子役タレント出身だったようですね。
本気であれを「棒読み」と言っている人がいますが、アニメ以外、何も見てないオタクだと思います。
もうひとつ、業界とか音響監督とか事務所とかが、才能をひとつ、殺してしまったんですよ。
誰ひとり、罪悪感を背負ってないと思いますが。
投稿: 廣田恵介 | 2010年7月13日 (火) 08時54分
>子役タレント出身だったようですね。
そうなんですか。なら演技の方向に納得がいきます。
>アニメ以外、何も見てないオタクだと思います。
カミナギのあの演技の良さを理解出来ない彼らは
もし新子がTV放送されたら、やっぱり(先入観で)同じ様な事を言うんだろうな、と想像がつくんですよね・・・。
子供の役者さんを侮る様な傾向がアニメファンには割とありますけど、彼らの幼くてもプロ意識の高さを知ったらそんな考え方は出来ない筈。福田麻由子さんや松本環季ちゃんとかホントに凄い「プロ役者」ですもの
投稿: Miya-P | 2010年7月13日 (火) 09時43分
■Miya-P様
松元環季ちゃんは、CD出しちゃったし、アイドル路線へ行くみたいですね……。
投稿: 廣田恵介 | 2010年7月13日 (火) 19時00分
>新子がTV放送されたら、やっぱり(先入観で)同じ様な事を言うんだろうな、と
ダチが、スカイプ中に僕が流してたマイマイ新子の動画の音声部分について
「学芸会みたいッスね」
みたいな感じの感想を漏らしてたのを思い出しました。
判っとらんなぁ。
投稿: キサ | 2010年7月13日 (火) 21時01分
■キサ様
それ言ったら、公開前に個人ブログで「どうせ棒読み演技、『ミヨリの森』みたいに言われて、どっかへ消え去る運命」とか書いている人、いましたよ。
公開前に、ですよ? 「冒頭10分見せます」の、はるか前です。
ちなみに、『新子』が放映されるとしたら、山口放送じゃないですかね。
投稿: 廣田恵介 | 2010年7月13日 (火) 21時20分
山口で放映される事になった暁には、Blu-rayレコーダを買って防府のホテルに宿泊し録画する所存です(笑)。
Blu-rayソフトが出ない時 ですが。
投稿: キサ | 2010年7月14日 (水) 00時15分
■キサ様
「新子 ブルーレイ」で検索してくる方もいらっしゃるのですが……今世紀中には無理、と聞きます(笑)
山口県内限定で発売されたりてしてね。
県内だけリージョンが違う、とか(笑)
投稿: 廣田恵介 | 2010年7月14日 (水) 01時52分