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2010年6月 9日 (水)

■6月のメモ「どついたるねん」■

DVDのジャケットも公開されたし、そろそろ話してもいいでしょう。
Ca270208昨年の文学フリマの頃、片渕監督から左のようなプレゼントをもらいました。ピンクの字で「ともだちはすてきです。」と刷ってあります。
右下には、小さく、監督のサインと「非売品」の文字が……。
世界に2枚しかないそうなので(もう一枚は防府にある)、今まで、ブログで自慢するのを控えていました。

このカットは、プレス向けの膨大なデータの中にもなく、けっこう希少に感じたものです。
同時に、「これを安い額縁に入れるだけでも、商品になる! みんな、喜ぶのに!」と思いました。
だけど、それを提案するのもはばかられるような沈痛な空気が、去年12月初旬の頃は、支配的だったのです。

僕は、ガラガラの映画館で、一人で映画を見るのが好き。
だから、『新子』も「う~ん、売れなかったねえ」と苦笑しつつ、ブックレットすら付いてないようなDVDが、忘れた頃に出る……それでも、良かったんです。
でも、さっきも書いた、ただならぬ「沈痛な空気」が、僕の背中を押したんでしょうね。


僕らは、よくもまあ、百年以上も、こんな奇妙な娯楽に付き合っているなあ!と、たまに可笑しくなります。
観客は、映画を見る前に料金を払い、内容がつまらなくても、手ぶらで帰る。お金を払っているのに、トイレに行くのを我慢し、死体のように暗闇でジッとしている。
でも、たった2時間座っていただけなのに、人生が変ってしまったりする。

あるアーティストが、映画のスクリーンをスチルカメラで撮影したんです。123分の映画なら、きっちり123分、露光しつづける。すると、どの映画も真っ白なんですよ。場面なんて、映らない。
止まった絵を錯覚して、「動いている」と認識するのは、人間だけなんです。いわば、「光学的に騙されている」とも言える。

だから、僕は「映画と関係を結ぶ」という言葉を、好んで使います。
映写機とわれわれとが、共謀して、合意のもと、契約の上に、そこに物語を成立させるんです。
だから、自分のことを、棚上げできないはずなんですよ。どんな映画に対してもね。

――まあ、僕は女優目当てなので、そんなに誠実じゃないですけどね。


へんな時間に起きてしまったので、録画してあった麻生久美子の『eiko』。
ラスト近く、麻生が、別れてしまった沢田研二を思い出す。その時、恋する少女の顔になっている。
それなりに辛い恋愛をしてないと、ああいう表情は出来ない。その表情が見られただけで、AOK(オール・オーケー)。

その後、ちょっと仕事してから、明け方に『どついたるねん』。相楽晴子の登場シーンだけ、見ようとDotsuitarunenしたけど、結局はぜんぶ見てしまった。

1989年公開。興行形態からしてメチャクチャで、屋外にテントを張っての上映だった。当時は「荒戸源次郎事務所」と聞くだけで、ドキドキした。邦画が、上り調子になってきた頃の作品。
阪本順治のインタビュー読みたさに、雑誌を買ったりもした。この頃の阪本監督は、女優の色気を引き出すことにかけては、世界一だった。

相楽晴子は福島出身なので、関西弁は、この映画のために特訓したはずである。阪本順治は、『どついたるねん』のためだけに、相楽の才能を目覚めさせ、再び眠りにつかせてしまったわけだ。
それは、「再起不能のボクサーが、一試合のためにだけ、奇跡的に復活する」プロットにも、通じる。

「タオル投げられて負けるぐらいなら、リングの上で、舌かみきるわい」。赤井英和のこの一言にガツンとこない奴は、本当の人生を生きてない。


そして、そろそろ、80年代後半~90年代初頭の『ノーライフキング』『櫻の園』などのアルゴ作品群、『夢みるように眠りたい』にはじまる林海象作品(もっと言うと、一瀬隆重プロデュース作)ふくめ、何か呼び名が欲しい。
あの時代を、リアルタイムで体験した世代が、きっちりまとめるべきではないか、という気がしてきた。

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コメント

そのひと言で思い出した!
・・・中途半端に(笑)

『体制に媚びるくらいなら笑いながら舌かんで死んでやるぜ。』

と言ったのは誰だったのか思い出せません。
廣田さん教えてください。

投稿: ひらたひであき | 2010年6月 9日 (水) 20時29分

■ひらたひであき様
誰でしょう、チェ・ゲバラですかね。ちょっと違うか。
革命家は、舌をかみきらず、相手の舌を切りますもんね。

それはそうと、なんで日本って、クーデターが起きないんでしょう。

投稿: 廣田恵介 | 2010年6月 9日 (水) 20時35分

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