■6月のメモ「この世界は、砂漠なんだよ」■
夕方に原稿が出来てしまったので、レイトショーでしか上映してない『さんかく』へ。何しろ、『純喫茶磯辺』の吉田恵輔監督ですからね。田畑智子と小野恵令奈、今回の配役も、パーフェクトだ。これで、何も起こらないはずがない。
まず、ファースト・カットがいい。小野恵令奈が、電車の座席で、ウトウトしている。右側の男性の肩に、頭をもたせかけてしまって、「ごめんなさい」。でも、男性はかわいい子だから、怒れない。
小野恵令奈、今度は左側に座っている男性の肩に、頭をもたせかけてしまう。で、頭をガラス窓にゴチンとぶつけて、やっと目が覚める。ここまで、ワンカット。
これだけで、小野がどういう性格の女で、これから何をするのか、すべて説明できている。
もう、ファースト・カットが、ネタバレなの! 書いちゃったけどさ。あとの物語は、壮大な注釈といっても、いいぐらい。
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実際、小野恵令奈の存在感は、すごいよ。比喩ではなく、画面から圧力を感じる。
誰もが驚いただろうけど、声の威力ね。未完成な色っぽさ。成人女性には、出せない声。小野が、今後も映画に出ても、こんな蠱惑的な役は、できないと思う。この映画では、女優として仕事を完遂した。でも、次の映画では、アイドルのままかも知れない。その瀬戸際っぽい危うさも、役に貢献していた。
でも、やっぱり田畑智子なんだよな。ヒロイン役は。キングギドラが出てきても、やっぱり、主役はゴジラじゃない?
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予告編やキービジュアルに騙されて、明るくお茶目なラブ・コメディを期待していると、それは、前半だけなんだよね。
『純喫茶磯辺』もそうだったけど、「この世に、女神はいないのか……も知れない」という映画。ラストのラスト、田畑智子が何かセリフを言ってしまったら、おそらく、女神は現出したのであろうよ。
たとえ女神がいなくとも、男たちは、倦怠と戦っていかねばならない。この世界は、砂漠なんだよ。だから、井戸が見つかったからといって、安心しちゃダメよ。
案に相違して、厳しい映画でありました。しかし、吉田監督の次回作は、万難を排して、見にいくよ。
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もう一本。日曜邦画劇場で、しつこく再放送していた『ビルと動物園』。なんで録画したのかな、と思ったら、坂井真紀だった。当時、38歳。設定も同い歳ぐらいのOLで、21歳の大学生と恋に落ちる。
何がいいって、坂井真紀が「酒に強い」というところ。初デートの居酒屋で、生中を飲み干して、すぐさま「ぬる燗で」。自宅のシーンでも、ずっと日本酒を飲んでる。
『好きだ、』の永作博美の本物の飲みっぷりには、ちょっと及ばない。でも、俺は坂井真紀の日本酒シーンを見られただけで、AOK(オール・オッケー)だったな。
坂井が『イデオン』フリークで、「『エヴァ』がかすむ」と発言したことに義憤を感じた人たちがいるようだけど、例えは悪いけど、目くそ鼻くそレベルでしょ。
『エヴァ』をおとしめる目的で、『イデオン』を使うよりは、ぜんぜん良くない?
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『さんかく』を見にいくため、電車に乗っていたら、なんと河森正治監督が、真正面に座った。
「ちょっと見かけた」とかじゃなくて、いきなり真正面に座るところが、この方らしいなあ、と。超多忙な監督は、お仕事で移動中だったのですが、僕は「えーと、『マイマイ新子と千年の魔法』という映画がありまして…」と説明するところからはじめて、「見てください」とまでは言えなかったなあ、さすがに……。
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