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2010年5月27日 (木)

■5月のメモ「気持ちよく、騙されたい」■

アカデミー賞受賞作を見ようと思い、『ミリオンダラー・ベイビー』を借りてきた。
Real絶望的なのに、腹の底から力がわいてくるような……なんと、主客倒立したドラマなんだ! こんな異様な映画が作品賞なんだから、アカデミー賞、なめられん。
イーストウッドの監督作は、『グラン・トリノ』も素晴らしく良かった。

もう一本は、『のんちゃんのり弁』。
……タイトルに、「ちゃん」がつく邦画って、ちょっと怖いかも。
『ちーちゃんは悠久の向こう』、『いけちゃんとぼく』。怪作しか、ないような気がする。


吉祥寺、新座と渡り歩いてきた『新子』の巨大ポスター。
ごんちゃんと相談の結果、ラピュタ阿佐ヶ谷へ行くことになった。
多くの人の手で完成されたもので、それだけに複雑な立場のポスターなのだが、今後の行方については、責任を持たせてほしい。

そんなこともあり、ラピュタさんにご挨拶に……と思うのだが、あいかわらず喉が腫れていて、声が出ない。
医者に言わせると、声枯れは、治癒に時間がかかるという。困ったもんだ。


先日の話のつづきだが、僕より長く、『新子』と付き合っている方とも、意見・情報を交わした。

そこで気がついたのは、ブロック・ブッキングや団券販売といった、邦画特有の悪弊の歴史を(そこそこ)理解し、適切な嫌悪感をいだいていなければ、「映画もビジネスでしょうから……」ですまされてしまう程度の話題なのだ、ということ。

そこで、考えた。
これから、ラピュタさんでも上映が始まる。有志によるオールナイトもある。水を差すようなことは、したくない。
とにかく、今は話すべきじゃないんだ。
それに、僕が「怒ってほしい」「怒るべきだ」と願った人たちは、とっくの昔、ずっと前から怒りつづけてくれている。そこに、まずは満足だ。救われた気分になる。


でも、こんな事態(興行不振とその後のアレコレ)が起きたがために、僕は、最高にややこしい人間関係を、引き受けつづけている。毎日毎日、右から左へ聞こえないふりをし、誰かを説得しようとしたり、誰かを無視しようとしたりしている。
やはり、こんなことは、二度と起きてはならないのだ。

署名でも、有志による行動でもなく、プロの巧みな戦術によって、映画はヒットすべきだ。
そして、「くっそお、広告に踊らされた!」と、元気よく地団駄を踏みたいではないか。「何というダメ映画なんだ!」と、友達と中ジョッキをあおる。
それが、正しい映画の消費のしかただ。1,800円の価値だ。


地上波放映中の『ギャラクティカ』S2、傑作エピソードの呼び声たかい『傷跡』。たしかに、28_051_2の一本さえ見れば、『ギャラクティカ』の面白さが分かる。

でもやっぱり、誰がなんと言おうと、スターバックの繊細さに心惹かれる。アポロにふられた彼女は、一人でガン・カメラの記録映像を見ている。酒のボトルを傾けながら、泣きながら見ている。
誰もが秘密にしておきたい、たった一人の、無為な時間。

前にも書いたが、『ギャラクティカ』が素晴らしいのは、こうした日常のささいな瞬間を、決して見逃さず、丁寧にすくいあげるところだ。

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コメント

廣田さん(たち?)は立っている場所がわからなく複雑でしたね。
同じ事を実行しても立ち位置で見方が180度違いますね。
「上映の場を作ってあげた」のか
「上映させてもらえた」のか。
どっちにしても製作担当者は「ありがとう」と言い続けてくれるでしょうが、
宣伝担当者にとっては「たのんでなんかないよ。勝手にやったんでしょ?」と
いう話になってしまうとつらいです。

私が初めてこちらに書き込んだのは、
なぜ観客が企業の収益に絡んで腹を立てているのだろう、
と思ったからです。
収益云々は企業努力だという思いは今も変わりません。
もしかすると会社としてはひとつの作品が赤字でも
他の作品でカバーできればそれで構わないと思ってるんじゃないかと。

「製作担当」が作品にどんなに思い入れがあっても
そこから先の担当が同じように思ってくれるとは限らない。
たった3人しかいない現場でも起こることです。

個人が(上映実現)できることをなぜ企業ができないんだろうとも思いますが、
個人だから実現できたのかも、とも思います。
私は自分の思いを実現させてもらっただけで、
「誰かのかわりに」労力やお金を使ったつもりはないです。
利用されたわけでもない。
今後の有志によるイベントも楽しみたいだけでしょう。

その陰で、最初に立ち上がった廣田さんたちが
深く傷ついていらっしゃるのは心が痛いです。
10年という時間で解決するのならよいですが。
ただ、今回深く関わったみんなも私も
廣田さんと前岡さんの存在を忘れることはないでしょう。
おふたりがいらっしゃらなければ私なんか
もしかすると防府で1回観て終わりだったかも。
(これが怒りの素ですね、ここは「プロの巧みな戦術によって」でなければならなかった)
おいしいとこだけいただいてごめんなさい。

最初のコメントも長かったけど、
最後(この件についてはそうします)も長かった…
(;´▽`A``

私はラピュタ阿佐ヶ谷の2月の最終日に
新子を観た後出なくなった声が出るようになるまで1週間、
元通りになるまで1ヶ月かかりましたよ。
かすれた変な声を気に入ってもいたんですが。
しばらく紙と鉛筆が必要ですね。

投稿: kyasリン | 2010年5月27日 (木) 10時16分

■kyasリン様
私も「自己満足」を基準にすれば、心が楽だったかも知れません。皮肉ではなく、そう思います。

職業柄、アニメ業界に接しており、「巧みなプロの戦略」をいくつも見てきたし、担当者次第で、作品のイメージが悪くなったり、観客を怒らせてしまう事例も見てきました。
それで、黙っていられなくなったのが、すべての発端だと思います。
上映前から、映画の関係者と面識があったことも、大きいです。「興行が苦しい」と聞かされて、知らんぷりが出来なかったんですよ。

そう、知らんぷりが出来ない立場なんです。
署名のときも、いろいろな方から意見を聞かされたし、中には説教もありました。すべて、「おっしゃるとおりです」と拝聴すべき立場でした。だって、こちらは「署名をお願いいたします」と頭を下げてるんですから。

今も、たいして変わってない気がします。
僕自身は、AさんともBさんとも仲良くしているつもりだけど、お二人は、この映画への関わり方、考え方が違うらしい……。
ネットの悪癖ですね。相手に聞こえそうもないところで、ぶつぶつ言っている。たまたま、両方を見てしまった僕は、どうすればいいんですか。

こんなにも疲れた理由は、制作サイドふくめて、あまりに多くの人たちとパイプが出来たためでしょうね。
「友達が増えた」という意味ではないですよ。単に、パイプが増えただけです。楽しく、にぎやかになったわけじゃない。

つまり、僕は「立ち上がった」のではなく、「巻き込まれた」に近いです(笑)。ただ単に、黙っていたり、聞こえないフリが出来なかっただけですよ。
そのだらしなさのツケを、いま払っているんだと思います。

投稿: 廣田恵介 | 2010年5月27日 (木) 13時58分

>両方を見てしまった僕は

自分のことだけ考えるのが最良の結果になります。(努力が必要かもしれませんが)
どうしてあげたいか、じゃなくて、どうしたいか。
私事の別件ですが10年近くも「巻き込まれた」経験からすると、そうです。
(そう、私は巻き込まれてた。そう思うとなんか、救われた気がする。
廣田さん、ありがとう。今回の件に全然関係ないけど(笑))

投稿: kyasリン | 2010年5月27日 (木) 14時39分

ホントは笑っちゃ行けない所なんだろうけど、↓で爆笑しました。
本当にそうだよな。

『そして、「くっそお、広告に踊らされた!」と、元気よく地団駄を踏みたいではないか。「何というダメ映画なんだ!」と、友達と中ジョッキをあおる。
それが、正しい映画の消費のしかただ。1,800円の価値だ。』

 教えていただいたギャラクティカは
 面白すぎてとまりません。
 那須でひたすら続きを見てます。
 
 つーか、圧倒的有利な敵から逃げ回り
 ながら5万の民間人つれて地球を目指す
 ってよく考えたらマクロスじゃん。

 どうりで好きなはずだぜ。
 


投稿: 杉本晃志郎 | 2010年5月27日 (木) 15時52分

■kyasリン様
さすが、説得力ありますね(笑)
しかし、「署名」から始めてしまった以上、自分のことだけ考えるなんて、構造的に不可能ですよ。

いま「どうしたいか」というと、なるべく僕を介在させず、当人同士で話してください……と、ここに書くことで、本日は力尽きそうです。

■杉本晃志郎さま
いや、そこは笑うところですよ。騙されても楽しい、というのが映画のあり方だと思うんで。

>教えていただいたギャラクティカは
>面白すぎてとまりません。

これから、予想もしないことが、どんどん起きますよ。
今から頑張れば、放映中のファイナルシーズンに追いつけます。

投稿: 廣田恵介 | 2010年5月27日 (木) 16時36分

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